【銘柄12項目分析#1】IHI | 売上が954億円増えた事業が、104億円の減益だった
決算短信の1ページ目を開くと、いい数字が並んでいました。
受注高 1兆9,547億円。売上収益 1兆6,434億円。営業利益 1,655億円。どれも過去最高です。2年前、この会社は営業損失を701億円出しています。そこから2期で、営業利益率は10.1%まで戻りました。
ただ、セグメント別のページまで進むと、少し様子が変わります。
主力の航空・宇宙・防衛。売上収益は5,557億円から6,517億円へ、954億円(+17.3%)の増収。4つある報告セグメントのうち、増収したのはここだけです。
その事業の営業利益が、1,227億円から1,124億円へ、104億円の減益でした。
こんにちは、とろろです。IHI(7013)を保有しています。今回はこの会社を、私がいつも使っている12項目のチェックに通してみました。結果は○が10個、△が2個、×はゼロ。数字だけ見れば良好です。
ただ、この記事でいちばん書きたいのは、その10個の○ではありません。途中で一度、危うく間違えかけた場所の話です。
そもそも、12項目に分解すると何が変わるのか
会社を判断するとき、ROEや自己資本比率のような財務指標を見る人は多いと思います。私も見ます。ただ、財務指標だけだと足りない場面が何度もありました。
財務は「過去の結果」しか映しません。売上が伸びた、利益率が上がった、という事実は分かっても、その伸びが来期も続くのか、外部環境が味方なのか、そもそも他社が同じことをできるのか、は分からない。
なので私は、判断を3つの層に分けています。
層1|企業の足腰(4項目)
①売上成長率 ②営業利益率 ③自己資本比率 ④手元資金(ランウェイ)。決算短信の1ページ目でほぼ埋まります。ここで×が2つ以上なら、その先は見ません。
層2|成長の実体(3項目)
⑤受注残 ⑥セグメント別の利益構成 ⑦投資の方向。全社の数字では絶対に見えない層です。セグメント情報の注記まで降ります。
層3|外部環境(5項目)
⑧国策・予算 ⑨マクロ感応度 ⑩需要の持続性 ⑪参入障壁 ⑫地政学。会社の外側にある追い風と逆風を見ます。

財務が良くても外部環境が逆風なら、その良さは続きません。
外部環境が良くても足腰が弱ければ、追い風に乗る前に息切れします。
12項目に分けているのは、この3つを混ぜて考えないためです。
詳しくはこちらのnote記事で書いているのでぜひ読んでみてください。
では、IHIを通していきます。
層1:足腰。○が3つ、△が1つ
① 売上成長率 → ○
売上収益の3期推移です。
2024年3月期:1兆3,225億円(前期比 △2.2%)
2025年3月期:1兆6,268億円(+23.0%)
2026年3月期:1兆6,434億円(+1.0%)
3期のCAGRは+11.5%。基準の「3期CAGR +10%以上、かつ直近期も前年比プラス」を満たすので○です。
ただし、+23.0%から+1.0%への減速は明確です。この落差は判定を変えませんが、必ず注記します。会社の2027年3月期予想は1兆8,300億円(+11.4%)で、再加速を見込んでいます。この予想が当たるかどうかは、後の層3で見る材料と繋がってきます。
② 営業利益率 → ○
2024年3月期:△5.3%(営業損失 701億円)
2025年3月期:8.8%
2026年3月期:10.1%
2027年3月期(会社予想):13.1%
赤字から2期で10%台まで戻っています。3期を通して改善傾向なので○。同業の平均利益率は手元にないので、そこは「未確認」として置きます。
ここは正直に書いておきます。2027年3月期の営業利益2,400億円には、会社が「計画的な資産売却」と説明している分が含まれています。本業でどこまで伸びるかは、この見通しの数字だけからは切り分けられません。
③ 自己資本比率 → △
2024年3月期:17.9%
2025年3月期:21.5%
2026年3月期:26.9%
私の基準は「40%以上、または同業種平均以上で○」「20〜40%で△」。26.9%は△の範囲です。
