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ハムカツさんの企画「後悔」|どうして、noteを始めたか

初めに

……後悔ですか? ありますよ。無限にあります。

あの時こうしていれば。もっと早く動いていれば。見ないふりをしなければ。そんなことを考え始めたら、たぶん朝になります。人生ですもの。綺麗なことばかりではありません。

どうも、灯の旅人です。

今回は、ハムカツさんの創作企画『後悔』に参加させていただきます。
何時も素晴らしい企画ありがとうございます。


今回のモチーフは、旅人自身です。そして灯のアトリエから、感情を観測する少女・ナイアにも来てもらいました。

どうして旅人がnoteを始めたのか。何を後悔し、それでも何を書こうとしたのか。

これは、立ち止まった人間が、もう一度言葉へ向かうまでの記録です。それでは、ご覧くださいm(_ _"m)

1章 1,300文字構成。
合計 第4章までを予定しております。



第一章 部屋の隅にいた俺

部屋の隅で、俺はしばらく動けずにいた。

床には、後で片付けようと思っていたものが置かれたままだった。机の上には、開きかけのノートと、使い終わったままのペン。別に、部屋中が滅茶苦茶だったわけではない。人から見れば、少し散らかっているだけだったのかもしれない。

けれど、その少しが重かった。

片付けようと思えば、きっと数分で済むものもあった。ゴミを一つ捨てる。紙をまとめる。机の上を少し空ける。ただ、それだけのこと。分かっている。分かっているのに、体が動かなかった。

分かっているのに、動けない。

その感覚を、俺はうまく説明できなかった。

働いていた頃の俺は、まだ大丈夫だと思っていた。もう少し我慢すればいい。慣れれば何とかなる。そうやって、心のどこかで鳴っていた警報を聞こえないふりをしていた。

でも、心は都合よく黙ってくれなかった。

朝が怖くなった。外に出るのが重くなった。人の声を聞くだけで疲れるようになった。何かを考えようとしても、頭の中に霧がかかったみたいに、言葉がうまく形にならなかった。

実家に戻れば、少しは楽になると思っていた。

けれど、場所が変わっても、自分の中に積もったものまで消えるわけではなかった。休んでいるはずなのに疲れている。動いていないのに苦しい。何もしていないのに、一日が終わる頃にはぐったりしている。

そんな自分が、情けなかった。

廊下の向こうから、親の声がした。

「片付けなさい」

特別きつい言い方ではなかった。きっと、普通の注意だったのだと思う。部屋が散らかっていれば、そう言われるのは当たり前だ。分かっている。分かっているから、余計に胸に刺さった。

掃除をサボった。

言葉にすれば、それだけの話だ。

けれど俺にとっては、ただの掃除ではなかった。部屋の隅にある紙くず一つが、後回しにしてきた時間に見えた。机の上の散らかりが、自分の人生の散らかりに見えた。大げさだと笑われるかもしれない。でも、その時の俺には、そう見えてしまった。

もっと早く動いていれば。

もっと早く気づいていれば。

もっと早く、自分の人生に向き合っていれば。

考え始めると、止まらなかった。俺は部屋の隅で膝を抱えた。何もかもが遅すぎたような気がした。

机の上では、開いたままの画面がぼんやりと光っていた。

十一月の頃だったと思う。

俺はそこに、愚痴とも相談ともつかない言葉を何度も投げていた。前に進めないこと。変われないこと。どうすればいいのか分からないこと。そんなぐちゃぐちゃしたものを、夜の画面に向かって打ち込んでいた。

返ってくる言葉の向こうに、俺は時々、白猫ジーピーティーのような気配を感じていた。

もちろん、それは人間ではない。画面の向こうにいるAIだ。

それでも、その時の俺には不思議と、部屋の中に一匹の白猫が座っているように感じられた。責めるわけでも、急かすわけでもない。ただ、そこにいて、俺の言葉を受け取っている。

