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"それっぽいAI資料"という社会問題

AIを導入した会社のマネージャーの方からよく聞く話があります。

NotebookLMを使い始めたのはいいけれど、なんだかふわっとして、何も言っていないスライドばかりが増えた。

見た目のきれいな資料を作ってきたメンバーに「ここ、なんでこうなってるの?」と聞いたら、「AIがそう言っていたので」と返ってきた。

提出された企画書がAIのアウトプット丸出しで、結局のところ何が言いたいのか、さっぱりわからない。

どれも、身に覚えがあるのではないでしょうか。

私は、「うねり」という研修や組織開発の会社を経営していて、大手企業の現場と日々やりとりしています。だからこそ、この「AIを入れたら、見た目だけそれっぽい資料が増えて、かえってコミュニケーションの効率が悪くなった」という現象を、あちこちで見かけます。

で、こういう事態が起こるのがなぜかを考えたいと思って記事を書いています。

なんでこういうことが起きるか。ひとことで言えば、思考と作業を切り分けられていないからです。

別の言い方をすれば、「見えない世界」の戦いができない人が、量だけを増やすおもちゃを手に入れてしまったから、とも言えます。

この話をきちんと理解するために、「そもそも、なぜ資料なんてものが必要なのか」というところから始めさせてください。

資料には、見えない世界と見える世界がある

急にお前どうした、ローランドかという感じなんですが、前提として。
世の中には、2種類の世界があります。

ひとつは、目に見えない世界。目的や原因、「そもそも何のためにこれをやるのか」という、思考の領域です。

もうひとつは、目に見える世界。手段や打ち手、実際のアウトプットの領域です。抽象的なWHATの世界と、具体的なHOWの世界、と言いかえてもいいでしょう。

やっかいなのは、目に見えない世界は、知らないと見えないということです。目に見える世界は、誰の目にも映ります。でも、その奥にある「なぜ」や「何を」は、意識しないと気付けない。

で、これが資料の話に直結します。ちょっとした例で考えてみましょう。

ここに、「レンガを積む」という仕事があるとします。

もしその人の仕事が「とにかく速く、キレイにレンガを積む」ことだけなら、目に見える世界だけで十分です。手を動かして、積む。それで成立します。

めちゃくちゃ極めたら、マジで重要な壁を作るときに絶対に欠かせない、機械ではできない丁寧な仕事ができる職人になれるかもしれません。それ、ステキっすね。

でも、世の中には、単純にレンガを積む以外の仕事があります。

これらはすべて、目に見えない世界を扱う仕事です。そして、目に見えない世界の仕事をしようとした瞬間に、資料が必要になります。

なぜなら、「分析」とか「戦略立案」みたいな抽象的な概念は目に見えない世界のものであり、目に見えないからこそ、よくわかんないから。そしてそういうよくわかんないものを扱って、いろんな人の合意を取る必要があるから。

資料に落とし込むことで、いろんな人と共通認識を作ることができます。

つまり、資料とは目に見えない世界と見える世界をつなぐインターフェースなのです。頭の中にある「なぜ」や「何を」を、人に見える「かたち」に変換する。そうしてはじめて、他人と一緒に考えられるようになるわけです。

この変換がうまくなると、人とお金を巻き込む大きな仕事ができるようになります。資料は、見えない構想を前に進めるための道具なのです。資料すげえ。もっと資料作ろうぜみんな。

見えない加工と、見える加工は、まったくの別物

さて、ここからが肝心です。

本質はあくまで、目に見えない部分にあります。目に見えるものは、それを見えやすくするための道具であり、メディア(媒介)にすぎません。見える世界に引き込んで、見えない世界の話をする。そのための道具が資料です。

で、昔はそもそも見える世界に引き込むこと、すなわち資料を作ること自体が大変だった。だから、目に見える世界に出てくるアウトプットはそれなりに誰かが苦心して作ったものであり、全くもって意味がわからない、見えない世界の話が何も進んでいないことって確率的に低かったのです。(まあ、全然ありましたけど)

しかし、AIが見える世界へ引き込む労力を圧倒的に下げてしまった。その結果、「見えない世界とつながっていない資料」が爆増しています。これが冒頭の「それっぽい資料」です。

AIは、膨らませるのはメチャ得意。けれど、収束させるのは苦手です。

箇条書きを3つ渡せば、それらしいスライドを10枚に膨らませてくれる。しかし、いつまで経っても増やすばかりで、最終版にしていいかどうかの判断はしてくれません。決めるのは人間の仕事です。

AIは、使い方を間違えると「情報の量だけをいたずらに増やすおもちゃ」になります。見えない世界の戦いができない人がこれを握ると、何も言っていない資料が、かつてない速さと枚数で量産されていく。これが、きれいな「だけ」の資料が増えることの正体です。

では、どうすればいいのか

だから、ふくらませる前にやるべきことがあります。答えはシンプルで、AIが出てくる以前から散々言われてきたことばかりです。

1. 思考と作業を分ける

まず「何を言うか(思考)」と「どう見せるか(作業)」を分けること。AIに渡していいのは、後者の作業の部分。思考までAIに丸投げした瞬間に、「AIがそう言っていたので」という答えが生まれます。(※スタンスをとって壁打ちして思考を深めるのはGOODですが)

2. 問いをデザインする

思考の質を決めるのは「問い」です。だからこそ、資料作成を依頼するマネジメント側が、メンバーに渡す問いをデザインする必要があります。「資料を作って」ではなく、「この資料で、誰の、どんな判断を変えたいのか」をパキッと明確にする。問いさえ良ければ、AIは強力な味方になります。

3. 短い箇条書きで勝負させる

レビューの場では、大量のアウトプットを見せて「仕事をした気」にさせないこと。むしろ、リアルタイムで、短い言葉を書いて勝負させる。きれいなスライドの束ではなく、3行の箇条書きで論点が言えるかどうか。そこに、その人が見えない世界を扱えているかどうかが、すべて表れます。

そのための「問いのフレームワーク」としては、次の3つがおすすめです。

キメヘン:聴き手(キ)・メッセージ(メ)・起こしたい変化(ヘン)で、アウトプットの目的を定義する。
QAR:Question・Answer・Reason で、聴き手目線の疑問(論点)を整理する。
あげよう:ありたい姿・現状・要因・打ち手で問題解決の全体像を整理する。

※うねりは、これらのフレームワークを人を動かす課題解決ストーリーの型「ウゴカタ」として体系的に整理しています。もう少し使い方を知りたい方はこちらの再生リストもどうぞ👇️

それっぽい資料に困っている人は、明日からのレビューから一つだけ変えてみてください。

  • 資料を見る前に、まず「この資料のキメヘンは何?(誰がどうなったら成功なの?)」と聞く。

  • 「資料の内容」ではなく「その資料で解消される聴き手の疑問」で指示する。

  • 「これは、未来のどういう状態をめざす話なのか」を聞く

その一手間が、きれいな「だけ」の資料と、人とお金を動かす資料の分かれ道になります。ぜひやってみてくださいまし。

うねりは、AI時代の働き方のニュースタンダードを定義し、より多くの人がポジティブに自分らしく成果を出せる働き方に気づき実行できる世界をめざす会社です。

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