What’s Going On 歌詞と対訳

楽曲について

What’s Going On / written by Marvin Gaye, Renaldo Benson & Al Cleveland
マーヴィン・ゲイが1971年に発表した同名アルバム「What’s Going On(邦題:愛のゆくえ)」に収録した楽曲。シングルとしてもリリースされ、Billboard Hot 100 で2位を記録しました。同名アルバムと合わせて名実ともにマーヴィンの代表作として知られています。
作者としてクレジットされているのはマーヴィン自身、モータウンのスタッフであるアル・クリーヴランド、そしてフォー・トップスのメンバーであるレナルド・ベンソン。レナルドがサンフランシスコで目撃した反戦運動における若者と警官隊の衝突を元に、ベトナム戦争に従軍したマーヴィンの弟からの手紙にも影響を受けて歌詞が書かれたとされています。
それまでのラブ・ソング中心の音楽性から一転して、政治的で内省的な表現を示したこの楽曲は、マーヴィンのキャリアのみならず、いわゆる「ニュー・ソウル」誕生の象徴として、ソウル・ミュージックそのものの大きな分岐点になったと言えるでしょう。
カヴァー・バージョンは無数にありますが、ニュー・ソウルの同胞、ダニー・ハサウェイが1972年に発表したライブアルバム「Live」で披露したバージョンは、まさに白眉!

曲を聴く前にイメージしたいこと

タイトルにもなっている「what's going on」というフレーズ。曲のテーマゆえに「いったい世界はどうなっているんだ?」といった重々しい翻訳例が多いのですが、そもそもこれは日常で「よう、元気?」みたいに使われる挨拶の常套句。さらに曲中では直前の you can see にかかる関係代名詞 what として「今まさに世界で起こっていること」と捉えることもできます。つまりいくらでも解釈を広げられる普遍性を持っている。それを踏まえて熟考した結果、このフレーズは敢えて翻訳しないことにしました(手抜きと言うなかれ)。
自明的に「今まさに世界で起こっていること」とは何なのか。この曲は一般的に、ベトナム戦争渦中の疲弊したアメリカ/世界に向けて一石を投じる反戦メッセージと解釈されていますが、筆者の個人的な思いも込めて、以下のように解釈しました。
争うことは答え= answer じゃない。自分が正しくて相手が間違っていると決めつけるのはやめよう。そして対立が対話に転じればこの世界に愛がもたらされる。we've got to find a way=既に answer は出ているのに何故それをしないのか。何故できないのか。どうなっているんだ? What's going on? 楽曲がリリースされて50年以上経つのに、未だに対立は無くなるどころか深まるばかりのこの世界で、こうしてこの曲が琴線に触れ続けることに、筆者は複雑な思いを抱いています……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Mother, MOTHER
母よ 母よ
There's too many of you CRYING
あなたと同じ多くの母が 今 泣いている
Brother, brother, BROTHER
兄よ 弟よ 同胞よ
There's far too many of you DYING
あなたと同じ多くの人類が 今 死んでいく
You know we've got to find a WAY
私たちは もう見つけているはずなのに
To bring some loving here TODAY
今日 この場所に 愛をもたらす方法を

Father, FATHER
父よ 父よ
We don't need to ESCALATE
対立をエスカレートさせてはいけない
You see, war is not the ANSWER
争うことが答えでは無い そうだろう?
For only love can conquer HATE
憎しみを克服するのは 愛だけだ
You know we've got to find a WAY
そう、私たちは もう見つけている
To bring some loving here TODAY
今日 この世界に 愛をもたらす方法を

Picket LINES and picket SIGNS
デモ活動や プラカードで煽って
Don't punish me with brutality
聞く耳を持たずに 人を押さえつけないで
Talk to ME, so you can SEE
話し合えば きっと見えてくる

What's going on
What's going on
What's going on
What's going on

Mother, mother
母よ 母よ
Everybody thinks we're WRONG
誰もが 他人は間違っていると決めつける
Oh, but who are they to judge us
だが 誰がそのように判断を下せるのか
Simply 'cause our hair is LONG?
例えば「髪が長い」ただそれだけの理由で
You know we've got to find a WAY
私たちは もうとっくに見つけているのだ
To bring some understanding here TODAY
今日この世界で 皆がお互いを理解し合える方法を

Picket LINES and picket SIGNS
デモ活動や プラカードで煽って
Don't punish me with brutality
聞く耳を持たずに 人を押さえつけないで
Come on talk to ME, so you can SEE
話し合おう きっと見えてくる

What's going on
Yeah, what's going on
Tell me what's going on
I'll tell you what's going on

  • there's too many of you ~ing……こういうフレーズはたぶん日常では行わないのでは?mother に「自分の母」「世界中の母」両方の意味をもたらす面白い表現です。これをアナフォラ(首句反復)的に繰り返す1stヴァースはゴスペル風、そこから2nd、3rdヴァースに至って抽象的な内容が具体的になっていく展開は、ソウル・ミュージックにおける songwriting の特徴のような気がします(「When a Man Loves a Woman」もご参照ください)。

  • picket line……ピケットラインとは「ストライキを行う構成員が職場の出入り口付近に列を作り、スト破りを防止する行為」のことですが、ちょっとイメージしにくいので単に「デモ活動」としました。

  • simply 'cause our hair is long……印象的な WRONG / LONG のライミング。この時期、白人の若者はベトナム戦争への抗議や伝統的な価値観への反抗として髪を長く伸ばし、一方で黒人の若者は公民権運動の高まりと共にブラック・ルーツとアイデンティティの誇りとして自然な縮れ毛をそのまま伸ばして「アフロヘア」に。1960年代後半から70年代にかけて「長い髪」とは白人文化/黒人文化の両面において反体制の象徴だったのですね。


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