ウポポイ・国立アイヌ民族博物館研修視察レポート(2022.12.13)
■当日スケジュール/視察詳細
視察日は雨天強風のため、予定を変更して以下のスケジュールで各施設を訪れた。
札幌8:43→白老9:46 (特急北斗6号) ウポポイまで徒歩で移動 約10分
10:15~10:35 国立アイヌ博物館 アイヌの技
10:35~11:15 国立アイヌ博物館 展示鑑賞 ショップ視察
11:15~11:35 国立アイヌ博物館 アイヌの歴史と文化
11:35~ 昼休憩
12:30~13:00 体験交流ホール 短編映像「カムイユアラ」
13:30~13:50 体験交流ホール 伝統芸能「シノッアイヌの歌・踊り・語り」
14:30~15:10 体験学習館 調理体験「ポントキッチン」
15:20~16:00 伝統的コタン 見学
ウポポイ16:00→JR白老駅16:22→札幌17:30(特急北斗13号)
※弓矢体験は強風のため残念ながら参加できなかった。
※アイヌ料理を提供しているカフェリムセはで臨時休業だった。
※博物館音声ガイドの貸出しは停止している。
入場料 大人 1,200円 高校生 600円 中学生以下 無料
年間パスポート 大人 2,000円 高校生 1,000円



■国立アイヌ博物館
シアタープログラム「アイヌの技」を鑑賞した。とても立派なシアターに客は3名だけだった。シアター内での撮影・飲食は禁止となっている。
長年、文化人類学および日本学の研究に取り組んできたボン大学のヨーゼフ・クライナー教授の日本語インタビューと共に、世界各国に展示されているアイヌの貴重な資料が紹介されている。
世界が注目するアイヌのイコロ(宝物)のじつに1万3000点以上がヨーロッパとアメリカの博物館に展示されている。
19世紀にシーボルトがはじめてヨーロッパにアイヌ文化を伝えたと言われている。
ロシア・サンクトペテルブルグ
① ロシア科学アカデミーピョートル大帝記念人類学民族博物館
現存するアイヌ民族最古の衣服の1つが展示されている。
② ロシア民族博物館
ロシア最大の民族博物館。大人だけでなく子供の衣服も展示されている。オヒョウという木の繊維で作られた衣服、魚の皮を用いた衣服等さまざまな種類の衣服を見ることが出来る。特筆すべきは、アザラシの毛で作られた高級衣服だ。毛皮の特徴を生かした複雑な模様となっている。襟や袖にはキツネが使用され、肩には刺繍が施され、ガラス玉で彩られている。
ドイツ・ケルン
③ ラウテンシュトラウフ ヨースト博物館 樺太アイヌの男の子が前髪につけるガラスのビーズでできた髪飾りが展示されている。10歳くらいの男の子が狩りに成功すると切り落とされたと言われている。
ドイツ・ライプツィヒ
④ ライプツィヒ民俗学博物館 バッハ、メンデルスゾーンが活躍した「音楽の都」であるライプツィヒにはドイツ最古の民族博物館がある。鳥の羽毛を縫い合わせて作った衣服は極めて保存状態がよく、100年以上も前のものであるが、当時の状態を保っている。
アメリカ・ニューヨーク
⑤ アメリカ自然史博物館
セントラルパーク西側にある博物館。アイヌ民族に関する常設展示ある。
アメリカ・ワシントンD.C
⑥ スミソニアン国立自然史博物館
アメリカ屈指の博物館。アイヌが伝統的に使用していた船の模型が展示されている。ウポポイの前身(旧)アイヌ民族博物館の野本正博館長が制作した。
シアタープログラム 「アイヌの歴史と文化」
人類が日本列島にやってきた3万8000年前からプログラムは始まる。
20分間という短い上映時間に集約されているため、話はやや飛ぶ。
1669年「シャクシャインの戦い」では首長シャクシャインは和睦を申し入れたが、和人にだまされ殺されてしまい戦いは終わる。
以後、松前藩が主導権を確立する。
時は進み、1875年「樺太・千島交換条約」では樺太、千島の先住民であったアイヌは3年以内にロシアか日本、どちらか一方の国籍を選択しなくてならなかった。千島アイヌは色丹島に、樺太アイヌは稚内を経由し江別に強制移住させられた。しかしコレラと天然痘がまん延し、多くのアイヌが命を落とした。
本上映ではロシアの統治下で生活することを決断したアイヌ、日本国籍を選んだアイヌのその後については詳しく触れていない。また明治政府による1889年「北海道旧土人保護法」制定から1997年の廃止に至るまでの過程は描かれていない。
国立アイヌ博物館 展示鑑賞 2階
2階のパノラミックロビーからはポロト湖を中心にウポポイ全体を見渡すことができる。
あいにくの天気だったが、照明のおかげで眺めは良い。高級ホテルにいるかのようだ。
博物館はおしゃれで建築物としても見る価値あり。



