二十一帖「少女」角田光代訳源氏物語(中学生の恋)
雲居雁14、夕霧12
金八先生に、中学生が妊娠するという回があったらしい。私は金八が嫌いだったので見てないが、世間では話題であった。
平安時代、裳着の儀とか元服は12ぐらいからであるから、雲居雁も夕霧も大人っちゃあ大人なんである。だから仲良くしてもええようなもんであるが、金八中学生妊娠事件とは違った意味でこれが大問題であった。
説明しとくと、夕霧は葵と源氏の間に産まれた男の子である。葵の母親の大宮の下で育てられていた。自分の娘(葵)も夫(元左大臣)も死んでしもうたので、大宮は夕霧を大切に育てる。
雲居雁は内大臣(元頭中将)と前妻との間にできた女の子である。この子も大宮に引き取られ、大切にされる。
二人は十歳まで一緒に過ごし、いつしか二人の間に恋心が芽生えてしまう。んで、多分致してしまう。
知らぬは親ばかりなり。成人してさあこれからと、子供の将来を見越して力が入る。源氏は夕霧を引き取り、大学寮に入れて学問させることにする。大宮んとこいると、甘やかされてロクなもんにならん、と思ったらしい。
内大臣(頭中将)は、雲居雁を中宮に入内させる算段である。実はこの前に冷泉帝の妃決めの争いがあり、源氏の推す梅壺女御(斎宮女御)が、内大臣の推す弘徽殿の女御(内大臣の娘)に勝った。なので、中宮への入内は何としても雲居雁を先にせねばならんのである。幸い姫は美しく育ち、音曲も達者だ。
内大臣はそんな話を大宮として退去しようとした時、女房たちのヒソヒソ話を聞いてまう。
ーー雲ちゃんと夕ちゃん仲良いの、お父ちゃん知らんのねー。
ーー親ばかねー。普通わかるわー。
!!!
当時、親戚間の結婚は珍しくはないが、これでは目論見がパァである。おまけに自分が陰で笑われとる。源氏にリベンジしようと思うたが、それも叶わん。
て、ことで出直して、大宮にねじ込む。
「母ちゃん! 雲居雁、夕霧とデキてるやありませんか。もっと、ちゃんと見ててくれんと! そんな親戚同士の馴れ合い結婚て、外聞の悪い! 入内の話もパァですがな!」
大宮、びっくり。
「そんな、まさか」
「もうええです。このことは御内密に。雲居はアテが引き取ります!」
怒って出てったが、大宮は密かに思うのだった。
いや、びっくりしたわ。世の中、そうなってますの。ばばは夢にも、て、待てよ。そんな息子(内大臣)、顔真っ赤にして出てったけど、考えてみたら、、、ええやん。お似合いやん。似合いのカップルやん。しかし、今は自由に会わすわけにはいかんか……。
何も知らない夕霧が大宮邸を訪れる。皆、ガンとして雲居には会わせない。そのうち弘徽殿の女御が里下りしたのを機会に、雲居の姫は内大臣に引き取られてしまったのである。
とかく子供の将来を親は決めたがる。大学の就職シーズンが始まると、
ーー公務員がええよ。
ーー市役所がええ。
ーー民間なんかいつ潰れるかわからん。
とか言うてくる。お母ちゃん、うるさいわ。自由にさして! と叱っとくと、暫くは大人しいが、また寄ってきて、
ーー公務員がええ。
ーー生活に困らん。
ーー(アテの)老後も安心や。
と、またひそひそ言うてくる。こうして、息子は反発し、公務員試験を受けない結末となるのである。
親の考える子の幸せは、往々にして、子の望まない幸せであったりする。
つまり、そういうこと。
