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「おひとりさま店舗」という選択 〜AIの時代に、あえて実店舗をひらく理由〜 

「本当にお店をやってるんですね」

来店したお客様から突然、そんなことを言われたことがある。
ネットでなんでも探して買える今の時代。
ネットだけでやっているお店だってたくさんある。
オンラインストアやSNSでうちのお店を知っていただいたお客様にとって、買い物をしていたとしてもその実在が疑われたくらい、実店舗はレアな存在になりつつあるのだ。

実際に私自身もお店を始めようとした際に、「今からやるのはやめたほうがいいよ」「儲からないよ」とたくさんの先輩方からアドバイスもいただいた。
もうそれはいじわるでもなんでもなく、本当にシビアな世界なので皆が心配してアドバイスしてくれていたのだと、7年目を迎えた今ならなおさらよく分かる。

実店舗は本当に大変なのだ。

文具と雑貨のセレクトショップとなると、馴染のお客様に毎日ボールペンを買ってもらうことも難しい。
アフィリエイトなどの商品紹介で稼ぐ人はSNS上でも多いけれど、実店舗となると家賃も接客人員も在庫もいる。
自分でやっておきながら、物販の実店舗は年々ハードゲームとなってしまっていると言える。
幸い生き残れたものの、7年前の自分がもし目の前に現れて相談してきたら、膝を詰めてその甘さをクドクドと指摘してしまうことだろう。
その一方で、7年近く生き残れたことには、自分自身も後付けながら理由があることもわかってきた。

様々な要素はあるものの、その中で一番「核」だと思えるものは、このnoteのタイトルにもなっている「おひとりさま店舗」という部分だ。
外食に一人で訪れるお客様を指す言葉として認知されている「おひとりさま」は、文字通り「一人」を意味している。

個人事業主としてお店を始めるとなると、誰でもはじめは一人なんじゃないの?とツッコミを入れるとおもうのだけど、商品のセレクト、実店舗の営業、商品の撮影、noteでの商品紹介、オリジナル商品の開発、クラウドファンディングの実施、移動販売車を作って日本全国縦断、海外の文具店を訪ねる旅……など、我ながらクレイジーだと思えるぐらいに、実は色々と「おひとりさま」でくぐり抜けてきた。

そこには雇用を選ばなかった色々な要素もあるのだけど、結果的に「おひとりさま」ではじめて正解だったなと、これまでを振り返って思うのだ。

そして世の中には、私と同じ様にいつかお店をやりたい!と思っている人も少数ながらいると思う。
今回はそんな人たちに向けて、「やめたほうがいいよ」とは言わずに、どんな風にお店が成り立っているのかを具体的な数字を含めてご紹介していきたい。

例えば、うちのお店は開業から7年目を迎えて、2024年時点での年間で売上は「3000万円」をようやく超えたぐらい。
もちろん経費を支払ったり、商品の仕入れをしていると、利益は見た目ほど残らない。
具体的な金額は伏せるけれど、サラリーマンとして働いていた時のほうが手元にお金は残るということは間違いない。
人によってはもっとたくさん儲けたい!と思うだろうし、その人にとっては失敗談として。それぐらいまで売っていきたいと思う人には、一人でできる展開の参考例として見てもらうといいと思う。

他には、note(フォロワー1万人)やX(フォロワー2万人)を達成した情報発信、オンラインストア運営、オリジナル商品の開発、移動販売車での全国縦断、AMAZONでの販売などなど、初心者の方であれば気になるような内容は一通りやってきたつもりだ。

ちなみに人を雇用することはなにも悪くない。
むしろ雇用を作り出していることを尊敬する。
これからのフェーズではうちのお店も人を雇うことを選択していかないといけないとも思っていたりする。

しかしながら一人でお店をやってきた自分の経験は、ひとりでお店を始めてみようと考えている人にとっては、面白い事例として自分を差し出せると思う。
更にこれからAIも発展することが予想される中で、私なりに既に活用している部分や期待している部分も交えていくので、参考にしてもらえればと思う。

それでは「おひとりさま店舗という選択」。
はじまります。

※トップ画像と上記の書籍の写真は、出版されたらいいなという願望から作ったものです。
ぜひこの記事が出版社の目に止まったらいいなあと思っております。

1.多くのお店は「おひとりさま店舗」から始まる

自分のお店を始めようとする時。
個人事業主という名前の通り、一人ではじめる人は少なくないのではないだろうか。

家族とお店を一緒にやる場合でもない限り、だいたいの人はそうだと思うし、飲食店であってもテイクアウト中心のカフェであれば一人でしている人も少なくない。

いずれお店の売上が増えて、やることが増えていった時には「雇用」という道も見えてくる。
私自身もそう思いながら、7年ほどやってきたのだけど……意外と一人のままで継続しながら活動の幅を広げられている。

・実店舗の営業
・オンラインストアの運営
・商品の仕入れ
・商品展示会にいって新しい商品を探す
・商品の撮影
・Xやインスタグラムでの情報発信
・noteでの商品紹介
・文具についての記事の連載
・オリジナル商品の開発
・クラウドファンディングの実施
・オリジナルイベントの企画と実施
・移動販売車を作って日本全国縦断
・海外の文具店を訪ねる旅

もちろんできそうな仕事をどんどんと増やしていった結果を書き出しただけで、同じような仕事をしている人もいるのだけれど、実店舗をやりながらという点が主にクレイジーだと言われることが少なくない。
気軽に出張することも多いので、私が数人いると思っていると面と向かって言われたことも実は何回かある。

一人でこれだけの業務量となると、さぞブラックな労働環境だと思われかねないけれど、むしろブラックだと私自身すぐにパフォーマンスが下がるので、基本的には週2日のお休みを設けるようにしている。
そのための業務の効率化や、外部への業務委託なども少なからずはやっているのだけど、Amazonで販売している商品を除いて、年間およそ3000件程度発生する商品発送は自分の手で行っている。

雇用することも選択肢として常に件とはしている。
しかしながら、自分のお店が6坪と狭いことや、出勤するには陸の孤島的な辺鄙な場所にあるということ、さらにイベントや移動販売車での出張をすることを思えば、安定的に雇用することができないことから見送ってきたところがある。

