無駄なものなどない
年齢を重ねるにつれムダ毛が増えた気がする。
そしてそれが気のせいではないことをほぼ確信している。
耳介から一本長いのが生えている。
眉毛も太くて長いのがニ本ほど生えている。
肩の背中側にも一本生えているらしい。
乳首にこんな毛、生えてたっけ?
鼻毛も長くなってきた気がする。切らなければいつまでも伸び続けるのではないかと不安だ。ついでに言うと、鼻毛に白髪が多くなった。
鼻毛カッターで鼻毛を短くすると、ホコリが入るのか、くしゃみが止まらなくなる。なるべくなら切らずにおきたいが、世間は許してくれない。
ある日、会社の女性社員が集まって何やら話していた。何かと思って聞いてみると、会社でのBBQの写真を見て盛り上がっていたようだ。
その写真には、ある男性社員の横顔が写っていた。よく見ると彼の鼻の穴からは大量の鼻毛が出ているではないか。
その鼻毛はあまりにも出ていた。習字で使う小筆の先くらい出ていた。まとまっていないボサボサの筆先のように出ていた。
まともじゃないくらい鼻毛が出ていたため、彼女たちは少し引いていた。
彼女たちは決して人の容姿を揶揄したりするような人たちではないが、そんな彼女たちでさえ無視できないほど、彼の鼻毛は確かに飛び出していたのだ。
私は戦慄した。
「ムズムズするのやーやーなのっ!」といって鼻毛を放置していたら、こんな事態になり得るのかと。
私は指で鼻をゴシゴシしながら、気配を消してその場から立ち去り、トイレの鏡で自分の鼻毛をすぐに確認した。
出ていない。いや、さっきゴシゴシした時にたまたま引っ込んだだけなのでは?実は今朝からずっと鼻毛が飛び出してて、彼女たちはそれを遠回しに伝えるためにあの写真を私が見るように仕向けてきたのではないか?……もしかしたら、そのあと鼻毛を気にしてトイレに駆け込むか否かを賭け事の対象にしていたのではないだろうか?(被害妄想)
ええい、ムズムズをやーやーしている場合ではない。
私はすぐに薬局で鼻毛ワックスを購入した。
「PayPay‼︎‼︎」と絶叫していた頃のスマホで鼻毛ワックスを買った。
絶叫で注目を集めておいて購入したものが鼻毛ワックスって、よく考えるとめちゃくちゃ恥ずかしい。でも鼻毛が出ている方が恥ずかしいのだ。女性陣に笑われる。
帰宅後、鼻毛ワックスを使って鼻毛を全摘した。
抜いたワックスの塊には、おびただしい数の鼻毛の残滓が刺さっていた。
鼻毛たちがつやつやと光っている。
それは私の鼻水ではなく、鼻毛たちの涙だった。
「さよなら…トヨフミ…」
鼻毛が語りかけてくる。
鼻毛くん、鼻毛くん、鼻毛くん…
私は一人一人の鼻毛に別れを告げた。
翌々日、風邪を引いた。
鼻毛がフィルターの役割をしてるって本当だったんだと、改めて実感した。
鼻毛は抜かずにカットでいいや。
