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tinarist
話し相手はいつも風 | ショートショート
「どこへ行こう、ねぇ…」
なんとなく…誰かに話しかけるように、そう呟いてみた。
心に確かな浮き沈みがあったわけでなければ、特に何かを始めたいきっかけが生まれたわけでもない。
僕に話し相手はいない。だからいつも、語りかける相手になるのは、自分の周りに吹く風だけだった。
もちろん、僕の質問に対して確かな答えは返ってこないし、返ってくるはずもない。
周りから見てすれば、ただの独り言を喋っているようにしか見えないだろう。あるいは、小言ばかり話す頭のイかれた奴だと、そう思われてもおかしくはない。
年を重ねるごとに、心で思っていることを口より先に発してしまうことが多くなってきた。
もしかしたら、自分の心を制御する箍が外れようとしている合図なのかもしれない。
なら、この先どうすればいいのか。どうしたら、僕は僕の望む道に進めるのか。
わからない。わからないから今、此処にたっているのだろう。
「ハチ公…」
そこにいるはずもない何かを、僕は口にした。
(410文字)
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