Bastards of Young 歌詞と対訳

楽曲について

Bastards of Young / written by Paul Westerberg
ザ・リプレイスメンツ(The Replacements、通称Mats)が1985年にメジャーレーベルよりリリースした最初のアルバム「Tim」に収録。ミネソタ州ミネアポリスで結成され1979年にインディ・デビュー以来、ハスカー・ドゥ、ソウル・アサイラムと並び称されるハードコア・パンクの雄として名を馳せたMatsは、メジャー移籍を機に直情径行のハードコアからより音楽的深みを増した真のロックバンドへと成長していきます。そんな過程を感じられる楽曲です。
作者はバンドのフロントマン、ポール・ウェスターバーグ。パンク・ロック界屈指の詩人という評価を得ており、この楽曲においてもメロディと親和する巧みなライミングや独特のリズムを生む文法崩しなど、個性的なsongwriting 技法を見出すことができます。
楽曲もさることながらミュージック・ビデオも印象的。モノクロームの画面で、爆音でかけるレコードの音圧で振動するスピーカーをひたすら映し続けるだけという内容は、一度見たら忘れられない強烈なインパクト。華やかな80年代MTV文化に対するアンチテーゼとも見て取れます。

曲を聴く前にイメージしたいこと

レーガン政権下での経済成長が進む一方で、持つ者/持たざる者の間での格差が広がっていく80年代アメリカ。日本でも昨今「親ガチャ」なんていう言葉を耳にしますが、同じような構図は既にこの頃のアメリカにあったようで、本稿では主人公に対して「生まれ落ちた環境で将来が決まってしまう、悩める若者たちの一人」というペルソナを設定しました。
タイトルの bastard は例えば You bastard! =「この、ろくでなし!」といった蔑称としての使われ方が一般的ですが、本来の意味は「非嫡子」。そして of young については総じて「若者世代」を包括するものと筆者は解釈しています。
親子世代の断絶という複雑なテーマですが、ベトナム戦争が終わり冷戦も終息に向かう時代の空気の中で、こういった怒りや欲求不満ををどこにぶつけて良いかわからない若者のやりきれなさは、英パンクには見られないこの時期のアメリカン・ロック特有の表現テーマのような気がします。そしてその雰囲気は90年代初頭のオルタナティブ・ロックやグリーン・デイ等のメロコア勢に受け継がれます。
グランジ/オルタナティブのシーンはニルヴァーナの登場で突如現れたように錯覚しますが、シーンの土壌は80年代からすでにこのMatsなどの先立によって育まれていたのだなと、この楽曲の演奏ビデオ等を観ながら感じました……それではどうぞ!

歌詞と対訳

God, what a MESS, on the ladder of SUCCESS
ああ、なんてこった マトモに生きたいと思っても
Where you take one step and miss the whole first rung
お前らがステップを外すから 最初の一歩すら踏み出せない
Dreams UNFULFILLED, graduate UNSKILLED
夢は満たされず スキルを身に着けないまま卒業さ
It beats pickin' COTTON and waitin' to be FORGOTTEN
つまらない人生 そのうち世間から忘れ去られるんだろうな

We are the sons of no one, bastards of young
俺たちは誰の息子でもない 時代の落し子さ
We are the sons of no one, bastards of young
俺たちは誰の息子でもない 時代の落し子さ
The daughters and the sons
誰の息子でも 娘でもない

Clean your baby WOMB, trash that baby BOOM
子宮を洗って ベビー・ブームの汚物を捨てなよ
Elvis in the ground, no way he'll be here tonight
エルビスは死んだ 彼が復活する夜なんて来ない
Income tax DEDUCTION, one hell of a FUNCTION
所得税控除か なんて素晴らしいクソ制度だ
It beats pickin' COTTON and waitin' to be FORGOTTEN
つまらない人生 そのうち世間から忘れ去られるんだろうな

We are the sons of no one, bastards of young
俺たちは誰の息子でもない 時代の落し子さ
We are the sons of no one, bastards of young
俺たちは誰の息子でもない 時代の落し子さ
Now the daughters and the sons
もはや 誰の息子でも 娘でもない

Unwillingness to CLAIM US
俺たちに あれこれ言う気すら無いのなら
Ya got no warrant to NAME US
お前らに息子呼ばわりされる筋合いは無い

The ones who love us BEST are the ones we'll lay to REST
何もかも愛してくれるなら 俺たち 安らかな最期を看取って
And visit their graves on holidays at best
せめて休みの日くらいは 墓参りしてやるけど
The ones who love us LEAST are the ones we'll die to PLEASE
何一つ愛してくれないから お望み通り 死んでやろうか
If it's any consolation, I don't begin to understand them
気休めになるかな 俺は端から あいつらを理解する気が無い

We are the sons of no one, bastards of young
俺たちは誰の息子でもない 時代の落し子さ
We are the sons of no one, bastards of young
俺たちは誰の息子でもない 時代の落し子さ
The daughters and the sons
誰の息子でも 娘でもない

Young, of young, young ,young
時代 時代 俺たちの時代の落し子さ
Take it, it's yours, take it, it's yours, take it, it's yours……
くれてやる!くれてやる!何もかもくれてやる……

  • The ladder of success……ladderは「梯子」ですが、このラインは The first rung on the ladder of success=成功への第一歩、という意味の慣用句を展開しているものと思われます。

  • It beats pickin' cotton……本来の「cotton-pickin'=つまらない、いまいましい」を、forgottenとのライミングを成立されるために、意図的に前後を入れ替えていると思われます。動詞「beat」の意味は色々ありますが、今回は「pickin' cotton を踏み固める=つまらん人生が定着する」と解釈し意訳しました。

  • We are the sons of no one……このコーラス部分、発表当時は「Wait on the sons of no one」だったのですが、ポール自身が歌っているうちに気づいたら「We are」に変化したそうです(笑)。ザ・クリブスやジェシー・マリンのカヴァー・バージョンでももれなく「We are」になっていることですし、シンガロングなメロディーと親和性があって筆者の好みに合っているので、本稿では「We are」の方を採用しました。

  • baby boom……アメリカのベビー・ブームは1946年から1964年とされ、ポールはちょうどそのど真ん中の1959年生まれ。その親世代がちょうど夢中になっていたエルビスが時代を象徴するアイコンとして登場するというのは面白い点です。

  • Income tax deduction……所得税控除。プロフィールによるとポールの誕生日は12月31日なのですが、なんでも税金対策のためにその日に産んだ(出生日をその日として届け出た?)そうで、親からを税金控除の対象と見なされる子どもの、やるせない心境を綴ったラインです。

  • I don't begin to understand them……このラインまでずっと We/Us で語られてきた人称が、唐突に「I」になるのは意味不明ですが、まあポールの気分が反映されただけで深い意味は無いものと思われます。

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