更に、10年近く全国的な小売店である「無印良品」さんで、店長業務などを行ってきたこともあって、たくさんの人と働くタイプの働き方と違うことをしてみたかったところもある。
ある意味、ゲームを行う上で自らに追加の制限を課す「縛りプレイ」のように、一人でどれだけのことができるのか……というチャレンジを行うことは、少なからず自分自身のモチベーションになってきたと考えている。

そうした積み重ねの結果として、私は「おひとりさま店舗」を選択して継続してきた。
それでも、さすがに近年。
業務量的にいっぱいいっぱいになってきた……と思い始めたところに、AIの進化がスピードアップ。
はじめは嘘を交えて回答してきたAIに、まだまだ期待できないと油断していたけれど、2025年に入ったあたりで「検索機能」においては特に非常に頼れるようになってきた。

オリジナル商品の製造をお願いできそうなメーカーをリストアップしてもらって、実際今は業務もスタートしていたり、商品の情報を翻訳してもらったりと、このままいけば「おひとりさま店舗」でできることはまだ増えそうだという感触が強くなってきた。

今まさに私の目の前には、「おひとりさま店舗」を継続するか、卒業するかという選択肢が改めて現れている。
AIのパワーを手に入れれば、「おひとりさま店舗」は更なるステージに到達できるのではないか……
そんな自分をくすぐる声が聞こえてきている。
それに7年間「おひとりさま店舗」を選択してきた中で、一人でお店をやることはデメリットもあるけれど、メリットも存在することを知った。
それは初めから狙ってたどりついたものではないのだけれど、結果的にうちのお店の強みを生み出している部分でもある。

次章では、「おひとりさま店舗」のメリットを整理してご紹介していきたい。

2. 「おひとりさま店舗」は、想像以上にローコストでできる

「おひとりさま店舗」のメリットはなんだろう。
人がたくさんいたほうができることは増えそうだし、お互い助け合って休みをとりあったりできそうだ。
得意や不得意があれば、お互いの得意で補い合って前に進めるし、できることの幅も増えていく。
そのありがたさは、大手小売店舗で働いてきた自分にとっては馴染み深く、もちろん理解している。

一方で、「おひとりさま店舗」の1つ目のメリットとしてあげられるのは、「売上規模」を焦って追いかけずにすむことだろう。
もちろん「おひとりさま店舗」だって、お金を稼がなければ生きていけない。
でも自分自身ではじめたお店だからこそ、うまくいかない時期に利益が出なくても我慢することはできる。

しかしながら、人を雇用してしまえばそうはいかない。
当たり前なことだが、時給や通勤費用は必ずお支払いしなければならない。
一緒に夢を追いかけるのだから、苦しいときは我慢してもらって……なんて言い訳が通じるのは鏡に写った自分自身だけだ。
サラリーマンを経験してきた自分だから余計に、雇用される側の権利はしっかり守りたいと思うし、そのためにはしっかりと売上を立てないといけないだろう。

実店舗で売上を上げるためには、人通りの多いある程度面積の広い場所でお店を始める必要が出てくる。
好条件な立地になれば家賃も高くなり、更に売上は必要となってくる。

人件費も家賃もかかると考えると、売れる商品を仕入れて販売しないといけない。
そのためには手っ取り早く売れる人気商品を、たくさんのお金をかけて仕入れなければならなくなる。
雑貨の場合商品は定価の6割程度の価格で仕入れして販売することが多い。
例えば、60万円かけて商品を仕入れて、全部売れたら100万円。
この時40万円が差し引かれて手元に残る。

100万円(売上)-60万円(仕入れ代)
残り利益 40万円

アルバイトを1人雇っていたとしたら人件費はどうなるだろう。
求人情報サイト「バイトル」の調査によると、2024年12月時点での「販売の職業」の全国平均時給は 1,216円

 週20時間勤務(1日4時間 × 週5日)で、 月80時間 × 1,216円 ≒ 97,280円。
 週40時間勤務(1日8時間 × 週5日)で 月160時間 × 1,216円 ≒ 194,560円ほどかかることになる。

週20時間の範囲で働いてもらったとして、およそ10万円の人件費と、この場では考えておこう。(この時点で残り利益30万円)

100万円(売上)-60万円(仕入れ代)-10万円(人件費)
残り利益 30万円

さらに、売上があらかじめとれる好立地に出店したとして、2024年度下期の大阪エリアでの飲食不可物件の1坪当たりの家賃の単価は1ヶ月1万8千円ぐらい(アットホーム株式会社のサイトより引用)
8坪程度を確保しようと思うと、一ヶ月あたり14万4千円となる。

100万円(売上)-60万円(仕入れ代)-10万円(人件費)-14万4千円(家賃)
残り利益 15万6千円

さらにここから光熱費、通信費、クレジットカードなどの手数料(2〜3%程度)、商品持ち帰り用のレジ袋、ショップカードなどの宣伝販促費、経費精算のための会計ソフトやレジのサブスク費用などを考えた時に、手元に最後に残るのは10万円もないぐらいなのではないだろうか。

そして、売上を倍にしようとすれば、レジ打ち、仕入れ、品出しなどの作業は同様に増えていく。
そうなると更にもうひとり雇わないといけなくなったり、商品の仕入れ金額が増えていったり、どんどんとコストも増えていく。

特に文具などの雑貨は、カフェなどの飲食店と違ってそんなに壊れるわけでもないので、リピートでお買い物していただくにも限界がある。
売上をすぐに獲得しなければならない状況では、よく売れる商品の仕入れに終始することになるけれど、商品のブームの移り変わりも激しい今の時代に乗り遅れれば在庫の山が残る。なによりたくさんの人に売れるものは、どこでも売っている間口の広いものになりがちなので、そもそもなんのお店をしようとおもったの?というアイデンティティの危機に店主を追い込みがちだ(おひとりさま店舗でももちろんそう)
更にネットでは便利になんでもお買い物できるという昨今の事情も加わると、まさに無理ゲー。
実店舗で売上規模を求めて、まともに勝負をしようと思えば、レッドオーシャンにふさわしい激戦区を勝ち抜くだけの戦略と資金力、様々なマネジメント能力が試されることになるだろう。

