楽曲について

Texas Flood / written by Larry Davis, Joseph Scott
アーカンソー出身のブルース歌手、ラリー・デイヴィスが1958年にメンフィスのデューク・レコードで録音しシングルとして発表。ギターのフェントン・ロビンソン、ピアノのジェイムズ・ブッカー等の協力を得て制作された彼にとって初めてのリーダー作のひとつで、作者としてラリー自身とデューク・レコードのアレンジャー兼トランペット奏者、ジョセフ・スコットがクレジットされています。
ラリー版は地方でのヒットにとどまったようですが、1983年に彗星の如くデビューしたテキサス出身のギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーンがこの曲を冠した1stアルバム「ブルースの洪水(Texas Flood)」でカヴァー。彼の短い生涯におけるライブの最重要レパートリーでもあり、このSRV版によってブルース・スタンダードへと昇華されたと言ってもいい曲なのでは、と筆者は思っています。

曲を聴く前にイメージしたいこと

つい先日(2025年7月)もテキサス州で甚大な被害をもたらしたり、筆者も2010年5月にナッシュビルで遭遇していますが(コチラの記事参照)、とにかくアメリカ南部の内陸部は水害が絶えない地域。この曲はそんなテキサスで洪水に直面、いよいよ死にゆくという男が、電話が繋がらず連絡することが叶わない恋人に心の中で別れを告げる、という内容です。
拙noteでコテコテのブルースを取り上げるのは今回が初ということで、songwriting の観点から歌詞を分析してみます。大きな特徴と言えるのが、全篇通じて3行で構成されるラインのうち1行目・2行目が「全く同じフレーズのリフレイン」であること。「Further on Up the Road」「Crossroads」等の定番曲も参照する限り、この特徴は所謂 12bar blues の定型フォーマットのようです。
コード進行を重ねると、ライン1行目はトニックに、2行目はサブ・ドミナントに乗っかる。全く同じフレーズが異なる調性で復唱され(1・2行目)、さらに別のフレーズで解決する(3行目)ことで、聴き手に強いインパクトを与える。これが「ブルースらしさ」の根源のような気がします。(注:後述する英語詞について、本稿では1行を2段に分けています)
そんな文学的特徴を持つブルースなので、ライミングも極めてシンプル。ここに下手にカントリー的な凝ったギミックを投入すると、きっと一瞬で「らしさ」を失うことでしょう。
以上のようなブルースの歌詞の特徴を踏まえて改めて楽曲を聴くと、SRVの凄まじい歌唱とギター演奏がより際立つ気がしますが、一方でそのシンプルな歌詞には本題とは異なるメタファーも感じ取れます。この曲の場合は「嵐のように波風立てる面倒くさい女とやっと別れられるぜ」といったところでしょうか。カントリー等とは全く異なるブルースのsongwriting。これまた奥が深そうで、もっと研究対象として掘り下げねば!と思っております……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Well, it's floodin' down in Texas
テキサス一帯が 大洪水で
All of the telephone lines are DOWN
電話が 一切繋がらない
Well, it's floodin' down in Texas
テキサス一帯が 大洪水で
All of the telephone lines are DOWN
電話が 一切繋がらない
And I been tryin' to call my baby
俺のベイビーを 呼び出してるんだが
Lord, and I can't get a single SOUND
ああ、音ひとつ聴こえやしない

Well, dark clouds are rollin'
どんより雲が 空を覆って
Man, and I'm standin' out in the RAIN
俺は雨の中で 突っ立っている
Well, dark clouds are rollin'
どんより雲が 空を覆って
Man, and I'm standin' out in the RAIN
俺は雨の中で 突っ立っている
Yeah, flood water keep a-rollin'
濁流は 止めどなく溢れ続けて
Man, it's about to drive poor me INSANE
ああ、惨めさで今にも気が狂いそうだ

Well, I'm leavin' you baby
ベイビー、お前とはお別れだ
Lord, and I'm goin' back home to STAY
俺はお家に帰って ゆっくりするよ
Well, I'm leavin' you baby
ベイビー、お前とはお別れだ
Lord, and I'm goin' back home to STAY
俺はお家に帰って ゆっくりするよ
Well, back home there're no floods or tornadoes
あの世は 洪水とも竜巻とも無縁さ
Babe, and the sun shines on EVERYDAY
毎日 おひさまが輝いているんだ

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