『片想い文芸部』あくび
ナルさんの『片想い文芸部』、今回のお題は「あくび」です。
#片想い文芸部
ヘッドライン画像は「プッククン」さんの画像をお借りしました。どうもありがとうございます。
「あくび」
“あくび”をしたとたん、私は裏返って自分の口に飲まれてしまいました。そんなことあるはずがないと思っていたのですが、その時はとにかく眠くて、今までにないレベルのあくびをしてしまったのです。「マズイ!」と思った時はすでに遅く、頭から丸飲みのようになった私は足の指を残すだけになっていました。
そうして、私は、全てを自分の口に包み込み、世界から消滅してしまったのです。
~・~・~・~・~
気が付くと、私は謎の“異次元空間”で佇んでいました。空は虹色に輝き、宙に幾何学的な白いオブジェクトがたくさん漂っています。そして足元は…、腸壁のように波打ち、テラテラ光る、ぐにゃぐにゃした踏み心地の表面に、びっしりと、直径3cm×長さ20cmくらいの円柱が揺れているのでした。揺れるたび、その円柱の先端は様々な色に光っています。それは、いつだったか見たライブコンサートのサイリウムのようでした。
「綺麗…なんだけど、なんか、こう、触感が気持ち悪いなぁ…。」
そんな風に、思いました。
それから、何が進展するでもなく、数週間が経ちました。
私の考えでは、もう一度大あくびをすれば元に戻れるんじゃないかと思うのですが、残念なことに、この空間ではいくら時間が経っても少しも眠くなってくれないのです。
そのうち私は、妄想の中で、この状況から救い出してくれる“王子さま”を作り出しました。彼は優しく、私の相談に乗ってくれます。
「コレを飲んでみて? この場所で作れる最強の睡眠薬だよ。」
そう言って、一杯の虹色で透明の液体が差し出されました。私がそれを飲み干すのを見て、彼は「これでお別れかな?」と微笑みました。
一拍おいて、視界がぐにゃりと渦巻きました。不思議な感覚です。眠くはないのです。だというのに、勝手にあくびが始まりました。小さなあくびが細波のように訪れた後、かつてないほど大きなあくびが現れました。世界のあちらこちらで白い瞬きが起こっています。それは、とても綺麗で、まるで天国のようだなと感じました。
「さよなら」
誰かが言ったその声を聞きながら、私の大あくびによって引き起こされた竜巻は全てを吸い上げ、そして、地の底に開いた大きな口に消えていきます。「ブラックホールに吸い込まれたモノは、ホワイトホールに吐き出される」…昔聞いた気がする、そんな言葉が頭に浮かびます。
大きな口に吸い込まれる直前、ふと見上げた空には、彼の瞳が、最後まで笑っていました。
~・~・~・~・~
それは夢だったのでしょうか?
気が付いた時、私は“始まりの位置”でヨダレを垂らして眠りこけていました。時間は30分も経っていませんでした。
私は今まで通りの平凡な生活に戻り、それからも、朝は満員の通勤電車に揺られながら会社に向かいます。座席に座っていると、つい、ウトウトとしてしまいました。
ガタン!…と電車が揺れ、意識は浮上します。いけない、いけない。スマホでも見て、眠気を払わないと…。
バッグからスマホを取り出そうとしていると、ふと、周りの様子が変わっていることに気付きました。人が…いない…? 満員だった車両の中には、4~5人の乗客がパラパラと座っているだけになっていました。目の前の席には、見覚えのある人が座っている気がします。
“彼”は優しく笑って言いました。
「気を付けないとね、あくび。」
<終わり>
ナルさんの『片想い文芸部』も3回目、今回は“あくび”でした。うん、今回も“片想い”要素が、少ねぇ~😅
恋って何!? オイシイノ!?
(たぶんこれから妄想の“彼”との片想いが始まるんですスミマセン🙇🏻)
ラストのパターンですが、実はもう一個考えてました。
・“あくび”に飲まれていた期間は数週間(現実と夢の時間経過は一緒)
・会社はその間、無断欠勤となっていた
・ラストのセリフは「あ、クビ?」
ダジャレすぎたのでやめました。
『片想い文芸部』ではテーマの言葉から“始まる”か“終わる”どちらかで良いのですけど、私はなぜか、“ソレで始まりソレで終わる”という縛りを勝手にかけています。
でもそろそろ、なんか違う形で書きたいかなぁという感じになってきたので、次回からその縛りは無かった事にするかもしれません。
…というか、なんか仕事の方がわちゃわちゃしてきたので、しばらく参加できないかもしれない雰囲気が…(でも最近の流れで、ちょっと仕事がイヤになってるので、ゴッチャゴチャになってても息抜きに書くかもしれない。息抜き必要! これはサボりじゃない! 大事な息抜き!ε=ε=ε=(~ ̄▽ ̄)~)
最後まで目を通していただき、どうもありがとうございました。
