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1億円でも売れ残る|首都圏マンション初の1億円台、契約率低下と在庫増が示す上限|07/25-日本経済

🔑 このニュースの要点

不動産経済研究所が発表した2026年上半期の首都圏新築マンション平均価格は1億135万円となり、上半期として初めて1億円を超えた。前年同期比13.1%の上昇だ。一方で初月契約率は64.8%に下がり、販売在庫は6,389戸へ増えている。値上がりと売れ行きの鈍りが同時に進む、この数字の意味を整理する。

🎯 ここがポイント

平均1億円超えは買える人が増えた証拠ではなく、建築費と用地不足が価格を押し上げた結果である。

※図解はデータを基にTrexが作成

📌 初の平均1億円超えの裏で契約率は下がり在庫は増えた。価格が需要の上限に触れ始めている


📊 何が起きたのか。上半期の平均が初めて1億円を超えた

不動産経済研究所が7月21日に発表した2026年上半期の首都圏(1都3県)新築分譲マンション市場動向で、1戸当たりの平均価格が1億135万円となった。上半期として初めて1億円を超えた水準だ。

前年同期比では1,177万円、率にして13.1%の上昇になる。1平方メートル当たりの単価も151.4万円へ12.1%上がり、こちらも上半期の最高値を更新した。

平均価格と単価がそろって最高値というのは、2年連続の上昇の結果である。1年前の上半期は8,958万円、2年前は7,677万円だった。2年で2,458万円、率にして3割ほど上がった計算になる。

ここまでは「値上がり」の話として広く報じられた通りだ。ただ、同じ発表資料の別のページには、値上がりだけでは説明のつかない数字が並んでいる。

🏗 上がった理由は、買い手ではなく作り手の側にある

価格が上がる理由は、大きく二つに分かれる。買いたい人が増えて競り上がる需要側の理由と、作るのにかかるお金が増えて値付けが上がる供給側の理由だ。

今回の上昇は、後者の色が濃い。共同通信の報道では、人手不足と資材価格の上昇による建築費の高騰が影響したと整理されている。売り手が強気になったというより、原価が先に上がっている。

建設物価調査会が公表する建築費指数でも、東京の集合住宅(鉄筋コンクリート造)は2015年の平均を100として140台に乗っている。10年で4割超という水準だ。

もう一つの要因が用地不足である。東京23区でマンションを建てられる土地が細り、事業者は都心に近い周辺エリアへ出ていく。その周辺エリアの地価も上がるという連鎖が起きている。

原価が上がった分は、そのまま販売価格に乗る。平均1億円という数字は、買える人が増えた印ではなく、この値段でなければ供給できなくなったというコスト側の事情を映している。

📉 売れ行きは鈍っている。契約率64.8%と在庫6,389戸

では買い手はついてきているのか。それを測るのが初月契約率だ。発売した月のうちにどれだけ契約が決まったかを示す割合で、業界では70%が好不調の分かれ目とされてきた。

2026年上半期の初月契約率は64.8%だった。前年同期の66.6%から1.8ポイント下がり、上半期としては3年連続で60%台にとどまっている。

累積契約率も75.8%と、前年同期の77.9%から2.1ポイント下がった。発売直後に限らず、時間をかけても売れ残る割合が増えているということだ。

在庫の数字も同じ向きを指す。6月末の販売在庫は6,389戸で、前年の6,026戸から363戸増えた。2年前の5,418戸、3年前の4,951戸と並べると、3年で3割近く積み上がっている。

値段が上がり、売れ行きが鈍り、在庫が増える。この三つが同時に起きているとき、価格は需要に引っ張られて上がっているのではなく、需要の上限に近づきながら上がっていると読むのが自然だ。

🗾 「平均1億円」の中身は、エリアで大きく割れている

平均という言葉は便利だが、地域ごとに分解すると景色が変わる。東京23区の平均は1億4,249万円で、前年同期比9.1%の上昇。上半期としては4年連続で1億円台に乗せている。

上げ幅が最も大きかったのは千葉県で、8,997万円と56.8%も上がった。船橋市で高額物件の販売が始まったことが効いている。神奈川県も8,346万円へ20.0%上がった。

