🌙巡る想い⑩ ときめきの庭
この物語は、チュチュ・テイルの世界を旅する記録です。
シルエットで描かれた猫たちや動物たちが暮らす、やさしい世界✨️
白いうさぎの旅人 エトワール の旅日記として綴っています。
はじめての方は、ぜひ固定記事からご覧ください🌙
いちご園を過ぎると、薔薇のアーチが現れました。その奥には、光のやわらかい庭が広がっています。
ときめきの庭です。
一歩、足を踏み入れると──
静かなのに、どこか満ちていて、小さな気配が、あちこちに息づいているようでした。

庭の中には、工房のような小さな建物がいくつも建っていました。
ガラス張りの窓からは、香水の工房、宝石細工の工房、花飾りの工房など、動物たちがゆったり制作している様子が見えます。
そのひとつに、ぼくは自然と引き寄せられました。
扉の奥では、小さな宝石や、繊細な金具、きらめくパーツたちが、静かに並べられています。
その中心に──ひとりの猫の職人がいました。
細かな装飾をひとつひとつ組み合わせながら、とても丁寧に、何かを作っています。
それは、まるで音を閉じ込めるような、精密なオルゴールでした。
「……とても、きれいですね」
声をかけると、職人は手を止めずに、少しだけこちらを見ました。
「きれいに見えるのはね、"想い"が形になっているからだよ」
ぼくは、職人の手元を見つめます。
並べられたパーツの中には、やわらかな色合いのリボンや、小さな宝石が、いくつも混ざっていました。

「この庭の主(あるじ)はね」
職人は、手元から目を離さないまま、ぽつりとつぶやきます。
「とても、ときめきにうるさくてね」
ほんの少しだけ、口元がやわらぎました。
「想いが込められたオルゴールの細工や、宝石たちのきらめく瞬間が好きみたいでね」
そう言いながら、小さな宝石をひとつ、光にかざします。
ぼくは、気がつくと、一歩、踏み出していました。
並べられたパーツの中の、小さなリボン。
ぼくは、思わず、指先を伸ばしかけて――
そのまま、
手を引きました。
誰かに届ける形――
その言葉が、なぜか、頭の中に残ります。
……あのときも、同じように、手を止めてしまった気がしました。
理由は、うまく言葉になりません。
ただ――
その先へ進んでしまうことを、ほんの少しだけ、ためらったのです。
ぼくは、静かに視線を落としました。
ゆっくりと、その場を離れ、
もう少し庭の奥へと進みます。
庭の中は、思っていたよりもずっと広く、
そして、細やかに整えられていました。
工房だけでなく、その間をつなぐ道や、花の配置、光の流れまでもが、計算されて作られているように感じられます。
やがて、ひらけた場所へと出ました。
そこには、大きなテーブルと椅子が並び、
まるで茶会のような空間が広がっています。
少し離れた場所では、小さな滝から流れ落ちる水が、やわらかな噴水となって、光を受けてきらめいています。
その音は、耳にやさしく、心のざわめきを落ち着かせてくれるような心地よさがありました。

この庭は――
ただ美しいだけではなく、
“想いをどう届けるか”を形にするために、
丁寧に作り込まれている場所なのでしょう。
ふと振り返ると──ルートが、少し離れた場所で、こちらを向いて立っていました。
何も言わず、ただ、ぼくが動き出すのを、待っているように。
ときめきの庭を後にして、ぼくとルートは、月の庭を目指して歩きはじめました。
まだ知らない“巡り”の続きを、
ぼくたちは、静かに歩き出します。

🌙エトワールの旅をたどる
👉 次のお話
👉 前のお話
🌙この世界をもっと知りたい方へ
👉 チュチュ・テイルの世界はこちら