その一方で「おひとりさま店舗」はどうなのだろうか?
雇用を前提としたお店と大きく違うのは、当たり前ながら人件費がかからないということだ。これは非常に大きい。

先程の売上シュミレーションを踏まえてなぞると、先程かかった人件費10万円がまずかからないことになる。

100万円(売上)-60万円(仕入れ代)-0円(人件費)
残り利益 40万円

さらに、おひとりさま店舗はお店の広さを大きく必要としない。
一人の人間が働く空間と、二人の人間が働くのに必要な空間は単純に違う。
実際にうちのお店は6坪という超狭小店舗なのだけど、7年間やってこれているところを見ると問題はないようだ。
もちろん広ければ広いに越したことはないし、在庫置き場などを考えるともう少し広くてもよかったと思っているけど、スモールスタートをするうえでは正しい選択だったと今も思っている。

更に、一人で働くのであれば、多少郊外であっても自分が問題なく通勤できるのであれば成立する。
物件の条件や立地によっては、坪単価が1万円前後の物件も存在するし、うちも実際そうである。
例えば、6坪(約20㎡)の物件であれば、月額賃料は6万円程度となる。
ここまで抑えることができれば、毎月の人件費+家賃は24万4千円から、6万円まで減少する。

100万円(売上)-60万円(仕入れ代)-0円(人件費)-6万円(家賃)
残り利益 34万円

どうだろう。
これなら同じ売上でも30万近く手元に残る。
ここまで読んだあなたはこう思ってないだろうか?
こいつ当たり前のことしか言ってないな!と。

ただ、読むのを辞めるのはちょっと待って欲しい。
こんな当たり前のことを考えることが結構重要なのだ。

正直、お店をはじめる前は誰もが謎の自信に満ち溢れている。
売上はどんどん増えて、人気店舗に成長していくに違いない……と思わないでお店をはじめる人なんてそもそもお店をやらないんじゃないだろうか?

テレビや雑誌に取り上げられたり、インスタ映えしちゃったりして、なんだか押しも押されぬ人気店舗になったらどうしよう。
そんな感覚でお店を始めて、実はうまくいかなかった……みたいなことは全然起こる(過去の自分の甘さを遠い目で見つめながら)

そんな私が生き延びることができたのは、「おひとりさま店舗」でスモールスタートしたからだと思っている。
お店をはじめる上で毎月発生する家賃や人件費といった「固定費」をおさえることは重要とされているけれど、ひとりではじめると人件費だけでなく家賃も抑えることができる。
これは、当たり前だけど無視できない大きな要素なのだ。

さらに、例えば売上が1ヶ月20万円だったときを見てみよう

20万円(売上)-12万円(仕入れ代)-0円(人件費)-6万円(家賃)
残り利益 2万円

これでもギリギリ利益が残っていることがわかるだろうか。
もちろん光熱費なんかを差し引きえばマイナスになってしまうけれども、家賃は十分に稼げている。
さて、ここでなぜ20万円という数字が出たのかと言うと、うちのおみせが1年目に実店舗で販売できた売上が1ヶ月20万円ぐらいであり、7年目の現在も1ヶ月20万円程度だったりするからだ。

これは狙って……というわけではなく、本当はもっと売上が上がってほしいと思っていたりもするのだが、意外とこれはこれで「おひとりさま店舗」を成立させる重要な要素にもなっていたりする。
そのあたりのバランスの話をここからは話していきたい。

3.「おひとりさま店舗」は「売場」というより「拠点」

うちのお店は実店舗の売上だけでは食べていけてない。
それはまぎれもない事実だ。
実店舗一本でやっていきたいのに!と思っていたあなたには申し訳ないが、むしろ実店舗一本でやっていきたい方にこそ実は読んで欲しい部分だったりもする。

お店をはじめる前、私はこの「小売再生」という本を読んだ。
そこで描かれていたのは、Amazonの登場によって実店舗がいかに厳しい状態になり、実店舗はどうやって生き残っていくのか!?という内容だった。
それからコロナ禍を経て、オンラインでの買い物は私達にとって更に当たり前なものとして定着したように思える。

リアル店舗はメディアになるという本の副題は、その時に強烈に頭に残り、その時から私は実店舗をどうやって「メディア」にしていけばいいのだろうかと思い続けてきた。

オンラインストアとの差別化をするために、シャワーヘッドを実際に浴びて試せるお店や一定期間ごとに取り扱いアイテムがすべて変わるお店など、様々な先端事例は小規模なお店であるうちにとっては参考にならなかったが、ある時ふと気がついた。
実店舗をやっているということそのものが、オンラインストア全盛期の現代においては「メディア」となっているのではないか……と。

実店舗を持たずにオンラインストアだけで販売する。
下手すれば、商品を取り扱わなくても紹介するだけで収益を得られるアフィリエイトという仕組みもある現在。
実店舗をもつことが割に合わないのは明白だ。

それゆえに実店舗をしているだけで、そこにはストーリーが芽生える。
そんな極端な時代に突入しているのだと思う。

冒頭の「本当にお店をやってるんですね」というお客様からの言葉も、そんな時代を象徴しているのだと思っている。
実は私自身が文具のお店を扱うお店を始めた理由も、文具店がどんどん減少していたというところからスタートしていたりする。
起業した当時、すでに町の文具店は学校などへの納品がAmazonに取って代わられており、継続できない店舗も多くあった。
そこで文具店をあえてやってみよう!という希少性を意識しながらお店をはじめたものの、気がつけば「実店舗そのもの」が希少な存在になってしまったのだとおもっている。

ただ、ポイントはだからといって「実店舗は希少だから儲かる」というところにいかないということだ。
ここまで紹介した通り、実店舗で売上を上げようとすればコストが増え、コストが増えれば更に売上をあげねばならず……といったループ状態がうまれている。

なのでポイントは「実店舗という存在証明」を持ちながら、「オンラインを通じて販売も行う」ということなのではないか。
それが私自身がたどりついた実店舗のありかたであり、「おひとりさま店舗」をすすめる理由にもつながっている。

お店の売上は、よほどのことがない限り大きく上げにくい。
しかしながら、20万円ぐらいの売上であれば、無名に近い1年目から販売することができる可能性は十分にある。
来店客数は1ヶ月で100人であれば、平均お客様あたりのお買い物が2千円でも成立する。
週休2日で24日営業したとして、1日およそ4名程度来客があれば達成できる水準だ。

接客の頻度が少なければ、一人あたりのお客様にかけられる時間ももちろん長く濃くなる。しっかりとこだわったアイテムを言葉を尽くして説明できれば、お客様のお買い物も自然と増えるので、実際の平均お買い物金額がもっと上がるし、上がれば来客数が更に少なくても成立するようになる。
極端な話、1人5千円お買い物をするならば、月間のお客様数は40人でも成立する。
大量のお客様をさばかなければならない好立地の実店舗とは接客の質と来店の目的からして自然と差別化されるため、十分な強みになりうるのだ。