一方、埼玉県は6,469万円で1.3%の下落だった。供給戸数も27.0%減っている。同じ首都圏でも、上がる県と下がる県が並存している。

つまり首都圏の平均1億円は、全域が一律に1億円になったという意味ではない。都心と、都心に近い周辺エリアの高額物件が平均を押し上げた結果である。

自分の生活圏の相場を知りたいなら、首都圏平均ではなくエリア別の数字を見た方がいい。平均は市場の温度を測る道具であって、個々の物件の値札ではない。

🔻 土台にあるのは、市場そのものの縮小

見落とされがちなのが、供給戸数の少なさだ。2026年上半期に発売されたのは7,989戸で、前年同期から0.8%減った。上半期としては5年連続の減少になる。

1万戸割れは3年連続で、コロナ禍の2020年(7,489戸)以来の低水準だ。過去最多だった2000年の4万6,816戸と比べると、6分の1にまで縮んでいる。

供給が絞られれば、売り手は無理に安く出す必要がない。少ない在庫を高い値段で回す市場になり、価格は下がりにくくなる。今の高値は、この構造の上に乗っている。

変化の兆しもある。定期借地権付きの物件が886戸と、前年同期の634戸から大きく増えた。年間で2,000戸を超える可能性も指摘されている。

定期借地権付きは土地を借りる形にして価格を抑える仕組みだ。所有権より安く出せる代わりに、期限が来れば返す前提になる。売り手が価格の壁を回避しようとしている表れとも読める。

💴 もう一つの重し。金利が上がり始めている

買い手側には、もう一つ逆風がある。日銀は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げた。31年ぶりの水準である。

これを受けて大手銀行は短期プライムレートを0.25%引き上げた。改定日は8月3日で、新規に借りる人は8月3日以降の融資実行分から新しい金利が適用される。

すでに変動金利で借りている人にも影響は及ぶ。多くの銀行は年2回金利を見直すため、8月の改定は10月1日の基準金利に反映され、11月の返済分から適用される流れになる。

価格が上がり、同時に借入コストも上がる。買い手が同じ収入で買える金額は、両方から挟まれて縮んでいく。契約率の低下は、この挟み撃ちの結果として説明がつく。

🔭 この先はどうなるのか

不動産経済研究所は、下半期(7〜12月)の供給を1万4,000戸と見込んでいる。前年同期比では0.7%増で、年間では約2.2万戸になる見通しだ。

7月以降は東京23区や千葉県で大型案件の販売が始まる。23区では大規模な定期借地権付き物件も控えているという。

同研究所の松田忠司上席主任研究員は、秋に多少価格が落ち着いたとしても、首都圏で1億円に近い水準で推移する可能性は十分にあると指摘している。

高値が崩れるとしたら、きっかけは需要側になる。契約率の低下と在庫の増加は、その手前で起きる変化として観察に値する。数字は毎月更新されるので、追う手がかりはある。

🔍 Trexはこう見ている

この発表でいちばん面白いのは、見出しになった1億円ではなく、その脇に並んだ契約率と在庫の数字だと思う。値段は売り手が決められるが、契約率と在庫は買い手が決める。

データを扱う立場から言えば、価格は「提示された数字」で、契約率は「受け入れられた数字」だ。両者が逆向きに動いているとき、提示側だけを見て市場を語ると読み違える。

15年のIT企業経営でも、値上げした直後は売上が伸びて見えることがあった。だが受注率が静かに落ちていれば、伸びは在庫や失注として遅れて表面化する。順序としては受注率が先に動く。

いまのマンション市場は、価格という遅い指標と、契約率という速い指標が食い違う局面に見える。どちらが正しいかではなく、どちらが先に動く指標かを知っておくと、ニュースの読み方が変わる。

ただし留保もいる。契約率の低下は「売れなくなった」ではなく「高い物件の割合が増えた」ことの反映かもしれない。一つの指標で断定せず、供給戸数・在庫・エリア別を並べて見るのが安全だ。

💡 今日のアクション

  1. 平均価格だけでなく契約率と在庫を並べて見る:不動産経済研究所の発表資料は無料で公開されている。価格のページだけでなく、契約率と販売在庫のページにも目を通す習慣をつける。

  2. 自分の生活圏のエリア別数字を確認する:首都圏平均ではなく、東京23区・都下・神奈川・埼玉・千葉のどれが自分の相場かを見る。同じ発表でも県によって上昇率は大きく違う。

  3. 金利の改定スケジュールを手元で押さえる:変動金利で借りている場合、短期プライムレートの改定がいつの返済分から反映されるかを、取引銀行の告知で確認しておく。

🔗 参考リンク

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