10.後1cmの距離、それがすごく遠かった(前編)


――2016年から2018年

再会を重ねるたびに深まる距離感――


あと少しで届きそうなのに、手が届かない...
そんな経験はありますか?

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あれから何年も経ったのに、今でも鮮明に思い出す時間がある。
あの頃の私は、ただ「もう一度近づけたら」と願っていた。
けれど現実は、会えば会うほど
その1cmが永遠のように遠く感じられた。


■2016年 成人式

大学2回生。
あのとき私は、触れてくれないあなたに
「ここにはもう、私の居場所はないんだ」と感じて
何も言わずに逃げた。

そして再び会ったのが、成人式。
ほんの数分話しただけだったけど
スーツ姿が眩しくて、懐かしい笑顔に胸が痛んだ。
「ああ、やっぱり好きだな」って、自然に思ってしまった。
だけどそれ以上、何もできなかった。
あの日もまた、ただ時間だけが過ぎていった。


■2016年 水族館に行った日

成人式のあと、また連絡をとって会うことになった。
ただ、あの日はとにかく楽しくて、笑って
ふざけて、何でもない話をして。

過去の気まずさも、少しだけ溶けていくような気がした。
でもそれは、友達としての時間だった。

手を繋ぐことも、触れることもなかった。
本当は帰り道、ずっと思ってた。
「もっと近づきたかった」って。

でも言えなかった。
言ってしまえば、何かが壊れそうで怖かった。


■2017年 ドライブ

大学3年から4年に差しかかるころ。
あなたが車を出してくれて、私は助手席に乗った。

思い出そうとしても、会話も景色も曖昧で、あまり覚えていない。
でも「また会ってくれた」ことが、胸の奥でずっと温かかった。

私は言葉にしなかったけど、どこかで期待してた。
次こそ、何かが動き出すんじゃないかって。


■2018年 ごはんのあと

私はもう別の人と付き合っていた。
それでも、あなたとごはんを食べて、少しだけお酒を飲んで。

帰りたくなくて、「もう少しだけ一緒にいたい」って、勇気を出して言った。
寂しさをごまかすように笑った私に
あなたは優しく、でも冷たくこう言った。
「今日は、帰ろう」

あのとき思った。
ああ、やっぱり終わってるんだな。
あなたの中の私は、もう過去の人なんだって。

言葉にしなかった想いが、また一つ、胸に沈んでいった。
そして私は、自分の気持ちにそっと蓋をした。
「もう違うんだ」と、何度も自分に言い聞かせながら。


それでも、夢の中では何度も彼が現れた。
現実よりもずっと近くにいて、隣で笑ってくれた。

なのに、目が覚めるたびに
その距離はまた1cm分、遠くなる気がした。


2015年から、少し休んだ時期もあったけど
私はずっと風俗を続けていた。
適当な男遊びも、やめられなかった。

誰かに愛されたくて、寂しさを埋めたくて。
だけど気づけば、自分の本当の気持ちさえ見失っていた。

「私は、ただのクズだ」
そう思いながら、生きていた。

…そんな私を見て、彼は何を思ってたんだろう。

――知らなかった。 あの1cmの裏側で
彼もまた、迷っていたことを。
それを知るのは、もう少し先の未来。

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あなたにも、そんな夜があった?

触れられたのに、愛された気がしなかった夜。
近くにいるのに、どこか遠いように感じた距離。
心と身体の間に、1cmの隙間があって、
その1cmが、どうしても埋められなかった記憶。


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