世界を旅する文具店 アジアを2週間 行商してきた話
「もう、日本で待つよりも、こちらから海外に行ったらいいのでは?」
そんなことを言われたのは、ドイツのバイヤーさんからの連絡が途切れてしまってうなだれていた時のことだった。
オリジナル商品が増えてきたことで、他のお店に仕入れてもらう「卸」事業の可能性を広げたかった私は、日本でいくつかの展示会に出るも、商品がニッチ過ぎるのかなかなかうまくいかない。
そんな中で日本国内ではなく、海外のバイヤーさんが気に入ってくれたことは大きな希望だったのだけど、その連絡が途絶えたことでどうしようかと迷ってしまっていた。
海外に知ってもらいたいのであれば、海外に直接行く。
たしかに他のお店よりもフットワーク軽く、日本全国を移動販売車で売り歩いてみたりしてきた私ならできるかもしれない。
展示会に出るにしても、10万以上の出展費用や交通費、さらに高騰し続けているホテル代……
ヨーロッパは難しくとも、アジアであればLCCも選択肢に入るし、そんなに変わらない予算で巡れるのでは……?
そんな選択肢が頭をよぎったからには、もう無視できない。
更に、日本の文具も取り扱う台湾の台北にあるお店「Plain Stationery」さんから、「ポップアップストアやってみませんか?」と打診されたもんだから、もうやらない理由はなくなってしまった。

というわけで、3/19-22の4日間、実際に台湾の文具屋さんの一角で、うちのオリジナルアイテムに絞ったポップアップをやってきました。
更に、台湾だけじゃもったいなくない?と魔が差し、香港、タイのバンコク、韓国を巡る文具屋の2週間近い行商の旅を実行してきました。
小さなお店が、最新のAIなども活用しながら、果たしてどんな経験を積んで帰ってきたのかを今回は皆さんに共有したいと思います。
ぜひ、ご覧頂ければ幸いです。
サプライズを狙ったイベント前日告知
さて、今回台湾でのポップアップイベントに向かうにあたって、1つ気になっていることがあった。
私のお店のアカウントではイベントを告知したのだけど、現地のPlain Stationeryさんでは全然告知をしていなかったのだ。

それが気になったこともあって、搬入予定日よりも1日前に到着していた私は、商品の入ったキャリーケースをゴロゴロと引っ張って、会場であるPlain stationeryさんに挨拶に向かった。
すると、「もう明日からやりましょうか」とご提案され、イベント自体も1日前倒しで行うことになった。
どうやら、イベントを早めに告知していたも当日までに忘れたりされることも多いらしく、イベント前日の夕方にイベント開催をPlain Stationeryさんが投稿するというスタイルにしたかったとのこと。
こちらにとってもサプライズとなったけれど、現地のことは現地の人におまかせするスタイルなので、そういうものなのだと受け入れることにした。
3万人のフォロワーがいらっしゃるPlain Stationeryさんの告知能力はもちろんすごいものなのだが、自分にもなにかできないだろうか。
インスタグラムは日本のフォロワーに向けたものになるし、Xは台湾の人はあまり使わないらしい。
となると、思いついたのはThreadsの存在だった。
AIに投稿文をお願いしながら、素材としてはPlain Stationeryさんがうちのお店を紹介してくれたブログを参考にしつつ、Claudeで現地でバズる投稿を考えてもらい、Geminiでも念のため調整してもらった。

投稿時に、トピックを追加という機能で台湾に絞った投稿にすることにした。
海外のアカウントが、日本をトピックに設定することで、日本語の投稿が伸びているのを何度か見かけたことがあったからだ。
翻訳機能がSNSでも進んできたとはいえ、はじめから届けたい国の言葉で書かれた投稿の方が伸びるという感触はこれまでにもあった。
とはいえ、台湾のフォロワーさんもこれまで交流した覚えはなく、本当に届くかなんて分からない。
当たればラッキーぐらいで投稿したのだが……、これが恐ろしいほどの影響があった。

最終的には4000を超えるいいねと、商品ラインナップなどに関する問い合わせコメント、曜日の書き方を間違えていたのを優しく教えてくれるコメントまで2件いただいた。
おそらく台湾の皆さんと思われるフォロワーも600人ほど増え、なにかが起こる気配がしていた。
出来過ぎだった台湾ポップアップ

さあ、いよいよオープン日。
木曜日からスタートしたのだが、店主のタイガーさんによれば平日は暇で、金土日と少しずつお客様数が上がっていくことが多いらしい。
木曜日は少しだけお店に立っておいて、近くの気になるお店を見に行ったり、気になる映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が日本より先に公開してるから見に行こうかなーなんて思っていた。
しかし、ありがたいことにその願いは敵わなかった。

