短編小説『一目惚れの推奨人数』
さて、今回で第15弾!3つのお題で書くBL小説企画!!
「ルマンド」「初雪と一目惚れ」
「シングルベットの組み立て推奨人数が2人だった」
この3つのお題を使った3000〜5000字以内のBL小説です!
ルマンドをお題に書くのはなんと2回目!理由は聞かんでやってください!
今回は企画参加者が最多の14名!ご新規さんも5名となかなか豪華!
同じお題で同じBLというジャンルであっても14人もいたらさすがに全員被らないだろう!
そんな期待しかない参加者さん全員のまとめ記事は出来次第で私のnoteトップに固定します!読み回りや交流、記念などにご利用ください!
今回のキャスト
お寿司のかっぱ巻きは好きだけど、ご飯に新鮮なきゅうりを乗せて食べたいとは思えないプロバスケットマンの宗谷 有時
日本の子供はピーマン嫌いだけど、海外ではブロッコリーだと字幕映画で気がついたプロバスケットマンの木村 リキ
いつだって名前だけ出演で有時さんの元彼でリキのライバル巴先輩の3人です。
さてと、とっととレッツ#noteでBL !!
『一目惚れの推奨人数』
さぁて、長い冬の夜が来ましたよ。
晩飯すんだ、洗い物終わった、風呂入った、戸締りオーケイ!ベットに飲み物も置いたし、コンドームの在庫も確認した。
外の木枯らしを締め出したあったかい室内で、目の前の美味しいあなたを後は思う様むしゃぶりつくすだけ!と舌舐めずりの俺に、恋人の有時さんがスン、とした顔で言った。
「リキ。今日、家具屋でたまたま見たシングルベットの組み立て推奨人数が2人だったんだよ」
「はい!…え?はい?」
「シングルベットは1人で寝るのが前提なのに、組み立てるのは2人がおすすめ。1人用を2人でっておかしいよね」
言われてみれば。
でも今はその話じゃなくって!と、抱き寄せようと掴んだ肩をやっぱり離す。
確かに今はその話じゃないけど、一度気になったら有時さんは絶対に思考を止めない。
すなわち、エッチに集中してくれない。
「考えましょう」
「うん。もしもこれがダブルベットだったなら俺はすんなり通り過ぎれたんだよ」
そんな会話をキングサイズのベットの上でしている俺は、ベットや家具を自分で組み立てた経験が実はあんまりない。
大学まで実家でそこから家具は備え付けの寮生活を経て、プロになって入団。
寝具と家具の会社がチームとスポンサー契約してたから、ベットも贈呈してもらったし、搬入時は全て企業のスタッフ任せ。
だからか、たまたま家具屋の前を通ってベットが視界に入っても、八百屋に野菜がある程度の興味で、通り過ぎていた。
てかそもそも、明日が休みの恋人同士がベットの上でする会話かよ。
「地方出身の初めての一人暮らしで、周辺に頼れる人がいなかったらどうすればいいんだろう?」
「ん〜…シンプルに推奨人数だから1人でも出来るって軽く流せばいいんじゃね?」
「だけどね、リキ。もしも突然に恋人に別れを告げられて同棲を解消、泣く泣く移り住んだワンルームでこれを読んだら、一曲バラードが出来るくらいやり切れない心象に陥ってしまうよ」
「そんな時に自分の心に正直にギターをかき鳴らすから、不変の名曲が生まれるんすよ」
「なるほど」
いい具合に話が逸れた、しめしめ…と鼻の下を伸ばすが。
「お勧めするって事は可能であればそうして欲しいって事でしょう?事故の危険がある事を示唆してるのかな?」
よし、おかえり有時さん。なんかごめんね、有時さん。もう少し話しましょう!
