似鳥美術館「コレクション展」
過日、似鳥美術館の「コレクション展」に行ってきました。
はじめに
似鳥美術館とは
「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズでお馴染みのニトリが、企業メセナ活動の一環として、2014年に小樽市に開設した美術館です。
小樽市の歴史的建造物で、1924年に建てられた「旧北海道拓殖銀行小樽支店」の建物を活用して、以下のようなジャンルの作品が展示されています。
地上4階:近代・現代の日本画
地上3階:近代・現代の洋画
地上2階:木彫
地上1階:Louis C. Tiffanyのステンドグラス
地下1階:東洋の美術工芸品
規模としてはそれほど大きくありませんが、今回は私の大好きな近代・現代の洋画に絞って書きたいと思います。
展示概要
地上3階のフロアには、近代・現代の洋画が常設展示されている他に、「ちっちゃこい展」と題した小企画展が開催されています。

(小樽芸術村 公式サイトより)
常設展示
暗めの照明と濃色の壁紙で落ち着いた雰囲気のフロアには、黒田清輝、岡田三郎助、佐伯祐三、小出楢重、梅原龍三郎、安井曾太郎、荻須高徳、小磯良平、藤田嗣治、岸田劉生、ユトリロ、シャガール、ルノワールといった有名どころの作品がずらっと並んでいるのですが、出来のよい作品とそうでない作品が混在している印象を持ちました。

(小樽芸術村 公式サイトより)
例えば、この藤田の作品は、あの「開運!なんでも鑑定団」で10億円の鑑定額が付いたそうで、私が言うのもなんですが、本当に出来のよい作品です。
この隣には、藤田が得意とする乳白色の裸婦像があるのですが、それと比べても描き込みの量が圧倒的に違うのです。
中でも、といった各素材(材質)の描き分けがとても素晴らしく、名実ともにこの美術館を代表する作品だと思います。

(小樽芸術村 公式サイトより)

(小樽芸術村 公式サイトより)
また、このルノワールや劉生なども出来のよい作品で、昔、鑑定団に出演していた永井先生が、「よい作品にはオーラがあるんです」と言っていましたが本当にそんな感じです。
因みに、これらとほか数点のいかにも市場の評価が高そうな作品には、作品の前に作品保護を目的としたと思われる透明のアクリル板が設置されていました。
その一方で、展示室の写真にある安井の作品は、大原美術館が所蔵する安井の代表作のひとつ《外房風景》と雰囲気がとても似ていて、行く前から楽しみにしていたのですが、実際に見てみると、あまり出来のよいものではありませんでした。
また、その隣の梅原の作品も、梅原にはもっと梅原らしい出来のよいものがいっぱいあるのに、何でこれなの?と思うようなものでした。
ちっちゃこい展
フロアの空きスペースを使った小企画展ですが、私が訪れた時は、「The Nude - コレクション周遊」が開催されていました。

(小樽芸術村 公式サイトより)
この小磯の作品は、東京藝術大学を退官する少し前に描かれたもので、私自身、小磯の裸婦画を観たのは初めてのような気がするのですが、キャプションによれば、藝大の講師を任された1950年代以降、改めて基本の裸体デッサンに立ち返ったようで、作品には男女問わず裸体画が増えていった、と書かれていました。
また、藝大の前身である東京美術学校の卒業制作で、今や重要文化財の《裸体美人》を描いた萬鉄五郎が、在校中に描いた2枚の裸体デッサンが展示されていました。
これらは予備科の頃のものと思われますが、当時の美校の教えにそって、《裸体美人》とは対極の位置にあるアカデミックな作風で、萬が予備科を首席で修了したことを証明するかのように、力強くてとても印象に残る作品でした。
考察
企業コレクションによる美術館は、経営者が自らの審美眼により蒐集した作品を一般に公開する目的で開設したものと、初めから美術館の開設を前提として作品の収集を行ったパターンに分かれますが、この美術館は展示品から察すると後者で、短期間でその時買える有名どころの作品をとにかく集めたという感じがします。(あくまで個人の感想です)
しかし、そのことを否定するつもりはなく、この美術館の開設に当たっては、人が集まる施設にして北海道の観光振興に貢献するとの理念を掲げている以上、無名の人の作品を並べていても誰も来ないと言われれば、確かにそのとおりだと思います。
また、2020年には美術館の運営を「公益財団法人 似鳥文化財団」に移管(同時に美術館の土地建物と一部の作品を寄贈)したことは、ニトリが長期的な視点に立って企業メセナ活動を行っていこうとする姿勢の表れに外なりません。
願わくば、より魅力的な美術館となるために、展示作品の質だけでなく、館内の展示構成にもこだわってもらいたいのです。
現在は、日本画、洋画、木彫とここまではいいのですが、教会用ステンドグラスに東洋の工芸品(刀剣類含む)と、雑多な印象を拭えません。
美術館は小売業と違って、何でも置いてあればいいという訳ではないので、もう一度美術館のあり方をよく考えてもらって、ゆくゆくは日本を代表する企業コレクションの美術館のひとつに育ってもらいたいなと思います。
あとがき
小樽と言えばお寿司ですが、小樽駅構内にある立ち食い寿司のお店に寄ってみました。
このお店の本店は、ミシュランガイドにも掲載された小樽きっての名店なのですが、そこと変わらぬ味を肩肘張らずに楽しむことが出来ます。
最初にお得な10貫セットを頼んだのですが、追加で北海道ならではのものをお願いしたところ、出して頂いたのがこの生ニシンの握りでした。

北海道で海産物を食べると「あれっ、今まで食べてたものは何だったの?」と思うことが多々ありますが、生ニシンも御多分に漏れず目から鱗のおいしさでした。
