【ファ〇チキを送ってくれ】第5章 「共鳴錯覚終端理論(レゾナンス・ミスアトリビューション)」
第5章テーマは、覚醒の誤帰属(Misattribution of Arousal)
覚醒の誤帰属は【高ぶりの原因を恋と勘違いしやすい】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第5章 「共鳴錯覚終端理論(レゾナンス・ミスアトリビューション)」をイメージ楽曲と共にお楽しみ下さい
↓第5章のイメージ楽曲↓
前回のあらすじ
夕方から夜に変わる時間帯
私は、いつも通り公園に向かっていた
……いや、“いつも通り”という言葉が成立している時点で、色々とおかしいのだが
そして当然のように
白詰さん……いや、ゼフィリアは既にそこにいる
「遅い。位相(フェーズ)の重なりが弱まっている」
「それ、早く来たら強くなるんですか?」
「理論上はな」
「理論あるんですね……」
軽い会話が成立する
もう驚かない
このやり取りが、完全に日常になっている
……いや、慣れるなよ私
「本日は観測条件(コンディション)を変更する」
ゼフィリアが言った
「珍しいですね」
「変化は必要だ」
「珍しくまともなこと言いますね」
「私は常に正しい」
「はいはい」
彼女はそのまま歩き出す
私は当然のようについていく
……いや、なぜ当然なんですかね
着いたのは、公園の少し奥
普段はあまり来ない場所だ
小さな高台のようになっていて、足場が少し悪い
街灯も少なく、少し暗い。
「ここ、危なくないですか?」
「問題ない。視界は確保されている」
「いや足元の話なんですけど」
その瞬間
ぐら、と足元が揺れた
反射的に体勢を崩す
「……っと」
支えられた
ゼフィリアが、すぐ隣にいる
いや、近い
明らかに近い
肩が、触れている
「ちょっと近くないですか?」
「干渉(インターフェア)を最小限に抑えている」
「いや逆に増えてますけど」
「誤差の範囲内だ」
「どこがですか」
距離が近い
普通に近い
だが彼女は真剣だ
一ミリも疑っていない
……いや、だから困るんですけど
『重なるな』
頭の中でセラフィム様の声がした
「だから何がですか……」
「接触は許容範囲内だ」
隣からゼフィリアの声
私はゆっくりと目を閉じた
「……いや、完全に近いですよねこれ」
「問題はない」
「あります」
だが、離れない
彼女はそのままだ
そして私も……動かない
……いや、離れればいいのに
だが
「……まあ、いいか」
私はそのまま立っていた
風が吹く
少し冷たい夜の風だ
街灯の光が揺れる
周囲は静かで、人の気配も少ない
その中で……やけに、近い
(……いや、これ普通に距離バグってますよね)
心臓がうるさい
理由は分かっている
足場が悪いからだ
暗いからだ
風が強いからだ
……全部、環境のせいである
決して、それ以外ではない
「鼓動(パルス)が早いな」
「いやそれは……」
「共鳴(レゾナンス)か?」
「違います」
即答する
「環境要因です」
「否。同期(シンクロ)している」
「してません」
だが……否定の言葉が、少しだけ弱い
……いやいやいや
違いますよ
これは普通にドキドキしてるだけです
断じてそれ以外ではありません
しばらくして……ゼフィリアは、すっと離れた
何事もなかったかのように
「本日の観測は良好だ」
「いや何も分かってないですよね」
「十分だ」
「どこがですか」
だが、私は強く否定できなかった
さっきの距離
さっきの感覚
説明はつく
つくはずだ……なのに
「……まあ、いいか」
私はそう呟いた

別の日
私は、何の迷いもなく同じ場所に来ていた
……いや、迷いはある
だが、来ないという選択肢が最初から存在しない
それが一番おかしい
そして、いつも通り
白詰さん……いや、ゼフィリアは既にいる
「来たか。条件は前回と同一だ」
「再現性高いですね」
「当然だ。これは偶然ではない」
「そうですか」
私は隣に立つ
意識していないはずなのに、同じ位置に収まる
そして
(……また、ですか)
鼓動が早い
理由は分かっている
風
暗さ
足場
そう……全部、環境のせいだ
……そういうことにしておきたい
(……いや、違いますよねこれ)
私は、目を逸らした
「これ、環境のせいか?」
私は小さく呟く
「違う。これは現象(フェノメノン)だ」
「いや、普通に条件揃ってますよね」
「条件ではない。結果だ」
「順番逆じゃないですか?」
「逆ではない」
「逆です」
だが……私は、完全には否定できない
言葉は出るのに、確信がない
……いや、なんでですかね
『それでいい』
頭の中でセラフィム様の声がした
「何がですか……」
「問題ない。進行(プログレス)は正常だ」
隣からゼフィリアの声
私は、軽く笑った
「……いや、もういいです」
考えるのをやめた
どうせ説明はつかない
つかないなら、保留でいい
……それで問題ない気がした
沈黙
距離はそのまま
風だけが通る
私は、ふと横を見る
ゼフィリアがいる
いつも通りの顔で、同じ場所に立っている
(……これ)
言葉が浮かぶ
だが……また、止まる
いや、分かっている
言わなくていい
でも……言ったら、終わる気がする
この距離も、この状態も
全部、名前がついてしまう
それは……少し、違う
「同士としての適合率(フィットレート)は十分だ」
ゼフィリアが言った
「それ、便利な言葉ですね」
私は軽く返す
「不満か?」
「……いえ、別に」
否定しない
できない
もう、それで成立しているからだ
並んで立つ
何も言わない
だが、離れない
それだけでいい気がした
『成立している』
頭の中でセラフィム様の声がした
「……何がですか」
返答はない
だが……少しだけ分かる気がした
……たぶん、あれだ
いや、違うかもしれない
でも……
(……まあ)
私は、少しだけ息を吐いた
(……いいか)
「ファ〇チキを送ってくれ」と変な声に従って出会った厨二少女は……
いつの間にか私にとって……大切な人になっていたのかもしれない
理由?
そんな物は分からん
ただ……まあ……明日も来ますから問題ありませんね
以上で、【ファ〇チキを送ってくれ】の物語はおしまいです
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