第一章 No.2住み込み修行・限りない長時間労働の果てに
住み込み修業が始まってすぐ、私は“現実”を叩きつけられました。
それまで私は、遊びに明け暮れ、どこか気が緩んだイージーモードな毎日を送っていました。そんなぬるま湯から一転、いきなり超ハードモードの環境へ放り込まれたのです。厳しさに順応するまで、体力的にもメンタル的にも悲鳴を上げ続けました。

ここには、休日という概念がほぼ存在しません。暦の赤い印は、ただの“印刷の色”。三ヶ月以上休めないことも珍しくなく、朝は誰より早く起き、夜は厨房を最後に出る。1日の労働時間は12時間なら少ない方。12時働いてから夜の宴会が始まる。平均16〜18時間前後。ごく忙しいときは20時間〜徹夜仕事。繁忙期にはそれが毎日続く。睡眠は常に不足。追い回しとして走り続け、仕込み、掃除、買い出し…宴会の後かたづけ、雑用のすべてが押し寄せてきます。慢性的な疲労との戦いでした。
無理に無理を重ねた結果、手はひび割れ、指先はブロッコリーのようになり、とても人前に出れるような状態ではありませんでした。足も腰も身体中ボロボロ。それでも逃げ出そうとは思いませんでした。もちろん脱落してゆく仲間達や帰って来ない同僚達も居ました。でも私は早く1人前になりたい。独立自立したい!そんな思いが自分を支えていました。
世俗と離れて唯一、良かったことといえば、“ギャンブルをやめられたこと”
イージーモードだった頃の私は無類の博打好きでした。正確には、やめたのではなく、やる時間すら存在しなかったのです。友達と遊ぶこともできず、習い事や趣味、サークル活動もできず、TVも見れず、音楽も聴けず…ただただひたすらに働いた。なかには穴を掘っては埋めるような意味の無い理不尽な仕事もあった。世間から隔離された時間だった。忙し過ぎて記憶が飛んだ日も多々あった。(笑)そんな地獄のような日々が三年ほど続いたころ、ついに労働基準局が店に立ち入り調査。結果そこからようやく週に一度の休日をいただけるようになりました。
限りない長時間労働と過労の果てに…ようやく見えた、ひとすじの希望の光でした。
次回は
第一章No.3 私の体験談
過酷な20時間以上の労働を30日以上続けると人間はどうなるのか?死を覚悟した私。
お楽しみに
