見出し画像

ミリしらではないが、3㎝程度の情報で見るキョンシーは元気が出る

なんか昔熱心に見てたけど、ほんで結局なんやってん?の金字塔。
「キョンシー」シリーズの代表格である「幽幻道士」

幼い頃にレンタルでシリーズの1〜4まで見たはずやけど全く理解してなかったなぁと見返した。

一昔前に流行った「ミリしら」1ミリも知らないけど語る〜ほどでもないけど、大人の私なら3㎝は知ってる知識を絞って考察した。

✴︎以下、一度見たことを前提に書いていますので登場人物等の設定、ストーリーはほとんど無視して書いています。

ちょっと知っておくと理解が深まる古代中国のこと

古代中国の死生観に漢語の「魂魄こんばく」という言葉がある。

「魂」は人の精神を司り「魄」は肉体を司る。
つまり、人が死ぬとこの二つが分離すると考えられていた。

「魄」である器の肉体を綺麗に保管すると、時が来たら「魂」が戻って復活すると考えられているので、完璧な遺体が残れば冥界で魂魄が一緒になって完全復活出来るかもしれないという、ワンチャンにかけていたらしい。

遺体が綺麗に残ってたら50%の死とすると、四肢欠損で7〜80%、首を切ったり焼却するとお前はもう、死んでいる。
遺体はとっても大切なものなんです。

ちなみにエジプトのミイラも考えは同じで「バァとカァ」と呼ぶ。

おっと、突然の悪口ではないです。

あとは、中国人の根底にある『祖先崇拝』

うちの父ちゃん世界一!その父ちゃんの父ちゃんであるじいちゃんはもっと世界一!と言うように家族第一主義。
中国は大きな大陸で繋がっているので、国境を超えていつでも侵略さてしまう。だからこそ自分達を守るために強固な家族の繋がりが必要だったと聞きました。

神でなく自分達の血縁を崇拝したんですね。

そこから論語でお馴染みの孔子が儒教で色んな民族を統合し漢民族が生まれた。
「神」がいて崇拝することが宗教なら、儒教は政治で国家ですが、何か絶対的なものを崇拝するのが宗教なら、立派な宗教と言える。

そこから孟子とか荘子が出てきてキョンシーの話に登場する道教が生まれる。

道教は自然や不老不死を目標にしているんで、儒教では触れないオカルトな部分やシャーマニズムも取り入れた少し自由度のある宗教。
日本でもお馴染み占い、風水、医療、七福神(こっちは神様がいる)呪術や法術を扱う道士がいます。
そしてそこにインドから仏教が入ってきますけど、中国では『祖先崇拝』が全ての根底にある。

中国の人の勢いがすごいのは、侵略されてたまるか!って根性と、何よりも家族や身内を大切にする心がある。
そこを理解すると、各国での振る舞いに少し寛容になれますね。


キョンシーてなんやねん?

私は「ゾンビ」と「吸血鬼」の設定を借りた中華風味のモンスターと最初思ってた。

中国では遺体は土葬していた。
墓の概念がない時は家の床下に埋めたし、墓が出来ても家族が亡くなれば掘り起こして同じところに埋める。
あの世だろうがこの世だろうが愛する家族はいつも一緒です。

先に書いたように、復活を夢見て綺麗な状態で遺体を保管するのは当たり前、エンバーミング(死体防腐処置)技術も進んでる。
湿ったミイラ「湿屍しつし」は外気に触れると細菌感染などにより一気に朽ち果てるが、盗掘されてすぐは生きているみたいに美しかったそうです。

キョンシーはこの湿屍と関係が深そうな気がする。
でも貧富の差を鑑みると、長く遺体を保存するんでなく、出来るだけ早く埋葬する事を念頭にしていた背景が見える。

ちなみにキョンシーを漢字で書くと「僵屍きょうし
僵の意味は「こわばる、たお-れる」に屍は「しかばね」、死後硬直した遺体の事と思われる。

ちなみに“しかばね“にはもう一つ漢字があります。
何本か線を忘れてそうで不安になるでお馴染みの「尸」です。

こっちは死んで肉が削がれた(腐り落ちた)意味があり、骨だけの白骨化した“しかばね“に使うんだって!
へぇ。ほんでいつ使うねん。

こんな事から中国は日常的に遺体を見ることが多かったのかもしれないですね。

元々のキョンシーは単身赴任中の労働者で、労働中に亡くなってしまったご遺体です。
儒教の国、中国では家族関係は重要でご遺体の帰宅は絶対。

しかし遠く離れたお家まで遺体を運ぶのは重労働。
それなら自分で歩いて帰ってもらおう!
遺体に道士が法術をかけてキョンシーにし、自力で帰宅させてるんですね。

キョンシーはゾンビよろしく理性や生前の記憶がないので、ほっとくと勝手にウロウロしたり、襲いかかったりしちゃう。
それを道士が額に貼ったお札で制御し、鈴の音で操っているんですね!

