老健の「持参薬」は本当に大丈夫か? DPCで始まった議論は老健にも波及するのではないか?高騰が止まらない薬剤費の抑制は国の至上命題だ。




介護老人保健施設(老健)では、

「ショートだから持参薬で」
「退所までの3か月分を病院で出してもらってから入所」
「同一法人の診療所で90日処方してから老健へ」

という運用を目にすることがあります。

患者さんの安全や休日対応を考えれば、現場では合理的な面もあります。

しかし最近、私は少し気になっていることがあります。

医療DXによるデータ統合です。


老健では「薬を持ち込む」のが原則ではない

まず制度を確認しましょう。

老健は「介護施設」ですが、医師による医学的管理を行う施設です。

入所中の診療・投薬は原則として施設医が担当します。

また、医療保険と介護保険の給付調整通知では、老健入所中は通常の外来診療や処方は医療保険では算定できず、包括評価の考え方が採られています。一方で、放射線治療や外来化学療法など、一部のみ医療保険で算定できるものが整理されています。

つまり制度上は

  • 入所後の薬は施設側で管理する

  • 必要なら施設医が処方する

というのが基本です。*持ち込みを否定するものではない


現場はそんなに単純ではない

とはいえ、現実は違います。

例えば

  • 金曜日退院

  • 土曜日に老健入所

  • 老健施設医の診察は月曜日

このような状況では、病院が数日分処方してくれた方が安全です(というか困ります)。

ショートステイで数日しか利用しない患者さんに対しては、持参薬をそのまま継続する施設も珍しくありません。

私は、このような運用まで直ちに問題視すべきだとは考えていません。

制度よりも患者安全を優先すべき場面は確実に存在します。


一方で気になるケースもある

私が少し気になるのは、

例えば

「3か月入所するので、入所前日に同一法人の診療所で90日分処方してから入所する」

という運用です。

これを毎回繰り返していると、

老健で包括評価されるはずの薬剤費を医療保険で処方していると受け止められる可能性は十分あるでしょう。

もちろん、現時点で

「全国一律で違法」

「必ず返還になる」

と断言できる根拠はありません。

しかし、制度の趣旨から見ると、将来的に指摘対象になる可能性は十分考えられます。


DPCではすでに厳しい議論が始まっている

実は、このような議論は老健だけではありません。

DPC病院では以前から

「持参薬ルール」

が問題になっています。

厚生労働省は

入院中に使用する薬剤は、入院医療機関が処方することが原則であり、予定入院で入院の契機となる傷病について、あらかじめ外来で処方して持参させることは、特別な理由がない限り認められない

という議論をしています。かなり調べており、これは国は本気です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190167_00069.html

上記のように

  • 入院契機疾患に対する持参薬を使用している病院が一定数存在する

  • 自院外来で処方した薬を持参薬として使用している病院も一定数存在する

  • 持参薬ルールを遵守している病院との公平性に問題がある

として、ルールの周知徹底や運用の見直しが議論されています。

つまり、包括払い制度の「外側」で薬を出すことについては、国は以前より厳しく見始めています。

これは医療関係者じゃなくても聞いたことある人は多いと思いますが、国全体として薬剤費の高騰がとまりません。国としてこれを抑えようとしています。



老健でも同じ流れになるのでは?

もちろん、DPCと老健は制度が違います。

しかし共通点があります。

どちらも

包括払い

です。

包括払いでは、本来その包括の中で評価されるものを、別制度で請求すると制度設計が崩れてしまいます。

そのため、今後、医療・介護データベースの統合が進めば、

例えば

  • 老健入所日

  • 外来処方日

  • 処方日数

  • 同一法人かどうか

などは、これまでより把握しやすくなるでしょう。


返還命令が出たら金額は小さくない

仮に、長年にわたり90日処方を繰り返していたとします。

もし将来、その運用が不適切と判断されれば、

返還額は決して小さくありません。

もちろん、現時点では全国的にそのような返還事例が一般化しているわけではありません。

しかし、DPCで起きている議論を見る限り、

「包括払いの外側で薬を出す」ことへの視線は年々厳しくなっている

と考えた方がよいでしょう。


私の考え

私は、数日分の退院処方や休日対応まで否定したいわけではありません。

患者安全を優先すべき場面は数多くあります。

一方で、制度上の趣旨を逸脱すると受け取られかねない運用を、

「昔からやっているから」

「みんなやっているから」

という理由だけで続けることには注意が必要だと思います。

医療DXが進めば、これまで見えなかったものが見えるようになります。

だからこそ、老健でも今一度、持参薬や入所前処方の運用を見直してみる時期に来ているのかもしれません。

今年度末の介護報酬では、老健含めて入所型の公的介護施設の点数が上がることが期待されています。

これは別に過剰に儲けたいからではなく、現場の維持のためだと理解しています。政治も理解してあげてくれると期待しています。

が、あがったら終わりではないと私は思います。
全体は上げるとしても、それをいい機会として、どこかを叩くことは十分あり得ると思います。
その時に、このような薬をグループ内でいいようにだして、入所のコストを浮かせる、ということは対象になると思います。
グループ内に診療所などが無いところと比べれば著しく不平等ですし、本来の趣旨に反する行為です。しかも基本報酬が上がっていれば、返金する経済的な余力が出ます。
国として高騰する薬剤費の抑制は、介護に限らず待ったなしです。



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