「子供は減ったが、椅子取りゲームは凶悪化した」。資産5600万円の投資家が分析する、少子化日本で「お受験」が過熱する残酷な理由
こんばんは。
積立投資研究家のきょんです。
木曜日の21時過ぎ。
電車で塾帰りの小学生を見ると、胸が締め付けられます。
あんな小さな体で、夜遅くまで何を戦っているのか。
「少子化だから、大学なんて誰でも入れる時代(大学全入時代)になる」
一昔前、そんな楽観的な未来予測がありました。
しかし、現実は真逆です。
首都圏の中学受験率は過去最高水準、大学受験の一般入試は難化、予備校の費用は高騰。
なぜ、子供の数が減っているのに、競争は激化しているのか。
それは、私たちが生きている資本主義社会が、残酷な「K字型(二極化)」に進んでいるからです。
今日は、一人の親として、そして冷徹な投資家の視点で、この不可解な現象の裏側を解き明かします。
第1章 「普通の席」が消滅し、「特等席」だけが残った
まず、最大の誤解を解きましょう。
「競争全体のパイ」は確かに小さくなっています。Fランク大学(定員割れ大学)は誰でも入れます。
しかし、親たちが子供を座らせたい「普通の席(そこそこの企業に入れて、そこそこの給料がもらえる席)」が、日本から消滅してしまったのです。
かつての日本は「一億総中流」でした。
そこそこの大学を出れば、そこそこのJTCに入り、終身雇用で守られ、退職金で老後も安泰。
つまり、船の「エコノミークラス」でも十分に快適な旅が保証されていました。
しかし、今は違います。
私たち現役世代が一番よく知っています。
「そこそこの席」は、非正規雇用に置き換わり、AIに代替され、海外の安い労働力との競争に晒されています。
現代の日本には、極端に言えば2つの席しかありません。
1. グローバルに戦える「ファーストクラス(超エリート)」
2. 沈みゆく船底で水を掻き出す「その他大勢」
中間の「快適なエコノミークラス」が消滅したため、親たちはパニックになっています。
「子供を船底に行かせるわけにはいかない」
「なんとかしてファーストクラスのチケット(高学歴・専門性)を持たせないと、この国では生きていけない」
子供の総数が減っても、「ファーストクラスの座席数」は増えていません。
むしろ、グローバル化で競争相手が世界に広がり、実質的な難易度は上がっています。
これが、少子化でも競争が激化する一つ目の理由、「中間層の崩壊による恐怖」です。
第2章 親世代(私たち)の「JTC絶望感」の投影
二つ目の理由は、私たち親世代の「実感」です。
今、小学生の親をやっているのは、まさに私たちロスジェネ世代や、就職氷河期を知る世代、そしてJTCの凋落を肌で感じている世代です。
私たちは知っています。
「ただ真面目に勉強して、いい大学に入って、有名企業に入れば安泰」という神話が、もはや嘘であることを。
会社の看板は自分を守ってくれない。
早期退職の嵐、上がらない給料、増え続ける税金。
JTCの中で「凡人」として生きることの息苦しさを、私たちは毎日痛感しています。
だからこそ、子供には「個の力」を求めます。
「どこの会社に入っても生きていけるような、圧倒的なブランド(学歴)やスキル(医学部など)を持たせたい」
これは、ある種の「親の自信のなさ」の裏返しでもあります。
自分が今の会社にしがみついていることへの不安を、子供への過剰な教育投資で埋めようとしているのです。
「パパみたいに苦労したくなかったら、勉強しなさい」
口には出さなくても、その強迫観念が、SAPIXのクラス分けテストに一喜一憂する親の姿を作り出しています。
第3章 「課金ゲー」化した教育と、祖父母マネー
三つ目の理由は、経済的な構造変化です。
教育が完全に「課金ゲーム(Pay to Win)」になってしまいました。
昔は「貧しくても勉強ができれば東大に行ける」というジャパニーズ・ドリームがありました。
しかし今のデータを見ると、東大生の親の平均年収は極めて高く、SAPIXのような難関塾に通わなければトップ校への合格は至難の業です。
そして、その塾代は年間100万円単位でかかります。
ここで登場するのが、「格差の固定化」です。
私たち現役世代の給料は上がりませんが、今の高齢者(祖父母世代)は、高度経済成長とバブルの恩恵を受け、多額の資産を持っています。
「孫のためなら」と、財布の紐が緩む祖父母。
