タウンワークではなく、採用成功を売る新人営業の成果を2.6倍にした育成
タウンワークではなく、採用成功を売る——新人営業の成果を2.6倍にした育成設計
こんにちは!製造・建築・物流業の人事支援に強い株式会社Tsumuguの塔筋です。
採用した社員が思うように成果を出せなかったり、早期に退職してしまったりすると、「採用ミスマッチだった」と捉えられることがあります。
もちろん、本人の価値観や適性と、会社や仕事が合っていないケースもあります。
ただ、本当にすべてが採用の問題なのでしょうか。
今回は、私がリクルートに在籍していた頃に関わった、新人営業の育成プロジェクトについて書きたいと思います。
中途入社者を、どうすれば成果が出せる状態にできるのか
当時、私は同期と一緒に「育成プロジェクト」へアサインしていただきました。
与えられたテーマは、中途入社者6名が入社してから成果を出せるようになるまでを設計せよ、というものでした。
私たちが担当していたのは、タウンワークの営業です。
当時の営業組織には約200名が所属し、それぞれ担当するエリアが決まっていました。組織として追いかけていた大きな目標の一つが、新しく取引する企業数を増やすことでした。
では、新人が新規顧客を獲得できるようになるために、何を教えればよいのか。
商品知識なのか。電話のかけ方なのか。商談での話し方なのか。行動量なのか。周囲の雰囲気なのか。
必要なものはたくさんあります。
だからこそ私たちは、教える項目を増やす前に、実際に成果を出している営業の共通点を探すことから始めました。
売れている営業は、タウンワークを売っていなかった
成果を出している営業を見ていく中で、分かってきたことがありました。
彼らは、タウンワークへ掲載してもらうことだけをゴールにしていませんでした。
お客様が欲しいのは、求人広告そのものではありません。
求人広告は、人材を確実に採用できる商品ではありません。それでもお客様がお金を払うのは、必要な人材を採用し、事業や現場を前へ進めたいからです。
つまり、私たちが本当に提供するべき価値は、タウンワークへの掲載ではなく、お客様の採用成功でした。
成果を出している営業は、採用成功から逆算して、その企業に必要な情報や打ち手を伝えていました。
ここが、新人育成を考えるうえで大きな転換点になりました。
「お客様が知らず、営業が知っている情報」に価値がある
新規営業が、お客様以上にその会社のことを詳しく理解するのは簡単ではありません。
その会社がどのような歴史を持ち、現場でどんなことが起き、どのような人が活躍しているのか。会社のことについては、当然ながらお客様のほうが詳しいからです。
一方で、営業のほうが詳しくなれる情報もあります。
そのエリアでは、どこから通勤している人が多いのか
採用したい人材は、どこに住んでいるのか
その人たちは、仕事を選ぶ際に何を優先しているのか
周辺企業は、どのような条件や魅力を打ち出しているのか
同じ職種では、どのような募集が反応を得ているのか
といった、地域や求職者、採用市場に関する情報です。
営業とお客様が持っている情報を四象限で考えたとき、特に価値が高いのが、「お客様は知らないが、営業は知っている情報」でした。
お客様がすでに知っていることを説明するだけでは、「この人に任せたい」とは思ってもらえません。
自社だけでは把握できなかった採用市場や求職者の情報を持ち込み、自社の採用にどう影響するのかまで伝える。そこまでできて初めて、お客様は「この営業なら任せても大丈夫かもしれない」と感じてくれます。
これは、話し方のうまさだけでは生まれない信頼です。
採用成功から逆算して、教える内容に優先順位をつけた
そこで、育成の中心を「タウンワークを売れるようにすること」ではなく、採用成功から逆算した商談ができるようにすることに置きました。
商品について、すべてを同じ深さで覚えてもらうのではありません。
お客様の採用を成功させるために、
商談で何を確認する必要があるのか
どのような情報を事前に調べるのか
求職者の動きや市場をどう捉えるのか
お客様へ何を伝えれば、意思決定の助けになるのか
掲載後、どのように結果を振り返るのか
といったことを整理し、学ぶ内容に優先順位をつけていきました。
何を教えるかは、顧客が欲しい価値から逆算して決める。
この軸ができると、新人側も「なぜこれを覚える必要があるのか」を理解しやすくなります。
知識を覚えること自体が目的ではなく、その知識をお客様の採用成功にどう使うのかが見えるからです。
