短編小説「すき、きらい」
3つのお題を入れた5000文字の小説、今回のお題は。
「花」「つめ切り」「大嫌い!でも好き❤️」
このお題を使ったブロマンス〜BL小説です。
後で挑戦者さんの作品をまとめて記事にします。
トップに固定するからまとめ読みに快適です!
雨が増えるこれからの季節にぴったりな、足が臭い話を書きました。
仕事の合間や電車内では読まないことをお勧めします!
けっこうガッツリとあれしてるんで、覗かれたらあれです、背後に誰もいないところであれしてください。
✴︎男性同士の恋愛を含みます
✴︎足が臭い人がでます
✴︎パンツを脱ぎます
走り書き
毎回、お馴染みの有時やリキに踏ん張ってもらってましたが、今回はチャンピオンシップ進出のため、お休みです。
(私の脳内で)地区優勝まで果たし2冠がかかった正念場です。
ほんまはその時に書いている登場人物でしか話が書けない病なんで、今は彼らが書けないんです。
その代わり、ニューカマーの中さんと一斗くんがイチャコラしてます。
今書いているホラーコメディ小説の主人公2人ですが、作中の彼らは漫才と怪談しかしていないので、恋愛はしていません!
中さんは本職ホラー小説家の怪談師(百目)で38歳。特技は現実逃避と女遊び、現状維持を好む保守派の愛しきダメ男です。
一人称が「アタシ」なのは個人的な趣味です。
そのお手伝いをする一斗くんは26歳。どこにでも行き、なんでも食べて常に変化をし続けていたら、いくとこまでいったべっぴん冒険野郎です。
恋愛を考えずに考えた2人なんで、未知数のまま書きましたが、大人の貫禄でなんとかなりました。
関係のはっきりしない喧嘩ップルの幸せと臭い足のマリアージュです。
本編「すき、きらい」
中さんの足が臭い。
口に出したら「どんなにおい?」と顔を寄せてきた。
先に加齢臭の話をした時は眉間のしわを鼻筋まで張り巡らせて「黙れ、小僧」と喉を鳴らされたがこっちは良いらしい。
基準が分からない。
黙っていたら「しかと確認なさい?」と靴下をとって座っている俺の顔の高さに爪先を持ってくる。
やめてほしい。
臭いとか、そうでもないとか、そんな事よりこの行動そのものが嫌で仕方ない。
バンジージャンプのタイミングみたいに、自分から赴くのはいいけど、人のタイミングは腹が立つ。
「どう臭いのが理想やねん?」
「理想とか好みやないの、種類別の対策をするためよぉ」
「汗で蒸れたにおいや」
裸足の爪は伸びていて、その間で雑菌が繁殖している事は素人でも予想できる。
「黄色ブドウ球菌、か」
「感心してんと爪切れや?」
「ん〜?やってさぁ、」
巻き爪になった指が数本あり、手入れし難くやる気が起きないらしい。
「巻き爪は四角に切らな。貸せ!」
「さすが一斗くん!助かるわぁ、けっこう痛かったんよぉ」
今日は一日よう歩いたしねぇ、と、言い訳なのか報告か分からない事を言いながら、本と紙と謎の雑貨(日本人形やらなんやら)に埋もれた部屋にそびえ立つ二段ベットのハシゴに登り始めた。
まるで秘密基地に案内するようについてこいよ?と俺を見下ろすので、続いてハシゴに足をかける。
先に登りきると中さんは布団にごろんと仰向けに寝転がった。
ベットサイドの小さな引き出しを指差して「爪切りそこに入ってる」と言いながら、頭の後ろで腕を組んで目を閉じる。
手入れさせている間に昼寝をかます大御所感にイラッとする。
