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春の地獄短編『一生、一緒に死んでやるわ』

これで〜BL小説企画の19弾やったかな?
なんかもうわかりません!
色々ありすぎて小説だけしか出来てませんでしたが、私は元気です。

今回は通常お題!

「地獄」「土壇場でキャンセル」「オタク×オタク」
この3つのお題を使った3000〜5000字のブロマンス〜BL小説です!

今回の参加者は私を含めて現在15人、小説は17本になる予定です。※2品作投稿している人もいます
全作品をまとめて、あらすじ付きアンソロジー記事として明日(4月21日)〜一週間トップに私のnoteトップに貼り付けますので、一気読みしたい人やあらすじやジャンルで選びたい人はそちらからどうぞ。
全作品のレビューは書き上がり次第投稿し、Xにも出します。

Xユーザーの方は企画に関するポストを見つけましたら、出来ればリポストをお願いします。引用で私をねぎらってくれたら、はしゃぎます。

レッツ noteBL

※男性同士の恋愛を含みます。
※ちょっとエロ描写が後半にあるよ。

あらすじ

ホラー小説家のあたるさんは、俺に興味も示さない。
その向かいで本を読む俺は、その注意を引きたくて仕方がない。
だけど中さんは俺に対して呆れているのでもなく、嫌になっているのでもない。
“ワケあり“の2人が今日を終えていく、寝る前1時間の話。

ジャンルはヒューマンドラマかしら。


本編『一生、一緒に死んでやるわ』


俺ってカゲロウに似てるな。
発言に対し向かい席のあたるさんは「そうねぇ」と目頭を揉んだ。ずれた眼鏡も俺の発言にも興味はないらしく、ノートPCの液晶から視線は逸れない。
虫なのか、現象なのか、せめてそれくらいの興味は示せよと眉間の皺で毒づきながら、開いたままの本を指の腹でぽんぽん、と叩いてページ数を暗記する。
しおり紐は使われている。
長い間そこに挟まっているのか、もうページの間のえんじの紐は、きっと開くと押し花みたいになっているだろう。

「明日も読んでいい?」
「はいよ」

調子だけの空返事で中さんはカバンに手を突っ込み茶色いぬいぐるみを出した。
思わず二度見すると、それはトカゲの形のペンケース。尻尾がまだ青い。
背中のファスナーを開いて背骨を抜くようにボールペンを出すと、黄色い付箋に何か書き付ける。ペンケースのつぶらな瞳はおぼこいのに右上がりの尖った文字は大人っぽい。

「貸出期間は3日間」

無断で本を閉じ表紙に付箋を貼って、その手で眼鏡をくいっと上げる。
書かれたのは今日の日付と返却日で、まるで図書カードと思いきや“48P“とページ数も追加された。
なんで俺がしおり紐使わんの知ってんの?

「なぁこれ、」
「てかもう11時過ぎやん!一斗いっとくん先に出といて」

腕時計に舌打ちし、ドリンクバーのグラスに残った烏龍茶をガバッと口に入れ氷を奥歯で噛み砕きながら俺の手元から本を強奪すると、ノートPCと一緒にバックに押し込み立ち上がる。
眼鏡を外し忘れたせいでふらつきながら、テーブルについた手で誤魔化すように伝票を引っ掴んでレジに消えた。

中さんはホラー作家だ。
ミステリーのつもりで書いた小説がホラーのジャンルで書籍化され、それならばと趣味に走ったエログロ小説を2作目に出すとコアなファンがついたと、初対面の国際線のラウンジで自慢された。
あの日も無料ドリンクの烏龍茶を飲んでいた。
あの頃の俺は大学の歴史文学科で、フィールドワークと託けて色んな国に赴いていて、その兼ね合いで空港で出会った気がする。
だけど、23歳の夏に事故に遭った後遺症で記憶が24時間しか保てなくなり、それからは中さんに世話になっている、ようだ。
症状は睡眠障害に近く、夜の12時になると朦朧として記憶がなくなる。そして目が覚めたら、朝…なんやと思う、もう前日のことは忘れてるから知らんけど。
だから絶対に夜の12時までにはベットに入るのが鉄則、らしい。