こうなってくると、お客様もわざわざ来店する意味が出てくる。
ファンが増えれば来店頻度も変わるし、実店舗の売上も無理なく増えてくる。
その結果実店舗が忙しくなるようであれば、人を雇うという選択肢だってありだろう。
ただ、たどり着くところは同じでも、小コストでスタートできてお客様を呼ぶための試行錯誤を長い期間をかけて作り上げていくという部分が、実店舗一本での成立を狙う場合とは変わってくる。

来客頻度が少ないと、お店で何をすればいいのか。
そこにこそ「おひとりさま店舗」であるうちのお店が、1人なのにnoteやSNSでの発信を強化できている理由が見えてくる。
そう。
実店舗に立ちながらも、文章を書いたり、写真を撮影したり、オンラインストアの更新や出荷作業を行っているのである。

さらにオンラインストアが忙しくなる前は、私の場合リモートワークでOKなお仕事をしていた。
お店を認知してもらうまではどうしても時間がかかるのだから、はじめの1年間は副業としてお店をスタートしていたのだ。
これは、7年前ではまだまだ珍しいケースだったと思うけれど、今の時代であれば可能な職種の方も増えているのではないかと思う。

こうなってくると、実店舗をやっているという感覚よりは、オフィスを常に開いていて遊びに来てもらっているという感覚にも近い。
どちらかといえばイベント出店を中心にリアルのお店を出現させ、基本的にオンラインストアで営業を行っているブランドとやってることにも近いありかただとも言えると思う。

違いがあるとすれば、常に開かれた場として誰でもお店に来れるということと、「お店をやっている」というオンライン上での「実在証明」が手に入るということ。
更に、お店の家賃ぐらいを店舗売上で回収するという拠点の維持費用の確保が可能であるということだろうか。

このように、「おひとりさま店舗」における実店舗は「売場」というよりは「拠点」という感覚に近い。
オンラインストアやイベント開催を実現していくための軸足を置く場所として、活躍してくれる重要な要素になっている。

4.「おひとりさま店舗」を支えるオンラインストアの構築

さて、人件費の確保と実店舗の売上が期待できない「おひとりさま店舗」において、重要になってくるのが「無人販売所」
すなわち「オンラインストア」の存在だ。

いまや当たり前の存在となったオンラインストアではあるが、導入され始めた初期には24時間対応してくれる無人販売所としての役割が期待されていたことを今でも覚えている。

現代でもまさにその役割は重要で、「おひとりさま店舗」もオンラインストアなしには成り立たない。

写真と文章での説明を入力すれば、オンラインストアに訪れたお客様に商品を説明し、多様な決済方法に対応して商品の販売を受け付けておいてくれる。
お店のオーナーがやることといえば、時折発生するお問い合わせへの対応と、商品出荷作業となる。

ここで非常に重要となるのは「商品出荷作業」の問題だ。
この出荷作業を外部倉庫に委託してしまえば、オンラインストアの作業はほぼゼロに近づき、作業量がほとんどなくなるのだ。
しかしながら、仕入れた商品の外部倉庫への出荷業務の委託は結構ハードルが高い。

出荷にまつわる代行手数料や、商品の倉庫保管料、更には商品を預けるための様々な登録作業は想像以上に膨大で、商品を販売する際の利益率を更に減少させてしまう。
売上規模が大きくなってくれば、委託するという選択肢は十分にありうるのだが、月間250件程度の出荷であれば、自分で行ったほうが出荷代行会社にお支払いする分の費用がそのまま手元に残る。
「おひとりさま店舗」から人を雇用するスタイルに変えるべきか迷うぐらい利益をあげられるようになってから、検討する方がいいと私は思っている。

さて、そもそも売上を立てるためには、当たり前だけどオンラインストアをしっかりと育てていく必要がある。
とはいっても、私が利用しているBASEというプラットフォームを使って立ち上げられたオンラインストアだけでも200万以上のオンラインストアあるとのこと。

どうやってそこからお店を見つけてもらえばいいのだろう。
インスタグラムやXでの情報発信は最低限始めてみるのはもちろん必要だと思うが、私の場合は並行して書き続けていたnoteがオンラインストアを勢いづける鍵になった。

はじめて1000いいねを突破したこのnoteは、2019年の年末の寒い中、毎日書いていたnoteのうちの一本だ。
爆発的に伸びたのは実はそれから数ヶ月あとのことで、Xで紹介されたことで突如伸び始めた。

Xやインスタグラムでの投稿は手軽な分、どうしても賞味期限が短い。
一方でnoteはSEO対策もきっちりされているためか、数年経過しても検索した時に上位に出てきてくれることが多い。

また、たくさんの写真をアップしたりすることもできるので、オンラインストアの商品ページで説明しきれなかった内容も補足することができる。
私は商品についてのnoteを書いた場合は、詳しく商品を知りたい方向けにnoteのリンクを商品ページに誘導することで、オンラインストアとnoteを接続して少しずつ売上を伸ばしていくことができた。

現在はXのフォロワーさんの数が2万人に到達したため、noteの投稿頻度を少し抑えているが、それでも年間70万PV以上を獲得できている。
軌道に乗るまではnoteは毎週1記事。
Xやインスタグラムでの投稿は、営業日は1商品を必ず紹介することで地道に続けてきている。
全く同じ商品でも、季節の行事やその日のニュースで大きく伸びることもあるので、こればっかりは数を撃つしかない。
その中で自分の得意な傾向を見つけていくことができれば、オンラインストアは少しずつ稼働していくと思う。

ここまでくると分かってもらえると思うけど、オンラインストアは無人で販売してくれるけど、連れてくるのは人力に頼るところが大きい。
もちろん広告を使って集客することはできるのだけど、それも結局は資本の勝負。
どこまでお金をかけられるのかで、売上に影響するのだとすれば、「おひとりさま店舗」は不利なことが多いだろう。

ちなみにうちのお店の場合は、ベストセラーよりもニッチながらかゆいところに手が届くアイテムを多く販売している。
実店舗では、いったい何人が買ってくれるかわからないようなニッチな商品も47都道府県に向けて発信できれば1都道府県1人が買ってくれれば47個売れるかもしれない。