「ん〜それだったら、注意書きにするっしょ、項目が違いますよ」
「じゃあ、組み立て工程のどこかでフランケンシュタイナーが入るとか?」
「おぉ、ベット云々そっちのけのプロレスの大技じゃねぇか」
「そもそも工程が難解すぎて1人で謎を解くのは難しいから2人で考えた方がいいとか?」
そっか。
俺が家具を組み立てた経験がなければ、同じ進路で生きてきた有時さんも無いわけだ。
「それってベット組み立てデスゲームってこと?」
「うん。2人で知恵を絞ってベットを組み上げろ、みたいな」
「…あの、たかがベットに求めすぎでは?」
「されどベットだよ。
例えば俺たちが今座っているベットがある日バラバラの状態にされて「制限時間5分以内に2人で組み上げないと今夜は寝かせないぞ」って、ゲームマスターに突然言われるかもしれない」
有時さんはお尻を軽く弾ませて、ベットをギシギシさせた。
俺も今夜は寝かせないでほしいので、そろそろセックスの推奨人数について考えませんか?有時さん。
「あの〜すいませんけどデスゲームとしてはレベル低いし、マスターのセリフから昭和のスケベ上司が見え隠れしてます」
まぁもう。
付き合って1年だし、4年先輩とはいえ恋人なんだし、申し訳ないけど強行突破させてもらおう。
そんな考え事なんか忘れ去るほど俺がぐちゃぐちゃに気持ちよくしてしまえばいい。
「よし、一回ベットを忘れよう?気分転換に甘いもん食いません?」
「こんな時間に?」
有時さんが寝室の壁掛け時計を見上げる、今は夜の10時半。
個人的にエッチを初めて終わらせて寝るのにベストタイム、何がなんでも恋人の身も心も溶かしにかかりたい。
とはいえ一応俺たちはアスリート。
だけど簡単な食事制限くらいで今は2人とも糖質コントロールもないから、歯磨きを怠らないように寝落ちに気をつけるだけ。
「食って、ベットの上で消費して寝ればいい!」
有無を言わさず寝室を走り出てリビングを抜けてキッチンに駆け込む、有時さんに内緒で買った未開封のルマンドを持って戻ると向かいに座り直した。
「お行儀悪い」
「無礼講っす」
袋を開けて個包装の一つを手渡すと、有時さんはまた止まってしまった。
「一袋のルマンドの食べ切り推奨人数は何人なんだろう?」
「…だめだこりゃ」
「1人で食べ切れるけど、一気には無理だから数日に分ける。でも、数日に分けるなら誰かと食べたほうが効率がいい」
「さーせん、それってどこ目指してんの?食べ切りタイムアタック?」
「分からない。そんなのシングルベットの組み立て推奨人数だって、1人なら何分とか、記載されていなかったもの」
面倒になって、外袋を割いたルマンドを有時さんの口に突っ込む。
反射的に口を閉じたせいで唇で咥えた状態になり、パリパリしたクレープの周りのココアチョコがふくよかな唇の周りで溶け始めた。
なんかエロくて先を掴んでそのままぬるぬる出し入れしていると、俺の意図に気がついたのか有時さんの目元がふっと緩み、やっと本来の時間を思い出した。
「…もっといれて」
「どこまで?」
「ずっと中まで」
人差し指でルマンドのお尻を突いてゆっくり口の奥に挿入すると、頬からサクサクとクレープを齧る音がして、こめかみがピクピクしている。
食べ切ると今度はチョコに塗れた唇を突き出して見せつけてきた。
「ねぇここ、舐めて」
「どこまで?」
「ずっと中まで」
よしきた!ここからは俺のターン!