膝でうっかり鳩尾踏んだろか。
衝動的に思ったが、日頃の恩恵を思い出す。
今の自分の生活はこの人の助手をする事で成り立っているのだ。
中さんの体を踏まないように覆い被さって、手を伸ばして引き出しを開ける。
シルバーの爪切りと、百円均一で見るピンクでペラペラのバッファーと、使いかけのコンドームが無造作に入っていた。
次から次へとこの態とらしさは、ナニかの誘いかただのおっさんのセクハラか。
俺の呆れた視線を下から見上げて悪趣味に楽しんでいるから、両方か。
「ちゃんとした爪やすりないのん?」
「ごめんなぁ、女の子が置いていったやつしかないわ!爪を整えるのも前戯の一部やからねぇ」
「爪もやけど生活整えろ」
「やめれんな、ダメな男が一番モテるんよぉ」
「確かに。簡単なふりして難攻不落」
女を匂わす、嫌みにへし曲がった口と根性。
それを見るとギリっと奥歯が軋み、チリッと心火が胸を妬く。
どこやったかは忘れたけど。
サメの歯式に爪が生え変わり続けて、それを鬼に永遠に抜かれ続ける地獄あったな。
そういう地獄に、
「中さん、落ちへんかな」
「あらぁ?一斗くんもアタシを落としたいのぉ?」
「そうやな…地獄にな」
「唐突に物騒。地獄は恋の落とし穴やないわよ?」
足元にあぐらをかいて中さんの足を膝に置く。
あんまり歩かないからか足の裏の皮は柔らかく、しっとり汗ばんでいて、どう指を持って爪を切るか思案する鼻にツンとしたにおいがついてくる。
「うわ、ぬるっとする。ゆっくり見たら毛ぇ生えてるし」
「はっきり嫌と言わん辺りに悪意があるなぁ。顔面に押しつけてやろうかしら」
「勘弁して」
人の足の裏に触るの、初めてかも。
急に焦れた気持ちになった。
まるで蒸れた素足が下着の奥で湿度を増した性器みたいに感じて、足のにおいの卑猥さを濃くする。
あの独特の、顔を埋めたいのにちょっと嫌なもどかしさが込み上げて、ふぅと吸って深く吐いた。
落ち着け。
目の前にあるのはただの臭い、おっさんの足。
爪切り持つのに深呼吸したのも初めてやわ。
ぱち、
ぱち、
ぱちん。
自然な呼吸のふりをしてにおいを嗅いでしまう。
自分の足の爪の垢でも気持ち悪いのに、人のものなんて、と思いながらその「いけないこと」にじわじわと思考が侵食されている。
臭いと言われたら嗅ぎたくなる、芳しくないのがクセになる謎の欲求。
「さっき言うてた足の臭いの種類別のてなに?」
「んん〜?ブドウ球菌の繁殖やとすえた雑菌臭、納豆みたいなイソ吉草酸の臭いは腐敗臭」
「イソ吉草酸?」
「履きこんだ靴下みたいな匂いの成分、納豆とかチーズとか色々言われるし、悪臭防止法の規制対象やねん」
「あれ?俺足っぽいハーブ、ドイツで飲んだ覚えある。日本語…やと、カノコソウって言うてた」
「大胆な記憶やな?逆に寝れんくない?面白い、ちょっと調べよ」
俺に足を取られたまま、中さんが腰を捻ってお尻のポケットのスマホを探る。
着ていたTシャツが捲れて脇腹の肉がパンツのゴムにムニっとのった。
出不精の作家で40歳前にしては引き締まっているが、この少しの緩みが生々しく心の隙をついてくる。
おへそからパンツの中に消える薄らとした体毛も、一心不乱にアリが巣穴に這うように、俺も舌で這い下がりたい。
いややなぁ。
ベットで足蹴にされて、ぬるっとしたニオイのキツイものに顔を近づけながら、中さんの男でしかない部分に欲情してる。
