#54【入試情報】広尾学園と広尾学園小石川の戦略
~似ているようで全く違う2校を徹底分析~
① はじめに
「広尾学園」と「広尾学園小石川」
学校説明会などでも、どう違うのか?がよく話題になり、広尾学園を受けたい生徒が、偏差値が足りず広尾学園小石川で手を打つ、といった傾向も以前はみられました。
「広尾学園小石川」は果たして本当に「広尾学園」の下位互換なのでしょうか。
確かに校名はよく似ています。教育内容も「国際教育」「探究学習」「英語教育」など共通点が多く、一見すると同じような学校に見えるかもしれません。しかし、実際には両校の成り立ちも、学校改革の歩みも、入試戦略も大きく異なります。
さらに言えば、求めている生徒像にも違いがあります。
② 広尾学園の誕生
現在の広尾学園は、首都圏でもトップクラスの人気を誇る共学校です。
広尾学園の前身は、順心女子学園です。1888(明治21)年に創立された伝統ある女子校で、長い歴史を持つ学校でした。しかし、2000年代に入ると女子校を取り巻く環境は大きく変わります。
共学校人気の高まり、少子化、大学受験改革などのあおりを受け、2007年、男女共学化と学校改革を始めたのです。
校名も「広尾学園」と改め、新しい学校づくりが始まりました。
ところが、広尾学園の改革は「共学になった」だけではありませんでした。
医進・サイエンスコースを設置し、理数教育を強化しました。
さらにインターナショナルコースを設け、英語教育や海外大学進学にも力を入れました。
2019年には高校募集を停止し、完全な中高一貫校になっています。

当時としては非常に先進的な教育内容であり、「グローバル教育」という言葉が今ほど一般的ではなかった時代から、新しい教育を積極的に取り入れてきました。結果として、受験生の人気は年々高まり、偏差値も急上昇します。
現在では、男子・女子ともに最難関校を受験する生徒が併願校として選ぶ学校の一つとなり、医学部や難関大学への高い進学実績を誇る学校へと成長しました。
③ 広尾学園小石川の誕生
一方、広尾学園小石川の歴史は少し異なります。前身は、文京区にあった村田女子高等学校です。こちらも長い歴史を持つ女子校でしたが、少子化や共学校人気の高まりなど、順心女子学園と同じような課題を抱えていました。
そこで学校法人は、大胆な改革を決断します。2021年度、「広尾学園小石川中学校・高等学校」として新たなスタートを切りました。2024年には新校舎も完成しました。同年には高校募集を停止し、完全な中高一貫校になっています。このあたりの流れは広尾学園とまるで同じですね。

そこで広尾学園小石川は、広尾学園で培われた教育理念や探究学習、英語教育、国際教育などを積極的に取り入れました。広尾学園と教育提携を結んでいるため、基本的な教育理念やプログラム(広尾モデル)は共通です。
しかし、それは単なる「広尾学園のコピー」ではありません。
学校の立地も違えば、生徒層も違います。
そのため、小石川では独自のコース編成や教育内容を整えながら、「広尾ブランド」の価値を受け継ぐ学校づくりを進めています。
この学校は「第二の広尾学園」を目指しているというより、「広尾学園グループとして、新しい魅力を持った学校」を目指しているように思います。
④ 教育内容は何が違うのか
両校とも、「国際教育」「探究学習」「英語教育」を掲げています。しかし、実際には教育の方向性には違いがあります。
まず広尾学園です。
この学校の最大の特徴は、難関大学進学を強く意識したカリキュラムにあります。特に医進・サイエンスコースは全国的にも有名で、医学部や理工系学部を目指す生徒が多く集まります。
また、インターナショナルコースでは授業の多くを英語で行い、海外大学への進学も積極的に支援しています。
「世界で活躍する科学者や医師を育てる」「トップレベルの学力をさらに伸ばす学校」「高い目標をかかげていく」そんなイメージの学校と言えるでしょう。
一方、広尾学園小石川は、もちろん難関大学進学も目指していますが、それ以上に「学ぶことを楽しむ姿勢」を大切にしている印象があります。
本科では基礎学力をしっかり固めながら探究活動にも力を入れています。広尾学園は1学年280名程度ですが、広尾学園小石川は広尾学園に比べて学年人数は少なく120名程度と少なく、その分手厚い指導がみこまれます。
インターナショナルSGコースでは、国内外の大学進学を視野に入れた教育が行われています。さらにAGコースでは、高い英語力を持つ帰国生や国際生を対象に、英語を日常的に使う環境が整えられています。
しかし、広尾学園にある医進・サイエンスコースはありません。
つまり、広尾学園小石川は「多様な才能を育てながら難関大学を目指す学校」で、広尾学園ほど理系・医師に執着しているカリキュラムではなさそうです。
⑤ 入試日程から見える両校の戦略
人気校ほど、入試日程には明確な戦略があります。
広尾学園と広尾学園小石川も、一見すると似たような日程に見えますが、その狙いは少し異なります。
広尾学園は、2月1日から5日にかけて複数回の入試を実施し、本科、医進・サイエンスコース、インターナショナルコースなど、それぞれのコースに応じた選抜を行っています。最難関校を受験する層が多く併願することを前提に、複数回チャレンジできる仕組みになっています。
本科コースを志望する場合、2月1日午前と午後のダブル出願が多いです。午前の結果が分からないまま午後を迎えるので、移動の時間や体力消費を考え、午前・午後の両方で広尾学園を受ける生徒が多いのが特徴です。ここで2回受けるかどうかで、学校側も受験生の志望順位がどのくらい高いかおしはかることができるのです。
とはいえ、1日午後は、御三家をはじめとする難関校からの受験者の流入が多く、レベルは午前寄りもさらに跳ね上がります。
本科コースの次のチャンスは2月5日。かなり離れた日程です。5日まで入試をする難関校は非常に少ないので、1日に広尾学園を受けたが縁がなく、2~4日で他の学校をおさえた生徒の最終チャレンジに使われることが多いです。つまり、学力とやる気はあるがここまで思うように合格をとれなかった生徒を集めることができるようになっています。