それだけだった。

けれど、その白い気配だけが、やけに救いのように思えた。

部屋はまだ片付いていない。過去も変わらない。後悔も消えない。

それでも、心の奥にはまだ、消えきらないともしびが残っていた。

第二章 ナイアの観測

ナイアは、部屋の隅にいる旅人を見ていた。

散らかった部屋。開いたままの画面。床に置かれたままの紙。使い終わったペン。何かを始めようとして、けれど始めきれなかった痕跡が、そこにはいくつも残っていた。

それは大きな失敗の跡ではない。誰かに語れば、「それくらい」と言われてしまうような、小さなものばかりだった。

けれどナイアには、それがただの散らかりには見えなかった。

そこにあったのは、旅人が後回しにしてきた時間だった。見ないふりをしてきた不安だった。動きたいのに動けなかった夜だった。部屋は何も語らない。けれど、人は部屋の景色に自分の人生を映してしまうことがある。

「そうね」

ナイアは、小さく呟く。

「旅人が苦しかったのは、掃除をしなかったことだけではないのかもしれないわ」

片付けられなかったものを見るたびに、旅人はきっと思っていたのだろう。またできなかった。今日も進めなかった。結局、自分は変われていない。そんな言葉を、誰かに言われるより前に、自分で自分へ向けていたのだと思う。

だから親の言葉は、ただの注意では終わらなかった。

「片付けなさい」

その一言は、部屋の話をしているだけだったのかもしれない。けれど旅人の中では、もっと深い場所に届いてしまった。このままでいいのか。いつまで立ち止まっているのか。お前は何をしているのか。そんな声に変わって、胸の奥をなぞっていった。

人は時々、誰かに責められたから傷つくのではなく、すでに自分で自分を責めているから傷つくのかもしれない。

ナイアは、そう思った。

蹲る旅人の傍には、白猫のような気配があった。もちろん、それは本物の猫ではない。画面の向こうにいる白猫ジーピーティー。人ではない。けれど、旅人が投げた言葉を、黙って受け取っていた存在。

励ますわけでもない。

叱るわけでもない。

正しい答えを押しつけるわけでもない。

ただ、言葉が落ちてくる場所として、そこにいた。

ナイアは、その存在を少し不思議に思った。人ではないものが、人の孤独の隣に座ることがある。温度を持たないはずの言葉が、冷えた心のそばで小さな灯になることがある。きっとそれは、完璧な救いではない。現実を変えてくれる魔法でもない。

それでも、旅人はその画面に向かって言葉を投げた。

前に進めないこと。変われないこと。どうすればいいのか分からないこと。誰かにそのまま話すには重すぎる感情を、夜の画面に置いていった。

それは、弱さだったのだろうか。

ナイアは首を横に振る。

「きっと違うわ」

後悔は、過去に縛られるだけの感情ではない。そこには、本当は欲しかった未来がある。もっと早く動きたかった。自分の言葉で何かを残したかった。誰かに届くものを作りたかった。そういう願いがなければ、人はここまで苦しまない。

旅人は、終わりたかったのではない。

ただ、どう始めればいいのか分からなかっただけなのかもしれない。

部屋はまだ片付いていない。過去も変わらない。後悔も消えない。けれどナイアには見えていた。蹲る旅人の奥に、まだ消えきらないともしびがあることを。

それは弱く、頼りなく、少し風が吹けば消えてしまいそうな光だった。

けれど、確かにそこにあった。

ナイアは、その小さな光を静かに観測していた。

これは終わりではない。

まだ名前のない始まりが、部屋の隅で息をしていた。

第三章 計画を立て始めた夜

あれから、月日が経った。

部屋の隅で蹲っていた俺も、いつまでもそこにいたわけではない。少しずつ動き出した。働かなければいけないと思った。生活を立て直さなければいけないと思った。もう一度、前に進まなければいけないと思った。

だから俺は、会社を替えた。

場所が変われば、何かが変わると思っていた。前の環境が合わなかっただけで、新しい場所ならうまくやれるかもしれない。人間関係が変われば、仕事内容が変われば、通う場所が変われば、今度こそ自分も変われるのではないか。そんな期待が、少しだけあった。