すなわち。
キョンシー隊は移動手段というか、運搬方法であり、平たくいうと死んだ父ちゃん達(時々兄ちゃん)です。

だけどお札が剥がれたら湿屍の代名詞「ゾンビ」が色が濃くなります。

ゾンビの知能は一般的に「4歳児程度」で見た感じのキョンシーもそのくらいと思われ、さらに目につく生きたものを無差別に攻撃。
攻撃の最大の武器、立派な牙での首筋への噛み付きは「吸血鬼」感がある。
しかも噛まれるとキョンシーになる設定まで一緒。

だが、キョンシー実はいい子なんです。

普段は白米をモリモリ食べて、屋内であれば昼も元気に活動して、生き血は啜らず肉も食わない。
周りに生きた人間がいなかったら、ボーリングして遊んでたり、1人遊びも出来ちゃう。

金じいさんの家に安置された行き場のないキョンシー達は、毎日お腹いっぱい白米を食べて適度な運動をし、ストレスを発散しているのかおだやか。

でも、野生のキョンシーは生きた人間の前に出るとゾンビと吸血鬼みたいになる。
どっちが本当のキョンシーかは謎ですが、

元を辿れば、死んで情報量が増えた父ちゃんです。


キョンシーて何してん?

リィン、リィン・・・
灯りの乏しい夜の山道にどこからともなく鈴の音が響き渡る。
一列に並んだ死装束の男たち、それを操る男の胸には八卦の印。
キョンシー様のお通りだ!生きてるものは道を開けろ!

シリーズの1はそんなシーンから始まります。
声を上げながら鈴(ハンドベルみたいなん)でキョンシー隊を誘導するのは道教の道士。

日中に動かないのは死者は「不吉」とされているので、生きた人への配慮。
シリーズ3では「日光に当たると溶ける」設定になってましたけど、この設定のブレこそ、キョンシー映画の醍醐味との面白さ。

キョンシー隊が通る時は「渡し銭」として紙幣を撒いて歩きます。

キョンシーの基本は遺体の運搬手段。
人は死ぬと困ったことに常温保管は出来ない、とは言え、時代的にチルドも出来ない。
仕方ないからキョンシー隊は、お急ぎ便で夜通し距離を稼いで帰路に着く・・・なんか泣けてくる。

キョンシーが何してんかって言われたら、帰宅を急いでいるとしか言いようがない。

なのに移動方法は両手を突き出し前にならえの姿勢でドンッツと両足で「跳ねる
膝から崩れるほどに過酷すぎる。

ゾンビは縦横無尽に走り回るし、吸血鬼も日光がなければぬるぬる動くのに、キョンシーは埋葬前のご遺体設定が足引っ張ってる。

カッチカチの死後硬直は、視聴者がより死を連想する姿であり、生存本能がゾックゾクするけど、可動域を狭めてるんや。

基本姿勢の前に出した手は、開閉や上下運動もするが柔らかい動きは出来ない。
コンテンポラリーダンスは難しいけど、ロボットダンスなら出来る可動では、移動のたかが知れている。

だからって悲しんでばかりはいられない。
そこに可能性を見出せば、ロックダンスは出来るし、両足踏み切りであの跳躍、バレーボール選手は向いている。よし。

いやいかん、冷静になれ。
キョンシーはダンサーでも男子バレーボール代表でなく帰宅を急ぐ死んだ父ちゃん。

生前の筋肉量と根性、家族愛を思い出すと涙が頬を伝い、情緒をかき乱す。

コミニケーション手段は「唸る
跳ねながら「あう」とか「うぅ、」と唸る姿しんどそうでさらに私の涙は止まらない。

お前、めっちゃ根性のあるモンスターや。


キョンシーを操る道士って?

キョンシーを操るのは道教の法術に長けた道士。
帰宅難民の遺体に法術をかけてキョンシーにして一緒に故郷へ向かいます。

シリーズでお馴染みの「金じいさん」こときん は、法術の達人でキョンシーにめっちゃ詳しいし、カンフーの達人スーパーじいさん。
遺体安置所で6体の行き場のないキョンシーと、孫娘のテンテンと暮らしながら、普段は占いや風水をして生計を立てている。

呪術を使って降霊術をしたり、形代を作ってキョンシーを誘き寄せたり、やってることは便利に言うと安倍晴明。
でも晴明は雅に舞いますが、巫舞のシーンはさすが本家。中国伝統の舞踏、神聖な儀式と足の踏み鳴らしは格別で私が滾ります。

足を踏み鳴らす動作は、厄落とし。
相撲の四股と一緒です。こっちは禹歩に近いかな。

チートすぎるけどちょっとお茶目で、金じいさんの豚足煮込みはめっちゃ美味いらしい。
シリーズ中、最もブレない設定を持っていて役者も同一で通している。
ブレを楽しむのはシリーズの醍醐味ですが、時には不安になる時もある。
そんな時に金じいさんを見よう。
彼はキョンシーシリーズの臍下丹田です。


『特殊霊魂』という特殊なあいつら

生きても死んでもいない特殊な存在『特殊霊魂』

顔を白塗りし、頬にシールを貼ったような赤い○とおちょぼ口に紅を入れる、ドラゴンボールのチャオズみたいな格好をしています。

ちなみに化粧をする理由は「死者に顔が見えるように」ハロウィンを連想するので招魂儀礼とかかな。
イタコやユタのように霊を自分におろす降霊でなく、お告げだけを聞く交霊やと勝手に思ってる。

