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辞めたいのに言い出せない。それはあなたの弱さじゃない

「退職を言い出せない自分が情けない」。
そう感じている人に、ひとこと言わせてください。
それは、あなたの弱さではありません。
大切なのは、辞め方の体裁より、あなたが次に進めるかどうかです。

最近の報道を見聞きして、気になることがあります。退職代行サービスの利用者が急増しているのを受けて、「使う人は自業自得」「面倒なことを外注する癖がつく」という論調の記事が増えています。書いている側の言いたいことはわかります。でも、僕はその結論に、おごりを覚えます。

問うべきは「退職代行を使った人の甘さ」ではなく、「なぜそこまで追い詰められた人が出るのか」という、組織側の構造ではないでしょうか。
つまり、「辞めたい側が使っている」のではなく「会社側が使わせている」ということです。
退職を「言い出せない環境」が先にあって、代行サービスが使われています。順番を間違えてはいけません。

そして間違いなく言えることは、合わない場所で消耗し続けるより、別の場所で力を発揮するほうが、あなたにとっても、社会にとっても、会社にとっても、ずっといいことです。

僕はTrex(Tレックス)。肩書きは「AIブリッジエンジニア/WordPress公式プラグイン開発者」、IT企業を15年以上経営しています。起業前は、日常的に英語を使う職に就いており、上場企業の社長を250名超、直接取材してきました。一方、アフィリエイターとして20年以上、完全に1人で取り組んでいます。自己紹介ページ

この記事では、退職代行というテーマを「使う人の問題」ではなく、「使わざるを得ない状況を作る側の問題」として深掘りします。そして最後に、今まさに辞めたいと考えている方へ、エールを送らせてください。


🔥 退職代行は急増している。でも「自業自得」で片付けていいのか

数字から見てみます。マイナビの調査によると、直近1年間に転職した人のうち、退職代行を利用した割合は16.6%にのぼります。20代に限れば約2割。中途採用を行っている企業の4社に1社(23.2%)では、退職代行で辞めた社員がいたと回答しています。

2025年1月6日(仕事始めの日)には、退職代行サービス「モームリ」への依頼が前年比で倍増したという報告もありました。長期休暇中に「もう戻れない」と決断した人たちが、一斉に動いた結果です。この数字は、単なるサービスの流行ではなく、それだけ多くの人が「普通に辞められない」状況に置かれているという現実を示しています。

これを見て「最近の若者は根性がない」と一言で済ませるのは、あまりに単純すぎます。

退職代行を利用した理由を聞くと、「退職を引き留められた(引き留められそうだ)から」が最多で約41%。「自分から言い出せる環境でないから」が約32%。「退職を伝えた後トラブルになりそうだから」が約24%です。

重要なのはここです。上位の理由はすべて「個人の弱さ」ではなく、「職場の環境や組織の圧力」に起因しています。引き留めるのは会社です。言い出せない環境を作っているのも会社です。トラブルが起きそうという予測も、過去の職場の行動から来ています。なのになぜ、責任の矢印が「使った人」だけに向くのでしょうか。

❓ 「自分で言えない」のは弱さなのか。構造を見てほしい

退職を告げることが、なぜこんなにも難しいのか。経営者側の立場で正直に言います。「辞める」と言い出しにくい職場を作っているのは、経営者や上司です。

引き止め圧力、「裏切り者」扱い、退職届を受け取らない、連日の面談攻勢。こうした行動が横行している職場では、退職を告げること自体が戦いになります。メンタルを限界まで削られた状態で、さらに上司と対峙する体力が残っているかどうか。そこを抜きに「自分で言うべきだ」と外側から言うのは、現実を見ていないと思います。

パーソル総合研究所の調査では、退職代行利用者の前職への不満として最も多いのが「直属上司との関係」(約7割)。ハラスメントを受けたと答えた人も約4割にのぼります。これは「コミュニケーションが苦手な若者」の話ではなく、職場における関係性の崩壊の話です。

退職を「言い出せない環境」が先にあって、代行サービスが使われる。順番を間違えてはいけません。個人の成熟度ではなく、組織の健全性の問題として捉え直す必要があります。

👔 経営者として見てきた「辞めさせない文化」の正体

IT企業を15年以上経営してきた中で、採用と離職については何度も向き合ってきました。社員が辞めるたびに、「なぜもう少し早く言ってくれなかったのか」と自問することがあります。そして気づいたのは、「言えなかった」のには、こちら側の問題が大きいということです。

辞めにくい職場というのは、意図して作られる場合と、無意識に形成される場合があります。どちらにしても、共通するのは「辞める=裏切り・根性無」という空気です。辞意を伝えた瞬間から態度が変わる上司、「お前のせいでチームが回らなくなる」と責任を押しつける先輩、引き継ぎが終わるまで退職させないという慣習。こういう文化の中では、「辞めたい」という気持ちを持つこと自体に罪悪感が生まれます。

