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あえて「自社の未熟な部分」をさらけ出す。CxO経験者を惹きつける会社に必要な要素とは?【イベントレポート】

「CxOや事業責任者クラスの方を採用するためのノウハウ」を提供するオンラインイベント「採用担当者必見|CxO経験者を惹きつける会社に必要な要素とは?」を、2026年5月13日に開催いたしました。

イベント前半では、株式会社UPSIDER 支払い.com 事業部 CTOの赤沼 寛明氏と株式会社トリビュー VP of Business Growthの下永田 真人が、自分自身の転職経緯をもとにセッションを発表。イベント後半では、ファインディ株式会社 Findy転職事業部 カスタマーサクセス マネージャーの小堺 友介氏がモデレーターを務め、赤沼氏と下永田をスピーカーにパネルディスカッションを行いました。今回はイベントのレポートをお届けします。

株式会社UPSIDER 支払い.com 事業部 CTO 赤沼 寛明氏

UPSIDERの赤沼氏は前職のユニファ株式会社で、取締役CTOとして約10年間にわたり組織を牽引してきました。そんな赤沼氏はなぜ、新しい環境での挑戦を選んだのでしょうか。自身の体験をもとに、ハイレイヤー層が求めている環境について語りました。

かつて、ユニファ株式会社の1人目の正社員エンジニアとして入社した赤沼氏は、ゼロからプロダクトと組織を作り上げ、2年目には取締役CTOに就任しました。組織の拡大とともに、赤沼氏の役割も大きく変遷しました。

当初は自らコードを書き、システムの運用をする「現場100%」の状態でしたが、マネジメントに専念して徐々に現場から離れていきました。当時の判断は組織運営として合理的でしたが、赤沼氏の心の中には少しずつ違和感が蓄積していったといいます。

その違和感の正体は、技術やプロダクトに対する「解像度の低下」でした。CTOとして経営会議で意思決定を求められる際、システムの仕様や課題をメンバーに聞かなければ判断できない状況が増えていきました。「経営と現場の仲介役に徹している」という感覚が強まっていったのです。

特に直近1〜2年のAI技術の爆発的な進化は、赤沼氏の危機感を決定的なものにしました。40代後半という年齢を迎え、技術の解像度が低いままマネジメントの延長線上に居続けることは、エンジニアとしてのキャリアにおいてジリ貧になるのではないか。こうした切実な危機感から、赤沼氏は「次の10年」を託す新たな挑戦の場を探し始めました。

転職にあたり、赤沼氏が掲げた軸は4点ありました。「1.社会貢献性の高いドメイン」「2.事業の成長余地と技術的チャレンジの両立」「3.事業ドメインの大きさ」「4.手を動かしながらも経営視点を活かせる環境」です。これらの条件に合致したのが、UPSIDERの支払い.com事業部でした。

当時の同事業部は、立ち上げから日が浅く、組織規模もまだ小さいフェーズ。特にシニア層のエンジニアが不足しており、赤沼氏がプレイヤーとして直接開発に関与する余地が大いにありました。シリーズDというレイターフェーズにありながら、実態は「やれることだらけ」のスタートアップらしさが残っているギャップも、大きな魅力に映ったといいます。

選考プロセスにおいても、UPSIDERの姿勢は赤沼氏の心を動かしました。特に印象的だったのが「One Day UPSIDER」と呼ばれる選考フローです。丸一日チームに参画し、実際の課題に対して設計の議論やモブプログラミングを行い、ランチタイムも共に過ごします。このプロセスを通じて、チームの雰囲気や技術的な課題の解像度が飛躍的に高まりました。

※「One Day UPSIDER」は2025年に実施していた選考フローです。

さらに、オファー後には事業部のリーダー2人から、赤沼氏を必要とする理由が綴られた熱意ある「手書きのメッセージ」を受け取りました。また、カジュアル面談から数えて合計十数回に及ぶ接点を持つなど、徹底して人と向き合う同社の姿勢が、入社の決め手となりました。

赤沼氏は自身の経験を振り返り、CxOクラスの優秀層を惹きつけるために企業が備えるべき要素を6つのアクションとして提言しました。

第一に、候補者が抱えている「前職での違和感」を丁寧に引き出すことです。「本当は何に時間を使いたかったのか」という本音に寄り添うことが、対話の起点となります。第二に、単なる「役職」の提示ではなく、期待する「役割」を設計してオファーすること。