重工業は同業比較で見るべき指標なんですが、同業平均の数字を持っていません。持っていないものを根拠に○へ上げるのは、判定を甘くするだけなので、ここは△のまま置きます。
ただし方向は明確です。2年で9ポイント改善しています。自己資本が2期で3,759億円から6,522億円まで増えました。
④ 手元資金(ランウェイ)→ ○
営業キャッシュ・フローは3期とも黒字(621億円 → 1,776億円 → 1,213億円)。手元の現金及び現金同等物は1,550億円です。
この項目は本来、赤字が続いている先行投資型の会社が「あと何年走れるか」を測るためのものなので、営業CFが黒字なら計算せずに○として流します。
ただ、この会社は素通りできない数字がありました。
EBITDAは2,156億円から2,418億円へ、262億円増えています。それなのに営業CFは1,776億円から1,213億円へ、562億円減っている。
差の一因が「PW1100G-JMエンジン追加検査プログラム関連支出」で、393億円 → 488億円と2期連続で出ています。利益として計上される数字と、実際に出ていく現金がずれているところは、④が○でも見ておく価値があると思います。

層1は ①○ ②○ ③△ ④○。×はゼロ。足切りにはかかりません。
ここまでは決算短信の1ページ目でほぼ判定できます。ここから先が、財務指標だけを見ていると絶対に届かない層です。
自分の持っている銘柄で、同じことをやるなら
この12項目をChatGPTに読ませて判定させる手順を、プロンプトごと1本にまとめています。層2から先が、まさにこの記事で書いていく部分です。
層2:ここで、危うく間違えかけました
⑤ 受注残 → ○。ただし中身を見ると話が違う
重工・防衛・プラントでは、受注残高が先行きを最も正直に示します。
受注高:1兆7,511億円 → 1兆9,547億円(+2,036億円)
受注残高:1兆4,873億円 → 1兆7,683億円(+2,809億円)
売上収益:1兆6,434億円
受注高が売上収益を上回り、残高も積み上がっている。基準を満たすので○です。
ここでセグメント別に降ります。
受注高が+2,036億円増えた。では、どこが増やしたのか。
資源・エネルギー・環境:3,703億円 → 6,247億円(+2,544億円)
社会基盤:1,504億円 → 1,332億円(△171億円)
産業システム・汎用機械:4,844億円 → 4,607億円(△236億円)
航空・宇宙・防衛:7,199億円 → 7,031億円(△168億円)

全社の増加分を上回る+2,544億円を、資源・エネルギー・環境が1社で作っていました。中身はアジア拠点EPCとカーボンソリューションの大型案件です。
そして主力の航空・宇宙・防衛は、受注高が減っています。
これが一過性であることは、会社の見通しに出ています。2027年3月期の資源・エネルギー・環境の受注高予想は3,600億円。前期の6,247億円から2,647億円の反動減です。全社の受注高が1兆7,600億円へ1,947億円減る見通しになっているのは、ほぼこれで説明がつきます。
判定は○のままです。受注残高は全社で+2,809億円積み上がっており、航空・宇宙・防衛も6,059億円 → 6,566億円と+506億円増えている。基準は満たしています。
ただ、「受注が伸びている」と一言で書いたら、それは事実と違うことになります。伸びたのは大型案件で、来期は反動で減る。ここを潰さないのが、セグメントまで降りる意味だと思っています。
⑥ セグメント別の利益構成 → ○。そして、この記事の核心
全社の営業利益は1,435億円 → 1,655億円へ、220億円の増益でした。
内訳です。
牽引した側
産業システム・汎用機械:108億円 → 307億円(+199億円)
その他:168億円 → 358億円(+190億円)
社会基盤:△42億円 → 37億円(+79億円・赤字から黒字へ)
足を引っ張った側
航空・宇宙・防衛:1,227億円 → 1,124億円(△103億円)
資源・エネルギー・環境:161億円 → 59億円(△101億円)

