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しあわせのおぱんつこびとさん

ここは、とある町。
ゆっくりと不思議が育つ、やさしい町。
そんな町の一画にある、不思議なカフェ。

暖かな春の光に包まれた、休日の午後。

春風とともに、常連の母子がやってきた。カウンターの向こうの女性は尋ねる。

「今日は、少しお疲れですか?」
「ええ、少し……最近、この子イヤイヤ期みたいで。
今日も、ここに来る前に、着替えたくないって愚図って。
なんとか着替えさせて、出かける支度をして、振り返ったら――
この子、まさかのパンツ一枚で……」

女性は、思わず吹き出した。

「それは、お疲れさまでした。
そういえば、こんな絵本がありますよ。」

そう言って女性は本を手に取り、
子どもの目の高さに合わせて、
ゆっくりと読みはじめた。




あなたは
おぱんつこびとさんを
しっていますか?
しらない?

いえいえ、きっとしっているはずですよ。

おぱんつこびとさんは
おおきな かわいい おしりに
ぱんつを いちまいだけ はいています。
おむつ いちまいの
ときも あります。

おうちのなかに
たびたび あらわれますが、
いつも いるわけではありません。

よく あらわれるのは
おふろにはいる まえや
おふろから でた あと。
あさの おきがえの ときに
ひょっこり あらわれることもあります。

さむい ふゆも
あつい なつも
かんけい ありません。

おぱんつこびとさんは
みんな ママが だいすきです。

おこった ママと
おいかけっこを するのも 。
おぱんつ いちまいで
おおきな こえで うたうのも。
へんてこ ダンスを
おどるのも。
いたずらして
ママを こまらせるのも――。
だいすきです。

おぱんつこびとさんが
きらいなものは
おようふく。

ママが ようやく つかまえて
きせた おようふくも
あっというまに ぬいでしまいます。

ぱっ!

だって
おぱんつ いちまいで ねころぶのが
とっても きもちいいんだもの。

まどからは
そよそよと
きもちのいい かぜ。

かぜの おようふくなら
さいこうなのになあ……。

おぱんつこびとさんが
たくさん あらわれる おうちでは、
こんどは パパも たいへんです。

すばしっこい
おぱんつこびとさんを
つかまえようと
みんなで オニごっこ。
おぱんつこびとさんは
おおわらい。

しまいには
おこっていた パパと ママも
おおわらい。

けれど――
そんな
おぱんつこびとさんも、
いつのひか
おうちに あらわれなくなります。

パパと ママは
すこし さみしそうです。

そして いつしか
パパと ママが
おじいちゃんと おばあちゃんになったころ。

むかし
なんども みた
おぱんつこびとさんに
そっくりな
おぱんつこびとさんが、
また 
おうちのなかに 
あらわれはじめます。

そうです。

あの
しあわせな わらいごえと
ともに。

あなたは
おぱんつこびとさんを
しっていますか?

しらない?

いいえ、きっとしっているはず。

ママの めのなかを
のぞきこんで
よく みてください。

ママの やさしい ひとみに
うつっているのが――

しあわせの おぱんつこびとさんですよ。


女性は、そっと本を閉じた。

「今度は、おぱんつこびとさんと一緒にどうぞ。」

母親は、笑った。

その瞳の中で、
おぱんつこびとさんも、笑った。
             
                          




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