無防備だった頃
時は1995年、高校生の私は
名古屋駅の居酒屋でバイトをしていた。
夜、バイトあがりのJRコンコース。
セーラー服を隠すようにコートを羽織り、
仲間と夢中にしゃべって、明日のシフトを確認して、ばいばいした。
直後、声をかけてきた一人の男性。
「少し、話さないか。」
これから時間はあるのか。
普段は何をしているか。
たわいもない事を一方的に続けてくる。
当時の私より、かなり年上の男性だった。
のらりくらりと、かわして帰ろうとした時、
ふと、
「ひとり暮らし?」
と聞かれた。
「違います。」
家族と住んでいるのだから、即答である。
「君、明るくしゃべっていたから、てっきり一人暮らしだと思った。」
男性の意見はこうだった。
一人暮らしの子は外では妙に明るい。
一理あるか偏見かは、断定できない。
けれど、どこか、いつもさみしさを抱えていた
ことも確かだった。
当時は、年上から声をかけられることも少なくなかった。
それでも、その場をやり過ごすことだけは妙に上手かった。
JRコンコースから、今は無き生活倉庫までの道は、私の無防備だった高校時代の記憶そのものだ。

