『カチューシャとおむすびの共通点:USJ出身者が挑む、地方で勝つための「里山コト消費マーケティング」』②
第2話:データ分析と戦略の転換
※この記事は、50歳でUSJの物販・飲食ビジネスの責任ある立場から460倍の倍率を経て「道の駅」の副業へ飛び込んだ私の挑戦記(第2話)です。
第1話はこちら↓
根底から覆された「マーケットイン」の常識
「その季節に生産されたものを、味わう。それが道の駅のコンセプトですから」
「くりの郷」なのに秋以外はくりご飯が食べられない理由を尋ねた私に、現地の方々はそう教えてくれました。
ゲストが欲しいものをあらかじめリサーチし、企画・開発し、仕入れて販売する。USJで私が22年間当たり前にやってきた「マーケットイン」の思考が、根底から通用しないと感じた瞬間でした。
しかし、私の胸にはどうしても拭えない違和感が残りました。
郷に入っては郷に従うべきかもしれない。けれど、やはり「わざわざ足を運んでくれたゲストの欲しいもの、期待に応えること」ができなければ、顧客満足度は上がらないのではないか。満足度が上がらなければ、持続可能な「稼ぐ仕組み」など作れるはずがない。
そこで私は、現地の理念を否定するのではなく、別の角度から問いかけてみることにしました。
「では、能勢らしくて、比較的年中食べることができて、たくさん収穫されるものは何ですか?」
現地の方々は、少し考えたあとにこう答えました。
「……お米くらいですかねぇ」
それは、毎日それを見ている現地の人々にとっては、あまりにも当たり前すぎて、価値があるとは思われていない素材でした。しかし、私のプロの目には、それが光り輝く宝物に見えたのです。
満車の駐車場と1時間待ちのレストランが教えてくれたこと
お米というヒントを得た私は、さらに一歩深く、能勢町の道の駅の「現状」をデータと顧客行動から分析していきました。そこで、決定的な事実に気がつきます。
データの現実は残酷でした。土日の駐車場は常に満車、レストランは1時間待ち。客数はすでに物理的な限界(キャパシティ)に達しており、売上は完全に頭打ち。これ以上無理に客数を増やすことは不可能だったのです。だからこそ、私は確信しました。
「次に狙うべきは、客単価の向上だ」と。
「これは、ものすごいポテンシャルがあるぞ」
能勢町には鉄道が通っていません。アクセスは車に限られます。しかし裏を返せば、都心から車でわずか1時間という絶好のロケーションに位置している場所。休日にふらっと車を走らせて「プチ旅行」や「非日常の里山体験」を気軽に味わえる、最高の目的地だったのです。しかも周辺の都市部には膨大な人口がいます。
ビジネスの売上は、極めてシンプルな数式で成り立っています。
売上= 客数 × 客単価
現状、土日の「客数(車の数)」はすでにキャパシティの限界でした。これ以上、無理に客数を増やそうとしても駐車場に入りきりません。
「次に狙うべきステップは、間違いなく『客単価』の向上だ」
私は確信しました。レストランに入りきれず、1時間待ちを諦めて帰ってしまうゲストがたくさんいる。もし、その人たちが大自然の中で、能勢の「非日常」を片手で気軽に楽しめるような、高付加価値のテイクアウトフードがあったらどうだろうか。
どこにでもある「お米」という素材。そして、都市部のゲストが求めている「里山体験」というニーズ。
この2つが、私の頭の中でガチリと噛み合いました。のちに道の駅の大ヒット名物となる「のせむすび」の構想が、ホワイトボードの上に浮かび上がった瞬間でした。
マガジンにまとめましてので、よろしくお願いします。
(第3話へ続く)