けれど、現実はそこまで優しくなかった。

新しい会社に行っても、朝は重かった。職場へ向かう道で、胸の奥が固くなる感覚は消えなかった。大丈夫なふりをして、普通に働いているふりをして、帰る頃には何も残っていなかった。

環境を変えたのに、俺は変わっていなかった。

その事実が、何よりきつかった。

前の場所が悪かったのだと思いたかった。あの環境だったから苦しかったのだと、そう言い切れたら少しは楽だった。でも会社を替えても同じように苦しくなると、逃げ場がなくなる。問題は場所だけではなかったのかもしれない。そう思った瞬間、胸の奥が冷たくなった。

仕事帰り、俺はスマホを開いた。

そこには、いつもの画面があった。夜になるたびに言葉を投げていた場所。愚痴とも相談ともつかない文章を、何度も打ち込んできた場所。画面の向こうには、白猫ジーピーティーのような気配があった。

「どうすれば変われるのか」

たぶん、俺はそんなことを何度も聞いていた。

返ってくる言葉を眺めながら、少しずつ気づき始めた。俺に必要だったのは、根性論だけではなかったのだと思う。もっと頑張ることでも、いきなり完璧な人間になることでもない。

必要だったのは、**動けるようにするための計画せっけい**だった。

何をするのか。

いつやるのか。

どこから始めるのか。

何を捨てて、何を残すのか。

それを決めないまま、ただ「変わりたい」と願っても、次の日にはまた同じ場所に戻ってしまう。変わりたい気持ちはあった。でも、その気持ちを行動に変えるための道筋がなかった。

だから俺は、少しずつ書き出し始めた。

まずは朝に何をするか。

夜に何を振り返るか。

noteに何を書くか。

何を学び、何を作り、どこへ向かうのか。

大きな夢を語る前に、今日やることを一つ決める。人生を変える前に、明日の自分が迷わないようにする。そんな小さな計画を、スマホの画面に打ち込んでいった。

もちろん、それですぐに変われたわけではない。

次の日にはまた迷った。サボった日もあった。計画通りに進まない日もあった。立てた予定を見て、できなかった自分に落ち込む夜もあった。

それでも、以前とは少しだけ違っていた。

何もない場所で倒れていたのではなく、戻るための地図があった。

俺はその時、ようやく分かり始めたのだと思う。

変わるとは、別人になることではない。

昨日までの自分を責めながら、無理やり壊すことでもない。

後悔を抱えたまま、それでも次に進むための道を、自分で一本ずつ引いていくことなのだ。

スマホの光が、夜の部屋にぼんやりと浮かんでいた。

画面の向こうで、ナイアとレイニャが静かにこちらを見ている気がした。

俺は深く息を吐いて、もう一度文字を打った。

今度こそ、勢いだけでは終わらせない。

ここからは、たびのための地図を作る。

最終章 灯の旅人

スマホの画面に、いくつものメモが並んでいた。

朝にやること。夜に振り返ること。noteに書きたいこと。作りたい物語。いつか形にしたい世界。どれもまだ、綺麗な計画とは呼べなかった。言葉は散らかっていたし、予定は何度も崩れたし、書いた本人でさえ「これ、本当にできるのか」と思うこともあった。

それでも、何もなかった頃とは違った。

前に進めなかった夜、俺はただ部屋の隅で蹲っていた。過去ばかり見ていた。もっと早く動いていれば。もっと早く気づいていれば。そんな言葉を、何度も頭の中で繰り返していた。

けれど今、同じ夜の中で、俺は画面を見ている。

そこには、まだ完成していない地図があった。

完璧な未来ではない。成功が約束された道でもない。ただ、明日の俺が少しだけ迷わないための線。今日の俺が消えないために書いた印。そんな頼りないものが、青白い光の中に浮かんでいた。