さらに俺はこの生活を長期に渡って続けている、らしい。
だって3歳上のはずの中さんが、どう見てもえぇおっさんになっているからだ。
今の中さんをどんなに若く見積もっても40歳前後。
今朝も起き抜けに在りし日の事故とその後の自分の運命を説説と聞かされながら、テンプレ感満載の一言一句に自分達の長い歴史を感じた。

「おっとう」

自動ドアから中さんが片手をあげて出てくると同時に、駐輪場の自転車止めにもたれていた尻をあげた。
「かわい子ちゃんおらんかな〜」の一言は聞き流して歩き出す。
眼鏡はサングラスみたいに襟元にさされている。転けてもいいから眼鏡のままのが好きと思ったが癪やから言わん。

「なぁ、中さん今夜ってまだ春?」
「そうねぇ、まだ晩春かしら?でも言うてる間に初夏よぉ」

中さんは隣に追いつかない。仕方ないから前を歩き続ける。

「日本人ぽいこと言うやん」
「あらぁ、作家らしいて言うてくれる?」
「エログロ小説でもそんな言葉使うんけ?」
「使うわよぉ。あんなぁ、作家ほど言葉オタクの仕事はあらへんのよ?専門家みたいに掘り下げんやのうて、題材によって広く、浅く幅広く知らなんだらあかん」

急に隣に追いついたと思ったら、手前の店から出てきた女子グループの均等に並んだ丸い尻にすかさず鼻の下を伸ばしてた。
顎に手を当て態とらしく吟味する態度にカチンときて、俺は無理やり腕を組んで肩に寄り添い、ダーリン明日もデートしようね?と大きな声を出す。

「やめぇ!アタシに一目惚れした美人に聞かれたらどうすんねん!」
「どないもせぇへん、夜道に気をつけてって言えばいい」
「いやよぉ、かわい子ちゃんとあわよくばエッチしたい!」

でも、アホなやりとりに振り向いた女子がくすくす笑うと、よくやった!と頭を撫でやがり、ケッと道路に唾を吐くふりをする。

「中折れしろ、地獄に堕ちろ、一緒に堕ちて針のむしろでてめぇの折れたちんこの白膜縫い合わせたるわ」
「唐突の医療行為、屈辱地獄の権化、でもアタシの起死回生!」バカにすんなよスケコマシ、その勢いで俺の1人でも抱いてみろ?と睨んだ顔がクドい。

中さんは肌の色が健康的だから、外国人にたまに間違われる。そんで俺も先祖帰りかなんか分からんけど、目の色が水色やから外国人に間違われる。
中さん曰く俺は「やたらいちごの多いショートケーキみたいなゴテゴテの顔」やけど、俺曰く中さんは「別にいいのに無理にいちごと砂糖菓子のせたクリスマスのチョコケーキみたいな顔」やと思う。

せやのに俺はこのクドい顔を毎朝忘れてる。
昼過ぎには胸焼け必須のクドい顔のせいで、上がった胃酸で心臓が溶ける。
中さんが文字オタクなら、俺は中さんオタクや。
何回でも何度でも、新しい中さんな胸を焦がしたくて、しって忘れてんかも知らん。

好きな人の情報を聞く量がオタク度数に換算されるなら、俺は生きてる限り埋め尽くせるハイパー中さんオタクになれる。

「まだ桜咲いてるわねぇ」

児童公園の入り口の桜はまだ若いのか、濃ゆいピンクで背が低く、奥の大層な枝ぶりの桜の大木は年寄りなのか白い花びらを禿げ散らかしてる。
それを見た中さんが「桜の話でも書こうかしら」と腰に手を当て立ち止まる。
俺はそんな中さんの全身を見る。
ブルーデニムに生える雪駄の鼻緒が梅色で、この人は変な情緒を楽しむ人やったと花など無視してオタクを重ねる。
俺のオタク心に散りゆく定めはないらしい。

