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企画参加〜#原稿用紙二枚分の文芸賞「米子さんは枯れ専」

日本のとある地方都市にある白米しらごめ商店街。
そこにしっとりたたずむ昭和の情緒溢れる喫茶店。

喫茶ルマンドはマスターが一筋の白髪もない青年だった頃に産声を上げた。

ざっくり時を同じくして産まれたのがこの物語の主人公、銀舎利米子ぎんしゃりよねこさん。
米子さんは48歳。
米子さんはよく働く。
何故なら、米子さんは恋をしているからだ。


カランコロン♪

ドアベルの音と同時に

バタバタバタっ。

駆け込んでくると、米子さんは


「マスター、おはようございます!」

元気にご挨拶。

「おはよう、米ちゃん。いつものでいいかい?」
「……ハイっ」


カウンターに置かれたコーヒーカップとソーサーはマスターがイギリスに旅行した時に買ってきた物らしい。

すうっと香りを吸い込む。

「いい香り……」

ごくりと口に含む。

「どうだい?」
「……美味しいです」


米子さんはマスターにひとつだけ嘘をついている。

添えられたルマンドをひとかじり。
今日も今日とて苦いコーヒー。
それでも米子さんはコーヒーを飲むのだ。

「マスター」
「何だい?」
「おかわり、もらっても?」
「もちろん」

ほんのり笑みの足されたマスターの目尻の皺。

コーヒーを淹れる仕草……
真剣な横顔……

開店前のこのゆったりと流れる時間。
その全てが自分にとって、愛しき物の極み。


(あぁ……今日も良い具合に枯れてるっ!コレが忍の言ってた、推ししか勝たんってヤツね!)


「母さん。声、漏れてるよ」
「えっ?」
「それに、ソレ言ったのだいぶ前だからね」
「いつからそこに」


米子さんはシングルマザー。 
米子さんが夫とどのような経緯でお別れたもうたかを書くには、この原稿用紙は狭すぎる。
愛する息子の忍君は高校生。
米子さんに少し遅れてルマンドに来て朝食をとる。

「おはよう、忍君」
「おはようございます」
「いつものでいいかい?」
「はい」

二人のやり取りも極みのひとつ。

米子さんは今日も働く。
米子さんと同い年のルマンドで。

おわり

800字




こちらの企画に参加させて頂きました。
花澤薫さん!
素敵な企画、ありがとうございます!





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