百メートルだけの遠回り 担当:ヘリテージ・ループ(Heritage Loop)【#ケンタウルスお題に参加するってよ】
この物語のイメージテーマです
聴きながらお楽しみ下さい
それでは本編をどうぞ
ナクティア:「今日はここまでだ」
ハクレイナ:「えっ、ほんとに!? まだ明るいよ!?」
ナクティア:「問題ない。今日の内容なら、これ以上続けても効率が落ちる」
ハクレイナ:「やったー! じゃあさ、みんなでちょっと寄り道しない?」
ルミネージュ:「……帰りたい」
ハクレイナ:「即答!?」
アークシエル:「私はどっちでもいいよ。帰っても、帰らなくても」
ハクレイナ:「それ!一番困る答え!!」
ジュノリハ:「少し休むくらいなら、いいと思います」
ハクレイナ:「よーし、決まり!」
ナクティア:「私は賛成してないが」
ハクレイナ:「でも帰ってないよね?」
ナクティア:「……よく見ているな」
こうして五人の寄り道は始まった
もっとも、行き先は練習場から百メートルほど先のベンチである
寄り道という言葉には、もう少し冒険心があってもいい気はする
ハクレイナ:「寄り道っていうか……すぐそこのベンチじゃん!」
アークシエル:「別にいいんじゃない。寄り道の距離に決まりはないし」
ジュノリハ:「疲れている時は、このくらいがちょうどいいですね」
ルミネージュ:「……遠いと、帰る」
ハクレイナ:「危なかった! 百メートルで正解だった!」
ベンチの隣には自販機があった
ハクレイナ:「私、十六茶にしよっと!」
ジュノリハ:「私も、それにします」
アークシエル:「じゃあ、私も」
ナクティア:「同じでいい」
ルミネージュ:「……十六茶」
ハクレイナ:「全員一緒だ!」
五本の十六茶が並ぶ
冷えたボトルを手にすると、練習後の火照った指先にひんやりと心地よかった
ハクレイナ:「いただきまーす! ……あー、おいしい! こういう時のお茶っていいね!」
ジュノリハ:「すっきりしますね。練習の後でも飲みやすいです」
アークシエル:「こうやって座って飲むと、終わった感じがするかもしれない」
ナクティア:「休憩としては合理的だ。水分を取って、身体を落ち着かせる」
ハクレイナ:「ナクティア、今日はもう練習の話禁止!」
ナクティア:「まだ分析には入っていない」
ハクレイナ:「入る気だったんだ!?」
ルミネージュ:「……これ、飲みやすくて好き」
一瞬、静かになった。
ルミネージュ:「……なに」
ハクレイナ:「いや……素直に感想を言ったからつい!」
ルミネージュ:「……そう」
ルミネージュはもう一口、十六茶を飲んだ
ハクレイナ:「……で、何話す?」
アークシエル:「何でもいいよ」
ジュノリハ:「ハクレイナさんが誘ったんですから、お任せします」
ハクレイナ:「えっ!!」
ナクティア:「無計画だったのか?」
ハクレイナ:「いや!!寄り道に計画なんていらないでしょ!」
ルミネージュ:「……じゃあ、話さなくてもいい」
ハクレイナ:「それは寂しいよ!」
ハクレイナは十六茶を一口飲み、空を見上げた
ハクレイナ:「あ! そういえば今日、変な雲見たよ。魚みたいな形!」
ナクティア:「そうだな……私は靴に見えたが」
ハクレイナ:「見てたの!?」
ナクティア:「観察はしている」
アークシエル:「いや……雲は雲だよ」
ジュノリハ:「それも正しい見方ですね」
ルミネージュ:「……少し、パンに見えた」
ハクレイナ:「魚と靴とパン! 同じ雲なのに自由すぎない!?」
また十六茶を飲む
ハクレイナ:「あ、私さっき自販機で十六茶のボタン、上と下どっち押すか迷った!」
ナクティア:「同じ商品なら結果は同じだ」
ハクレイナ:「分かってるよ!」
アークシエル:「でも、そういう時って少し迷うよね」
ジュノリハ:「私は近い方を押します」
ルミネージュ:「……わたしも」
ハクレイナ:「なんでこんな話で意見が分かれるの!?」
どうでもいい話だった。本当に、驚くほどどうでもいい
けれど五人の十六茶は、少しずつ減っていった
ナクティア:「ちなみに今日の走りだが、三本目の……」
ハクレイナ:「反省会禁止!」
ナクティア:「まだ一言だ」
ハクレイナ:「練習後まで反省会しなくていいの!」
ナクティア:「いや……練習後だろうが反省会は重要だが」
ハクレイナ:「そういう意味じゃない!」
ジュノリハ:「ナクティアさん……今日はハクレイナさんの勝ちでいいと思います」
アークシエル:「たまには負けておけば?」
ナクティア:「……仕方ない」
ハクレイナ:「よし!勝った!!」
ルミネージュ:「……何に?」
ハクレイナ:「それは私も分かんない!」
夕方の風が抜けていく
ハクレイナは残り少なくなった十六茶を揺らした
ハクレイナ:「結局……何にもしてないね」
アークシエル:「それでいいんじゃない?」
ジュノリハ:「何かしないと一緒にいられないわけでもありませんから」
ナクティア:「結果を求めない時間も、必要ではある」
ルミネージュ:「……お茶、おいしかったし」
ハクレイナ:「……そっか!」
ハクレイナは笑って、最後の一口を飲んだ
何も起きなかった
十六茶を飲んで、雲の話をして、自販機のボタンで迷っただけ
だからきっと、あの放課後は五人だけのものだった
