一宮光輝が語る『THE ALFEE 桜井賢』─ 僕がボーカリストとして最後に辿り着きたい "脱力の境地"
はじめに ─ 僕がずっと、語りたかった人
桜井賢さん(THE ALFEE)。
この人のことを、僕はずっとプライベートで話してばかりいて、なかなかチャンネルで取り上げる機会がありませんでした。
理由は、半分は 自己満足になりそうで怖かった から。
そしてもう半分は ─
「僕が、ボーカリストとして、人生の最後に辿り着きたい境地が、桜井賢さんの声の中にある。」
これを上手く伝える自信が、なかなか持てなかったから、です。
でも今回、思い切って言葉にしてみます。
「脱力の境地」
─僕がこの3文字で表現したいのは、桜井賢さんの声の中にあるものです。
まず、THE ALFEEのことを少しだけ
THE ALFEE(ジ・アルフィー)は、
1973年に明治学院大学で結成された3人組バンドです。
- 高見沢俊彦:リードボーカル、エレクトリックギター、楽曲制作
- 坂崎幸之助:ボーカル、アコースティックギター、パーカッション
- 桜井 賢:ボーカル、ベースギター
1974年にシングル「夏しぐれ」でデビューしてから、
本記事執筆時点(2026年)で 約52年。
日本を代表する 長寿バンドの一つ です。
そして本日の主役、桜井賢さん は1955年1月20日生まれ。
2026年現在 71歳。
ベーシストでありながら、ALFEEのリードボーカルとしても多くの代表曲を歌い上げてきた人です。
桜井賢の "ブレイクの3部作"
ALFEEは長く下積み時代を過ごしたバンドで、
デビューからブレイクまで 約10年 かかっています。
そのブレイクの瞬間を作ったのが、
桜井賢さんが連続でリードボーカルを取った 3部作でした。
| 15th「暁のパラダイス・ロード」 |
1983年3月21日 | オリコン17位 |
| 16th「メリーアン」 |
1983年6月21日 | オリコン7位/37.3万枚(初のトップ10入り) |
| 17th「星空のディスタンス」 |
1984年1月21日 | オリコン4位/ザ・ベストテン1位 |
「メリーアン」でついにブレイク。
そして「星空のディスタンス」で 人気を決定づけました。
→ THE ALFEEが約10年の苦節を超えた瞬間、
その先頭にいたのは 桜井賢の声だった ─僕は、そう感じています。
ここから本題 ─ 71歳の声が、なぜ枯れていないのか
2026年。
桜井賢さんは71歳になりました。
普通、ロックバンドのボーカリストが70歳を超えると、
声は どこかで衰える ことが多いです。
- ハイトーンが届かなくなる
- 息が続かなくなる
- 声に張りがなくなる
- 揺れが大きくなる
しかし桜井賢さんは ─僕の耳には、声が衰えていないように聴こえます。
むしろ 「無駄」が削ぎ落とされ、より純度が増しているように感じます
(これはあくまで僕個人の耳での観察であり、
「若い頃より上」と客観的に証明することはできません)。
これは、僕がボーカリストとして「最後に辿り着きたい」と思う、
稀有な状態です。
僕が桜井賢さんから感じる "異常な美しさ"
実際に桜井さんの歌唱映像を観てください。
僕が、いつも観察している彼の身体特性は、以下のとおりです。
- 姿勢が、ほとんど崩れない
- 首のポジションが、歌唱中ずっと同じ
- 視線がやや下に置かれている
- 肩のポジションが、固定されている
- 口を、必要以上に開けない
- 下顎が、前に出ない
- ベースを弾きながら、フレットをほとんど見ない
- 歌い終わっても、姿勢が崩れない
これは僕のレッスン現場の経験から言えば、極めて稀 な状態です。
普通の人が歌うと、必ずどこかに 力みの痕跡 が残ります。
首が前に出る、肩が上がる、口を開きすぎる、目線が泳ぐ ─。
桜井賢さんには、それが ほとんどない。
僕の耳には、声の中にも 「邪魔」「無駄」が一切感じられません。
ここまでで読んで頂きたかったこと
僕がボイストレーナーとして約20年以上現場に立ち続けて
今思っていること。
「歌の上達」というのは、足し算ではなく、引き算なのかもしれない。
技術を増やすことよりも、力みを抜くこと。
声量を上げることよりも、邪魔を消すこと。
表現を増やすことよりも、無駄を削ぐこと。
桜井賢さんの歌は、その引き算が 限界まで進んだ姿 だと、
僕は感じています。
僕が、この記事で本当に解きたい問いは3つあります。
なぜ桜井賢は、71歳になっても声が枯れないのか。
なぜALFEEの「メリーアン」「星空のディスタンス」は、約40年経った今も同じ熱量で歌えるのか。