世の中に当たり前にない商品をラインナップするからこそ、noteの記事としてもおもしろいものができるし、記事が刺さった読者が拡散してくれることも多かった。
自分だけのこだわりに走るとどうしても客層は狭まる。
実店舗だけであれば、こだわりのお店はどうしても周囲のお客さんに理解してもらえるかで売上が変わってしまうので成立しにくいけど、オンラインストアを主体にした際には逆にそのこだわりこそが武器になる。

一方でこだわりはどうしても自分だけの狭い視点で成立しがちな部分だったりもする。
ここは、実店舗でお客様が来店した時に説明できるかどうかといった訓練で、なぜ伝わるのか、伝わらないのかを検証することで克服することもできる。
オンラインだけだとこれはどうしても難しいところなので、「おひとりさま店舗」にはこんなメリットもあったりする。

ニッチという言い方がピンと来なければ、「ここにしかない商品」や「お店ならではのセレクト」と言い換えてもいい。
他のお店の模倣を続けるのであればただのコピーにしかならないし、お店の特色を出すのであれば何かしらのこだわりが必要となってくるのはどの業界でも同じだと思う。

もちろん実店舗が忙しければ、オンラインストアや情報発信に時間をかけることは難しくなるが、ゆるやかに営業する「おひとりさま店舗」のスタイルであれば、時間をかけて投稿することも可能となる。
ここは売上が立つようになるまで時間がかかるあいだ、非常に心が折れそうになる所だが、自分が読みたくなるような世の中になかった商品の紹介を地道に毎週ノルマのように続けることが大切だと思っている。

5.noteはプレスリリースであり、ポートフォリオであり、店舗の裏口である

noteについてご紹介したので、ここで更にnoteの活用方法をご紹介したい。
それは、noteは商品紹介だけに使っているのはもったいないということだ。

私にとって、noteはプレスリリースであり、ポートフォリオであり、店舗の裏口にもなってくれる存在だと考えている。

たとえばクラウドファンディングを行う際、私はPRタイムスというサイトで各メディア向けにプレスリリースを行うと同時に、noteでもクラウドファンディングの説明を行う。

それは、単純に多くの人の目に留まることになるし、なんなら一番たくさんのお客様の目に留まるからでもある。
もっと踏み込んで言えば、noteは文章を書いたり画像を挿入したりといった機能も素晴らしいし、読む人の立場からしても読みやすい。
私はクラウドファンディングを行う場合は、noteでまず下書きと画像の配置を決めてから、クラウドファンディングのサイトにコピペを行っているぐらいだ。

noteやXのフォロワーさんが増えた今となっては、クラウドファンディングサイトを通じて販売を行わなくても、BASEを使ったオンラインストアの予約販売機能で新商品の販売を行うことができるまでになっている。
noteは恐ろしいことにそんなに便利でありながら基本使用料は無料なのである。
こんなに便利でコストのかからないものを使わないことはもったいなさすぎるだろう。

また、noteでの情報発信はこれから行うイベントの情報だけにこだわる必要はない。
むしろ、イベントをやった後のレポートを掲載するのも非常に良いと思っている。

イベントをしたらだいたい写真をたくさん残しておくことになるし、実際にやってみてどんな雰囲気だったのかが気になる人だっているだろう。
そんな様子にコメントをつけていくだけでも記事は十分書けるし、イベントの様子が残ればポートフォリオのようにあとから見た人も見てくれる。

こんな風にお店に関わるリアルの発信は、AIでは決してできないことなので、今後情報を残しておくことの意味はますます増えるのではないかと考えている。

更に、私はnoteではお店を営業している中で気になって調べた内容なども進んで共有する記事を書き残すようにしている。
これは非常に好評で、同じ様にお店をしている人たちが同じ目線で悩み、解決していく様子を追っていくことで問題を解決するきっかけにもなる。

最新の悩み事というのは、まだ記事コンテンツになっていないことも多いから、AIでも自信をもって調べきれない世界でもある。
全く違う切り口で新しい読者が増えることは、これまでの情報発信で繋がらなかった誰かと繋がるきっかけにもなる。
それは集客に幅を作るという意味でも、記事コンテンツのネタを探すのが楽という意味でも非常におすすめできる内容だ。

こういったお店のリアルを発信し続けることは、SNS映えする写真が撮れるかどうかという勝負ではない、地道に根を張っていく営業活動として、うちのお店の屋台骨になっているように感じられる。
お客様には一見関係ないコンテンツに見えるけれど、お店の裏側を覗き見せる記事の作成は、実は楽しんで読んでいただいているお客様もいるようで、なにがコンテンツになるかはやってみないとわからないなと感じるきっかけにもなった。

6.オリジナル商品開発:「ないから作った」が最強の動機

さて、世の中にありふれた商品ではなく、世の中にまだ出回っていない商品を探して商品として取り扱っていると、次の段階に進むことが可能となる。
それは「オリジナル商品」の開発だ。

メーカーから仕入れを行って商品を販売していると、どうしてもブチ当たるのが「品揃え」と「利益率」の問題だ。

メーカーから仕入れを行う以上、メーカーはたくさんのお店に商品を売ってもらいたいので、売れる商品ほどたくさんのお店で販売されることになる。
そうなってしまえば、より大手の資本も宣伝力もあるオンラインストアで売れることになることは想像に難くないと思う。
うちのお店で買物をせざるを得ない商品というのは、やはり家のお店でしか売ってない商品という強みがあるといいことは自明の理だ。

さらに言えば、オリジナル商品は価格を自由に決めることのできる商品でもある。
通常では定価の60%の価格で仕入れる商品も、オリジナル商品を工場にまとまった数量でお願いすることで、30〜40%程度まで抑えることもできる。

そうなってくると、同じ売上でも利益が1.5倍ぐらい変わってくる。
同じ100万円の売上でも40万円の利益が残るのと、60万円の利益が残るのでは大きく変わってくるだろう。

さらに、利益率の高い商品であれば、その利益の一部をAmazonなどで販売することで倉庫保管や出荷まで自動化することも可能になってくる。
こうなってくると、店舗での作業を必要とせずに利益を確保できるようになってくるので、「おひとりさま店舗」としては更に活動の幅に余裕を持てるようになってくる。

実際にうちのお店の場合は、レシートをスキャンするための板「レシートスキャンボード」という商品をAmazonで販売させていただいている。
確定申告の時期はスキャナーランキングで1位になるなど、人気商品となっていて、お店の営業を大きく助けてくれる存在になっている。