個包装だから安心してルマンドを傍に置いてそのままベットに押し倒しながら、小さな後頭部を支えるふりして逃げないように鷲掴んで口の中に舌を捩じ込む。
俺の舌に溺れながら押し倒されてくれた恋人は、しばらく弄ばれてくれたが。
「俺とセックスを楽しむ推奨人数は何人だろう?」
「…ん〜それは、一回に何人って事?それとも、お付き合い人数って意味?」
「待って。一回に何人ってどうゆうこと?」
「あ〜あの、3P…えっと、3ポイントじゃなくてthree peopleな?例えば、ん〜……有時さんが一回に俺と巴先輩をベットで相手をする、みたいな?」
ここで有時さんの元カレの名前は出したくなかったが、他に例えがない。
ちょっと渋い顔をした俺をまっすぐな目で見上げながら、俺に舐められてチョコレートと涎で濡れた唇をグイッと手の甲で拭った。
「3人でセックスをするの?」
よし!どんとこい世間知らず!ふっといてなんだけど無視しよう!
「例えです!!…ってことはぁ、さっき言った“何人“って人生に何人を自分の体にお迎えするか?って事っすね!!」
「うん」
抱き抱えてベットを這い上がって真ん中辺りで覆い被さってキスをする。
と、ここまではすんなり受け入れたけど、視線が斜め上を彷徨っていて気持ちはまだ疑問にさらわれたまま。
仕方ない人だ。
「先輩に抱かれた過去は上書きするしか出来ないんで、俺で打ち止めにしてください。有時さんは人生で2人まで」
「なるほど。俺とセックスを楽しむ推奨人数も2人か」
「そうっす!でも回数は無限だから今から1カウントしよ?」
「うん。…1でいいの?」
「え?2もいいの?」
「ふふふ、いいよ。きて?」
お安いご用!と言いたいけれど、それならもっと早く言ってくれよ!11時過ぎてんじゃんか!2回いけるかな?
多分無理だと予想して濃厚に1回を済ませたらいつも寝る時間の12時に達してタイムアップ、俺がコンドームを処理する間に有時さんが寝落ちした。
歯磨きさせるのを忘れたなぁ、まぁいいや。
隣に寝転ぶとすぐに睡魔がズシっと覆い被さって、静かな室内に有時さんの規則的な寝息と、外の冷たい風の音だけが聞こえる。
そういえば、先月母ちゃんから来たLINEに「雪虫」が出たと書いていた。
俺と有時さんの故郷はもう初雪を終えている。
こっちもそろそろだな…
……
「……ぃてリキ。ねぇ」
んぁ?
「起きて」
「…ぁに?どした?」
掛け布団から体を出して横座りした有時さんが、お気に入りの白いふわふわの毛布にくるまって俺を揺さぶっていた。
どうしたのか気になるが、寝足りない重さの俺の脳みそが目を覚めさせても体を起こさせない。
うとうとまどろんでたら強硬手段にでた有時さんが腕を引っ張った。
上半身が少し起きたところで膝で踏んだ毛布に滑って俺の胸の上にペシャッと顔を落とす、鎖骨に当たった有時さんの鼻の頭が冷たい。
寒くて寝れないのかと腕を掴んで布団に引き込ん毛とすると「違う」とゲージを嫌がる犬みたい鼻の上に皺をつくって腕を突っ張った。
「外に出よう、雪が来たよ」
「雪?」
「うん。ねぇ、早く」
自由というか、なんというか。
そんなとこが、なんというか。
「ん〜……がぁ〜っ!!よし、起きた!」
逐一好きにならずにいられないよ、有時さん。
正直、雪国で生まれ育つと雪は人生の一部。
カレーに入ったじゃがいもとニンジンくらい当たり前だし、朝イチの雪かきダルい。
でも故郷を離れると無性に初雪を心待ちにする時がある。
有時さんの方が俺より4年早く故郷を離れたから、俺より4年早くそれが来たのかもしれない。
昨夜忘れた歯磨きをして、簡単に身支度をすると2人で青白い夜の終わりに出た。
街はまだ寝静まっていて、道を照らす街灯と東の空の明るさだけが俺達を見ている。
雲の感じ、風の止まり方、乾燥…は、この辺りはそこまでないが、1番冷えるこの時間にこっそり街に忍び込み、朝からみんなを驚かそうとしているのを有時さんは見極めて、初雪を先回りしたかったようだ。
「雲がいいね。俺はやっとこの辺りの雪の前兆を見極めれたんだよ」
「へぇ、熱心っすねぇ」
もしかしたら、帰りたいのかもしれない。
盆は毎年帰ってたけど、正月は何かと気忙しくて長く帰っていないと言ってたし。
「なぁ、今年は一緒に正月帰ろうか」
「うん。…お母さん、具合どう?」
「うちの母ちゃん?あ〜放射線治療も始めたとこで体の中はどうかわかんねぇけど、気持ちは元気ってLINEきてた」
「帰省の機会にご挨拶に行かせてもらえないかな?」
「いいじゃん来てよ!つっても、有時さんの弟の充時と母ちゃんツーツーだから有時さんも勝手に身内みたいに思ってるけど!」
「でも驚くよ?俺達がお付き合いしてるって言ったら」
あ、そっちの挨拶?