牽引が足枷を上回って全社は増益。○の形です。ただ、私の基準ではここで必ず「足枷は一過性か、構造的か」を1文で書くことにしています。○×を付けるより、この1文のほうが後で効くからです。
まず、資源・エネルギー・環境の△101億円から。
会社が営業利益の増減要因を8つに分けて開示していました。事業環境の変化+7億円、LCBの拡大+6億円、コスト構造の強化△63億円、為替△5億円、販管費+6億円、事業構造改革△100億円、その他+48億円。足すと△101億円で、開示されている減益額と一致します。

△100億円は、カーボンソリューションの海外事業を構造改革した費用でした。会社は2027年3月期に、このセグメントの営業利益を59億円 → 330億円(利益率1.6% → 8.5%)へ戻す見通しを出しており、その理由として「前期事業構造改革の反動」を挙げています。ここは一過性と読んでいいと判断しました。
問題は、もう一方です。
数字がぴったり合ったとき、いちばん危ない
航空・宇宙・防衛の△103億円。売上が954億円伸びているのに、利益が104億円減っている。
決算短信の注記を追うと、2つの数字が出てきます。
1つ目。この期から、航空・宇宙・防衛の管理部門費の一部を、売上原価から販売費及び一般管理費へ振り替える会計方針の変更をしています。これでセグメント利益が44億円減少。
2つ目。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの為替変動による影響が、前期は+9億円、当期は△50億円。前期比のスイングで59億円のマイナス。
44 + 59 = 103。
減益額と、ぴったり一致します。

ここで私は、こう書きかけました。「減益の全額が非事業要因で説明できる。事業そのものは悪くない」と。
書かなくてよかったと思っています。これは誤りです。
有価証券報告書に、会社自身の説明がありました。
営業利益は、防衛の拡大及び採算改善のほか、民間向け航空エンジンでのスペアパーツの販売増加や前期の貸倒引当金計上の反動はありましたが、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加などの影響により、減益となりました
事業側にも、プラスとマイナスが両方あるんです。防衛の拡大、スペアパーツの販売増、貸倒引当金の反動というプラス。整備費用の増加、研究開発費・販管費の増加というマイナス。
つまり、44+59=103が減益額と一致したのは、「事業要因が存在しない」からではありません。事業のプラスと事業のマイナスがほぼ相殺してネットがゼロに近くなり、その上に開示された非事業要因103億円がそのまま乗った、というのが実態に近い。
しかも「研究開発費等販管費の増加」には、1つ目の会計方針変更44億円が含まれている可能性が高い。管理部門費が販管費に移ったわけですから。そうなると二重に数えていることになり、きれいな増減分解はそもそもできません。
数字がぴったり合うと、それを因果の証明だと思ってしまう。
でも一致しているのは金額であって、因果ではありません。
私はAIに決算書を読ませて判定の下書きを作らせているんですが、AIが間違えやすい場所を数えているうちに、これが自分の間違えやすい場所でもあると分かってきました。検算では捕まりません。数字は全部実在するし、合計も合う。気づけたのは、有価証券報告書という別の資料の、別の箇所と突き合わせたときだけでした。
なので、⑥の結論はこう書きます。
牽引が足枷を上回って全社は増益。足枷は「事業の悪化」ではない。ただし「一過性」の一語では片付かない。
中身が3つに分かれるからです。
会計方針変更の44億円は、恒久的な水準の切り下げです。翌期以降も同じ基準で計上されるので、利益水準は下がったまま。前年比への影響が今期限りなだけ
PW1100G-JMの為替59億円は、毎期振れる変動要因。戻る保証はないし、逆に振れることもある
資源・エネルギー・環境の構造改革100億円だけが、真に一過性