じゃあ始めからオリジナル商品を作っていればよかったんじゃないか?と言われれば、できるならそうできるにこしたことはない。
ただ、このレシートスキャンボードはおそらく、お店をやっていなければうまれなかった商品でもあるのだ。

まず、レシートスキャンボードは2社のメーカーさんと一緒に形にしたアイテムだ。
このメーカーさんはどちらも元々商品の仕入先で、それぞれに今もお取り扱いさせていただいている。

他のお店でみない尖った商品を販売するためには、どこのお店でも置いている商品ではなくて攻めた商品を取り扱っているメーカーさんを自然と探す必要に迫られる。
どちらのメーカーさんも、文具メーカーから依頼を受けて商品を作るお仕事をしながらも、オリジナルの文具を世に出してきたメーカーさんなので、うちのお店が商品を作りたい!という声にも真摯にご対応いただけたことが、うちのような「おひとりさま店舗」にもオリジナル商品が作れた大きな理由の一つとなっている。

更に、お店をやることでどんな商品が売れて、どんな商品が売れないかといった肌感覚や、こういったものが欲しいけど調べても世の中に存在しないということを確認できる商品検索能力も磨かれた。
このように、実際に在庫を持って販売するというリスクを常に追うことで磨かれたリサーチ力は、趣味で文具を購入していた頃に比べて圧倒的にパワーアップしている。

さらに、「おひとりさま店舗」をローリスクで続けながら、商品を販売するためのベースとなるオンラインストアや情報発信するSNSにフォロワーさんがいる状況を整えていることも、いきなり思いつきで商品を作って発信した場合に比べて圧倒的に良い状況が作れることは想像しやすいと思う。

オリジナル商品を作るとなると「数千個」とか「数万個」の在庫を一気に発注しなければならないケースもあるが、工場や商品の種類によっては100個程度から相談できることもある。
3Dプリンターでサンプルを作ってSNSで反応をみてから販売したりすることも普通になっているので、オリジナル商品を作るハードルはここ数年でぐっと下がって来ていると言ってもいいだろう。

そして、オリジナル商品を誰もが出しやすい時代だからこそ、実店舗という希少性をもつ「おひとりさま店舗」は信頼を得られやすいとも言える。
CGだけで適当な商品をリアルに見せることもできる時代だからこそ、信頼性を担保する手段として「実店舗」は今後より大きな意味をもつといえるだろう。

7.イベント出店やポップアップストアは、低家賃と相性がいい

さあ、オンラインストアやオリジナル商品の自動出荷などができるようになってくると、「おひとりさま店舗」に常駐する必要は更に減ってくる。
そうなってくると、家賃を安く抑えた「おひとりさま店舗」を離れて、イベント出店やポップアップストアの開催なんかもしやすいことが生きてくる。

うちのお店は、2023年に移動販売車を作って日本を北海道から鹿児島まで複数回に分けて縦断する移動販売を行ってきた。

実はAmazonで販売をしはじめたのは、移動販売をやりはじめた後なので本当に馬鹿だったと思っている。
というか、長期間お店をあけるとオンラインストアの出荷ができないので売上が全然立たないので死にかけてしまった。

しかしながら、移動販売車で訪れた場所には必ずnoteの読者さんやオンラインストアのお客様が駆けつけてくださるのでむしろ驚いた。
辺鄙な場所にお店があるが故に、接客する機会が少ない分、近くでイベントを開催するとお客様がイベントに来てくれる。
そういったメリットも「おひとりさま店舗」には存在していたのだ。

更に、「おひとりさま店舗」は家賃が安い分、実店舗を休みにすることへのハードルが低い。
家賃が高いとどうしても実店舗も開けたくて、人を雇うことを考えがちだけど、数千円分の家賃なら諦めもつく。
このようにフットワークが軽いのも「おひとりさま店舗」スタイルをおすすめしたい理由となっている。

実はニッチな品揃えのお店はイベント出店には弱いと感じている。
これは、どうしてもたくさんのお客様を相手にしたゾーンの品揃えと、マニアックなお客様に刺しにいくアイテムは違うようで、7年目になってもなかなか克服できていない。

一方で、イベントでの出店には、同じ出店者という形で様々なメーカーさんやお店との出会いや情報交換もある。
これは、実店舗でずっと引きこもっていてはどうしても得られない情報や経験なので、売上が多く上がらないかったとしても定期的に参加する価値を感じているところである。

一方でニッチなお店には「ポップアップストア」が向いていると感じている。
イベントを自分で仕掛けて、自分のお店の人気商品をガッツリ販売する。
その方がうちのお店をめがけて駆けつけてくれるお客様が、しっかりと買い物をしに訪れてくれる感触がある。

イベント出店の場合は、イベントに出させていただいている立場だし、イベント参加費用や販売手数料も数十%とられることも少なくない。
そのかわり様々な出店者が集まったり、好立地や宣伝効果でこれまでに会ったことのないお客様と出会ったり、他の人気出店者の出店スタイルや品揃えを勉強させてもらえるので、参考になる部分も多い。

ポップアップストアでは、自分で場所を借りて自分で集客をしなければならないが、自分の思うようにイベントをコントロールできるし、なんなら仲の良い出店者をお誘いすることもできる。
手数料はもちろんかからないので、きちんと売上を取りたい時には私の場合ポップアップストアの方が向いていると感じている。

このイベント出店も、オリジナル商品の自動出荷ができるようになっていれば気軽に参加しやすいし、オンラインストアが稼働していればお客様も週末だけ出荷が遅れる程度であれば気にせずお買い物してくださることも多い。

ついついお店を始めたころには、イベントで稼ぎたい!と鼻息を荒くしがちだけど、売上がイベント頼りになると天候などの条件で一喜一憂することにもなりがちだ。
ボトムアップできる仕組みを「おひとりさま店舗」でしっかりと構築してからの参加が賢いと、7年近く傷だらけになりながら学んだ私の屍をこえていってほしい。

8.AIと働く①──人を雇う前に試したいこと

さあ、「おひとりさま店舗」で体験してきた内容をもとに、様々なメリットをお伝えしてきたけれど、売上規模が増えれば増えるほど作業が増えるのは避けられない。

いよいよ人を雇用することをしっかり考えなければならないなと思い始めた矢先、どんどんと進化をしてきているのが「AI」の存在である。
興味をもって使い始めた頃は、嘘も平気で返してくるのであまり役に立たないものだと思っていたけれど、気がつけば月額3000円以上を払うことに躊躇なく使うようになってきた。