俺はまた、先輩後輩で仲良くしてるとか、同じチームですとか、弟がお世話にっていう兄心かと思ってた。
呆気に取られた俺の前を歩く有時さんの後頭部の毛がふわふわ揺れる。
遠くの光を見つけて覗き込み「パン屋さんだ?もう2年も住んでるのに知らなかった」とはしゃいで、白い息が黒い髪とまた揺れた。
朝が近づく青白い空から白い雪が落ちた。
「有時さんが俺の最愛の人って言ったら、喜びショック療法で母ちゃんのガン細胞が駆逐されるかもしんねぇ」
「え?聞いてなかった、ごめん」
だめだ、もうパンに夢中だ。
伸びた前髪が振り向いた勢いで顔にかかって、払ってあげようと手を伸ばすと、キスみたいな反射で目を閉じた。
赤くなった鼻先が肌の白さを際立たせ、大きいリブのハイネックに顎まで埋もれた顔のあどけなさに目が離せない。
真っ赤な上唇がハイネックに乗っかって、セーター食っちゃってるみたい。
初めての雪に時間を任せて2人同時に息を吐く、なぜだか初めての恋みたいな距離が詰めれない。
「ねぇリキ、知ってる?
誰もいない初雪の朝に起こる一目惚れの推奨人数は2人なんだよ」
知りたく無かった。
「やっぱりリキは雪がよく似合うよ。ずっと見ていたいくらい素敵だ」
どっちにしても、惚れるしかないから悔しいし。
「…そ、それ、俺が言いたかった!」
「あげないよ。来年も俺の台詞だもの」
手を握りたいのにすり抜けられて、空振りした手で拳を作る。
そういえば、これが俺の心臓の大きさらしい。
このバカでかい心臓は、あと何回この人に惚れて震えるんだろう。
「朝飯にパン買って帰ろうぜ」
「そうだね。バゲット買おう」
ずんずん進む有時さん、とは言えまだ開店前です、有時さん。
ボロボロ空からこぼれる初雪も忘れて「バゲットは1本だけど食べ切り推奨人数は2人」と白い息で吐き切った。
吹けば飛ぶような後書き
雪虫は、初雪が降る1〜2週間前に出てくる白くてほわほわしたアブラムシ科の虫です。
フランケンシュタイナーは、格闘技の大技でカプコンのゲーム「ストリートファイター」のキャミィの代名詞みたいな技。
簡単に説明すると…相手が向かってきたところで跳び上がって頭部を自分の両脚ではさみ、後方に回転する勢いで投げてマットに頭部を打ち付ける投げ技で、主に小柄な選手がよく使っています。
入り方が同じなのでウラカンラナと見間違えやすい技ですが、技をかけられた相手の体制で違いがわかります。
その場のジャンプの跳躍で一気に畳み込むホールドなので、シングルベットを置くキャパシティでも可能だし意表を突くには持ってこいな技ではあるが、ベットの組み立て中なら関節技の方が速やかでよかったな、と書いた後に反省しました。
小説は難しいですなぁ。