教育資金贈与信託などの非課税制度も後押しし、富裕層の家庭には潤沢な「教育予算」が投下されます。
一方で、それができない家庭との差は開くばかり。
「課金すれば有利になる」ことが分かっているゲームで、課金できるプレイヤー(富裕層)同士が、札束で殴り合うような激しい競争を繰り広げている。
これが、一部の界隈(都心部の中学受験など)で起きている「過熱」の正体です。
子供の数は減っていますが、「教育に湯水のようにお金を使える家庭の子」の密度は、都心部においてはむしろ高まっているのです。
第4章 東京一極集中という「物理的な戦場」
四つ目は、地理的な要因です。
地方の過疎化は進んでいますが、東京の人口は増え続けています(最近ようやく頭打ちになりましたが)。
仕事も、情報も、そして教育の機会も、すべてが東京に集中しています。
「地方でのんびり子育て」という選択肢も素敵ですが、前述の通り「ファーストクラスのチケット」を手に入れるルートは、圧倒的に東京に偏っています。
その結果、意識の高い親と子供が狭いエリア(港区、文京区、世田谷区など)に密集し、そこで局地的な「生存競争」が発生しています。
地方の公立中学校では定員割れが起きていても、東京の私立中学入試では倍率5倍、10倍が当たり前。
日本全体で見れば「少子化」ですが、私たちが住む首都圏というフィールドに限って言えば、ライバルは減っていないどころか、より強力なライバルが全国から集まってきているのです。
第5章 資産5600万円の投資家は、娘にどう向き合うか
さて、ここまで絶望的な分析をしてきましたが、では私(きょん)はどうするのか。
2歳の娘を、この狂ったレースに参加させるのか。
私の答えは、「レースの存在は教えるが、強制参加はさせない」です。
そして、「最強の武器は学歴ではなく、金融資本と金融リテラシーである」と教えます。
もし娘が「医者になりたい」「研究者になりたい」と言えば、SAPIXだろうが鉄緑会だろうが、喜んで課金します。
それは「夢への投資」だからです。
しかし、「将来不安だから」「みんなが行くから」という理由で、なんとなく難関校を目指すようなら、私は止めます。
そしてこう言います。
「その塾代の月5万円、S&P500に積立しておこうか。君が20歳になったとき、それは数千万円の種銭になっている。それを元手に、起業するなり、好きな留学をするなり、自由に生きなさい」
これが言えるのは、私が資産形成をしているからです。
「いい大学に入らなければ人生終わり」という一本道しか見えていない親は、子供を追い詰めます。
しかし、「最悪、パパの資産(と金融知識)があれば、食いっぱぐれることはない」というセイフティーネットがあれば、子供はもっとのびのびと、自分の才能を探せるはずです。
私が資産5600万円を築いている真の目的は、FIREすることだけではありません。
娘に「学歴というレール以外の選択肢」をプレゼントするためでもあります。
「勉強も大事だけど、お金の勉強も大事だよ。パパと一緒にチャートを見ようか」
そんな会話ができる家庭こそが、これからの時代、最強の「教育環境」だと私は信じています。
最後に 狂騒の外側で、賢く生きよう
木曜日の夜。
リュックを背負った子供たちの背中は、日本の未来そのものです。
彼らが努力していることは尊いですが、その努力が「大人の不安の解消」のために浪費されていないことを祈るばかりです。
皆さん。
もしあなたにお子さんがいるなら、あるいはこれから生まれるなら、どうか周りの熱狂に飲み込まれないでください。
「みんながやっているから」という理由で、思考停止で受験戦争に突入するのは、高値掴みのイナゴ投資と同じです。
子供の幸せは、偏差値の高さとは比例しません。
しかし、親の心の余裕(と資産の余裕)とは、強く比例します。
まずは私たち自身が、JTCでの労働だけでなく、投資を通じて経済的な自立を確立しましょう。
親が楽しそうに生きている背中を見せること。
「大人になるって、結構楽しいぞ」と語れること。
それこそが、どんな塾よりも勝る、最高の英才教育ではないでしょうか。
少子化だろうが競争激化だろうが、私たちの家庭の幸せは、私たちが守る。
そのための武器が、S&P500であり、日々の積立投資なのです。
さあ、今日はもう難しいことを考えるのはやめましょう。
家に帰って、寝顔の子供(あるいは未来の子供)のために、自分自身の休息という投資を行いましょう。