半年間で、新規獲得社数は前年新人の2.6倍になった
この育成を行った結果、半年間で新人が獲得した新規顧客数は、前年の新人と比べて2.6倍になりました。
もちろん、これは私一人の成果ではありません。
一緒に取り組んだ同期、育成を受け入れてくれた現場、そして成果を出していた営業が持つ知識や経験があったからこそ実現できた結果です。
ただ、成果を出している人のやり方を個人のセンスで終わらせず、共通点を見つけ、育成へ落とし込むことで、新人の成果にもつなげられたことは大きな経験になりました。
この取り組みは、リクルート社内で優れた取り組みを共有・表彰する「シェアナレッジ」にも選んでいただきました。
表彰式の頃には、私は直販営業から代理店渉外という代理店組織へ異動していたため、残念ながら参加できませんでしたが、今でも印象に残っている仕事の一つです。
育成で最初に決めるのは、教える内容ではない
この経験から学んだのは、育成で最初に決めるべきなのは、研修項目や教材ではないということです。
まず定義するべきなのは、顧客がその仕事にどのような価値を求めているのかです。
その価値を生み出すために必要な成果を決める。
成果を出すための行動を分解する。
その行動に必要な知識やスキルを整理する。
最後に、どの順番で教え、どのように実践してもらうかを設計する。
この順番が大切です。
反対に、顧客価値や成果が曖昧なままでは、商品知識、社内ルール、システムの使い方など、教えやすいものから研修へ詰め込まれていきます。
新人はたくさんのことを教わりますが、それをいつ、何のために使うのかが分からない。現場に出ても成果につながらず、本人も上司も「なぜうまくいかないのだろう」と疲弊していきます。
設計しただけで、人が動くわけではない
ただ、ここまで書くと、育成の仕組みを設計しただけで新人が成果を出せるようになったように見えるかもしれません。
実際には、そんなに簡単ではありませんでした。
新人営業は、日々お客様から断られます。思うように成果が出なければ、自分には営業が向いていないのではないかと不安になることもあります。
そのため、育成内容を設計するだけでなく、日々の声かけや振り返りも大切にしていました。
今、何につまずいているのか。
できるようになったことは何か。
本人はこの仕事を通じて、どうなりたいと思っているのか。
リクルートでは、本人がやりたいこと、できること、会社から求められていることを整理する「Will・Can・Must」という考え方がありました。
入社した当初から「お前はどうしたい?」と問われ続けます。
だからこそ会社が求める成果だけを一方的に押しつけるのではなく、その成果へ向かうことが、本人の意思や成長とどうつながっているのかを一緒に考えることも意識していました。
成果へ向かう道筋は、会社が設計する。
ただし、その道を実際に歩くのは本人なので意思を聞く。
だからこそ、正しい方向を示すだけでなく、本人の感情に寄り添いながら、前へ進めるように導く必要があります。
育成とは、正解を教えることではなく、その人が自分で正解にたどり着けるようにすることなのだと思います。
まとめ
すべてのミスマッチや早期離職を、育成だけで解決できるわけではありません。
本人の価値観や適性と、会社や仕事が合っていないことも当然あります。
ただ、「採用した人が活躍しない」という結果だけを見て、採用ミスマッチだったと判断するのは早いと思います。
その前に会社側が確認できることがあります。
その仕事で求める成果を、具体的に説明できているか
顧客が欲しい価値と、社員に教えている内容がつながっているか
成果を出している人の行動が、個人の感覚のままになっていないか
新人が成果へ近づく順番を設計できているか
入社後に実践し、振り返る機会が用意されているか
できる人を採用することも大切です。
同時に、採用した人が成果を出せる構造をつくることも、会社の責任だと思います。
採用基準だけを見直しても、ミスマッチはなくなりません。
入社後に何を成果とし、顧客へどのような価値を提供してもらうのか。そのために何を、どの順番で学んでもらうのか。
そこまでつながって、初めて採用は成功したと言えるのではないでしょうか。
私自身、この経験が現在のTsumuguで採用からオンボーディング、評価制度、管理職育成まで一貫して支援する原点の一つになっています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は以上です。