第三に、「任せることと、現場を離れることはイコールではない」というスタンスを共有すること。第四に、IC(Individual Contributor)とマネジメントの割合は固定ではなく、状況に応じて変動する「グラデーション」であることを前提とした役割設計を行うこと。赤沼氏のように、マネジメントに携わりつつも、自身も現場に深くコミットする働き方を望むCxO経験者は少なくありません。

第五に、「AI時代におけるキャリアの持続性」を共に考える視点です。技術革新が激しい現代において、現場感覚を失うことへの恐怖はハイレイヤー層共通の悩み。入社することで本人のキャリアがどう広がるかを具体化することが重要です。

そして最後に、「自社のリアルな課題を共闘関係で語る」こと。完成された組織をアピールするのではなく、未完成ゆえの課題をさらけ出し、「あなたの力が必要だ」と伝える泥臭いアプローチが、プロフェッショナルの心を動かすのです。

株式会社トリビュー VP of Business Growth 下永田 真人

トリビューの下永田はこれまで、新卒で入社したリクルートでの12年間にわたる事業企画・PMM経験を皮切りに、ミスミではマーケター、Ed Techのエナジードでは取締役COO、婚活・恋活イベントプラットフォームのオミカレでは代表取締役を歴任してきました。下永田が「人生の次なるフェーズ」を託す場所としてトリビューを選んだ理由には、産業創造への強い情熱と、経営層との相互理解のプロセスがありました。

下永田が転職において最も重視したのは、携わる事業が「産業として勃興期にあり、発展の余地があるか」という点でした。前職のEd Techや婚活・恋活領域での経験を通じ、下永田の関心は「日本における新たな産業をどう創造し、成長させていけるか」という点に集約されていきました。

美容医療市場は現在、約9000億円規模まで成長し、若年層女性だけでなくミドル層や男性へと裾野が広がっています。一方で、情報の非対称性が大きく、まだ未成熟な部分も多い業界です。下永田は、かつての人材ビジネスやマッチングアプリがそうであったように、世の中から「怪しい」と疑われるようなフェーズから、対話を通じてルールを整備し、社会に不可欠なインフラへと昇華させていくプロセスに、強い魅力を感じたといいます。

企業選びの具体的な軸として、下永田は3つの要素を挙げました。1つ目は、事業の根源にある「人の欲望」です。人が何を望み、どうワクワクするかというポジティブなエネルギーに溢れた市場であること。2つ目は、需要と供給の両面に深く関与できる「2サイドプラットフォーム」としての産業創造ポテンシャル。そして3つ目が、経営陣との相性です。

下永田は、トリビュー代表の毛や取締役CTOの小尾との対話を通じ、彼女らが持つ「執念」に近い意志の強さを感じ取りました。美容医療の領域において、10年間にわたり地道に口コミや症例写真を集め続けてきた愚直な姿勢があります。その一方で、事業の停滞を打破するために周囲の意見を受け入れ、アクションを変容させる「素直さ」を併せ持っている。この「意志」と「素直さ」が、自身の価値観と強く共鳴したことが、参画の大きな動機となりました。

選考プロセスにおいて、下永田のエンゲージメントを決定づけたのは、トリビューが実施したワークサンプルの質の高さでした。特筆すべきは、情報の圧倒的な透明性です。NDA(秘密保持契約)を締結した上で、全社のキックオフ動画や戦略資料、PL、KPIに至るまで、入社前には通常開示されないような生々しいデータがすべて共有されました。

この徹底した情報開示は、候補者側の解像度を極限まで高めるだけでなく、「膨大な情報から本質的な課題を抽出し、取捨選択する」というCxOクラスに不可欠なスキルを見極める場としても機能しました。

提示されたお題も、入社後に直面するであろうリアルな課題に直結したものであり、戦略ストーリーの構築から具体的なKPI設計まで、実戦に近い形でのアウトプットが求められました。このプロセスを通じて、双方は「I(私)とYou(あなた)」という対峙関係から、「We(私たち)」として課題を解決する関係性へとシフトしていったのです。

さらに下永田は、CxOやVPといったハイレイヤー層こそ、入社後のオンボーディングが重要であると説きます。どれほど高い専門性を持っていても、ドメイン知識が不足していれば、力を発揮できません。入社直後の早い段階で、ユーザーやクライアントの声に直接触れ、事業やプロダクトの解像度を上げることが、その後のパフォーマンスを左右します。

