初恋泥棒あらわる!な小説
毎月やっているBL企画小説のお時間です。
今回のお題は
「卒入学式」「ヤンキー」「スポブラ」
3つのお題を入れた5000文字以内の短編を発表しているよ!
今回は初挑戦者が2人!
後で全員まとめた紹介記事も出しますので、纏め読みにもご活用ください!
午後から皆さんのもとへ集荷に伺います!
#noteでBL !
レッツ!アオハル!!
✴︎男性同士の恋愛を含む小説です。
本編小説『テトラ ト トモエ』
駅前にたこ焼き屋が出来た。
俺は陰からカウンターを盗み見る。
プレハブ店舗の中では若い店主が、店のロゴ入りの三角巾をぎゅっとあげて目に入る汗を防いだ。
「いらっしゃい、かっこいい頭やね?阪神好きなん?」
急に奥さんに背後から声をかけられ飛び上がる、裏口からでやがったな?!
「ひぃらんわっ!」
スパイ、失敗や!
俺は声を裏返してダッシュで植え込みに倒したチャリに跨り、立ち漕ぎで家に帰った。
「オジイ!駅前のたこ焼き屋、サンデーも売ってた!」
「はぁん?サンデーてなんや?日曜日か!」
ねじり鉢巻にハゲ頭のオジイがたこ焼きピックを光らせ、カウンターから「ほれ!」と、たこ焼き盛り合わせ「孫スペシャル」を手渡す。俺はそれを奥の飲食スペースの黄色く塗り直した長机に置いき、ガラス戸の向こうの居間に使い込んだランドセル投げた。
「サンデーはソースかぶったソフトクリームの頭や!」
「ソフトクリームにおたふくソース?けったいな食いもんだしとんな!」
「そのソースちゃう!」
黒いベンチに尻を据え、机の箸立てから割り箸を抜いて、額に当てて祈る。
真っ直ぐ割れたら、えぇ事ある。
埃と油に塗れて真っ黒になった今宮戎の大笹に向かってパンっと割った。
右だけ太なった。
割り箸占いはいっこも俺の見方せん。
ため息の為に吸った息は、すえた油と香ばしい生地の焦げる匂い、壁には阪神のポスターと茶けたビニール被ったサイン色紙とユニフォーム。
隣はカプセルサウナと24時間雀荘、オジイとオバアが切り盛りするこのたこ焼き屋「ジジババ」は、夕方は子供のおやつ、夜はサラリーマンが集まってハイボールとたこ焼きで一杯やる店になる。
俺の親はプロのバンドマンやったらしいけど「音楽性の違い」で離婚。
2歳の俺を「ジジババ」に置いて解散し、その日からここが俺の家になった。
「輝虎!今夜は繁盛するぞ!」
知っているのは、このトラキチ丸出しの名前はオトンがつけ、すぐ太る体質はオカンゆずりやって事。
「打倒!巨人!」
野球のシーズンは阪神ファンが集まるスポーツバーになる。
俺のトレードマークの金髪のメッシュは、オバアが近所の薬局で買ってきたブリーチで抜いてる阪神ヘアー。
それを喜ぶ常連のトラキチに俺は育てられた。
「おっちゃん、たこせん!」
「おう、ぼん!今日も塾か!」
「うん、100円ここ置くな」
“ぼん“こと、巴は、隣の金持ち多い学区に住んでて、駅前の授業料がアホみたいに高い塾に行く前に、いつもたこせんを食っていく。
俺がスパイしたたこ焼き屋もあるけど、絶対にうちでたこ焼き食う、えぇ舌したぼんぼんや。
「巴、サイダー半分こしようや」
ドリルの重さでちぎれそうなナイキのリュックを俺の横に置くと、赤いカモメのマークがケツにあるデニムが見える。
小6でエビスのデニムを履きこなす巴は、サイダーと一緒に“麒麟“の傷だらけのビールグラスをとっただけでも、東京の子役みたいにシュッとしてた。
「テトラ中学、どっち行くん?」
ちょうど「ジジババ」を境に学区が二分されていて、スポーツえらいとこと、ちょっと勉強えらいとこがある。
中間地点の俺はどっちの中学でも選べた。
「俺はヤンキーやからアホの学校や」
オジイのたこ焼きは天かすにエビが入ってて、生地も柔らかめ。熟年の技がないとよう裏返さん。
駅前の油まみれでカリカリのタコボールと違って中がとろとろで腹持ちもいい。