結果として、Threadsの投稿を見てすぐに来店するお客様が、木曜日に集中。
売上としては、1日で10万円近くを販売し、ポップアップの4日間のトータルの中でもトップの売上を叩き出すことになった。

オリジナル商品の中でも人気である、デジタル文字が書けるテンプレートは台湾でも大人気で、最終日を前に在庫が1つになってしまった。
他の国への営業用に余分に持っていた数枚を追加したが、最終日中盤で売り切れてしまった。

また、ドット文字が書けるマスキングテープは3日目時点で完売。
4日目にもThreadsを見て買いに来てくださった方がいたので申し訳なかったが、売り切れるという喜びもまた嬉しいものだった。

好きな薄型ノートをハードカバーにできるノートカバーは、日本では大きめのB5が人気なのだが、台湾では小さなB6サイズとA5サイズの方が人気。
B5を残して残りの2サイズも売り切れてしまった。

意外と人気だったのは、うちのロゴを入れたサインペンやボールペンのシリーズ。
タイガーさんのお店でも全く同じモノを扱っているので、売れないだろうし世界観を作るぐらいのつもりだったのだけど、非常によく動いた。
大きなメモパッドで試し書きできるようにしていたのが良かったのかもしれないと、地味ながらも改めて体験できる仕組みの大切さを感じさせられた。
そして、意外と売れたのが「レシートスキャンボード」だ。
台湾はレシートの電子化が進んでいる国なので、売れないだろうと予測していたのだが、サラリーマンらしきお客様にすごく反応がよかった。
なんなら、日本から取り寄せて既に使っているというツワモノなお客様から現れて、商品の要望まで教えて頂いた。

特に、最終日には、私に会いに来てくださるお客様が非常に多く、タピオカミルクティーを買ってきて差し入れてくださる方から、私も働いていた無印良品で働いている女の子、ご自身も革でものづくりをしているマダムまで様々な方とお話することができた。
ぶっちゃけた話を言うと出来過ぎな結果だし、にも関わらず渡航費を考えればたくさんの利益が出るわけではなく、むしろ赤字になるというのが実際のところだ。
しかしながら、100名以上のお客様に実際に自分のお店の商品を販売してお話する機会を得て、Threadsでは600人の新しい台湾のお客様をフォロワーとしてお迎えすることができた。
この経験は、本当に日本にいるだけでは得難いものだったと思う。
これからドンドン海外でポップアップをするかどうかとか、台湾で定期的に行うべきかとかはまだわからない。
だけれど、自分のお店でやってきたことが、実際に台湾で受け入れていただけて、財布を開いて商品を買っていただけたという成果は何よりも大きい自信につながった。
香港は卸先を探す上で重要な場所だった

さて、台湾でのポップアップを終えて、次に向かったのは香港。
大きなネオンサインなどのイメージが大きい都市だが、都市の再開発などで既にその姿はなく、ニョキニョキと生えるビル街に香港らしさの面影を見る程度にはなっていた。


香港のホテルに荷物を預け、すぐに向かったのは月下文具房 Nocturnal(以下ノクターナル)さんは、
こちらの店主のトーポンさんは、日本からインスタグラムでDMをお送りした所、香港にいくまでに大阪の実店舗に先に挨拶に来てくださった超フットワークの軽い方だ。
香港で取り扱われているアイテムは、どこも同じようなものが多く、日本に限らず韓国や台湾などからも商品をセレクトして販売されていた。

日本の文具への愛も深く、2026年最新の文房具特集本まで店舗においていらっしゃるぐらい。
この時点ではトーポンさんが特別すごいアグレッシブな方だという認識だったのだが、このあと訪れた他のお店でも同様のすごさを味わうことになった。

翌日訪れたのが「kanamono」さん。
日本の渋いアイテムまで取り揃えているお店で、既にフォローさせていただいていたのだけど、香港のお店だということをトーポンさんに改めて教えて頂き、訪れることにした。


お店としては、小さい小さいと行っている6坪のうちのお店よりも更に小さい面積に、昔ながらの金物屋さんを思わせるディスプレイと様々なアイテムの取り扱いに圧倒された。
店主さんもすごく優しい方で、あっという間に意気投合することができた。

