今のうちに堪能しておけ寝正月 | エッセイ
今年度…と云った方が良いのか、今回の年末年始も私は実家に帰省していた。
近年では、実家に帰省しないという方が増えてきているのを耳にする。やはり昨今の筆舌に尽くし難い事情を鑑みると、そうした流れになってきてもおかしくはないと、妙に納得できた。
かくいう私も少なからず、その一連の内のほんの一部の「煽り」とやらに影響を受けている人間でもあったりする。にも関わらず、仕事納め当日の夕方頃には会社から自宅に戻り、すぐさま支度しては愛車で地元へと直行していた。
ちなみに、私が今住んでいる東京の自宅から実家までの距離は、車もしくは電車を利用しておよそ2時間ほどかかるぐらいである。遠方出身の方からすれば、私のような人間はわりかし近い方であることに違いはない、と思われてもおかしくはない。
ただ一番の懸念点は、途中で交通事故やら渋滞やらで、普段通るのことのないルートを利用して迂回せざるを得ない状況に陥ることだ。私は親元を離れてから丸十年経過しており、その間に何度か遭遇している。
そのたびに母から、心配する声がたびたび上がってくるわけで、それを私はあっけらかんとするのである。しかしながらそう取り繕うにも、そろそろ身を弁えなければならないと、一人ひしひし感じつつある。
実家帰省の目的としては、今は独り身である母の生存確認のためだ。とはいえ、もしも自分が戻る道中で事故に巻き込まれてしまっては、まさに元も子もない。これでは何のために実家帰省を試みるのか、今頃お空で眺めているであろう父に面目が立たない。
その日は、4時間ぐらいで着いた。渋滞はやはりどうしても回避できずハマってしまったものの、特に事故に巻き込まれることや立ち往生してしまうことなく、無事な姿で母や仏壇に姿を見せることができた。
一通り落ち着いてから実家のテレビを見ていると、高速道路で大規模な事故であったり工場で傷害事件が大々的に報道されていた。
呆然としながら「世も末だ」と密かに思いつつも、これらの事件や事故に自分が何一つ遭遇することなかったことが不幸中の幸い…と云うべきなのだろうか。
世の中が、ますます不穏な空気一色に染まろうとしていく中で、誰しもおちおちなんてしてられないだろう。まして私自身もこの先、あと何回実家に帰省できるかすらわからないものなのだ。
今できることは今しかできない。だからこそ、今のうちにやれることはやっておけと考えながら、私はその期間の大半を寝正月として堪能するのであった。
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