1000のおむすびを食す男 第3話
第3話 埼玉県与野駅 クリーニング屋さんのお母さん方が、自宅を改造してつくった隠れおむすびカフェ
プロローグ
お昼ごはん。
しがないサラリーマンにとって、1日の中で唯一にして最大の楽しみ。
でも、ラーメンもカレーも値上がりしてしまって、以前のように気軽に食べられなくなってしまった。
家のローンもあるし、子供の教育費だってまだまだかかる。
少ないお小遣いをやりくりしながら、お昼ごはんを楽しみたい!
グルメな味を味わってみたい!
そこで出会ったのが、おむすび。
おむすびは庶民の食べものの代表選手。
わずか数百円で、専門店の最高の味が楽しめるのだ。
昔から愛されている懐かしおむすびから、思わずSNSにアップしたくなるようなお洒落なおむすびまで。
サラリーマンお小遣いグルメの決定版「おむすび」を一緒に堪能していきましょう。
第3話本編

この日は、広告撮影に使う衣装の商談でさいたま市与野へやってきた。
順調に商談が終わり、時計を見るとちょうどお昼前。
ぐぅ。
お腹も空いてきたので、ランチのできる場所を探すことにした。
与野駅へ向かって通りを歩いていく。
このあたりは、住宅街と商店が混ざっている。
生活を感じさせる街並みだ。
ランチが食べられるお店は、もう少し駅の方にいかないとないかもなあ。
と思いながら、ぶらぶら歩いていく。
すると・・
ピコーン!
自分の中のおむすびレーダーが一瞬鳴った。
おむすびレーダーとは、日々おむすびのことを探し求めるうちに、おむすびの姿や文字を見ると即座に反応してしまう癖みたいなもの。
周りを見てみる。
通り沿いに1軒のクリーニング屋さんがあるくらいで、どこにでもあるような普通の光景。
おむすびを売っているようなお店は見えない。
なんだ勘違いかあ。
通りをさらに進んでいく。
すると・・・
ピコーン。ピコーン。
また、おむすびレーダーが鳴った。

前を見ると「手作りおにぎり」ののぼりが、風になびいている。
この文字におむすびレーダーが反応していたのかあ。
でも、おかしい。
のぼりはあるけれど、まわりにおむすび屋さんらしきものが、まったく見当たらない。

横にはクリーニング屋さん。
特段、おかしなところはない。
どこに、おむすび屋さんがあるのだろう。
周りをぐるりと見渡してみる。
すると、少し先にこんな看板を見つけた。

「おにぎりかふぇ こんどうさんち」
やはり、おむすびを売っているお店がこの近くにあるらしい。
しかもおむすびカフェなんて、ちょっと洒落てるじゃない!
ははん。今はやりのおしゃれ系おむすび屋さんがあるのかな。
でも、この周りにはカフェみたいなお洒落なお店が見つからない。
いったいお店はどこにあるの?

やっぱり怪しいのは、このクリーニング屋さんだ。
クリーニング屋さんをじっくりと観察してみる。
このクリーニング屋さん。
よく見ると、店舗兼住宅になっている。
思い切って、門をくぐり庭を横切って、住宅のほうに向かう。
やっぱり普通の家だ。
さすがによそ様のお宅の中に入ることはできないし、ジロジロ見ることも気が引けちゃう。
でも…
玄関の扉が網戸になっていて、中の様子が少し見えてしまった。
中に人の姿が何人か見えた。
ここは入っていいところなのかな。

勇気を出して、呼び鈴を鳴らしてみる。
「ごめんくださいー」
「おむすび食べたいのですが・・」

「そうよー、いらっしゃいー」
お店の方が出てきてくれた!
ほっ。
やはり、ここがおむすびカフェみたいだ。
そこは、普通のお宅の玄関だった。
靴を脱いでスリッパに履き替える。
まさにお家にあがるみたいだ。
「お好きなところにどうぞ」
お邪魔しますー