そしてなぜ、彼の歌には "脱力" という現象が起きているのか。
ここから先では:
- 「脱力の境地」 ─力を抜くために必要な、本当の "支え"
- 下半身エンジン理論 ─上半身を脱力するために、下半身がする仕事
- そして、あなた自身が今夜、自分の身体で再現するためのエクササイズ
を、解剖していきます。
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まず、僕がこの記事で問いたいこと
多くのボイストレーナーは、「高い声を出す方法」 を教えます。
息の使い方、ミックスボイス、ファルセット、、、などなど
─技術論はたくさんあります。
でも、僕がずっと知りたかったのは、その 先 です。
「70歳を超えても、歌い続けられる身体は、どう作られるのか。」
この問いに、僕はずっと答えを探してきました。
そして、桜井賢さんの歌を観察するたびに、その答えは
「喉」ではなく「身体全体」にある と確信するようになったのです。
ここから書いていくのは、その確信の理由です。
この記事で答える3つの "なぜ"
- なぜ桜井賢は、71歳になっても声が枯れないのか ←本記事の中心テーマ
- なぜ「脱力」と「支え」は、矛盾しないのか
- なぜ僕は、桜井賢の声を "最後に辿り着きたい境地" と感じるのか
3つとも、僕の身体感覚・レッスン現場での観察を元に、解剖していきます。
① 「脱力」の正体 ─ ただ力を抜くことではない
ボイストレーニングの世界で、最もよく言われ、
最も誤解されやすい言葉があります。
「脱力してください。」
レッスンに来てくれる方の多くが、この一言で混乱します。
「脱力って言われても、それじゃ声が出ない」
「力を抜いたら、ふにゃっとなる」
「結局、どこかには力を入れないといけないんじゃないか」
そのとおりです。
完全に脱力したら、人間は立てません。
つまり「脱力」とは、「全身の力を抜くこと」ではない。
僕がレッスン現場で生徒さんにお伝えするのは、こういう定義です。
脱力とは「必要なところにだけ力を入れ、それ以外は完全に解放する」状態。
桜井賢さんの歌は、
僕の観察ではこの定義の 教科書のような体現 に見えます。
- 上半身(首・肩・顎・口元・喉頭周り)= ほぼ完全に脱力
- 下半身(骨盤・体幹・足裏)= 揺るがない支持
→ 「全身に力が入っていない」のではなく、
「下にだけ力が入っていて、上は完全に解放されている」状態。
これが、僕が「脱力の境地」と呼びたい姿です。
② 下半身エンジン理論
─ 上半身を脱力するために、下半身がする仕事
なぜ桜井賢さんは、上半身を解放できるのか。
一宮式メソッドの観点で言えば、僕の仮説はこうです。
下半身が、揺るがない「エンジン」になっているから、上半身は「ハンドル」として自由に動ける。
(※「下半身エンジン理論」は、僕が長年のレッスン現場で言語化してきた
一宮式メソッド独自の概念 です。一般的な発声学の用語ではありません)
これは、車の構造に似ています。
- エンジン(下半身):大きな力を、安定して生み出す
- ハンドル(上半身):軽く、正確に、自由に動く
もし車のハンドルにエンジンの力が伝わってしまったら、
運転手は重くて操作できません。
歌も同じです。
下半身が "力の発電所" にならない歌い手は、
上半身でその力を作ろうとしてしまう
─結果、首が固まり、肩が上がり、顎が前に出る。
桜井賢さんは、僕の観察では
下半身が完璧なエンジンとして稼働している ように見えます。
- 骨盤が安定している(=どっしりした感じが見える)
- 腰回りに、混沌とした力みがない
- 一流のスポーツ選手と同じ、丹田の安定感
僕のレッスン経験で言えば、これは
「下半身で歌う」感覚 が身体に染み込んだ人にしかできない芸当です。
③ 「あ」の母音を、後ろ・下に取る技術
桜井賢さんの歌で、もう一つ僕が驚くのは 「あ」の母音の取り方 です。
普通、ハイトーンで「あ」を歌うとき、
多くの人は 音を上に上げよう とします。
眉間を持ち上げる、顎を引いて頭を上に向ける、声を口の上の方に集める。
しかし桜井賢さんの「あ」は、逆方向に向かっています。
僕の耳には、桜井賢さんの「あ」は
後ろに、そして下に 取られているように聴こえます。
なぜそんなことが可能なのか。
これは、「響き」と「ピッチ(音程)」を分離して考える 技術です。
- ピッチ(音程) → 上に行く(=高音)
- 響き(音色) → 下に置いたまま(=後方・腹側)
普通の人は、ピッチが上がると響きも一緒に上に引っ張られて、結果として 喉頭が上がり、声が薄くなる。