店内を見回すと、兵庫県の知り合いのお店「WHATNOT」さんのオリジナル商品まで取り扱いがある。
WHATNOTさんは、日本の展示会でも商品を出されていたので、そこで仕入れたのかな……と思っていたのだけど、あとでWHATNOTさんから「お店まで仕入れに来られていた」というお話を聞いてびっくり仰天した。
WHATNOTさんは、兵庫県の三木市にあるのだけど、関空から2時間半は電車でかかるのである。
トーポンさんに負けじ劣らぬフットワークの軽さである。
不勉強ながら後から知ったのだけど、香港は関税がかからない地域であるが故に、海外からの仕入れに積極的な環境面が揃っている。
それにしても、インターネットが便利な現代であっても、実際に足を運んで来ているバイヤーさんは確かに存在しているのだという事実には、結構打ちのめされた。
それと同時に、今回の海外行商の旅をしてみて本当に良かったと思った。
AIも便利になっているけれど、だからこそ現地を訪れて交流する重要さは更に高まっているのではないだろうかと感じさせられた。

続いて訪れたのはMIDWAY SHOPさん。
知り合いのデザイナーさんが、香港を訪れた際に紹介されており、うちと同じ商品を扱っていることもあって、事前にインスタグラムでアポをとってお伺いした。
実際に訪れて、店主さんにご紹介いただいてびっくりしたのは、取扱商品の90%が日本の商品であるということだ。
しかも、ラインナップも日本のお店でもなかなか知らないこともあるような、踏み込んだセレクトで揃えられていた。

香港では日本の商品を置いていれば売れるのか?
そんな甘い考えも浮かんだが、やはりそんなことはなかった。
むしろ、香港の人々はせっかちなところもあるそうで、説明すれば売れるというわけでもない。
それでもMIDWAY SHOPさんは、何年もかけてお客様との関係を気づき、他の商品と何が違うのかを商品の背景情報をきちんと伝えることで積み上げていったとのこと。

一方で、日本の商品やブランドの認知を取り巻く環境も変わりつつあることも教えて頂いた。
たとえば、中川政七商店の商品は、数年前であれば「中川政七商店?」と知らない人も多かったが、日本への観光客が増えたことで日本のショッピングモールなどで見かけたブランドだ!とお客様から反応されることが増えたとのこと。
説明が必要な商品をしっかりと説明しながら、お客様とともに成長していくというやり方はとても参考になったし、素晴らしいなと感じられた。

そして香港でもう一店舗お伺いしたのが「泥社 MUDLAB」さん。
ビルの中にある事務所の中のスペースに、お店のスペースを作っておられて印象的だった。
日本の文化が大好き!とのことで、色々とお話させて頂いたけれど、こうやって日本から遠く離れた海外で、日本の要素がその土地の感性で受け止められて新しい何かを作り上げていく様子には興奮せざるを得ない。
台湾に引き続き、香港でも違う側面から刺激を受けて、アジアツアー2カ国目の滞在が終わった。
タイは富裕層向けの商業センスが突き抜けていた

香港を後にして次に向かったのはタイのバンコク。
タクシーアプリのGrabが空港に設置されていたりと、これまでの国とはまた違った空気が到着した時点で感じられていた。
しかしながら、台湾でのポップアップと香港での気になるお店探索を終え頭がいっぱいいっぱいなのに加え、タイで行きたいお店が休業中だったことによりほとんどノープラン。
タイの古式マッサージと美味しい食べ物しか意識してなかったのだけど、その滞在も非常に充実したものだった。




とりあえず初めてのバンコクということで、有名な寺院から巡り始める。
とにかく直射日光が強くて、下手すると日射病になりそうなぐらいだ。
寺院の一つ一つの大きさと迫力に圧倒されながら、ネットで調べた場所を巡り始めた。

事前に知り合いから教えてもらっていた、バンコクのおしゃれなスポット「SONGWAT」に向かってみると、日本でもなかなか見かけないリノベーション具合の素晴らしいカフェやお店が立ち並んでいる。


暑さを逃れて立ち寄ったカフェも洗練されているし、日本と価格もそう変わらない。
コーヒーのフレーバーを説明するカードは、裏側がショップカードを兼ねていて非常にクオリティが高かった。


古い建物をリノベーションした施設は、チャオプラヤ川を眺めることができるテラススペースが解放されていてとてもおしゃれ。






入るカフェ、ショップ、どこも洗練されていてとてもかっこいい。
車でなんとなく抱いていたタイという国のイメージがしっかりと覆されていくのを感じた。
あと、マンゴーはひたすら美味しい。



