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ツギノツギ キックオフイベント実施レポート前編

こんにちは!ツギノツギ事務局です。
東京都では、事業承継を行った企業が新規事業を創出し「第二創業」を遂げることを支援するため、令和7 年度から、「ツギノツギ」プロジェクトを開始しました。
本事業では、事業承継した後継経営者の方や新規事業開発を目指す方などの交流と学びの場としての「コミュニティ」や、新規事業開発を個別に伴走支援する「事業開発プログラム」を提供します。

7月25日、Tokyo Innovation Baseにて、「ツギノツギ」事業のキックオフイベントが開催されました。イベントは、基調講演、パネルディスカッション、ネットワーキングの三部構成で実施。
本記事(前編)では、基調講演「起業の新たな選択肢と第二創業の好事例」の模様をレポートします。



地域と世界をつなぐ、アトツギ起業家の挑戦

登壇したのは、三星グループ代表であり、アトツギ×スタートアップ共創基地 TAKIBI & Co.代表の岩田真吾氏。
「地域と世界をつなぐアトツギ起業家の挑戦」と題し、自身のこれまでの道のりと、アトツギに必要な視点を語りました。

冒頭、「生きるために必要なものを3つ教えてください」と問いかけた岩田氏は、日本人の多くが衣食住を挙げることに触れ、「服を着ている時間が一番長いのに、現代では服が軽視されがち」と語ります。

ウールの専門家として、100年企業を継ぐということ

岩田氏は、尾州産地を代表するウール織物メーカー「三星毛糸」の五代目。ウールの専門家として、洋服用生地の製造に携わる一方で、アトツギとして事業を承継しながら、Forbes JAPAN起業家ランキング第1回特別賞も受賞。講演では、「アトツギこそ起業家精神が必要」と強調します。

講演は「第1章〜第3章」とAI時代へのメッセージという構成で進められました。


第1章 二十代のうちに僕は経営者になることを決めた

起業か、承継か──ユニークな人生を選ぶ

岩田氏は、大学進学を機に東京へ出て「アトツギだからといって地元に縛られ続ける必要はない」と考えるようになったといいます。大学時代サークル長としての初めてのリーダー経験を経て、「リアルなチャレンジ体験こそが起業家精神を育てる」と実感。その後のインターンシップや2社でのビジネス経験を通じて、二十代のうちに経営者になろうと決意します。

「起業するか?跡を継ぐか?ではなく、また、損得で決めるのではなく、“どっちの人生がユニークで面白いか?”という視点で考えた。東京や世界で学んだことを、地方の100年企業の変革に活用したほうが面白いんじゃないか、と思った。」

そうして、岩田氏は“アトツギ”として事業を継ぐ道を選びました。


第2章 言うのとやるのじゃ大違い!若きアトツギの葛藤と挑戦

壁にぶつかり、視点が変わった

実際に経営に関わってみると、状況は思っていたより厳しかったといいます。
「決算書を見ずに帰ったら、状況は良くなかった。」
繊維業界のグローバル化により、事業環境は悪化。これまでの延長線上には未来が見えないと感じたそうです。

経営改善を目指し、前職の経験を活かしコンサル型のKPIマネジメントを導入。しかし、業績は横ばい。社員の表情も次第に曇っていったと語ります。
そんなとき、前職の先輩からかけられた言葉にハッとしたといいます。

「“その若さでオーナー社長になったなら、20年、30年単位で物事を見てみたら?”と言われて、ハッとした。短期的に結果を出すことばかり考えていた」

その言葉をきっかけに、まずは自分で汗をかき、「社員が良いものを作っていることを、客観的に証明できるようにしたい」と強く思うようになったそう。
自らスーツケースにサンプルを詰め、国際展示会に挑戦。言語やビジネス慣習の違い、与信管理、輸送時間など多くの壁を越えながら、一つ一つ信頼を積み重ねていった。

2012年には欧州を中心とした海外展開を本格的にスタート。現在では、世界のトップブランドと直接取引を行うまでに至っている。
自社ブランド「MITSUBOSHI 1887」も、ECやファクトリーストアを中心に拡大を続けている。

一時は存続も危ぶまれた三星毛糸だが、経済産業省の「次代を担う繊維産業企業100選」にも選出されました。


第3章 事業のまんなかに社会性を!会社の枠を超えて共創する未来

その後、岩田氏の関心は、「会社の経営」だけでなく、「社会との関わり」へと広がっていきます。

「社会性のあることをついでにやるのではなく、事業の真ん中に社会性を据える必要がある」

地域の繊維事業者と連携し、オープンファクトリーや、作る人と使う人をつなぐ仕組みをスタート。
さらに、「アトツギとスタートアップ」を結びつける場として、アトツギ×スタートアップ共創基地TAKIBI & Co.【タキビコ】を設立。単なるマッチングではなく、中長期的なクロッシングから新しいビジネスを生む仕組みを作っています。


AI時代を生きる皆さんへ

講演の締めくくりには、「AIが当たり前になる時代では、論理的に正しいだけでは価値が薄れる」としたうえで、参加者に向けて5つのメッセージが送られました。

①実際に足を運んでリアルな体験から学ぼう
②若いうちに自分の旗を掲げて、妄想をいろんな人に話そう
③否定されても仲間と共創しよう
④ピンチの時こそ、ニコッと笑おう
⑤好奇心とEnjoyで、続けよう


質疑応答

スモールスタートと越境のすすめ

講演後の質疑応答では、参加者からの「新しい取り組みに対する社内の理解」や「東京のアトツギが持つ強み」といった質問に対し、岩田氏は以下のように応じました。

・新しいことはスモールスタートで始めてみる
・危機がある時こそ前向きなチャレンジが通りやすい
・地方に「第2の故郷」をつくり、越境的な関係性を築くことが大切
・ツギノツギのような公式プログラムを活用するのも有効


岩田氏の講演からは、アトツギとしての葛藤や決断、そして事業の再構築に向き合う姿勢が率直に語られました。
伝統を受け継ぎながらも変革を恐れず、社会との接点を広げていく姿勢は、これからアトツギとして一歩を踏み出そうとする人々にとって、大きな示唆となったのではないでしょうか。

後編ではパネルディスカッション「実体験から語る第2創業における失敗、直面した困難と解決の方法」のレポートをお届けします。

本事業概要についてはこちら


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