いつだって、未来は味方だ。日向坂46の「これまで」と「これから」について。
【日向坂46/『ひなたざか』】
乃木坂46、欅坂46に次ぐ「第3の坂道グループ」として、デビュー以来、怒涛の快進撃を続けている日向坂46。
しかし、彼女たちが今日に至るまでには、途方もなく長い試練の日々があった。
●1人目のメンバー・長濱ねる
まず、このグループの「これまで」の歩みについて振り返っていきたい。
今でこそ語られることは少ないが、このグループには、もともと「けやき坂46」として結成された経緯がある。
全ての物語は、長濱ねるというたった一人の少女から始まった。
長崎の進学校に通う、成績優秀な才女。2015年、後に欅坂46としてデビューすることになるアイドルグループのオーディションにおいて、長濱は、合格基準の「A」を遥かに超える「S」評価を与えられた。
しかし、母親からの強い反対を受け、また長濱自身も「アイドルになりたい」という想いを正直に打ち明けることができず、最終審査を辞退することになった。
運営メンバーの計らいで、長濱と母親、父親の3人は、乃木坂46の全国ツアーの福岡公演に招待された。アイドルへの道が閉ざされたかに思えた最終審査の翌日、運命の歯車がもう一度動き出したのだ。
乃木坂46のパフォーマンスに感銘を受けた長濱の両親は、ライブの後、運営委員会に最終審査辞退の取り下げを申し出て頭を下げたという。しかし、最終審査を経ていないメンバーをそのまま加入させるわけにはいかない。それは、他のメンバーやファン、何よりも長濱のためを思った、運営委員会による苦渋の決断であった。
そして、秋元康の提案で、欅坂46とは別に、けやき坂46というグループを作り、すぐに長濱の仲間を探すオーディションを行うことが決まった。これが、けやき坂46(通称:ひらがなけやき)というグループの特異な成り立ちである。長濱は、欅坂46(通称:漢字けやき)と兼任しながら、けやき坂46の中核メンバーとしてグループを牽引していく。
●「空白」の存在証明
ここまで読んだ人は、けやき坂46は「長濱ねるを中心とするアイドルグループ」と認識するかもしれない。しかし、けやき坂46の物語は、思ってもいない形で第2章に突入する。
2017年9月、長濱ねるのけやき坂46の兼任解除が発表され、彼女はそれ以降、欅坂46の活動に専念することになる。けやき坂46は、グループ発足のきっかけでもある中核メンバーを失い、突然にして「空白」の存在となってしまったのだ。
そもそも、けやき坂46は「欅坂46の妹グループなのか」「それとも、乃木坂46にとってのアンダーメンバーのような存在なのか」といった立ち位置さえ、グループ発足から定まっていないままだった。
残された1期生たちは、グループの未来に光を見い出せない状況の中で、「もうみんなで辞めよう」と自暴自棄になったこともあったという。自分たちの存在意義に悩み、先を走る欅坂46との距離にもがき苦しみながら、しかし、それでも彼女たちは、「坂道シリーズ」の第3のグループとして懸命に走り続けてきた。
少しずつオリジナル楽曲を増やしながら、やがて彼女たちは、乃木坂46、欅坂46の楽曲に頼ることなく、自分たちのオリジナル楽曲を軸にワンマンライブを成立させることができるようになった。そして、2018年1月には、欅坂46のピンチヒッターとして、3日間の武道館公演を堂々と成功させた。
その集大成が、2018年6月、けやき坂46名義として初めてリリースされたフルアルバム『走り出す瞬間』である。
長濱ねるの兼任解除によって、グループ発足の立脚点を失ったけやき坂46は、数々の逆境を乗り越えながら、自分たち自身で新しい存在意義を獲得しようとしていたのだ。
けやき坂46は、これからどのようなグループになっていくか。それは、誰にも分からなかったけれど、「空白」の存在から再出発を果たした彼女たちは、とても眩しく輝いていた。
●ついに実現した「第2のデビュー」
そして2019年3月、彼女たちは、ついに自分たちが歩むべき新しい坂道を切り開いた。その結実の形が、日向坂46としての「第2のデビュー」である。
グループカラーは「緑色」から「空色」へ。それは、欅坂46とは完全に道を違えるという意思表明に他ならない。そして僕には、これから彼女たちが描いていく晴れやかな未来を想起させる色であるようにも思えた。
デビューを鮮やかに飾った1stシングル『キュン』。天真爛漫にして快活。そして、どんなネガティブな感情もハッピーオーラで包み込む。そう、彼女たちが選んだ新しい坂道、それはまさに、アイドルの「王道」だ。
2nd『ドレミソラシド』、3rdシングル『こんなに好きになっちゃっていいの?』、そして4thシングル『ソンナコトナイヨ』。彼女たちは、デビューから1年、眩いほどのポップソングを、次々と世に送り出してきた。
乃木坂46とも欅坂46とも異なる「第3の坂道」を駆け上がりながら、今や完全にJ-POPシーンのメインストリームへ躍り出た日向坂46。その痛快なシンデレラストーリーに、強く胸を打たれたのは、きっと僕だけではなかったと思う。
●いつだって、未来は味方だ。
最後に、日向坂46の「これから」について。
デビュー1年目にして「紅白」出場、今年の12月には、坂道グループ史上最速で東京ドーム公演が決まっている。日向坂46の怒涛の勢いは、ここからさらに加速していくのだ。
そしてこのタイミングで、第2のデビュー以降の1年半の歩みを刻んだ1stアルバム『ひなたざか』が発表された。
圧倒的にポジティブなエネルギーを最大限に放ち続ける計27曲。それぞれの楽曲はバラエティに富んでいて、メルヘンでファンタジックな世界観を示す曲があれば、真っ直ぐな恋心を直球で伝える恋愛ソングもある。いずれにせよ、このアルバムはまさに、彼女たちが追求し続けてきた「エンターテインメント」精神の結晶だ。
これから彼女たちは、いったいどのような未来を描いていくのだろうか。それは、「空白」の存在から歩み始めた彼女たち自身が決めていくだろう。
「これまで」も、そして、「これから」も。
力強い覚悟を胸に秘めた日向坂46の姿に、僕は心を奮い立たされ続ける。
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