Wild Horses 歌詞と対訳
楽曲について
Wild Horses / written by Mick Jagger, Keith Richards
ローリング・ストーンズが1971年のアルバム「スティッキー・フィンガーズ(Sticky Fingers)」に収録したカントリー色の濃いアコースティック・バラードです。作者はミック・ジャガーとキース・リチャーズの連名で、アメリカでシングル・カットされ Billboard Hot 100 チャートで28位を記録しました。
この曲は同アルバムが制作される以前、1969年12月にアラバマ州マッスル・ショールズのフェイム・スタジオで先にレコーディング済みでした。ただ当時の所属レーベルとの権利関係ですぐにはリリースできず、一旦お蔵入りになります。
キースはこの音源にスティール・ギター等のカントリー的要素を入れたいと思い、親友であるグラム・パーソンズに相談したところ、曲を聴いたグラムが気に入り、キースに懇願した上で自身が所属するフライング・ブリトー・ブラザーズで先にカヴァー。彼らの 2ndアルバム「Burrito Deluxe(1970)」収録分がこの曲の初出になります。その約1年後、自身のレーベルを立ち上げたストーンズにより晴れてストーンズ自身のバージョンがリリースとなりました。
曲を聴く前にイメージしたいこと
男と女、一蓮托生の恋人同士。でも女のほうは悩み苦しみ問題を起こし、男は手を焼き関係の終わりを予感する。が、結局「僕は絶対に君の元から離れないよ」と運命を共にし続ける。重く痛々しい、しかし切なく美しいラブソング、という感じです。
大前提として知っておかないといけないのが、コーラスで用いる「Wild horses couldn't drag me away」。これは「荒馬でも私を引きずることはできない=誰が何と言おうとテコでも動かない」という意味の慣用句。なので、そもそも馬が登場してどうこうという曲ではありません。
制作当時、子どもが生まれた直後にストーンズのアメリカ・ツアーが決まってしまったキース。行きたくねえなあ、子どもと一緒にいるんだ。ツアーなんか行くもんか!という心境が反映され、このコーラスのアイディアを得ます(意外とカワイイ)。それにミックがヴァースを肉付け、という創作過程だったようです。当時ミックは恋人がドラッグに溺れていることに悩まされていて、そのことが歌詞に色濃く反映されている気がします。
拙ブログで取り上げる他のイギリス人 songwriters のご多分に漏れず、アメリカ人のそれと比べてライミングは控えめ……少なくともそこにフォーカスはしてない感じです。一方でコーラス「Wild Horses~」を最後に「その荒馬を乗りこなしてみせる」と転換する必殺技「慣用句くずし」に、ミックの英国流ウィットを感じます……それではどうぞ!
歌詞と対訳
Childhood living is easy to DO
子どもの頃は 人生がずっと簡単に思えた
The things you wanted, I bought them for YOU
君が欲しがるものは 僕が買ってあげたっけ
Graceless lady, you know who I am
大人になれないレディ 僕のこと分かってるだろう
You know I can't let you slide through my hands
僕の指の間から 君をこぼれ落としたりなんかしない
Wild horses couldn't drag me away
絶対に 僕は君の元から離れない
Wild, wild horses couldn't drag me away
絶対に 絶対に 僕は君の元から離れない
I watched you suffer a dull, aching pain
僕は見てきた 苦しんでいる君を
Now you decided to show me the same
今や君は厭わない その姿を僕に晒すのを
No sweeping exits or offstage LINES
見えない出口 どこからか聞こえてくる言葉に
Could make me feel bitter or treat you UNKIND
僕はやりきれなくなる 君にとっても酷い仕打ちさ
Wild horses couldn't drag me away
絶対に 僕は君の元から離れない
Wild, wild horses couldn't drag me away
絶対に 絶対に 僕は君の元から離れない
I know I dreamed you, a sin and a LIE
君は僕の夢そのもの それも罪と嘘にまみれた夢
I have my freedom, but I don't have much time
僕には自由があっても そんなに時間はないんだ
Faith has been broken, tears must be cried
信じていたことが打ち砕かれ 涙が止まらないよ
Let's do some living after we DIE
生まれ変わっても もう一度人生を一緒に歩もう
Wild horses couldn't drag me AWAY
絶対に 僕は君の元から離れない
Wild, wild horses, we'll ride them some DAY
僕らを引き裂くその荒馬も いつか乗りこなしてみせる
Wild horses couldn't drag me AWAY
絶対に 僕は君の元から離れない
Wild, wild horses, we'll ride them some DAY
僕らを引き裂くその荒馬も いつか乗りこなしてみせる
graceless lady……gracelessは「粗野な」「洗練されてない」「優雅さにかける」という意味ですが、冒頭の childhood からの流れを踏まえて意訳しています。
この曲はミックが当時の恋人(マリアンヌ・フェイスフル)との関係をモチーフにしたというのが定説ですが、それとは別にグラム・パーソンズをモチーフにしたとかグラムが制作に関わったといった伝説があります。が、前述の通りグラムが最初に聴いたのは既に完成された音源なので、その説も誤り。ですが確かにマリアンヌ同様ドラッグに溺れたグラムを想起させなくもない歌詞です。当時のキースとグラムの蜜月関係を考えると、色々妄想が膨らんでしまう厄介な曲ですね(笑)。
1969年はロック界のみならずストーンズ自体も大変な年だったようで、6月にブライアン・ジョーンズをクビにして、7月にそのブライアンが死亡、8月にキースに子どもが生まれ、11月に怒涛のアメリカ・ツアー、その最終日から2日後の12月2日にこの曲と「ブラウン・シュガー」等を録音、さらにその直後の12月6日に有名な「オルタモントの悲劇」が起こります。その一連の流れはコチラの記事を参照しました。この曲はラブソングの体裁を取っていますが「ストーンズがロックに抱いた夢と幻滅」と捉えることもできて、youをROCKそのものに置き換えると、ますますイマジネーションが膨らみます。
この曲のサウンド面は、カントリーに心酔していたキースのカラーが反映されていますが、歌詞に関してもカントリー……というよりハンク・ウィリアムズに通じる、心をえぐるような pain=痛々しさを、筆者は感じます。音楽マニアのストーンズが生み出した、まさに究極のカントリーですね!