「なぁ、桜って何味?」
「ん?」
「桜てそもそも食いもんちゃうやん。桜味て何味やねん?」

俺の頭にはファミレスで食べた桜フェアのメニュー。
あんこや抹茶や苺にごまかされて不明なままの桜味にずっと納得出来ていない。

「やからそれはぁ、…はぁ」

なんべん言わせんねん?と言いたげな中さんが俺の顔を覗き込む。
どうやら昨日の俺も聞いたらしい。

「ほんならアンタの青い目はブルーハワイの味か?」
「ブルーハワイて何味やねん?」

負けじと唇の先をいつもより尖らす、中さんの眠そうな幅の広い二重の目の中の俺が上目遣いでいい感じに小生意気に映る。
俺達のあまりの至近距離に隣を通り過ぎた自転車の年配女性が「あらぁ〜まぁ!」と腰をあげ、ペダルを踏み込み走り去った。

「広域のみぞれ味や」
「みぞれ味て何味やねん?」
「砂糖水や。奇抜な色と名前で他人の脳を誤魔化すけど、本来は一般的で見掛け倒しのアンタみたいな嘘の味や」

この答えには満足する。
中さんの装飾されたものの裏側にある真実を見ようとする姿勢と、目から脳を覗いて自分の主観で裏側に触れようとする目線が好き。
夜の街頭の下で短く濃ゆい影を中さんの影を踏み続け、俺はずっとこの目の中でいたくて、これ幸いと矢継ぎ早に話す。

「俺の目、ユカタン半島のツェツェン・イツァにあるセノーテに似てるって言われた事ある」

きっと今、俺の水色の目は透き通って生き生きしている。
「潜ってみた事もあるし」と付け加えると、オカルトやフォークロアが好きな中さんの瞳がキュッと収縮されてきらきらした。

「あんなもんに自ら入るってどうゆう心理よ?」
「名誉ある生贄として育った人々の本当の思いに触れてみたかった」

嘘。

本当は自分が信じるものに全てを捧げるのはどんな気持ちか知りたかった。

乾燥期が続いたメキシコで常に水を湛えているこの泉は命綱。
人々は水と命が枯れないように、生贄をせっせと泉に捧げた。

ぽかりと開いた胸から血液が出ているのか、この透明な水を体内に満たすために流れ出ているのか。
なんにせよ、体中がすっかり水に満たされて、もう流す血も吐く息もない。
まばたきの度に浮かぶ家族の顔、目を閉じれば地上で最後に見た繰り抜き祭壇に捧げられた己の心臓。
自分はこの水底に沈むために生きたはずなのに、この後に及んで水面が眩しくて仕方がない。
涙が無色でよかった。
血液みたいに目につくと、捧げたばかりのこの身から出た不覚悟が神さまにばれてしまう。

俺が水中で思ったことは全て想像でしかないが、深く澄み渡った青い水の底は骸骨がごろごろしていた。
きっと未練は塩っぱい。
俺はあんなに行き場のない濃ゆい塩分を、水に感じたことはない。

今頃はトウモロコシの神様の祭りやね、と話を締めくる俺の目を中さんはさらに覗く。

「確かにその解釈はあってるわ、アンタの青い目の奥には頭蓋骨があるもの」

どちらのモノでもないつるりとした頭蓋が浮かぶ。
それを引き剥がした脳の中まで覗かせようと、目を開けたまま更に顔を寄せる。
心拍の揺れで唇の表面が触れる。
その寸出で起きた花吹雪が花びらを一枚唇につけ、薄く冷たい感触に重なる体温が混ざる。

「なんじゃ桜!キスの邪魔すんなや!」

花びらを舌で舐めとって吐き捨てたら、中さんが「カッカしなや、綺麗やないの」と頬が膨れたガキくさい俺をもう見ずに歩き出した。

「命がけで咲いてる桜からしたら、ロマンや恋の土壇場にすなって話よな。戦国武将が腹切ってる最中に花は散れども、キスする馬鹿がおるかっての」
「ちゃうし、絶対嫉妬やし」
「ほんで、桜は何味したん?」
「知るかボケ!」