そしてもう1つ、公平のために書いておきます。牽引した側にも一過性が混ざっています。産業システム・汎用機械の+199億円には運搬機械事業の譲渡益が、その他の+190億円には投資不動産の譲渡益が入っています。
「牽引は実力、足枷は一過性」という、自分に都合のいい対比にはしません。
⑦ 投資の方向 → ○
設備投資は「増えているか」だけでなく「どこに入れているか」まで見ます。
資本的支出の全社合計は974億円 → 976億円。増加率は+0.2%、売上比は5.99% → 5.94%と微減です。基準の「売上比で増加傾向」は満たしていません。
ところがセグメント別に降りると、こうなります。
資源・エネルギー・環境:81億円 → 72億円(減)
社会基盤:28億円 → 25億円(減)
産業システム・汎用機械:179億円 → 120億円(減)
航空・宇宙・防衛:386億円 → 490億円(+27.1%)
その他:167億円 → 125億円(減)

増やしたのは航空・宇宙・防衛だけで、残りは全部減らしています。全社の投資額に占める構成比は39.6% → 50.3%。半分を超えました。
総額はほぼ横ばい。変わったのは配分です。
判定は○にしました。基準の文言を厳密に取れば△なんですが、この項目の狙いは「金額が増えたか」ではなく「成長する場所に入れているか」なので、そちらを優先しました。基準を曲げた自覚はあるので、ここは注記として残します。
層2は ⑤○ ⑥○ ⑦○。
層3:外部環境。ここが12項目で一番手間がかかる
⑧ 国策・予算の裏付け → ○
2022年12月の安保3文書改定で、2023年度から2027年度までの5年間で総額43兆円の防衛費が決まっています。閣議決定済みで、金額も期間も明示されている。
ただし私の基準では、テーマに属しているだけでは○にしません。その予算が自社の事業に実際に流れる経路を、数字で説明できることを条件にしています。「防衛関連銘柄です」では足りない、ということです。
IHIの場合、決算説明資料にサブセグメント別の数字が出ていました。
防衛向け航空エンジン・装備品の売上収益:
2024年度:1,502億円
2025年度:2,121億円(+41%)
2026年度(会社見通し):3,000億円(さらに+41%)
2期連続で+41%です。経路は数字で追えているので○としました。
ただし、受注高は減っています。同じ防衛向けの受注高は3,205億円 → 2,644億円。会社は「前期の防衛の大型工事受注の反動」と説明しています。売上が伸びているのは、積み上がった受注残を取り崩している側面がある。
そしてもう1つ。43兆円の計画は2027年度が最終年度です。その先がどうなるかは、まだ決まっていません。
⑨ マクロ感応度 → ○
○×だけでなく「どの変数に、どっち向きに効くか」を必ず書きます。
為替。会社は2027年3月期の前提を145円/USDに置いています。前期の実績前提は151.09円だったので、円高方向に振った保守的な前提です。そして親切なことに、感応度も開示しています。
ドル円が1円動くと、営業利益が20億円動く
海外売上比率は51%。円安は利益にプラスに働く構造です。この記事を書いている2026年8月15日時点で、ドル円は159円台。会社の前提より14円ほど円安の水準にあります。
ここで「14円 × 20億円 = 280億円の上振れ」と計算したくなるんですが、やりません。感応度が14円分そのまま線形に効く保証はないし、為替は期中の平均で効くので、ある1日のレートだけでは決まらないからです。書けるのは「前提と実勢に開きがある」までだと思っています。
景気循環。重工なのでシクリカルですが、防衛は政府需要、民間航空エンジンのアフターマーケットは運航時間に連動するので、シクリカルの中にディフェンシブな層が入っている二層構造です。
金利。有利子負債はリース負債を含めて4,898億円。前期末から248億円減っています。
商品市況。重工は鋼材を使いますが、会社が前提価格を開示しているかは確認できませんでした。ここは「未確認」とします。
⑩ 需要ドライバーの持続性 → ○
この項目の判定は、1つの問いに答えられるかどうかで決めています。
