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不倫だって、わかってた。それでも、彼に堕ちた。

絶対に、既婚者だけは好きにならないって決めてた。
30代、40代、50代。
一度でも恋愛に本気になったことがある人なら、誰だってそう思ってる。
最初は、線引きしていたつもりだった。
でも、気づいたらその線の外にいた。
誰かの夫に惹かれるなんて、バカみたいで、みじめで。
“女の敵”みたいに言われるってわかってるのに、
それでも止まれない恋だった。
私の話じゃない。
…いや、たぶん、私たち全員の話だ。


彼は仕事のできる人だった。
穏やかで、話をちゃんと聞いてくれて、私のことを女として扱ってくれた。
独身の私にとって、久しぶりに“人としてちゃんと見てもらえてる”と思えた。

彼と過ごした時間は短くても、私の心には確実に痕跡を残した。
たとえ数分でも一緒にいられるだけで、世界が色づいた。
彼の声のトーン、手の温度、笑い方の一つひとつが、私にとっては確かな証拠だった。

だけどそれは、彼が「夫」であり、「父」であり、「誰かの帰る場所」だったからこそ生まれた余裕であり、優しさだった。
私はその影に、まんまとハマった。
職場のデスクで笑い合った日、出張帰りの車で交わした一言、「また明日ね」のLINEの絵文字にさえ、私は鼓動を速めていた。
その通知音ひとつで眠れない夜が変わり、既読がつかないだけで世界が揺らいだ。


不倫をしてる女性は、寂しがり屋なんかじゃない。
むしろ、寂しさを表に出すのが下手な人が多い。
「強く見られたい」「誰かに依存したくない」「“一人でも大丈夫な女”だと思われたい」
そんな顔をしてきた私たちは、“本音を吐ける場所”をずっと探していた。

彼に出会ったとき、それが恋なのか、逃げなのか、自分でもわからなかった。
ただ、彼の前では、強がらなくてよかった。
ちゃんと「女」でいられた。

休日は地獄だった。
SNSを開けば家族サービスをしている父親たちの写真が流れる。
私は彼の姿を想像し、奥さんと過ごす時間を思い浮かべては胸が締めつけられた。
「どうして私は、選ばれない方にいるんだろう」
その問いを何度繰り返しても答えは出ない。


人を好きになること自体は、悪いことじゃない。
でも、“叶わない”ってわかってる恋にハマっていくとき、どうしようもなく孤独になる。
会いたい日に会えない。
連絡のタイミングひとつで不安になる。
祝日が、土日が、ただの地獄になる。
既婚者の彼は、“持っている人”。
私は、“与えられない人”。
この非対称な立場が、恋の痛みを、恋以上の執着に変えていく。

連絡が来ない夜は、スマホを握りしめて眠れなかった。
未読や既読の小さな表示に翻弄され、心は何度も上下した。
LINEの一行に救われ、一行に絶望する。
そんな日々を続けながら、私は自分でも気づかないほど彼に依存していった。


「彼が独身だったら、惹かれてなかったかもしれない」
それは、嘘じゃない。
結婚していて、安定していて、どこか満たされた雰囲気があるからこそ私たちは“安心”して恋に落ちる。
だけど、その恋は、最初から“奪えないもの”だと知っている。
知っていて、飛び込んでしまう。

「好きになったのが、たまたま既婚者だった」
「気づいたら離れられなくなっていた」
そんな言葉で片づけても、心の中には、“わかっていてハマっていく自分”がいたことを誰よりも、自分が一番知っている。

彼が家族の話をする時、私は笑顔でうなずきながら、心の奥では嫉妬が渦巻いていた。
彼の子どもの話題を聞くたびに、「私には何も与えられない」と突きつけられる。


不倫恋愛って、人に話せないからこそ、どこかで“正当化”しないと、苦しくなる。
「奥さんとは冷めてるらしい」
「本当に愛してるのは私だけって言ってくれた」
「彼も悩んでる、苦しんでる」

その言葉を信じたかったし、自分が“間違った恋”をしてるって思いたくなかった。
でもね、どんなに言葉を重ねても、女としての直感は知ってるんだ。
この恋が、どこに向かっていくのか。
自分が、どこで崩れていくのか。

それでも、彼に会うと全部忘れる。
駅まで歩く短い道、車で流れる音楽、肩が触れただけの瞬間。
そのひとときの幸福感が、罪悪感よりも強かった。
だからこそ、抜け出せなくなった。


「不倫なんてやめなよ」っていう人たちの声は、もう聞き飽きた。
“わかっていてもやめられない恋”に落ちた女性を、一番傷つけるのは道徳や常識じゃなくて、
「その恋の先がない」と自分が一番知ってるってこと。

それでも、
「でも、彼が笑うと全部どうでもよくなるんだよね」
って言ってしまう、私たちの痛さと愛しさ。

それを、誰かがちゃんと理解してくれるだけで、ちょっとだけ、息がしやすくなる。


だから今日は、答えなんか書かない。
アドバイスも、きれいごとも、何もいらない。
ただひとつ。

「あなたの恋は、あなただけのものだよ」

って静かに伝えたくて、私はこの文章を書いてる。

そして、もしもまだ、この恋の続きを知りたいと願ってしまうなら。
その気持ちに、フタをしないで。

記事監修:アンサーズ

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