特殊霊魂は生きて冥界を渡った「生死を問わない無敵の存在」
シリーズの1では、キョンシーに噛まれて死んでしまった親方ともう一度話したい孤児のチビクロ達が、テンテンちゃんのお茶目なミスで特殊霊魂になってしまう!
だがこれが強大な武器になる!
無敵の特殊霊魂になったチビクロ達は、街でキョンシー化して暴れている親方と戦い・・・たたか・・・食います

なんで食うたのかは分かりません。

たぶん、この時はまだゾンビ色が強かったからやと思いますが、親方が好きすぎて食ったと考えた方が各種方面で涙を誘います。

後のシリーズでも対キョンシー兵器として「特殊霊魂」は毎回現れるが、食ったのは親方のみ。
たった1人のために取った特別な行動、それはもう愛だろ、愛。

古代中国では人肉食の文化もあり、亡くなった人のパワーを取り込むために食っちゃう事もありましたが、ここは素直に愛としましょう。

特殊霊魂はシリーズ中ずっと出ますが、この時と、金じいさんが特殊霊魂にされた時以外はそこまで強くないし、賑やかし。

見た目はチャオズで役割はヤムチャ、そんな意味で無敵の存在。


『ベビーキョンシー』に精神を試される

キョンシー隊が今夜もせっせと帰宅を急いでいると、邪魔者が現れる。
宅配ミスや、記入した住所が不明だったわけではなく、ストーリー展開です。

泥棒やキリスト教徒(?)盗賊もいますが、いつも一番乗りで邪魔をするのが『ベビーキョンシー』

シリーズの1〜2までは天使な子生意気な存在だが、3〜4ではアイコン的存在になり、危険を知らせたり、テンテンを助けたりしてくれる。

名前の通り3歳くらいの子供のキョンシーで、あどけない顔でキョンシー隊に近づき「パパ〜?お家に帰ろう?」と言ってお札を剥がし、連れ去ってしまう。

お気づきになっただろうか。

キョンシーのスキルは唸る、跳ねる、噛む、の3つ。
なのにこの子ったら「喋る」のよ?

金じいさんが言うには「ベビーキョンシーは山の中でお父さんと生き別れて死んだ子供の霊魂」
映像では確かに滑落死した子供の遺体から、キョンシーの格好をした魂が抜けてベビーキョンシーになっている。

ちょ。

肉体、ないやん。
概念、キョンシーやん。

でも本家が言うからキョンシーで通すしかない、ツッコむのは野暮ってやつか。

ほなお前は映画館でポップコーンを買う時に「塩味のとうもろこしMサイズで」って注文するんか?と問われているような、精神を試される存在です。


魅力的なキャラクター達

シリーズ1と2は大道芸の孤児とキャンシーになった親方との泣ける話。
そしてキョンシーと道士、呪術の基本を教えてくれる。

シリーズの3と4は、テンテンと金じいさんの過去編で、家族愛を存分に扱った話。

とも言えるが。

1と2はマイケル・ジャクソン意識して、3と4はヘビィメタルが流行ったよね?ゾンビから吸血鬼にシフトしたよね?という文化的な見方も出来る。

そんな時代への素直さがチャーミングで、ミーハー。それもキョンシー映画の醍醐味です。

私は2で出てくる『ムササビ道士』が好きやな。
女性の道士が金じいさんにコテンパンにされ、腹いせにお父さんのムササビ道士にチクる。
「金じいさんが、お父さんは眉毛ゲジゲジで変って言ってました」
「よし、殺そう!」
めっちゃカジュアルに殺意抱くやん。

ジャイアンよりジャイアン、思い切りの良さと吹っ切れたバカが愛おしい。

4にはついに『悪魔』もでてきます。

この悪魔の悪魔的要素、それは服装。

素肌に甲冑をつける「裸・甲冑」スタイルを貫いている、斬新なおじさん。

前掛けから伸びた生足でカンフーを繰り広げやがる。
多分パンツ履いてると思うけど、悪魔はモラルのない存在やから履いてなかったらどうしよう、少女から立派なレディに育ったテンテンがいるのに!
と、要らんハラハラをさせくる厄介な奴。

生身の人間に憑依してる時は安心やけど、プライベートな悪魔は衣装がヤンチャ。
普段は清楚を貫き、プライベートは大胆なけしからんおじさん、色んな意味で悪魔です。

『フルメタルキョンシー』もいるけど。

惹かれません。

だって平素のキョンシーでもあれだけの腹筋力で跳ね回ってるんですもん、そらカッチカチやろ。死後硬直だってしてるし?
衣装がメタルになっただけの見た目から入るタイプのキョンシーに見えちゃって、なんかイマイチなんですよね〜。

以上。

3㎝の知識で見た、帰宅を急ぐ情報量の多いお父さんの考察でした。

#なんのはなしですか
#賑やかし帯

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集