Glyphsで作る 〜日本語フォント「鳩とブリキのワンダランド」を作りました〜 フォントのダウンロードもあり
こんにちは、Typingart & Co.の中井といいます。
鉄道会社で電車の運転士をやっていましたが、退職していまはフリーランスでデザイナーをやっています。
電車の運転士時代は毎日同じ路線を走っていました。フォント制作も似ていて、地道な作業を何千回も繰り返します。そんなところは運転士とゆるやかにつながっているなという気がしています。
少し前ですが、26年3月に日本語(和文)フォント「鳩とブリキのワンダランド」を公開したので、フォント作りについて書いていこうかなと思います。
リリースして3ヶ月ですが、ありがたいことに無料版、有料版ともにダウンロードは好調です。
重ねて御礼を申し上げます。
制作期間は約半年。収録漢字2,000字の日本語フォントです。

前回作った「風と大地の太ゴシック」ですが、振り返ると拙さや粗さが目立つ部分が多々あり、クオリティに難がつくものとなってしまいました。こちらは追々修正を加えていく予定です。
ということで、そんな反省点を改善しつつ、リベンジというわけではありませんが、再びウェイトのある太い書体を作ってみようと考えました。
ウェイトが極太でかわいい書体は少ないと考え、需要があるかもと思い制作を開始。
SNSや動画配信では、画面の中で文字が主役になる場面が増えています。
そんな中で、かわいさと力強さを両立した極太書体がもっとあってもいいんじゃないかと思いました。
ところで、世間が不況になると、極太書体が増えると聞いたことがありますが、どうなんでしょうか。
太い分、墨版をたくさん使うわけなので、現実的なことを考るとコストを抑えるなら極細書体な気もしますが。多分、極太の多肉感がテンションを上げてくれるのでしょう。
ということで、制作手順をまとめてみました。
文末では、オリジナルのひらがなフォントがダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
書体制作ソフトの「Glyphs」で作っていきます。バージョンは3.4.1です。
まずは、コンセプト
タイトルやロゴタイプ、動画配信での用途を想定しています。
収筆をわずかに膨らますことで、懐かしくレトロな趣ある情感を引き出してみました。
また、ひらがなのカーブを大ぶりにし、極太フォルムの存在感をできる限り表現しています。

書体名の「鳩」は平和や親しみやすさ、「ブリキ」はどこか懐かしい玩具のイメージから付けました。レトロで温かいけれど、子供っぽすぎない。そんな空気感を文字に込めています。
懐かしさと新しさが混ざり合い、ノスタルジックだけど、ポップな遊び心を添えてくれる書体になればと思っています。
ひらがな制作
ひらがなから制作開始。いつもどおり、「あまやどりがおすきね」から作り始めました。
これはフロップデザイン・加藤さんが、この文字群から作り始めると仰っていたのでそのように。

この10文字から作ると、その後ひらがな作りが展開しやすいというのがあります。
例えば「ま」から「ほ」「は」「よ」というふうに、パーツを流用しやすいんです。

ちなみに「ふ」なかなか出来ず、苦労しました。

これ、何十回もパスを描き直しています。丸くすると幼すぎる、シャープにすると可愛さが消える。
最終的に採用した形に辿り着くまで数日間悩みました。
漢字の収録文字
漢字の収録文字について、拙作書体「ビルの谷間と高架下」と同様に、文化庁の国語課が公表している「漢字出現頻度数調査」を基に決めました。
これは国内で流通する書籍の組版データを分析して、漢字の出現頻度を順位付けしているものだそうです。
常用漢字が2,136文字なので、この調査の上位2,000字を収録漢字として選びました。
セグメントコンポーネントを使う
Glyphsの「セグメントコンポーネント」を利用して収筆を揃えました。
これは欧文書体のセリフを作る際によく利用されるものらしいです。
セグメントコンポーネントは、繰り返し現れるシェイプのエッジを統一するのにとても便利な方法です。
セグメントコンポーネント手順
1.「_segment.〇〇」というグリフを追加します。(ここでは「_segment.f」)