嫌いじゃないから余計に嫌やねんなぁ。
「なんやっけ?なにソウって?」
「え…?あ、カノコソウ」
「カノコ…ソウ……ん〜?バ…、読めん」
視線を滑らせて見上げたら、中さんがスマホにめっちゃ目を細めてる。
「老……眼?」
追い打ちをかけるように想像する。
文字を追う際にさっと老眼鏡をかける中さん。
一手間で2度美味しいひつまぶしみたいに、そのちょっとした変化を好きにならずにいられない。
「アホか!単純に英語が読めへんのじゃ!」
「ボケか!なんの自慢にもならんやんけ!」
「お前、アホみたいに世界中行っとったやろが?!ちょっと読んでみぃ?!」
「やったろうやないかい!貸しなはれ!」
中さんが腰を折って起き上がり、挑戦的に画面を突き付けた。
爪切りを置いて足の間に手をつき画面を覗き込むと、カウンターパンチみたいなキスがこめかみに当たる。
そのまま生え際のにおいを嗅がれて、くすぐったい。
「Valerianaceae…これラテン語やんけ!Japanese valerian…バレリアン、そうそう!これこれ!」
「あぁ!ゾンビの大群の映画ね?」
「それはバタリアン」
「マーティが乗って過去に行く?」
「それはデロリアン」
「アタシの今日のTシャツのロックバンド?」
「それは…カサビアン!」
「……あ!スターウォーズに出てくるランド!」
「はい!カルリジアン!!」
「……くそ、脳が若い。こっちが弾切れや」
「ハハハハッ!!…ほんで、なんやっけ?」
笑いが途切れたらキスしようとしてたのか、中さんの「キス圧力」がすごい。
2回目の息継ぎまでは合わせて仕方なく笑ってくれたけど、3回目は額にごっつんこされた。
反射で目を閉じたが、真剣なキスの空気がくすぐったくて顔を斜め下にそらすと、中さんの唇が耳たぶの産毛にさわっとし、
「バレリアン、やろ」
「……ん」
声が吹き込まれた。
もったいぶったような破裂音に骨を震わされ、ねっとりとした語尾を鼓膜に絡めて耳を塞いでしまいたい。
脱線ばかりでのらりくらりと、俺達はいろんな思惑を誤魔化しながらその日暮らしに体を重ねる。
今度は中さんが脱線開始。
「花が絞り染めの鹿子絞りに似ているから、鹿子草。でも白い花から女郎のおしろいみたいな甘い匂いがするから、女郎花が一般的ねぇ。
一斗くんもそんなにおいするんよ、ヘリオトロープに似てる」
「てか、知ってんかい!」
「根茎が生薬の吉草根、鎮静作用がある。睡眠薬ができるまでアメリカで頻繁に使われてた。
この手の事はミステリやホラー小説に多いんよぉ」
俺のまぶたにキスした中さんの唇が、かすかに開いてまつ毛をはさんだ。
くすぐったいから嫌やのに今の俺は拒めない。
「言うこと聞かない焦らす子にねぇ、アルコールと一緒に服用させて酩酊状態にするのよ?」
「それ、あかん使い方やんけ」
「でも確かに、匂いの成分がボルネオールとイソ吉草酸…まんま足やん、美味しいん?」
「眠れんときに親切で淹れてくれたけど、大きなお世話くらい苦臭かった」
「聞くまでもないオチ」
「でも不思議とな、ごっつこと寝れんねん」
とは言え良薬口に苦し。
思い出す味にべぇっと舌が出る。
「……なるほど。眠れぬ夜は俺の出番か」
「腹立つ顔でキリッとすな。あんたは足がくさいだけや」
許容範囲やし風呂に入れば消え去るけど、中さんと一緒にいると安心するのはこの足のにおいのせいなんか?