巴の“たこせん“は顔くらいデカいえびせんを半分に割り、そこにマヨネーズとソースをたっぷり塗って、たこ焼きを2こ乗せてサンドしたやつ。うちは特製の天かすもオマケする。
ぎゅっと上から潰してパリパリのうちに食う、巴はたこせん食うのが上手くて早い。
「ほな春から一緒やな!バスケ部はいろや!」
将来設定も早い。
「アホか俺は帰宅部や、ヤンキーやからな」
「ぼん、塾の後に近くの公園で毎晩シュート練習してんやろ?」
駅前のたこ焼き屋に客を取られて暇なオジイが、たこ焼き器のガスでタバコに火をつけ、油だらけの丸椅子に座った。
「近くの公園て、第二児童公園?」
「おん、グラウンドの端にバスケのゴールあるやろ」
歩いて10分の児童公園は不良高校生の溜まり場。それだけで怖いのに、最近は変質者が出る噂もでて俺はビビってよう近付かん。
でもぼんは、ぼんぼんやのにめっちゃ胆が座ったとこがある。
「あっこ“ぶつぶつおっさん“出るやん、いけんか?」
俺はゴクっとたこ焼きを飲む。
“ぶつぶつおっさん“は意味分からん事をブツブツ言いながらうろついて、捕まったら全身にブツブツが出来て死んでまう。隣の小学校の5年も追いかけられたらしい。
巴は最後の一口を押し込むと、ティッシュを出してソースを拭く。
「その噂流したん、俺や」
「はぁ?!」
オジイと俺の声がかぶった!
「練習するために変な噂流してアホ集まらんようにしたった」
「ありえへん!」
巴は一見クールやけど心の奥はヤンキーで、いつも野心でギラギラしてる。
冷えたふりして中がめっちゃ熱い、おでんの卵みたいな男やった。
――
中学の門の前で俺らは初めて同じ制服で対面した。
俺が常連客に『ブタに学ラン』と笑われた学ランも、身長170㎝の巴はシュッと着こなしてる。
「終わったらバスケ部の見学行くで」
張り出されたクラス分けを見ながら巴が5組を指さす、同じクラスや!と喜ぶ後ろから女の人が声をかけた。
「巴さん、入学式の後はお昼に行きますよ?」
声の主は踏まれたら穴が開きそうな黒いピンヒールを履いて、隣に並ぶとデパートの1階のにおいがした。
オジイが言うには北新地のクラブのママでオトンの愛人、両親の離婚が成立したら再婚する、巴の新しいオカン。
「行きません」
ピシャッと跳ね除けた巴を、あら?と笑って挑むように見る。
「今井の親子丼、好きでしょう?」
「店の準備行って下さい」
「仕込みは若い子がするから、気を使わなくても、」
「気ぃつこてんちゃう!嫌やねん、分かって下さい」
巴はそのまま新入生の列に早足で混ざり、追いかけながら振り返ったら、新しいオカンは俺に上品にスッと頭を下げ、体育館に入った。
後ろ姿のヒールの裏が、必死に見栄張ってるように見えたけど、真っ赤で毒々しい男を知ってる女の足の裏やった。
でも、クソカス言うてもオカンはオカン。
「オカン大事にせぇや」
「オカンちゃう、オトンの女や」
「オカンは元々、オトンの女や」
俺はオカンと呼べる人が家におるのが羨ましいけど、オトンもオカンもおらん俺やから分からんもんも多い。
「12歳しか違わんのにオカンて。あんなんただの、女やんか」
保護者の中でその人は1番若く、俺はピンときた。
年の近い美人の同居人が思春期の巴には辛いんや。
巴のあれは嫌い、言うより男女の好き、なんかもしれへん。
――
俺はまんまとバスケ部に入部する。
そこそこ強豪で部員60人のマンモス部活、理由は監督が「絶対に名門校にいかす名将」
巴もそれに期待して入部したが、蓋を開けたらペナルティ地獄の今どき類を見ないスパルタじじぃで、練習は後に流行ったビリーズブートキャンプよりエグい。
「新入と2年混ぜて紅白戦するぞ!」
チームが振り分けられ、先輩から背番号入りのビブスを受け取り頭からかぶる。
