【ホテル業界10年で、一番学んだこと】
ホテルで働き始めて、10年以上が経った。
まだ入社して間もない頃、
ホテルとしての不手際があり、
大変ご立腹されたお客様がいらっしゃった。
今思えば、カスタマーハラスメントと言われても
おかしくないくらい、
とても激しい口調で、他のお客様にも聞こえるほど、大きな声で話されていた。
初めて見る光景で、あまりにも衝撃だった。
「人ってこんなに怒るんだ…出来れば対応したくないな。」
当時の僕の、率直な感想であった。
ホテルのフロントで勤務していると、
提供する客室での不手際や
スタッフの接客に対する不手際など
何かしらのご指摘を賜った場合にお詫びするのは
もちろんのことだが、
ご出発時に再度お詫びするという場面が度々ある。
まさに"自分がしていないミス"で
ご出発時(チェックアウト時)にお詫びする場面が訪れた。
お詫びしたものの、内心は、
「そもそも、なんで自分が謝らなあかんねん。」
「自分悪くないし、そもそも謝るの嫌いなのに。」
これらの気持ちが"接客態度"や"ふるまい"に
出ていたのだろう。
案の定、お客様から鋭いご指摘が入る。
「その態度は何? 自分は悪くないのに。
って思ってるやろ?」
「えっ、ヤバっ。バレてる、、、」
と一瞬思ったものの、すかさずお詫びした。
が、
僕の接客態度で完全に、日に油を注いでしまった。
こうなれば、下っ端の僕がいくら謝ったところで
収集がつく訳もなく、
「話にならんから、責任者を出して。」
当然こういう流れになり、
上席の支配人が対応することになった。
数分前まで、
あれほど怒っていたお客様が、
帰る頃には笑顔で、
「また来るわ。」
そう言ってくださった。
何が起こったか分からなかった。
さっきまであんなに怒っていたのに。
と同時に、
「なんであんな対応ができるんだ。」
と感銘を受けた。
隣にいた上司の対応は、
当然僕とは比にならないほど丁寧で、真摯だった。
上司は最後まで相手の話を遮らず、
静かに頷きながら耳を傾けていた。
落ち着いて謝罪し、
ホテル側の落ち度を認め、
ご指摘いただいたことへの感謝を伝え、
そして改善案をきちんと説明していた。
結果、最後には笑顔で帰ってもらった。
10年以上経った今でも、
当時の支配人にはまだまだ及ばない。
それでも、後輩社員をサポートしたり、
お客様に笑顔でお帰りいただける対応は、
少しずつできるようになった。
あの日、隣で見た支配人の背中に、
ほんの少しだけ近づけた気がしている。
そんな僕がホテル業界10年で学んだことは、
接客技術ではありません。
受け止める。
でも迎合はしない。
歓迎はする。
そして、相手によって正解は変わる。
だからこそ、
自分の感情ではなく、
相手の立場で考える。
これが、
ホテル業界10年で、僕が一番学んだことだった。
接客に正解はない。
でも、
相手の立場で考えることだけは、
