10秒見つめあってみない?
「お母さんの似顔絵を描きたい」と言われた。
急にどうしたの?と聞くと、昔書いていたノートが出てきたので開いたら、5才のときに描いた似顔絵があったという。今の自分と描きくらべてみたいそうだ。まだたった8才だけれど、息子にとって3年前は大昔である。彼には彼の時間があるのだ。

大人に変わっていく瞬間
いいよ。こっちにおいでと向かい合う。
息子は8才の小学生で、くっつき虫の甘えん坊。まだ布団もお風呂も一緒に入っている。息子の心はまだ赤ちゃんのまま、それでも体は大きくなっている。だからときどき抱いていて苦しくなる。体が苦しいのと、もう男に近づいているので、その気配に押しつぶされそうになる。抱いているとなんだか後ろめたくなってしまい、すぐ押し返してしまう。
見つめられると、逃げたくなる
息子がじっと見つめてくる。私のパーツを観察しているようだ。それをいいことに、私も好きなだけ息子を観察する。やわらかな輪郭はそのまま顔つきはりりしく変わってきており、気づけば背は私のあご先まで届いている。毎日見ていると気づかないが、目にはひとりの独立した人間としての意志が光っている。
最近はもっぱらゲームにハマっており、私と向き合う時間は朝ごはんの時とお風呂の時くらいだ。どちらも時間に追われており、私は急かす、息子は遊ぶで、お互い見つめ合うことは減っていた。

息子は何度も手を止める。痛いくらいこちらを見つめる。何も後ろめたいことはないのに、そのまっすぐな瞳から逃げたくなる。私はちゃんとこの子を育てられているだろうか。愛せているだろうか。この子はいま幸せだろうか。
そんなことを考えていたら、出来上がったようだ。
ノートを見て驚いた。目ははっきりと意志を持っており、耳は少しの情報も聞き逃さないようにくっきりと立っている。唇は涼しく結ばれ、眉はそれらをやさしく包んでいるようだった。正直、全く似てはいない。でもわたしを見る息子の目では、こう見えているんだろう。この似顔絵が美しいのは、彼の目が澄んでいるからだろう。大きくなったな。
“ちゃんとした母親”をやれている自信はないが、息子は育っているようだ。彼が成長し美しくなるほど、私はとても誇らしい。
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