桜井賢さんは、ピッチを上げながら、
響きの場所だけは下に置いておく ことができている、と
僕には感じられます。
これが、ハイトーンでも 声に "底" がある ように聴こえる正体です。
④ 響きとパワーを引き離す ─ 二層音響感覚
ここまでで、ある重要な原理が見えてきました。
「響き」と「パワー(支え)」は、別の場所に置いていい。
僕は、これを 「二層音響感覚」と呼んでいます。
- 層1(下):パワー・支え・空気圧 → 腹・骨盤・下半身
- 層2(上):響き・音色・倍音 → 頭・上顎・空間
普通の人は、この2つを 同じ場所 で作ろうとします。
- 力を入れる場所 = 響かせる場所 = 喉・首・顎
- これが、声を出すたびに 疲れる原因
桜井賢さんは、僕の観察では
この2つを完全に分離 しているように感じます。
支えは下、響きは上。
力は下、軽さは上。
重さは下、自由さは上。
これが彼の歌に 「重みと軽やかさが同居する」
不思議な印象を生んでいる、というのが僕の解釈です。
⑤ 長く歌い続けられる身体
─ 71歳の今もあの歌声を保ち続けている、その背景
ここからは、僕が個人的に最も興味を持っているテーマです。
なぜ桜井賢さんは、71歳の今も、歌い続けられる身体を維持できているように見えるのか。
加齢とともに歌唱力が落ちていくと言われるなか、
なぜこの人だけは別の道を歩んでいるように、僕には感じられるのか。
これには、いくつかの観察可能な要素があるように思います。
観察① 喉だけでなく、全身で歌っているように見える
「脱力の境地」で歌うということは、
喉周辺の筋肉に過度な負担をかけない ということです。
僕には、桜井賢さんは
喉そのものではなく、全身で歌っているように見えます。
(※実際に喉にどれくらいの負担がかかっているかは医学的な計測なしには分かりません。あくまで映像から受ける僕の印象です)
観察② 下半身を毎日使っている
ステージで2時間以上立ち続け、ベースを弾きながら歌う。
これは 下半身の継続的な使用 に他なりません。
下半身の筋肉
(特に大腰筋や骨盤底筋群などが関与している可能性があります)は、
使い続ければ衰えにくい筋肉群とされています。
(※実際にどの筋群がどの程度関与しているかは、解剖学的・運動学的な精密測定が必要なため、ここでは仮説としてお話ししています)
観察③ 引き算の歌い方を、年々深めている
これは僕の主観的観察ですが、YouTubeで桜井賢さんの歌唱映像を1980年代から現在まで 僕が映像を見比べた印象では、年々、口の開き方が小さくなり、無駄な動きが減っている ように見えます。
若い頃よりも、今のほうが 「引き算」が進んでいる ように感じます。
→ 結果として、声の効率が上がり、長年歌っても疲弊しない身体ができ上がってきているのではないか ─と僕は考えています。
これは 運動学習(Motor Learning)という視点で見ると、
このように考えられる 稀有な事例だと、僕は感じています。
「歌は、年を重ねるほど、上手くなる」 ─これは、桜井賢さんが僕たちに身をもって示してくれている可能性かもしれません。
この記事を貫く一つのテーマ ─「長く歌い続けられる身体」
ここで一度、立ち止まらせてください。
僕がこの記事で本当に書きたかったことは、
「衰えない声を出す方法」 ではありません。
ボイトレ記事として「衰えない声」というキーワードはよく検索されますが、僕がもっと深いところで考え続けてきたテーマは、これです。
「長く歌い続けられる身体は、どう作られるのか。」
声というのは、結局のところ 身体から出てくるもの です。
身体が崩れれば、声も崩れる。
身体が整っていれば、声は自然と整っていく。
桜井賢さんが約52年もの間ステージに立ち続け、71歳の今も歌い続けていらっしゃるのは、声を磨いてきたからではなく、
「歌う身体」を磨き続けてきたから だと、僕は感じています。
そして、これは桜井賢さんだけの話ではありません。
僕自身が、自分の歌う人生をかけて研究し続けているテーマでもあります。
⑥ 読者ができる ─ 桜井賢に近づく3つの実践エクササイズ
ここまでで、桜井賢さんの "脱力の境地" を支える原理を見てきました。
1. 下半身がエンジン、上半身がハンドル
2. 「あ」の母音を後ろ・下に取る
3. 響きとパワーを引き離す(二層音響感覚)
4. 引き算を年々進める(運動学習の継続)
これを、読者の皆さんの身体で 再現するためのエクササイズ を3つ、
提案します。
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