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誰かの時間を、盗むということ

昔の誰かが大切にしていた箱を、ひとつずつ開けていく。
中には綿ぼこりと、知らない人のまばらな夢が詰まっていた。
埃まみれの小道具たちは、いずれも主を持たない。
それでも僕は、開けるたびに何かを期待してしまう。

どこかで見たことのあるような景色、
誰かの声がしそうな無音、
光の具合で見えたり、見えなかったりする痕跡。

ただの記録、ただの残骸、
それがわかってるのに、僕は手を伸ばしてしまう。
まるで、誰かの“思い出”に触れたいと願う泥棒みたいに。

時々、妙に綺麗なものに出会う。
まるでそれだけ保存されていたかのように、傷もなく、明るい。
そこに写っているのは知らない風景。知らない顔。
だけど、心のどこかがうっすらと疼く。
「もしかしたら僕は、これを見たことがあるんじゃないか」って。

たぶん、それが幻想なのはわかってる。
けれど、そんな気のせいで人は今日も息をする。

幾つもの箱を開けて、何も出てこない日もある。
それでもやめられない。
いっそ、宝石よりも空っぽの箱の方が僕の中をかき乱してくれる。

——何が欲しかったのか、もう思い出せない。
でも、気づけばまた、あたらしい鍵に手を伸ばしている。

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