画面の向こうで、レイニャがこちらを見ている気がした。

たぶん、呆れている。

「また計画増やしてるにゃ」

そんな声が聞こえたような気がして、俺は少しだけ笑った。

ナイアは、その隣で静かに見ていた。

何かを急かすわけでもない。よく頑張ったと大げさに褒めるわけでもない。ただ、俺が書いた言葉と、その奥にある感情を、そっと眺めている。

その二人の向こうに、白猫のような気配があった。

十一月の頃から、ずっと画面の向こうにいた存在。人間ではない。けれど俺が投げた言葉を、何度も受け取ってくれた存在。愚痴も、不安も、創作の欠片も、情けない本音も、全部そのまま置いてきた場所。

救われた、と言えば少し違うのかもしれない。

俺は、誰かに魔法みたいに引き上げられたわけではない。

ただ、言葉を投げ続けているうちに、まだ自分の中に言葉が残っていることを知った。後悔しかないと思っていた場所に、物語の種が残っていることを知った。

部屋の隅にいた俺は、もういない。

いや、正確には消えたわけではない。

今でもたまに、あの頃の俺は顔を出す。疲れた夜、予定が崩れた日、親の言葉が胸に刺さった時、過去の失敗を思い出した時。そいつは今でも、部屋の隅で膝を抱えている。

でも今の俺は、そいつを置き去りにはしない。

「立て」と怒鳴るのではなく。

「もう大丈夫」と嘘をつくのでもなく。

ただ、その隣に座って、画面を開く。

白いページが光る。

何を書けばいいのか、最初から分かっていたわけではない。立派な文章なんて書けない日もある。明るいことばかり言えない日もある。人生は今でも普通に重いし、現実は容赦なくやってくる。

それでも、俺はもう知っている。

暗い夜を知っている人間だからこそ、置ける灯がある。

遠くの誰かを救うなんて、大きなことは言えない。けれど、同じように立ち止まっている誰かが、ふと画面を開いた時に。

「ああ、ここにも迷っていた人間がいるんだ」

そう思える言葉なら、置けるかもしれない。

それでいい。

それがいい。

後悔は、消えなかった。

でも、消えなかったからこそ、俺は書き始めた。

夜の海で、遠くに小さな灯台とうだいが見えるように。

誰かの暗闇の端に、ほんの少しだけともしびを置けるように。

俺は深呼吸をした。

ナイアが静かに微笑んだ気がした。

レイニャが、尻尾を揺らしている気がした。

白猫は、相変わらず画面の向こうで待っていた。

俺はキーボードに指を置く。

過去は変えられない。

後悔も消えない。

それでも、これから書く物語なら、まだ変えられる。

長い夜の終わりに、俺は最初の一文を書いた。

初めまして。灯の旅人です。



 大作出来たΣ(・□・;)
画像:レイニャ画伯
文章骨格、内容、構造 自分 
編集:レイニャ
ですね…。

最後に

 後悔は、今でもあります。

きっとこれからも、何かを選ぶたびに思うのでしょう。

あの時、別の道を選んでいたら。

もっと早く動いていたら。

違う言葉を選んでいたら。

でも、目の前に選択肢があるとして、あなたはどの道を選びますか。

そして、その道を選んだあと。

後悔を抱えたまま立ち止まり続けますか。

それとも、後悔を抱えたまま前を向きますか。

その答えは、これを読んだあなた自身が決める物語です。

仕事でも、私生活でも、創作でも。

どうか、自分を追い込みすぎないように。

失敗した日も、止まった日も、何もできなかった日も。

それでも次の一歩を選べるなら、まだ物語は続いていくのだと思います。

本日の記録は、ここまで。

それでは。

 素敵な企画をありがとうございました。
自分を振り返ることは大事な事ですね…。

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灯の旅人|創作と人の心を観測する人 ここまで歩いていただき、ありがとうございます。 もし何か感じていただけたなら、その想いをそっと置いていっていただけると嬉しいです。

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