特に「検索」においては、これまでGoogleの検索機能でいくつかの単語を組み合わせて時間をかけて調べていたものが、AIだと一瞬で欲しい情報を調べて、ちゃんと元にした記事のリンクまで教えてくれるようになった。
ググるという言葉が、AIを活用した検索に置き換わる日も遠くないということは、日に日に確かなものとして感じられるようになっている。

AIには得意不得意はあるものの、こちらがルールをしっかり決めて指示したことに対しては的確に答えてくれる。
この感覚はどこかで感じたことがある……と、既視感のもとを辿っていくと、無印良品で10年働いてきた経験へと行き着いた。

もう12年前の本にはなるが、無印良品(正しくは運営している株式会社良品計画だが、ここでは分かりやすくするために無印良品で表記)の当時の会長である松井忠三さんは、このような書籍を世に出されていた。
無印良品はMUJIGRAMと呼ばれるマニュアルを作って、店舗運営を行っていた。

マニュアルぐらいどんなお店にもあるのでは??と思いきや、お店の陳列や笑顔の作り方、お辞儀の角度や挨拶の発音に至るまで、無印良品はマニュアルという形で基準を明確化していた。
そのページ数は2000ページに及び、こと細やかに様々な業務が記載されていたものを私自身活用してきたのだけど、あとになって振り返ってみると、基準を明確にしているからこそ働くスタッフは正しい接客の方向性を理解できるし、改善しようとした時には共通の基準をもとに議論することができた。

これは実は、プロンプトとも呼ばれる「AIへの指示出し」についても全く同じことが言えるのではないだろうか。

例えば商品を紹介するような記事をAIに書いてもらうとして、どんな指示を出せば自分が書いているような記事を書いてくれるだろうか……

過去のうちのお店の記事を(リンク)から確認して、同じような形でこちらの商品(リンク)から作成して

こんな丸投げの指示でひとまずお願いしてみるけれど、だいたいの場合は物足りない。
求める完成度で言えば20%程度。
これではAIなんて使い物にならないな……なんて結論を出してしまいそうになる。

しかしながら、一度見本となる記事を書いたうえで、どういった指示出しをすれば商品についての記事を書くことができる?とAIに訪ねてみると、下記のようなプロンプトをAI自ら教えてくれた。

PROMPT:
### INPUT DATA
1. ニックネーム・筆者の立場:〈例:山下/小さな文具店を営む私〉
2. 商品名(正式名+読み仮名):〈例:商品名〈しょうひんめい〉〉
3. メーカー/ブランド名:〈例:idontknow.tokyo〉
4. 商品のジャンル・役割:〈例:A4コピー用紙ホルダー/思考整理ツール〉
5. 強調したいコンセプト:〈例:書類整理ではなく “頭の中” の整理を助ける〉
6. 導入でつぶやく一言:〈例:「アイデアを膨らませたいのに、なんだか広がらない……」〉
7. 共感エピソード(困っていた状況):〈例:仕事中にもやもやして手が止まってしまう〉
8. 製品の第一印象・外観:〈例:黒一色/硬いPP素材/シンプルだが上質〉
9. 主要な特徴・スペック:
- メインホルダー収納枚数:〈20枚〉
- サブポケット収納枚数:〈40枚〉
- ペンホルダー:〈四角穴×2〉
- 特徴的なポイント:〈立ったままでも書ける〉
10. 実際の使い方・効果:〈例:朝一番で頭の中を書き出し→客観視→アイデア拡張〉
11. 比較対象・参考商品:〈例:商品B〉
12. 価格・コスパ感:〈例:税込2,000円/2千円台で手に入る〉
13. 推したい活用アイデア:〈例:裏紙再利用/スキャン済み用紙を運ぶ〉
14. 写真を入れたいタイミングと内容:
- 画像1=〈外観〉
- 画像2=〈開いた様子〉
- 画像3=〈書き込みシーン〉
15. 記事長さの目安:〈約2,000字/6セクション〉
16. 締めくくりで伝えたい一言:〈例:A4コピー用紙を愛する人にこそ試してほしい〉

### INSTRUCTIONS
あなたは〈1〉の立場でブログを書く日本語ライターです。
フォーム内容を反映し、以下の条件で記事を書いてください。

- 構成:導入 → 商品紹介 → 使い方 → 比較 → まとめ の順に、見出しは「■ 」から開始すること
- 文体:一人称・断定調(〜だ/〜と思う)で統一
- 各段落間には空行を入れる
- 指定位置に「画像1」「画像2」…とだけ記載し、画像は挿入しない
- 全体で〈15〉の文字数・セクション目安に収める(±10% 誤差可)
- できる限り自然な流れでフォームの情報を漏らさず盛り込む
- 不要な装飾や英語の見出しは入れない
END PROMPT

どうだろう。
かなり精度が高い「マニュアル」になっていないだろうか?
指示出しをする側がどのような内容を伝えなければならないかが明確になっていると思えるし、実際にこのフォームを埋めて記事を書いてもらうと、期待度の70%ぐらいの文章が出来上がったのである。

AIは現在進行系で進化しつつあるので、将来的にはさらに簡単な指示でも高い水準の文章が作れるようになるかも知れないが、精度の高いアウトプットをするためには精度の高いインプットを人間側に求められる。

そのタイミングで求められるのが、個人事業主になって役に立たなくなった「たくさんと人と一緒に働くためのチェーン店での技術」だというのがとてもおもしろいと感じた。
さらに言い換えれば、AIに質の高い指示を行うための技術は、将来的に人を雇用した際の予行演習にも成り得るのだ。
怒らないことでパワハラすらも許容してくれるAIだが、こちらが改めたほうがいい点を訪ねれば、しっかりとフィードバックしてくれる存在でもある。

9.AIと働く②──現段階〜未来に任せられること

では、実際にAIはどのような場面で役に立つのだろうか。
「AIの導入によって日本の労働人口の49%の仕事が10-20年以内になくなる」というオックスフォード大学のレポートが2015年に発表され、大きな話題となったが、そこには「スーパー・コンビニ店員」や「ホテル客室係・フロントマン」が含まれていた。