取材した多くの経営者に共通していたのは、「人が辞めるのは会社の責任だ」と言える人と、「最近の若者は根性がない」で片付ける人の二種類がいるということです。前者のほうが、長期的に見て組織が強く、離職率も低い傾向がありました。「辞めた人間が悪い」という経営者の会社は、また次の社員が同じ理由で辞めていく。そのループを静かに繰り返していました。離職率が高い組織の問題は、辞めた社員ではなく、辞めさせ続けた会社側の文化にある。

退職代行の増加は、ある種の鏡です。使う人が増えているということは、それだけ「普通に辞められない職場」が増えているということ。それを個人の問題に帰着させている間は、組織は変わりません。

📊 データが示す逆説。退職代行を使う人は「協調性が高い」

「退職代行を使う人=無責任で身勝手」というイメージを持っている方に、ひとつデータをお伝えします。

パーソル総合研究所の調査によれば、退職代行を利用した人は一般的な離職者に比べて、チームワーク志向が強い傾向が見られました。前職に対して「申し訳なさ」を感じていた人が多く、「自分を裏切り者だと感じている」という回答も少なくありませんでした。

つまり、退職代行を使う人の多くは「どうせ辞めるからどうでもいい」という人ではなく、「自分が辞めることで迷惑をかけることへの罪悪感があるのに、それでも心身が限界で直接言えない」という人たちです。むしろ責任感が強いからこそ、「普通に辞める」という選択肢すら取れなくなっている。

さらに同調査では、退職代行利用者は「職場に相談できる相手がいない」という孤立度が高いことも示されています。一人で抱え込んで、追い詰められて、最後の手段として選んだ。それが実態に近いのではないでしょうか。

退職代行を「身勝手な外注」と見るか、「追い詰められた末の緊急避難」と見るか。データが指し示す実態は、後者に近いと思います。

💡 本当に問うべきは「使う側」か「使わせる側」か

退職代行を「使う人が悪い」という話と、「使わざるを得ない状況を作った組織が悪い」という話は、本来セットで語られるべきです。でも、メディアの論調はどうしても前者に偏りやすい。被害者(?)である会社側の視点で書いたほうが、記事として刺さるからかもしれません。

経営者として正直に言います。退職代行を使われた会社は、まず自分たちの組織を疑ってほしい。「なぜ普通に辞められない職場になっていたのか」という問いから逃げないでほしい。退職代行を使う側の個人のスキルや根性の問題に矮小化した瞬間、組織は何も変わりません。退職代行サービスの需要が増えているということは、それだけ「普通に辞められない職場」が増えているということです。

もちろん、退職代行を使う側にも考えてほしいことはあります。「気まずいから」「怒られたくないから」だけが理由であれば、その選択がキャリア形成にとって損な面もあります。ただ、それは「自業自得」という言葉で片付けることではなく、「次にどう動くか」を自分で引き受けることの話です。

✉️ 今、辞めたいと思っているあなたへ

この記事を読んでいる方の中に、今まさに「辞めたいけど言い出せない」と思っている方がいるかもしれません。そういう方に、伝えたいことがあります。

辞めたいと思うことは、弱さじゃない。限界まで頑張った結果として出てきた、あなたの正直な気持ちです。

「辞めたい」という感情を持つことに、罪悪感を抱く必要はありません。人には、合う職場と合わない職場があります。続けることが美徳ではなく、続けることが自分を壊すこともある。それに気づいた自分を、責めないでください。

どうやって辞めるかは、状況によります。自分で伝えられるなら、それがベストです。でも、それが本当に難しい状況であれば、外部の力を借りることは選択肢のひとつです。大切なのは、辞め方の体裁より、あなたが次に進めるかどうかです。

IT業界に長年身を置いてきた僕が見てきた中でも、転職や退職を経て、のびのびと活躍し始めた人を何人も知っています。合わない場所で消耗し続けるより、別の場所で力を発揮するほうが、あなたにとっても、社会にとっても、ずっといいことです。

辞めることは終わりではありません。次の始まりです。あなたが「辞めたい」と思っているなら、その気持ちに正直であることを、どうか恐れないでください。

一つだけ、具体的なことを伝えます。退職を決意したら、まず自分の状況を整理してください。パワハラや違法な長時間労働が背景にあるなら、自力での退職交渉は危険なこともあります。そういうときは、労働組合や弁護士が運営する退職代行を使うことが、自分の権利を守るための正しい選択です。一方、そこまで深刻ではないけれど「どうしても直接言い出せない」という場合は、できれば自分の言葉で伝えることを試みてほしい。うまく言えなくていい。泣いてもいい。「辞めます」のひと言が出れば、それで十分です。

あなたの人生を守れるのは、最終的には自分だけです。辞めたいと思っている今この瞬間、あなたはすでに何かに気づいています。その気づきを、大切にしてください。

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