3年後もこの需要が続く理由を、1文で説明できるか。
IHIの場合はこう書けました。
防衛は5年間43兆円という閣議決定された計画に紐づいており、民間航空エンジンは一度搭載されれば機体の寿命にわたって整備と部品の需要が続く。
会社も2027年3月期の増益要因の筆頭に「民間向け航空エンジンのアフターマーケット事業の拡大」を挙げています。一時的なブームや特需ではないので○です。
⑪ 参入障壁 → ○。ただし、ここは正直に書きます
航空エンジンは型式証明が要り、国際共同開発プログラムへの参画実績が要り、巨額の設備投資が要ります。防衛は防衛装備庁との取引実績と長期の認定が前提になる。そして一度エンジンが採用されれば、機体が退役するまで部品と整備を供給し続けることになるので、顧客側の乗り換えコストも極端に高い。
障壁の直接的な開示はないので、利益率で代替判定しました。セグメント別の営業利益率です。
航空・宇宙・防衛:17.3%
産業システム・汎用機械:6.8%
社会基盤:2.8%
資源・エネルギー・環境:1.6%
同じ会社の中で、ここだけ突出しています。壁の高さの証拠として使えると判断して○にしました。
ただし、推移は下がっています。22.1%(2024年度)→ 17.3%(2025年度)→ 15.1%(2026年度見通し)。
この低下は、⑥で見た非事業要因103億円を戻せば説明がつきます。1,124億円 + 103億円 = 1,227億円で、前期とちょうど同じ水準です。壁が崩れて利益率が落ちた、という話ではない。
でも、ここで止めると片手落ちです。
戻して「前期と同水準」ということは、増益ではないということでもあります。売上収益は954億円(+17.3%)伸びているのに、実質の利益は横ばいだった。
「壁は崩れていない」とは言えます。でも「壁が効いて利益が伸びている」とは、この期の数字からは言えません。
⑫ 地政学 → △
この項目は向きが両方あります。同じ緊張が、防衛には受注の追い風になり、部材の調達には逆風になる。だから必ず2つを記録します。売上の地域構成と、調達の特定国依存です。
売上の地域構成は、決算説明資料に出ていました。
日本:46% → 49%
北米:25% → 26%
アジア:16% → 11%
中国:6% → 6%
欧州:6% → 6%
その他:1% → 2%

中国比率が6%と小さいのが特徴です。国内比率が3ポイント上がっているのは、防衛の伸びと整合しています。
調達側は、有価証券報告書の「事業等のリスク」を見にいきました。書いてあったのは、こうです。
キーとなる主要部品を自社グループ内で製造するよう努めている
特定の調達先への過度の集中・依存を避けるべく、調達先の分散化等を進めている
方針は書いてあるけれど、国別の調達比率は開示されていません。なので「調達の特定国依存は不明」が結論になります。分からないものを、分かったことにはしません。
一方で、会社自身の事業環境の記述には、地政学が3つのセグメントすべてに出てきます。航空・宇宙・防衛では「中東情勢の悪化や中国における輸出規制などを背景に、地政学的リスクはかつてない速度で変化し、サプライチェーンの混乱や物価高騰などの影響が生じています」。産業システム・汎用機械では「中国によるレアアース輸出規制」。資源・エネルギー・環境では「エネルギー安全保障の重要性が高まっています」。
追い風(防衛予算、エネルギー安全保障、宇宙市場)と、すでに顕在化している逆風(中国の輸出規制によるサプライチェーンの混乱)が、両方ある。
×にするほどの依存は開示から確認できず、○と言い切るには会社自身が逆風の顕在化を書いている。両方あるので△としました。
12項目を並べた結果と、私の判断
層1|足腰
① 売上成長率 ○(3期CAGR +11.5%/直近期は+1.0%に減速)
② 営業利益率 ○(△5.3% → 8.8% → 10.1%)
③ 自己資本比率 △(26.9%・2年で9pt改善/同業平均は未確認)
④ ランウェイ ○(3期とも営業CF黒字)
層2|成長の実体
⑤ 受注残 ○(受注残 +2,809億円/ただし増加分は資源エネ環境の大型案件)
