報酬半額・受領拒否?フリーランス新法に対応する「業務委託基本契約書+個別発注書」実務ひな形
Slackで「バナーとLP、来週金曜までにお願い」と頼まれ、金額も修正回数も決めないまま納品したら「イメージと違う」で受領拒否、報酬は半額。これは相談事例として実際にあった話です。
チャットや口頭だけでやり取りしているフリーランスなら、明日は我が身だと感じたはずです。
実際に「業務 (ぎょうむ)の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書」でも書かれているように、「業務」という言葉ひとつとっても、その範囲や中身をきちんと定義しないまま使われることが多くあります。仕事の依頼も同じで、「何を」「どこまで」やるのかを言葉で固めておかないと、あとから解釈がいくらでもズレてしまうのです。

😰 Slackで発注、納品後に半額――これは他人事じゃない
私は普段、契約書のリーガルチェックや作成を専門にしています。年間で約1,000件、1日平均5件のペースで実務にあたっていますが、ある日の業務内訳はこうでした。
業務委託契約書および個別発注書(フリーランス新法対応版):2件
- 雇用契約書・労働条件通知書(就業場所・業務変更範囲の明示改訂):1件
- 育児・介護休業関連規程(2025年改正対応版):1件
- 秘密保持誓約書(退職時用):1件
この日相談を受けたのが、冒頭のバナー・LP制作のケースです。
発注企業からSlackで「バナーとLPをお願いしたい、納期は来週金曜」と言われ、フリーランスデザイナーが着手。金額、修正回数、支払い期日、どれも明確に取り決めないまま納品したところ、「イメージと違う」「社内事情で企画が流れた」という理由で受領拒否、報酬は半額に減額されました。
何をどこまで作れば合格(検収)なのか、証拠が何も残っていない。
これが一番の落とし穴です。口約束やチャットのやり取りだけでは、「言った・言わない」の水掛け論になった時点でフリーランス側が不利になりやすい構造があります。


📋 フリーランス新法が発注企業に義務付けていること
2024年に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注事業者に対して重い義務が課されています。
書面または電磁的方法による、直ちに取引条件の明示(給付内容・報酬額・支払期日など)
これが徹底されていれば、冒頭のようなトラブルはそもそも起きにくくなります。逆に言えば、発注書面を交わさない発注のやり方自体が、今の法制度とズレているということです。
2026年現在、この法律の定着が進むにつれて、発注側は「何を明示しなければ違反になるのか」、受注側は「どうやって自衛の発注書面を交わせばよいか」という課題感が、双方で非常に強くなっている実感があります。
書面がないことは、フリーランス側が泣き寝入りする一番の原因になります


🤝 「基本契約+個別発注書」がなぜ実務に向いているのか
継続的に取引がある相手であれば、毎回ゼロから契約書を作るのは非効率です。そこで実務でよく使われるのが、次の2段構えの方式です。
業務委託基本契約書:継続取引全体に共通するルールを定める
- 個別発注書(仕様書):案件ごとの条件をその都度サクッと確定する
基本契約で大枠のルールを一度決めておけば、案件が発生するたびに交わすのは発注書一枚で済みます。
スピード感を落とさずに法律にも対応できる、という点で、これは発注側・受注側どちらにとっても使い勝手の良い形です。

⚖️ トラブルを防ぐ9つの条項、何を決めておくべきか
基本契約書に盛り込むべき条項は、実務上おおよそ次の9つに整理できます。
目的・適用範囲(個別契約との関係性)
- 個別契約の成立(発注書・請書の交付要件)
- 納品および検収(みなし合格条項、7営業日ルールなど)
- 修正対応の制限(無料修正回数の上限、超過時の追加費用)
- 報酬および支払期日(原則納品から60日以内など)
- 知的財産権・著作権の帰属(報酬全額完納をもって権利移転)
- 秘密保持および個人情報保護
- 禁止行為・契約解除・損害賠償
- 管轄裁判所・協議事項
特に見落とされがちなのが「修正対応の制限」と「著作権の帰属」です。
無料修正の回数を決めておかないと、「気に入るまで無限に直させる」という状態になりがちですし、著作権は「報酬全額完納をもって移転する」という停止条件をつけておかないと、支払い前に権利だけ渡してしまうことになりかねません。
個別発注書のほうには、案件ごとに次のような項目を入力する欄を用意しておくと安心です。
発注日・納品期日・納品方法
- 委託業務・成果物の具体的仕様
- 報酬額および支払期日・振込先
- 無償修正回数の上限(例:〇回まで)
- 追加修正単価(例:1回あたり〇〇円、または1時間あたり〇〇円)
- 特記事項(キャンセル料規定など)
この項目さえ埋まっていれば、フリーランス新法が求める「取引条件の明示」はほぼクリアできます。


📝 入力するだけで法対応が完成する実務ひな形
ここまで話した9条項と発注書の入力項目は、そのまま実務で使えるドキュメントにまとめてあります。
本文で触れた「みなし合格条項」「修正回数の上限」「著作権の停止条件付移転」は、第1部の各見出しにそのまま条文として入っていて、個別発注書の入力項目も本文で挙げた6項目とすべて対応しています。
黄色ハイライト部分を書き換えるだけで、最短5分で法的に有効な書面が完成する構成です。
自分で条文を一から作る手間や、抜け漏れがあった時のリスクを考えると、既にトラブル事例をもとに作られたひな形を使うほうが、結果的に安く済むはずです。
契約書のひな形はフリーランス実務では相場7,980円ほどで取引されている領域でもあります。今回のドキュメントはそのまま実務投入できる完成版として用意しました。
Slackでの口約束から始まる仕事、来週も同じことが起きるかもしれません。その前に、一度書式だけでも整えておくことをおすすめします。
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