隣で巴はサッと裾を下ろしたが、俺は毎日のたこ焼きがたたって腹がつかえて、ブラジャーみたいになってまう。
「先輩!俺のんサイズ違てます!」
フリーサイズやアホ!と先輩が笑うと調子に乗って巴もボケる。
「先輩!テトラだけスポブラしてます!」
「はぁ?誰がスポブタや!!」
「それはまだゆうてへん、これからや」
「なんや、俺の未来予想図か!ってオイ!」
白米かっ込む速さなら全員蹴散らせる自信があるけど、この名門バスケ部ではアピールの土俵が違う。
俺の自慢の金髪の前にも“部員は丸刈り“の規則が立ちはだかり、俺のヤンキーの青春はバリカンで刈り取られた。
それでも、バスケはそれに変えられへん楽しさがあって、俺のチンケなプライドは汗と脂肪と一緒に流れて消えた。
「テトラ!bjリーグが開幕したぞ!」
俺らが2年になった2005年、地域密着の男子プロバスケットボールリーグが創設された。
これが2016年にNBLと統一し、今のBリーグになる。
「“大阪エヴェッサ“や!」
このニュースは一時盛り上がったが、ほんまに一時で、Jリーグのガンバ大阪の優勝のが盛り上がった。
それでも俺らにとっては未来を左右するビックニュース。
当時の俺はどっぷりバスケの魅力にはまり、巴みたいなほっそり、まではいかんけど、脂肪が程よく筋肉になってガッチリした体格を生かしたディフェンスの鬼と化していた。
「全中で優勝とMVPとる、高校進学してウィンター杯!名門の南海大でインカレ制覇!ほんで卒業と共にエヴェッサ入団!」
巴は相変わらず人生設計が早いけど、ほんまに叶う気がするくらい頭角を表していた。
「南海大って関東か」
「寮あるからテトラも来い!一人暮らしはやりたい放題や!」
大阪を出るのに不安は無い。
ジジババは大学の4年間くらい生きるし、俺かてプロになって大阪戻って楽をさしたりたい。
でも心配なんは巴やった。
「俺が先に関東で色々見とくさかい心配いらん!」
大学までは大阪でおる予定やった巴が急に進路を変えた。
親の離婚が成立し、先に下の子を連れて関東で別居していた本物のオカンのとこに行く。
理由は新しいオカンの妊娠で、オトンが巴の親権を手放したから。
「全中の東北地区予選のビデオ回ってきたから今夜一緒に見るぞ!」
巴は新しい家族が出来上がっていく疎外感からか、うちにおる時間が増えた。
「おっちゃん、たこ焼き10個!500円置いとくな」
「ネギとチーズのせな!ぼん、今夜も泊まってけ!親御さんにはオジイがゆうたるさかいな!」
オジイは巴の肩を持っていた。
口では「ぼんがNBA行ったら、うちも有名店や」と、ふざけてるけど、親の都合で振り回される巴が可哀想やったんやと思う。
でも俺は自分から家族に入って行かん巴もズルいんちゃうんか、とも思う。
巴がたこ焼きを持って居間に上がり、ガラス戸を閉めたらビデオを再生する。
「一中にえげつないシューターおるんやろ?」
「おん、シュート打つ判断がエグい…ベンチスタートの3Q、嫌な戦況に絶対出てくる。めっちゃ肝っ玉でかい奴や」
チャブ台を奥に押して、茶けた古い畳にたこ焼きを直置き、2人でテレビにかぶりつく。
オジイのたこ焼きはミナミ1やけど、集中し過ぎて何個食っても味がせん。
「きた!見とけ、黄色の17番!」
俺は箸を止めた。
巴の息も止まった。
スローインのボールが、俺らの生命活動を超える速さで17番の手に渡り、既に放物線を描いていた。
3ポイントラインより3歩も後ろから、遠く、高い威嚇するような弾道が会場中の動きを止める。
「綺麗」
画面を見ながら巴が徐に割り箸をパンっと割り、今度はそれに目を見張る。
イケメンは神さんにエコひいきされんのか、ノールックで真っ直ぐ箸が割れた。
巴はまたリモコンで巻き戻して、同じシュートを見る。
取り憑かれたように、巻き戻し、テープを擦り切る気負いで再生し続ける。
「めっちゃ完璧」