⑥ セグメント構成 ○(牽引が足枷を上回り全社+220億円)
⑦ 投資の方向 ○(総額横ばい・増額は航空宇宙防衛のみ)
層3|外部環境
⑧ 国策・予算 ○(43兆円/防衛売上が2期連続+41%)
⑨ マクロ感応度 ○(為替:円安が追い風・感応度20億円/円)
⑩ 需要の持続性 ○(5年計画+機体寿命にわたる整備需要)
⑪ 参入障壁 ○(利益率17.3%・他は1.6〜6.8%)
⑫ 地政学 △(追い風と逆風が両立/調達依存は開示なし)
○10/△2/×0。 層1の×はゼロで足切りにかからず、層3にも×がないので警告ルールも発動しません。

私の判断:継続保有。買い増しはしません。
○が10個ついた会社を買い増さないのは、我ながら歯切れが悪いなと思います。ただ、⑪で見た数字が引っかかったままなんです。
売上が954億円伸びて、非事業要因を戻した実質の利益は前期と同じ1,227億円だった。規模は確かに増えました。でもこの期の数字だけを見て「増えた規模が利益に変わった」とは言えない。会社は2027年3月期に営業利益2,400億円を見込んでいますが、そこには資産売却が入っています。本業がどこまで伸びたのかは、来期の数字を見ないと分かりません。
買い増すなら、それを確かめてからでいいと思っています。
そして、私がこの会社で一番怖いと思っているのはPW1100G-JMです。
営業利益には為替影響として2期連続で乗り、キャッシュには関連支出として393億円・488億円と出ていきました。損益とキャッシュの両方に、自分では金額をコントロールできないものが乗り続けている状態です。会社は「整備能力増強を図り、地上駐機数の低減に向けた対応を進めている」と書いていますが、いつ終わるとは書いていません。
12項目のどこにも×はつきませんでした。それでも私がこの会社をまだ買い増さないのは、たぶんこの一点です。
何がどうなったら、見方を変えるか
判定を出して終わりにすると、その判定が当たったのか外れたのかが分かりません。なので、確認する日と数字を先に決めておきます。
① 資源・エネルギー・環境の営業利益が、会社計画の330億円(利益率8.5%)に届くか
届かなければ、構造改革の費用で終わる話ではなかった、ということになります。つまり私の「一過性」という読みが外れたことになる。
② 航空・宇宙・防衛の営業利益が、会社計画の1,300億円に届くか
届けば、非事業要因を除いた実力は落ちていなかったと確認できます。
③ 防衛向け航空エンジン・装備品の売上が、会社計画の3,000億円に届くか
2025年度の2,121億円から+41%です。受注高が減っている中での計画なので、ここは特に見ます。
いずれも確認は四半期決算ごと。引っかかったときも、元の判定は消しません。「一過性だと思ったものが、実は構造的だった」が何回あったかを数えられるほうが、次の判定が良くなるからです。
12項目が当たったかどうかより、自分の見立てが当たったかどうかのほうが、長く効くと思っています。
この12項目、使ってみませんか
ここまで書いてきた12項目は、私が保有銘柄を判断するときに毎回通しているものです。
正直に言うと、手作業だとかなり重いです。決算短信と決算説明資料と有価証券報告書を行き来して、セグメントの注記まで降りて、数字を突き合わせる。今回のIHIも、資料は7本読みました。
なので、この作業をChatGPTにやらせる手順を、プロンプトごと1本にまとめています。決算書を貼り付けて、順番にコピペしていくと12項目の判定が出てくる形です。
そのなかに「AIが必ず間違える箇所」という一覧を入れているんですが、今回また1つ増えました。この記事で書いた、数字がぴったり合ったときにそれを因果だと思ってしまうというやつです。検算では捕まらないので、たぶん一番たちが悪い部類だと思います。
本記事は筆者自身の投資判断の記録・整理を目的としたものであり、特定銘柄の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行なってください。筆者はIHI(7013)株式を保有しています。