まだ20年は経過していないものの、お店のレジはユニクロで一部ほぼ自動化されたり、ホテルのチェックインも機械で行える部分も増えたものの、AIによって代替された!という感触はまだない。

どちらかといえば、仕事がなくなると予測された「一般事務員」のデータ入力や「WEBライター」の記事作成の仕事はようやく影響し始めたなというところだろうか。

SNSでの情報発信業務の自動化という意味では、「おひとりさま店舗」の業務を大きく改善してくれる可能性はあるものの、どういった商品をどういった良さを中心に紹介するのかといった目の付け所はまだ人間の仕事かなと思える。
とはいえこれも、商品ページに収まる程度の商品紹介の言葉ではSNSでの投稿で差し障りのない文章しか出力できないということなのかも知れない。
たとえば、商品紹介において画像は視覚的にも大きな意味合いをもつが、AIではまだまだ画像も含めたSNS投稿には対応できていない。
どういった商品の特徴を伝えるための写真なのかといった一つ一つの深堀りをしておかないと、まだまだ戦力にはならないだろう。

しかしながら、ここ数年で画像認識の技術も向上しているので、この問題も解決される日はそう遠くない可能性があると思っている。
また、現時点でもなんとなく商品を紹介する文章は書けることから、ネット上にはAIで生成された情報が溢れる可能性もある。
そこが「おひとりさま店舗」が実在することで、オンラインだけで空虚な情報を発信するSNSアカウントと今後差別化できるポイントでもあるので、注意が必要なところでもある。

一方で、文章についての訂正や翻訳機能については、現状でも十分戦力となってきている。
オンラインストアでは、商品のサイズ表記や素材、重さなどの情報がcm表記やmm表記、半角数字か全角数字かなどバラつきがちだが、そういった表記を統一することは容易にやってのけてくれる。

翻訳についても、複数の言語に一気に翻訳してくれるなんてことも簡単にやってくれるので、お世話になっている人も既に多いと思う。
越境ECと呼ばれる海外への商品販売も促進してくれるので、しっかりと活用していきたいところである。

また、言語の壁を超えられることから、オリジナル商品が通用する市場が海外にあるのか?といったリサーチもAIは既に得意としている。
たとえばうちのオリジナル商品である「レシートスキャンボード」であれば、海外のレシートの電子化についての法律を現地ニュースから調べたり、韓国語で商品名を検索して現地のフリマアプリで転売されていることを教えてくれたり(実際にみつかった)するので、とても驚かされた。

他にも、様々な制限や規則が存在して初心者が困ってしまう「補助金の申請」の際にも、補助金についての概要がのったPDFデータを読み込ませて質問すると、どのページにどんな内容が書いてあってOKだとかNGだとかを答えてくれる。
それは完全に正しいとは限らないけど、引用元と比べることによってルールの理解が進むことは間違いない。

更には今回のこのnoteだって、AIとの会話を重ねていく中でテーマや内容が決まっていった。
正直細かい文章については、AIとの会話の中で作り上げていくことは難しいけれど、目次を作っていくことを手伝ってもらうことで大まかな内容構成と順番を考えることはどんどんとアイデア出しをしてくれた。

なにより24時間相談できて、文句も言わずに粘り強く返答をしてくれる姿勢は、孤独に成りがちな個人事業主において、「話相手」としても十分頼れる存在になってくれる存在であるとも言える。

今後はパソコンの業務を更に手広く対応してくれるようになるだろうし、会話しながら業務が終わるなんて時代も夢物語ではないと思う。
そうなった時に、人間にはなにができるのだろうか?
そう考えた時に、「おひとりさま店舗」という実体のある「場」と店主であるあなたの存在は、更に意味のある存在になるのではないかと思っている。

10. おわりに:AI時代に、あえて実店舗をひらく理由

「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.)

そんなアフリカのことわざがあるという。
この言葉はすごく共感できるし、「おひとりさま店舗」のメリットとデメリットもここに詰まっていると思う。
ただ早くいくだけならば、一人で行動したほうが自分のペースで進めるし、足の遅い人に合わせなくてもすむ。

その一方で、自分が怪我をした時や年老いた時には進めなくなる。
人類全体を「みんな」と見た時に、文明を発展させるという遠い旅路を歩いてこれたのは「一人」ではなかったからだとも言えるだろう。

「おひとりさま店舗」といっても、お店である以上そこにはお客様やメーカーさんとのつながりがなければ成り立たない。
それは確かなことだし、たくさんのお客様に知ってもらおうとすればするほど、仲間をみつけないとなかなか広まらない。
だけど、そもそも「みんな」の一員で収まっていたくないというなんらかの想いがあるから、人はお店を出したりするのだと思っている。
「おひとりさま」で早く歩く人が平坦でない道を切り開くことで、新しい開拓ルートが生まれることだってあるし、それはひとまずローリスクに「おひとりさま」で始めてみないと「みんな」の議論の中では否定されてしまう道のりだという可能性だってあるだろう。
そして、「一人」ではじめたお店がどんどんと大きくなって、結果として新しい集団としての「みんな」が生まれることだってあると思うのだ。

そんな中でAIの進化は、「おひとりさま店舗」にとって新しい武器にも仲間にもなることは間違いない。
「おひとりさま店舗」にとって、AIは今後重要な要素になることは間違いないし、活用することはネット検索をすることのように当たり前になると思う。

ただ、一方で資金力がある大手企業が、「おひとりさま店舗」の1000倍のお金をAIにつぎ込むと、さらなるパワーバランスの差が出てしまうことも想像しなければならない。
そう、AIは味方にもなるが、それはライバルも強力になっていくことも意味しているのだ。

そんな時に、AIに真似できない領域はどこだろう……と考えればそれは、「リアルな体験の場」に他ならないのだはないだろうか。
Vチューバーのように、人間の代わりにアバターが映像として違和感なく世の中に馴染み、画像生成で誰もがおしゃれな部屋を映像出力できるようになった時にこそ、実際に訪れることができて触ったり試したりできる実店舗はこれまで以上に意味を持ちはじめる。
ただ、実店舗が貴重になるということは、それだけ既存の実店舗ではうまくいかないことも意味している。

「おひとりさま店舗」についてこれまで説明してきた内容がローコストかつはじめやすいところに終始しているのはそういう部分でも重要なのだ。
ぜひこのnoteを読んだあなたが、なにかお店をはじめたいと思った時、「おひとりさま店舗」の知識がお役に立つと嬉しい。

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