見た事ない顔した巴がおる。
俺には一瞬でも、巴の目線は時間がゆっくり流れているみたいや。
3分で7点取って戦況をひっくり返し、ベンチに下がった黄色の17番をカメラが追う。
受け取ったタオルで丁寧に汗を拭き顔を上げると、切れ長の目が一瞬挑むようにカメラを見据えて見えた。
巴の指がリモコンのゴムを追い、何度も視線を視線が追う。
画面越しに見る同じ年の少年の目は、プライドで春を売る女みたいな強気な色気があって、巴の新しいオカンに似てた。
――
そして俺達が再会するのは、入学式を控えた南海大学のバスケ部の学生寮。
「巴!遅刻すんぞ!」
開けっ放しの隣の部屋を覗いたら、ブレザーをシュッと着こなす巴がまだネクタイにもたついてる。
「お前、お先に関東で何をしとったんや!」
「制服また学ラン、だった!」
言い訳や!と怒鳴る俺を品よく笑った巴の同居人が、後ろからネクタイをとる。
「白瀬くん、俺がするから前を向いて?」
「あ、ありがと」
「なにデレとんねん!新婚さんいらっしゃいか!」
俺は割り箸占いを思い出す。
イケメンは神さんにエコひいきされる、それを証拠に巴の相部屋の相手は、
「テトラのツッコミはとても秀逸だね」
一目惚れした黄色の17番やった。
誰が得するねんの細かすぎる設定
テトラの名前
本名「月木 輝虎」月木は大阪の一部地域で多い苗字。
名前の輝虎は、関西の阪神ファンならではの名前で、猛虎と書いて「たけとら」とかザラでいる。
関西ならではの言い回し
「アホ」「ボケ」「クソ」「カス」「じゃかましぃわい!」は愛情表現。
乱暴な言葉を日常会話で使う人が目立つが、実はかなりシャイで人見知りが多い府民性がある。
あと、たこ焼きはそんな食いません。アフリカの民族が商業民族してるのと一緒で、商業たこ焼きです。
551の豚まんの方が好きです。
今宮戎
商売繁盛じゃ笹持って来い!でお馴染みの商売の神様エビスさんが祀られている神社。大阪では、初詣に一月九日〜十一日の三日間の「十日戎」に行くほど愛されているまつり。
今宮戎神社に続く参道に屋台がびっしりならび、笹に縁起物をつけた「福笹」を持った人が行き交う。福笹を毎年買い換える派の人が多い中「ジジババ」は買い替えない派。
「買い替えに行く暇が無いほど忙しい店」の験を担いで、古い笹を飾っている。
北新地
東京でいう、銀座。巴の新しいオカンはやり手の女。
たこせん
大阪ではお馴染みの子供の買い食いおやつ。
お店によっては、卵焼きを挟む「たません」のところもある。
巴の家族
二卵性の双子の弟の「司」と妹の「透」がいる。
テトラと出会った時の苗字は「藤島」から両親の離婚で母方の姓の「白瀬」になり、母親の再婚相手とは良好にしている。
当時の関東は今ほど関西弁が浸透しておらず、巴はカタコトの共通語を話すようになる。
ビブス、スポブラ事件
ビブスは番号が書かれたメッシュのタンクトップみたいなやつで、簡易的な背番号。
お腹が出過ぎているとほんまにスポブラみたいになる。
黄色の17番
黄色のユニフォームを着て17番の背番号を背負う中学生の有時。
バスケ選手はシュートフォームマニアが多く、こんな一目惚れエピソードがゴロゴロしてる。
この話の続きは!
大学に進学し、学生寮に入った巴とテトラのアオハル小説の連載を始めました!
任侠の漢・イブ先輩こと、伊吹 清十郎 先輩と、とにかく明るい大男・ガツさんこと、残月 頼親先輩を降臨させた、テトラの贅肉が溢れ、巴のイケメンムーブが止まることを知らず、まだ達観していない頭の中がお花畑の有時がキュンキュンして悶えている、ちょっと様子がおかしいギャグと恋心全開の全年齢小説です。
恋愛シーンは、下ネタはあるけどエロは無し・・・にしてます。
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