その後もひたすらに様々な商業施設を訪れたけれど、下手すれば日本よりお金がかかっているところも多い。
タイでは相続税がないらしく、貧富の差が激しいということも影響しているそうだ。
タイには日本のブランドも多く出店しているし、タイに住むと離れたくない日本人も多いという話を聞いて納得するところも大きかった。
タイで見つけたポーチ。
— 山下義弘 / ドケットストアの人 (@tyarinko) March 27, 2026
素材が腹膜透析の輸液バッグで、そのままジッパーポーチに仕立て直してある。
バンコクの都立病院が毎月出す約20万個の医療廃棄物から、清潔なPVCバッグだけを回収してアップサイクルとのこと。
ロット番号や使用期限もそのまま残ってるのがいい。 pic.twitter.com/SgEtWLErIo
ちなみにタイで購入したこのポーチが、Xでバズったので取り扱いについても問い合わせをしてみたいと思う。
韓国はこんなに近いのに知らないことだらけだった

さあ、遂にアジアツアー最後の国「韓国」にたどり着いた。
5時間程度のフライトなので、夜行便にすればホテルを兼ねられるかなという甘い考えは、LCCの硬いシートに見事に打ち砕かれ、一睡もできないままにたどり着いてしまった。
地下にあったスパ&仮眠施設でなんとか2時間ほど横になり、韓国での活動を開始することにした。

韓国で一番衝撃を受けたのは「POINT OF VIEW」という文具店だ。
複数の知り合いから、おすすめとして名前が上がっていたものの、なかなかピンときていなかったが、たどり着いてその理由がわかった。
お店のレベルが高すぎるのだ。




取り扱っている商品そのものは、日本の商品も多く衝撃は少ない。
しかしながら、空間設計の仕事をされているオーナーが手掛けたお店ということがひしひしと伝わるぐらい、空間のセンスが素晴らしい。
これだけのお店は日本でも思い浮かばない。
オリジナル商品などの商品単体で検索を行っている私のアンテナでは引っかからなかった理由がよくわかるとともに、空間と文具セレクトの構成力でここまでの人気店舗ができあがるのかと圧倒された。
さらにこのお店も主体となって行われる文具イベント「INVENTARIO」というのが2025年から開催されているらしい。
2026年も6月に開催されるというので、これは韓国に戻ってくるしかないと思っている。

コンテナで構成されるおしゃれな建物にもとても気になる本屋さんがあった。

それがこの、THE INDEX SHOPさん。

indexというシンプルなテーマを使った店内とオリジナルアイテムのセンスが素晴らしかった。


残念ながら入口にずらりと並んでいたギフトボックスは売り切れていたものの、他のオリジナルアイテムも非常に洗練されていた。

購入して帰った商品を、日本に返ってパチリ📷️。
ブランディングの参考にしたくなる、赤のカラーがきいたアイテムたちがたまらなかった。

更に韓国の友達に連れられるままに訪れたのが「GENTLE MONSTER」
サングラスのメーカーのお店なのだが、展示の規模がえげつないのである。

外には特大ミッキーがそびえ立ち。



中の展示もキレッキレ。
極端な例であるにはせよ、振り切った展示はお店を観光名所規模にまで押し上げるのかと普通に感心させられた。

更にレンタカーで向かったのは、愛用する折りたたみ式コンテナ「HIBROW」さんの拠点。


様々な展示と新商品、そして看板犬に癒されながら、大好きなコンテナを堪能することができた。

日本でも愛用していて、お店で取り扱っていたことをお話すると、代表の方まで来てくださり、ご挨拶をさせていただくことができた。
オリジナルカラーの収納コンテナもお見積りさせていただいたので、あとは資本と販売力と倉庫さえなんとかなれば……
香港のノクターナルさんで教えて頂いたSANROさんは、実際にプロダクトを手掛けておられるデザイン事務所のオフィスにお尋ねして、商品の背景などもお伺いすることができた。

商品へのこだわりや、生まれた背景も含めてご相談させて頂き、近々日本でお取り扱いさせていただく商談も進めることができた。
オリジナル商品を作りながら、商品の仕入れ販売もしていると、双方向に商品をやり取りしながら、海外と日本を橋渡しすることもできそうで、その可能性も感じている。
迷うぐらいなら飛び出すのが早い

駆け足でしたが、こんな形で2週間弱のアジアぶっつけ本番行商ツアーは無事終了しました。
マーケティングをしっかりやってからとか、AIで下調べをしてから……というのは自分も好きだしやりがちなのですが、やはり現地に行って空気を吸って、人と会ってやり取りをすることの価値は、AIとインターネット全盛の今だからこそ上がっているようにも感じられます。
そして、現地に行ってからだと様々なイメージが頭と身体に残っているので、その後の情報収集の捗り方もだいぶ変わることを実感しています。
国際情勢や燃油サーチャージの上昇は厳しい現代ですが、あなたのビジネスや観光の参考に、このnoteが役立てば嬉しく思います。
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