ここは「近藤さんちのおにぎりカフェ」
クリーニング屋さんのご自宅部分を改装した、おむすびが食べられるカフェスペースとのこと。
なんだろう。
言葉にできないけれど、なんか落ち着く。
懐かしいような、心がくつろげるような。
なんとなくだけど「実家に帰ってきた感じ」なのだ。
板張りの部屋や畳敷きの部屋が、つながって大きなスペースとなっている。
そこにはちゃぶ台もあるし、ソファもあるし、中華料理を食べるときに使うような大きな円卓もある。
大きな古時計があったり、子供たちが書いた落書きもあった。

奥のスペースのソファの席に座ってみた。
先に何人かのお客さんがいて、ごはんを食べている。
よし、自分も注文しよう。
選んだのはこちら!
「おにぎりセット 600円」
おむすび2個におかずやお味噌汁もついてくるか。
これは、ちょっと楽しみ〜
10分くらい待っていると、おむすびが運ばれてきた!

ひゃあ。うまそうー!
おむすびに味噌汁に日替わりおかずのほっけの塩焼き。
おひたしやきんぴらなど小鉢もたくさんついている。
嬉しすぎ!
さっそくいっただきまーす。
かぶりっ。

高菜のおむすびを口いっぱいにほおばる。
うーーん。旨い!
出来たてで、ほかほか。
ふっくらとむすばれたごはん。
炊き加減がちょうどよく、お米の甘さもしっかりと引き出されている。
たっぷり入った高菜との相性も抜群だ。
変に飾っていないというか、シンプルなおむすび。
でもそれがいい。
懐かしいような、優しい味わい。
作った方たちの人柄が表れているみたいだ。

お店のみなさんにお話を伺ってみた。
(みなさん、めちゃくちゃ明るくて、笑顔が素敵でした)
この「近藤さんちのおにぎりカフェ」は、クリーニング屋を営んでいる近藤さんが、ご自宅の一部を開放しご近所の方が集まれるようにしたコミュニティスペース。
そのスペースを利用して、近藤さんやお知り合いの松澤さんたちが、週に2日間だけおむすびを食べさせてくれる、おむすびカフェを開いてくれているらしいのだ。
こんなに素敵なのに2日間だけってもったいないと思ってしまったけど、これが無理なく続けられるペースらしい。
たしかに無理せず長く続けてもらえた方がお客さんとしても嬉しいかもしれない。
そのぶん、他の曜日にはギャラリーやイベントなどもやっていて、お子さんから年配の方まで、地域のみなさんが交流できる場が作られているそうだ。

スペースの利用のことを聞いたら、申し込み用紙を見せてくれた。
えっ。2時間で1000円!
自分も都内とかでイベントスペースを借りたことがあるけれど、とてもこんな価格では無理…
もちろん、このコミュニティスペースの趣旨やその考え方に共感していることが前提だけど…
こんなかたちで地域に提供いただけているなんて素敵すぎる。

そうそう。
接客も素敵だったな。
お店の方が来店されたみなさんに「はじめですか」「また来てくださいね」など、お声掛けしていたのだ。
それが、すごく自然な感じで、ちょっと嬉しいのだ。
このお店にいるだけで、なんだか自然に笑顔が生まれちゃう感じがするのだ。
今の時代、周りと交わることが少なくなり、孤独を感じてしまうようなこともある。
そんな時に、気楽に行けて美味しいおむすびを食べられて、ちょっとお話ができる場所。
そんな場所が近くにあるだけで、癒されるというか、元気になれるというか、気持ちが少し楽になれる気がする。
近藤さんちの優しい、優しいおむすび。
ご馳走たまでした!
第4話に続く
第4話
船橋市場 50年間 市場で働く人々を支えてきたメニューに載っていない"お母さんのおにぎり"
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ファンベースデザイナー、地域創生プロデューサーなどしてます。
おむすびnoteを毎日書いてたり、浦和レッズを応援したり…
みんなが、好きなこと、応援したいことを素直に言える世の中にしたいなあ。
皆さんと、いろいろなコラボをしたいです!
ぜひぜひご連絡ください!