桜はキスキャンセル界隈ねぇ?皮肉に歪んだ中さんの唇を今は噛み切ってやりたい。
桜なんか咲いてるうちが花じゃ、来週には毛虫まみれで嫌われるくせに!と愚痴り倒した自分も、あと数分が花と気がつく。
12時になると今日の記憶は桜より早急に散りさらばえる。
歩き出した中さんは振り返らない、あと30分で今日が終わるから、急ぐ背中には俺が追いつくしかない。


中さんの惰性の前戯に声も出ない。
すうっとおりた電気の紐が蜘蛛の子のようにゆらゆら揺れて、つぶらな瞳のペンケースがカバンの隙間から無抵抗な俺を視姦している。
中さんは帰宅するやいなや時計を睨んで、俺を押し倒し性急にコトを進めると、正常位で押し込み俯いてそこからピクリとも動かない。

俺って恋人やったのか。
埃に混じった解答が室内灯の中に舞う。

腹の下で蠢く男根にびくりと反応した手が、ベットの横のゴミ箱に当たってこかす。
こぼれたゴミに舌打ちしてカレンダーを見上げると、可燃ゴミの日は明日といつかの俺が書いていた。
あと10分でゴミの日か。

動き出した腰のリズムに身を任せて、こぼれたゴミの中の散らばるコンドームの外袋を何と無しに数える。
1つ、2つ?口を括ったコンドーム、カシカシになって丸まったティッシュ、学生時代にかいだ彼女のいる友達の狭い下宿のような、むあっとした臭に細胞が皮膚を泡立たった瞬間うつ伏せにされて背から抱き込まれた。
痩せ細った俺の胸の中心に爪が立つ、空っぽの腹に中さんの命が脈打つ。
爪が肌に食い込み肋骨を折り抜いて心臓が暴かれゆく姿を想像しながら、ゴミの中にくしゃっと丸まった黄色い付箋を見つけた。
今日が返却期限の貸出カードに更新されるページ数、突かれた男根が不安を喉まで押し上げる。

しおり紐の主は、一体いつの誰にとっての可惜なの?

毎日俺は虫の本を読み寝床に引き込まれ、中さんは命を打ち込み果てたコンドームをゴミ箱に捨てる。
俺の時間は流れているのに記憶はずっと23歳のままで、目覚めから24時間の記憶を脳は健やかに吸収し、代謝して23歳に戻す。

無意味なルーチンに嫌気がさした。
微生物、スカベンジャー、ありとあらゆる土の中に蠢く生き物が俺の体も代謝して、無かったものにしてくれたらいいのに。

悔しさで歪む顔を畳にこすった深夜12時、鼻炎薬のような抗えない眠気に意識が混濁していく。

引き抜かれても感覚が残る男根に、つま先が尖るほど仰け反りたい。なのに脱力した方が楽になる事を知った体が素直に従う。
逃げるように記憶が散って、明日を持てない事に無性に腹が立つ。
塩っぱい未練が色もなくゆれる、このまま死んでいく自分の気持ちの行き場を探す。
その底にはきっと頭蓋がゴロゴロしてる。

「一生、一緒に死んでやるわ」

願ってくれるなら俺やって。
くり抜いた心臓をあんたの顔面にぶつけて一緒に死んでやるわ、ダーリン。



桜とキスキャン

作品自体もまとまらなくて全てが釈然としない話になりました。
桜の時期はバラ科のアレジー全開で杉とヒノキより体調不良になる私が、桜を題材にすると憎しみしか湧かない事が分かったので、そんな素直な自分を見つめ直せた部分はよかったです。

『地獄』のお題は広域に見て、同じような未練を毎日繰り返す事。
『オタク×オタク』は好き合う2人はお互いのオタクでしょ。
『土壇場でキャンセル』はキスキャンしている桜です、当事者は土壇場でしちゃったけどね。

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