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蜂のように燃やし、蜂のように殴る。『ビーキーパー』

 年明け早々、景気のいい映画が観たかった。年々負担が増加する税金とか、来週からの業務のこととか、年明けくらいはそういった諸々から目を逸らして2時間を過ごしたかった。

 ちなみに、ここでいう“景気のいい”とは、たくさん人が死んだり、たくさん爆発が起こる、の意味である。そして、その願いを神様が聞き入れてくださったのか、特大級のお年玉がやってきた。暴れん坊将軍の新作より一足先に悪を成敗する、ジェイソン・ステイサムの最新作である。

 片田舎でひっそりと暮らす養蜂家、アダム・クレイ。彼はとある老婦人の家の納屋を借りて暮らしており、自分を受け入れてくれたその女性に恩義を感じていた。ところが、老婦人は悪質なフィッシング詐欺によって貯金や慈善団体の資金といった全ての財産を奪われ、責任を感じて自ら命を絶ってしまう。老婦人の娘であるFBI捜査官ヴェローナは詐欺集団の撲滅を誓うが、アダムはかつて自らが所属していた秘密国家プロジェクト“ビーキーパー”の力を借り、詐欺集団を追い詰めていく。

 掲載した予告編、あるいは上記のあらすじに目を通していただければわかる通り、本作は「ステイサムが出てきて殺す」映画である。それ以上でもそれ以下でもないと言ってしまえばそこまでだが、おせちを頼んでおせちが来る幸せを、まずは噛みしめるべきだ。ベ◯ーナのような悲劇を許さない職人気質の男を演じさせたらピカイチの、ジェイソン・ステイサムである。

 ちなみに、オープニングクレジットを観て初めて知ったのだが、本作の監督はデヴィッド・エアーで、彼の作品が劇場で上映されているのは年末年始しか会わない親戚くらい久しぶりのことではないだろうか。脚本はあの大傑作『リベリオン』『X-ミッションオザキ8』のカート・ウィマーであり、この座組ですでに品質保証はなされていると言い切ってしまおう。

 さて怒れる男アダム・クレイもといジェイソン・ステイサムのいいところは、とにかく仕事が早いことだ。お世話になったおばあちゃんの死を看取り、事情聴取から開放された途端、彼は古巣の国家級秘密プロジェクトに電話をかけ詐欺グループ企業の位置を特定。社会人なら会社に挨拶に行く際はお土産を持参するのがマナーだが、この男が持ち込んだのはなみなみと入ったガソリンタンク×2。それをナイトクラブめいたコールセンターにぶちまけ即着火!復讐に訪れたリーダー格とその用心棒の襲撃を受けても何事も返り討ちにして納屋ごと爆破!でもリーダー格まだ生きてるよ……?という我々の心配にもしっかりアフターケア。右手の指を全部ぶった切って車と一緒に不法投棄!!反社会的企業に対しては一切の躊躇がないステイサムである。

 その仕事の速さたるや凄まじく、例のおばあちゃんを陥れたコールセンターのオフィスを爆破するまで体感としては15分強くらいの出来事であり、その後は他のコールセンターや元締めとなる企業を探しては悪の根を駆逐していく。事態が大事となり物語も終盤に近づいた頃、悪党の台詞で映画全体の出来事がわずか二日間の間に起こっていることが判明し、思わず声を出して笑ってしまった。事情聴取から解放→巨大詐欺グループの壊滅までわずか二日である。ジョン・ウィックがロシアン・マフィアを壊滅させるのと大差ないスピード感で動いている。

 “養蜂家”を怒らせたのが運のツキ……と気付いた頃にはもう遅しで、アダムの歩みはSWATも現養蜂家も止められず、彼の通った後はハリケーンが過ぎ去ったかのように人が転がっている。その光景を観てゲラゲラ笑うのも一興だが、この映画には全編にある種の悲哀が漂っている。そもそも事件の発端は、ITに疎い心優しいおばあちゃんが自殺をするほどまで追い詰められたことであり、ステイサムの剛腕に吹き飛ばされるのはFBIやSWATといった現場で汗かく人たちや、金で雇われた傭兵たち。つまり、最前線で闘う“働き蜂”同士が争っているのである。危険な場所に送られ、使い捨てのように扱われていく兵士たち。

 そして、この物語には諸悪の根源たる“女王蜂”がいるのだが、それがまぁあまりにもスケールが大きいため、ここに関してはぜひご自身の目でお確かめいただきたい。国家を“巣”に見立てた時、最もアンコントローラブルな存在とは誰か。悪を薙ぎ払う様子をヘラヘラ楽しんでいたら、いきなり風してくるものだから、正月ボケした頭にはいい激になった。

 話運びのテンポの軽快で、観客が求めるものを余すところなく提供し、現実を睨む皮肉を一つまみ。ほろ苦さを殺戮のハチミツでコーティングしたジェイソン・ステイサムからのビッグなお年玉。これを年明け早々に公開する配給会社クロックワークスの采配たるや、流石である。ちなみに、入場者プレゼントでマジのお年玉が貰えるので、どうかお早めにご来場されたし。

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