■昼休憩
アイヌ料理を提供するカフェリムセ(運営元 社会福祉法人ホープ)は臨時休業だった。今回はアイヌ伝統料理オハウ(鮭と野菜のあたたかい汁物)を断念して、オープンしていたフードコート「ヒンナヒンナキッチン炎」で昼食をとった。運営元は株式会社伸和ホールディング。
メニュー表に人気ランキングNo.1と書かれていた白老牛カレー(1,980円)を注文した。良い点は地産地消をうたっていることだ。道産食材にこだわっていて、お米は無農薬のふっくりんこを使用している。
その他にも行者ニンニクを使用したそばやうどん、ザンギ、ジンギスカン、ホッケフライといったローカルフード等、多彩なメニューを取り揃えている。観光客には旅行気分を味わってもらえるのかもしれない。
総合案内所内には外貨両替機SMART EXCHANGEが設置されていた。
(12通貨に対応している。)
今回は時間がなくて行くことができなかったが、「sweets café ななまかど イレンカ」では自家焙煎のコーヒーと共に、道産りんごを使用したアップルパイや白老産のたまごを使用したチーズケーキを販売している。運営元は社会福祉法人白老宏友会だ。
札幌駅どさんこプラザで大福を販売するといつも行列を作るあの「ななかまど」のテイクアウトショップだ。店内では飲食することはできず、外にはベンチがあるが、雨天は利用できない。


■体験交流ホール
短編映像と伝統芸能は無料で鑑賞できるが、整理券配布窓口(建物前のブース)にて入場整理券を取得する必要がある。開始時刻の10分前から入場できる。定刻を過ぎた場合は途中入場不可。会場内は撮影・飲食禁止。
短編映画上映「カムイユカラ」


2作品を鑑賞した。アニメーション映像はとてもきれいで現代的だった。
劇場のほとんどが空席だった。上映終了後は劇場内とトイレの消毒作業があるため、体験交流ホール内で次の演目を待つことはできない。建物の外に出て向かい側にあるウッドデッキで待機するように促された。ウッドデッキは当然だが雨風をしのげて快適だった。



