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腸は「第2の脳」? ④SIBOと腸管神経系

なぜ「ゴミ屋敷」になるのか? ― SIBOの真実と網タイツの沈黙


これまで、腸を動かす「2枚の網タイツ(神経)」と、実際に動く「エンジン(筋肉)」がいかに現代の食でダメージを受けているかを見てきました。

第4回のテーマは、近年注目されているSIBO(小腸内細菌増殖症)です。 SIBOとは、本来菌の少ないはずの小腸で細菌が爆発的に増え、腹痛やガス溜まりを引き起こす病態です。

私の周りでも、この頃、お腹が張って、特に人前でのおならが我慢できなくて困っている、という悩みが多くなっています。

多くの人はSIBOを「菌が異常に増えたこと」が問題だと考えますが、別の視点で見れば、それは「インフラが崩壊した現場で起きた、必然の悲劇」と考えられるのではないでしょうか。


「お掃除ロボット」になれない


健康な人の小腸には、実はそれほど多くの菌はいないらしい。なぜなら、空腹時にMMC(空腹時強収縮)という、強力な「お掃除のリズム」が作動しているからだ。

このお掃除ロボットとして働くのは、筋肉の層にいるアウエルバッハ神経叢である。

もし、低血糖を恐れて絶え間なく補食を摂り続けていれば、MMCが抑制されて、アウエルバッハ神経叢はお掃除モードになることができない。

加えて、第3回でお話ししたように、低血糖で筋肉(エンジン)が痩せ細り、血糖スパイクで神経(電気系統)が焼き切れていると、ますますこのお掃除ロボットは動けない。これが、小腸が「ゴミ屋敷」と化す第一歩だ。


未消化タンパク質:悪玉菌への「豪華なケータリング」


掃除が止まった小腸に、さらに追い打ちをかけるのが、胃酸不足消化酵素不足による「未消化の食べ物」である。

特にタンパク質が十分に分解されないまま小腸へ流れ込むと、それは腸内細菌にとって最高の「エサ」になる。

  1. インフラの停止: 網タイツの機能不全で、お掃除が止まる。

  2. エサの供給: 未消化のタンパク質が流れ込む。

  3. 菌の爆発的増殖: 停滞した場所にエサが豊富にあるため、菌が爆発的に増え、ガス(水素やメタン)を発生させる。

これがSIBOの本質なのかな、と思う。「未消化物というゴミ」があっても、通常なら「網タイツの神経系」が腸を動かしてお掃除してくれるはずなのに、それが出来ない。これでは「ゴミ屋敷化」が進むのも無理はない。


感染後SIBO:網タイツを襲う「自己免疫の嵐」


さらに、最新の研究では、ひどい食中毒(カンピロバクターなど)をきっかけにSIBOが始まるケースがあることも分かってきた。

菌が放つ毒素に対抗しようとして作られた私たちの「抗体」が、あろうことかアウエルバッハ神経叢を支えるタンパク質(ビンキュリンなど)を誤って攻撃してしまうのだ。この誤爆を「自己免疫反応」と呼ぶ。 せっかくの網タイツが、自分の免疫によってボロボロにされてしまう。この物理的なダメージによって、小腸はさらに動けなくなっていく。


除菌の前に、インフラの復旧を


SIBOの治療として抗菌剤やハーブが使われることがあるが、分子栄養学的なアプローチをするなら、別の視点が必要だ。 「悪玉菌を殺す」ことだけに集中しても、お掃除ロボット(アウエルバッハ神経叢)が壊れたままであれば、悪玉菌はすぐに戻ってくるだろう。

今、目の前の困っているヒトに必要なのは、菌との戦い以上に、網タイツの中のニューロンが会話できるようにするためのビタミンB1やコリンであり、削られた筋肉を再生させるための適切なタンパク質と低血糖ケアなのかもしれない。


おまけ:タイムリーな情報


このように、腸管神経系とSIBOについて調べつつ、楽しみながら記事を書いていましたら、

なんとタイムリーに中村篤志先生が「SIBOと甲状腺」という記事をnoteに投稿されました。

大変興味深く、勉強になります。小腸のお掃除MMCの発生のトリガーホルモンはモチリン(ヒト・イヌ)とグレリン(げっ歯類)と言われますが、甲状腺ホルモンの制御を受けていることが重要なんですね。なんなら、甲状腺ホルモンが腸内細菌分布の司令塔ということも初めて知りました。

分子栄養学の勉強界隈では、甲状腺機能低下に陥っている方もいらっしゃいます。その中にSIBOに苦しんでおられる方も多いと思われますが、特別な遺伝子の特徴(FT4をFT3に変換できない遺伝子多型など)が無い方は、副腎疲労すなわちHPA軸の不調や、HPT軸の不調が整うと、SIBOの症状も治まっていくのかもしれません。

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