また、企業規模に応じた「求められる能力」の違いも意識すべきポイントです。もし仮に、リソースを活用することに長けた人材が、リソースそのものをゼロから調達しなければならないフェーズに飛び込む場合、そのギャップを丁寧に擦り合わせる必要があります。これらを怠ると、CxOは創業者の単なる「下位互換」のマネージャーに収まってしまい、本来期待されていた相互補完によるレバレッジが利きません。

下永田の事例は、ハイレイヤー採用の本質が「条件の提示」ではなく、「徹底した情報の開示」と「リアルな課題に対する共闘プロセスの設計」にあることを示しています。企業側の誠実な姿勢こそ、百戦錬磨のプロフェッショナルが「この場所で、この仲間と共に戦いたい」と決断するトリガーになるのです。

パネルディスカッション

イベントの後半パートでは、ファインディ株式会社の小堺友介氏をモデレーターに迎え、赤沼氏と下永田をスピーカーにパネルディスカッションが行われました。最初のテーマは「メッセージのやり取りや面談で『この会社は、求職者へオープンに情報を開示してくれている』と感じるポイントはどこか?」です。

「情報のオープンさ」を感じるポイントについて、赤沼氏は「できていないこと」を正直に語る姿勢を挙げました。採用側は自社の強みをアピールしがちですが、候補者側は「完成された組織」を求めているわけではありません。むしろ、どこに課題があり、何が未着手なのかを真摯に回答してもらうことで、自分が解決に貢献できるイメージが湧くといいます。

下永田もこの意見に同意しつつ、トリビューの事例として「事前の全方位回答」というユニークなアプローチを紹介しました。面談の前に、経営層から「聞きたいことをすべてリストアップしてほしい。当日までにすべて答えを用意する」というスタンスを提示されたことが、オープンさを感じるきっかけとなりました。

続いての議論は、ハイレイヤー採用の要とも言える「経営層(CEO等)との相性を、いつ、どんな方法で見極めているか?」に移りました。下永田は、経営者のこれまでの意思決定の履歴を深掘りすることを重視しています。「成功や失敗の局面で、何を迷い、どう判断したのか」には、その人の人間性や特徴が色濃く反映されるからです。

また、複数の経営メンバーそれぞれが異なる強みを発揮しており、「このチーム、この布陣なら勝てる」と思わせる「ワンチームとしての魅力があるか」も重要であると指摘しました。

赤沼氏は「相互の強みを補完できるか」という視点を提示しました。例えばエンジニア出身のCxO候補であれば、CEOがビジネスサイドで圧倒的な強みを持っていることが、自身の貢献可能性を広げる前提となります。

また、技術や組織に対するスタンスが近いことも不可欠です。方向性が異なれば将来的な摩擦が目に見えているため、面談を通じて「今後どのような組織を目指したいのか」「現状の技術的課題をどう捉えているか」を徹底的にすり合わせ、対等なパートナーとして背中を預けられるかを確認したといいます。

最後に「入社を決断させる『最後のひと押し』になった、選考中の体験」について、具体的なエピソードが明かされました。

赤沼氏にとっての決定打は、前述の「One Day UPSIDER」でした。選考用のダミープロジェクトではなく、実際の開発タスクにチームの一員として取り組んだことで、「パラシュート人事」への不安が払拭されました。

「自分はこのチームに受け入れられるのか」「現場で戦力になれるのか」というCxO経験者特有の懸念に対し、実際の議論やモブプログラミングを通じて「やっていけそうだ」という手応えを得られたことが、何よりの確信に繋がりました。さらに、オファー後には若手リーダーから熱意のこもった「手書きのメッセージ」を受け取り、自身の介在価値が情緒面でも認められたことが、他社との比較における「ダメ押し」となりました。

一方の下永田は、トリビューから提示された「オファーレター」が実質的な「ラブレター」であったことに衝撃を受けたと語ります。それは単なる条件通知書ではなく、選考過程での対話を通じ、本人の魅力や期待される役割、さらには入社後にどのような成長を期待しているかまでが精緻に言語化されたものでした。自分以上に自分のことを見て、可能性を信じてくれている。その圧倒的な熱量と観察眼に「痺れた」ことが、最終的な決断を促しました。

おわりに

イベントの発表内容から浮き彫りになったのは、ハイレイヤー層は「評価される側」としてではなく、「共に戦うパートナー」として扱われることを望んでいるという点です。選考プロセスを通じて「採用候補者とその企業の経営層・社員が強みを補完し合い、相乗効果が生まれる」という未来を描けること。それが、優秀層を惹きつける要因となるのです。