伝統芸能上演「シノッアイヌの歌・踊り・語り」
再び劇場に戻り、伝統舞踊を見た。平日は4回、土日祝は6回上演している。北海道に住んでいても、アイヌの歌や踊りを間近に見る機会はほとんどない。アイヌの伝統文化を最前列の中央の席で見ることができて良かった。
■体験学習館
楽器演奏
学校の教室のような部屋で女性スタッフの方がトンコリとムックリを演奏してくれた。トンコリは樺太から北海道北部のアイヌに伝わる弦楽器だ。ウポポイでは5弦琴を使用しているが、3本~6本のものもあるそうだ。昔は弦には動物や植物の繊維が使われていたそうだ。トンコリ本体(ギターで言うボディ)は人の体を表している。傾けるとガラガラと音が鳴る。土日祝には演奏体験教室を開催している。
ムックリは口琴と呼ばれる竹製の楽器で不思議な音色だ。音を出すことが本当に難しい。体験学習館ではムックリ制作体験プログラム開催しているが、現在は口にあてた演奏指導は行っていないとのことだ。
ポントキッチン (調理体験・軽食)
アイヌ語でポンとは小さいという意味だ。30分間の調理体験プログラムとなっている。この日はペネイモを使った団子を作った。ペネイモはアイヌに伝わる保存食だ。
長い冬の間、アイヌはジャガイモを雪の中に埋めて保存していた。寒暖差で凍結、解凍を繰り返す。春になると、発酵したジャガイモを掘り起こし、水につけた後、杵でつく。
今回はあらかじめ用意された材料を合わせ、ビニール手袋をつけた手でひたすらこねる作業をしたのみ。指示通りにフライパンで焼いて完成。現代風にアレンジされていて、砂糖や植物油を使用したので食べやすく美味しい。
サッチェプ(干した鮭)とエント茶も一緒に頂いた。エント茶はウポポイ施設内でスタッフが栽培しているものだそうだ。
料理の持ち帰りをすることはできない。クイズ形式でアイヌの食について楽しく学ぶことができる。これが無料で体験できるのはうれしい。
土日祝日は3時間コース(調理2時間、試食1時間)の「ポロトキッチン」を開催している。(ポロは大きいという意味。)参加費は1,500円で2日前までの予約が必要だ。



■伝統的コタン
アイヌのチセ(住居)が建ち並んでいる。靴を脱いでチセに入ると、内部は明るい。中央には囲炉裏がある。火が焚かれており、鮭の燻製の香りがする。床暖完備で足元からあたたかい。
ずいぶん天井が高いなと思い、スタッフの方に尋ねると、実際のチセはこんなに大きくはないとのことだ。来る途中にあった手前の建物が、昔のチセを再現したものだそうだ。しかし現在の建築基準では違法建築物となるため、立入禁止になっている。ポロトコタン(ウポポイの前身の施設)時代のチセは感謝の祈りを捧げて、すべて取り壊したそうだ。
住居についてもう少し説明があった方が良いのではと思う。外国人の観光客はチセに入ってすぐ外に出ていた。おそらく何も理解していないだろう。
例えば「3つの窓」について表記するとか展示工夫が必要だと思う。
今回は時間がなく参加できなかったが、文化解説プログラムに参加してアイヌの暮らしについて学びたいと思った。
※「3つの窓」
①神座の窓:一番重要な窓。神が出入りすると言われている。この窓から家の中を覗くことは失礼にあたる。儀式などの時以外は覗いてはいけないと言われている。
②光を受ける窓:
③濁り水を捨てる窓:台所の側にある。






■まとめ
博物館は1時間、伝統的コタンは30分で見学することができる。
ただし予備知識のない人が見学しても、アイヌの歴史や文化を理解することは難しいだろう。音声ガイドの貸し出しがはやく再開することを願う。それまでは展示に工夫が必要だと思う。
やはりより理解を深めるためには半日から1日を費やした方が良いだろう。各プログラムは熱意あるスタッフが観光客をあたたかく迎えてくれる。より身近にアイヌ文化を学ぶことができるのでお勧めだ。
時間の都合上すべてのプログラムに1日で参加できるわけではない。お得な年間パスポートもあるので、何度でも訪れてほしい。
また、インバウンド誘客のためにも通訳案内士の入場料減免等の対応をとることも検討していただきたい。例えば江戸東京博物館(改修工事のため現在休館中)は通訳案内士の入場料は免除される。
1月から「とっておきの冬ウポポイ」という冬季限定プログラムが始まる。27日からは7分間のドローンショーなども予定されている。(金土日開催 2月12日迄)
季節ごとにちがった表情をみせるポロト湖はやはり美しく景勝地としても魅力的だ。多くのお客様に宣伝していきたい。 (R.K)