2.収筆のシェイプを作成。

3.適用したいパスを選択し、右クリックで「セグメントコンポーネントを追加」を選択。

4.「_segment.f」を選択。

こんな感じになります。

セグメントコンポーネントの素敵なところは、「_segment.f」を修正すれば、セグメントコンポーネントを追加したグリフ全てが一気に修正されるところ。
制作時間の短縮が期待できます。
スマートコンポーネントを使う
偏や旁などは、「スマートコンポーネント」を利用しました。漢字制作に役立つ機能です。
スマートコンポーネントは、グリフのシェイプの一部を再利用するための素晴らしい方法で、特にCJKの部首に有効ですが、ラテン文字のパーツにも使えます。
色々細かい設定ができるのですが、以下、基本的なことのみの設定です。
スマートコンポーネント手順
1.「_part.〇〇」というグリフを追加します。(ここでは人偏の「_part.hen.ninben」)

2.「Regular」レイヤーに人偏を作成。(一番大きく使う用)

3.「w」レイヤーに人偏を作成。(太さを一番細く使う用)

4.「h」レイヤーに人偏を作成。(高さを一番低く使う用)

5.スマートグリフ設定で「プロパティ」を以下のように設定。


6.スマートグリフ設定で「レイヤー」を以下のように設定。



7.右クリックで「コンポーネントを追加」を選択。

8.「_part.hen.ninben」を選択。

9.「スマートグリフ設定」で幅と高さを調整できるようになります。

こんな感じで漢字制作の時間をけっこう短縮できます。
エレメントのバリエーションを増やせばもっと楽になりますが、各レイヤーを増やすのに難儀しますので、常用漢字程度の個人制作はこの辺で良いかと思います。
濁点
てんてんです。
鳩は豆だろうということで、濁点は丸にしました。かわいい。
文字によっては縦に並んでいます。

数字作り
数字です。個人的には「2」が一番難しいと思っています。

右側の「2」を見てください。右上のカーブから左下にかけてのS字カーブは
バランスが取りづらいのです。
太字だと苦労します。
運筆を考えるとS字カーブを描くのが自然かと思いますが、結局この書体では左側の直線に落ち着きました。
パラメータ
最後にフォント情報の「カスタムパラメータ」です。ここを設定せずにフォントファイルを書き出すと、日本語フォントとして認識されません。

フォントを作っていらっしゃる とくたろさん が素敵なnoteを書いてくださっています。ありがとうございます!
こんな場所で使われてほしいな
この書体は、動画のタイトルやサムネイル、イベントのポスター、商店街のPOPなど、人の目を引きたい場面で使われることを想像しながら作りました。
昔ながらの駄菓子屋さんや、レトロな喫茶店の看板。あるいは子ども向けイベントや絵本のタイトル。
懐かしさと楽しさが同居する場所で、この書体が少しでも賑やかな空気づくりのお手伝いができたら嬉しく思います。
少し懐かしくて、でもどこか新しい。
そんな景色の中で、「鳩とブリキのワンダランド」がのびのびと飛び回ってくれたら嬉しいと思っています。
そんなわけで、日本語フォント「鳩とブリキのワンダランド」は半年ちょっとで完成しました。
ひらがな、カタカナが使える無料版もありますので、まずはダウンロードして使ってみてくださいね。
BOOTH👇
STORES👇
漢字2,000文字収録の有料版はこちら
BOOTH👇
デザインポケット👇

STORES👇





6月25日追記
note限定のひらがなフォントを作りました
予想以上に多くの方に読んでいただき、とてもうれしいです。ありがとうございます!
御礼に、ひらがなのみですが「鳩とブリキのワンダランド」をベースに、さらに極太にした書体をnote限定でダウンロードできます。
どうぞお使いください。


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