検証しようと中さんの足に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
これは恥ずかしいのか「やめな!!」と足を引っ込めて、ぎゅっと鼻をつままれる。
「アタシのは黄色ブドウ球菌!」
「いや、どうかな。ちょっと記憶に引っかかる匂いやな」
ふざけて笑うと鼻を摘まんだまま顎も掴んで、人工呼吸みたいにぱくりとキスで塞がれた。
もうおふざけは終わりなのか、離された手が体を這い出すと自然なキスになる。
「猫とかネズミが好きな臭いやねん。やからハーメルンの笛吹男はポケットにカノコソウをいれてた説があるんやて」
「ドイツの豆知識か」
ドイツで130人の子供が集団失踪した事件を元に作られた童話である。
1284年ハーメルンでネズミが大量発生した。
「退治したものに金貨100枚を与える」と市長がおふれを出すと、一人の男が名乗り出で広場で笛を吹き始めた。
すると町中のネズミが集まって、男はそのままネズミを川へ誘導し溺死させた。
だが、市長は約束を反故にして金貨が支払わなかった。
腹を立てた男は深夜に広場で笛を吹き、ハーメルンの130人の子供を集めて市街の山腹の洞穴(丘の刑場など諸説あり)へ誘導し、内側から岩で入り口を塞いでしまった。
その後、男も子供達も見付かっていない
「でも中さんの話聞いたら、笛吹男の足が靴から漏れるほど臭かった可能性を考えてまう」
「今度ドイツ行ったら、笛吹男の銅像の前で一回土下座しなぁ?」
まだ右足の爪しか終わっていないのに、爪切りと一緒に俺の服も奪われ、開けっぱなしのカーテンと窓からパトカーのサイレンが聞こえて爪先が丸まった。
下半身に触れる中さんの不埒な手の爪が綺麗で短い。
ぬけぬけとそこだけ整えて、しめしめとベットに誘い込む事を楽しむ腹黒さに気づいた頃には、裸でぱっくり膝を割られていた。
迫る頭を押して逃げようとするが、引けない腰に確信を得た中さんが、内腿に吸い付き、わざとらしく舌なめずりをする。
「いやぁ…ッ…中さん、お風呂まだやから、あかんってぇ!」
カシャン。
ベットの下に爪切りが落ち、床にこぼれた爪に鼠が集まる想像をする。
誘われたのは自分。
掴まれた膝の裏すら性感帯になった頃、汗だくの下半身に、いけずな顔がうまった。
中さんは趣味が悪い。
男も女も見境ないし、はっきりしないし、狡くて大嫌い。
やけど俺の趣味も悪い。
「あっつ」
Tシャツの裾を掴んでばさっと威勢よく脱ごうとしたが。
「あだだ、肩が上がれへん」
上がらない肩にシャツが引っかかり、腕と顔が抜けなくなってる。
なぁ中さん、女の子の前でもこんな間抜けすんの?
俺はズボッと無防備な中さんの腋に鼻を突っ込んで、すんすん鼻を鳴らした。
くさいんか、中さんなんか、くさい中さんなんか分かれへんくて、息継ぎをする。
「ぅはぁっ…ん、これは何のにおい?」
もう一回と、鼻先をつけたら中さんの顔が赤くなる
「……ちょ、変態でアタシを超えるな!」
悪趣味な行動を鼻で笑って、こんなアホは俺だけって言って。
性衝動に駆られた体臭が濃く、鼻の奥で脳がうっとりしてくると、下半身から震えが上がって、頭皮の毛穴から抜けていく謎の快感。
足の指もぴくぴくしちゃう。
「もうあかん」
引き出しごと落としてコンドームを探る俺に、中さんがむっつり笑って鼻の穴を膨らませた。
「ふふ、中さんの濃ゆいにおいで発情してますって言ってごらん?」
すけべな目尻とおっさん丸出しのセリフで台無しか。
萎えへんけど、萎える。
「なんや、ただの四十肩のおっさんのにおいか」
「子憎ッたらしいわぁ!アタシがTシャツいなす間に、手のひらに「従順」って3回書いて飲んどいてくれる?!」
でも大好きよ。
注意書き
バレリアン
とても鎮静・睡眠に対して効果的なハーブで、ヨーロッパではお薬として処方されることもあります。
日本で単体は手に入りにくいですが、自然派系のお店でブレンドハーブティであれば手軽に購入できます。
ブレンドするとまろやかになり、飲み、飲みぃ・・・や、すくなって・・・ます。
チンキなんかもう泣きますが、効果はテキメンです。
服用後は、乗り物の運転や外出をひかえて家でゆったり過ごしましょう。
一斗くんの注意通り、アルコールとの服用もいけません。
✴︎バルビツレート、ベンゾジアセピン(ハルシオン、デパスなどの鎮静、抗不安、筋弛緩薬)との同時服用もやめてください。
中さんの言うことは無視して、用法容量を守り正しく自分の体と向き合いましょう。