一方、広尾学園小石川も2月1日午前・午後、2月3日、2月6日など複数回の入試を実施していますが、その目的は少し異なります。こちらは「広尾学園を第一志望とする層」だけでなく、都立中高一貫校や文京区周辺の難関校を目指す受験生も意識した日程になっています。
入試日程をまんべんなく用意することで、他の学校との併願を容易にし、幅の広い受験生を集めたいという意志が感じられます。特に5日などの後半日程の午後も用意してあることで、競合の少ない後半の日程で、満足いく結果を出せていない優秀生に受けてほしいという思いがあるようです。


つまり、
広尾学園は「最難関校との勝負」
広尾学園小石川は「幅広い難関受験生を集める勝負」
同じグループ校でも、受験市場での立ち位置は決して同じではないのです。
また、両校とも複数回受験を認めています。これは学校側が「一回の試験だけでは測れない力」を評価したいという考えを持っているからでしょう。
⑥ どちらが難しいのか
結局、どちらが難しいのでしょうか。
結論から言えば、現在の入試難易度では広尾学園の方が上です。
特に医進・サイエンスコースやインターナショナルコースは、男子・女子ともに首都圏トップレベルの受験生が集まります。
男女御三家や、渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張などを受験する層が併願校として選ぶことも珍しくありません。共学校では、渋谷教育学園の2校に次ぐブランドとして広尾学園は認識されています。
そのため、問題も単純な知識ではなく、思考力や処理能力を問う内容が多くなっています。
一方で、広尾学園小石川も決して「入りやすい学校」ではありません。
学校改革以降、人気は年々高まり、倍率も安定して高い水準を維持しています。特に午後入試やインターナショナルコースは、毎年高い競争率になります。
この二校に合格する生徒には共通点があります。
それは、「ただ知識を覚えるだけの勉強では通用しない」ということです。
両校に共通しているのは、文章を読み、資料を分析し、自分で考える力が必要だということです。問題数が特に多いわけではなく、その代わりに記述問題が必ず一定量出題されます。
適切に時間配分し、素早く問題文を読み、グラフや資料を読み取り、自分の言葉で素早く書く。このバランスが求められます。
「難しい問題が解ける」だけでは足りません。
もちろん基礎学力は必要です。しかし、それ以上に求められるのが「思考力」です。
どちらの学校も、近年の中学入試で増えている「考えさせる問題」を多く出題します。小6秋からは過去問にしっかりふれ、典型記述だけではなく、読み取りをもとにした記述問題に慣れ親しむ必要がありそうです。
⑦ どちらの学校を選ぶのがよいのか
では、どちらを第一志望に選べばよいのでしょうか。
これは偏差値だけでは決められません。
広尾学園のほうが向いている生徒の特徴
・理数系が好きで、難関大学や医学部を強く目指したい人
・レベルの高い帰国生
・競争の中で自分を高めたい人
・より高いレベルの仲間と切磋琢磨したい人
広尾学園小石川のほうが向いている生徒の特徴
・探究学習を楽しめる人
・英語や国際交流に興味がある人(中学スタートでもOK)
・少人数の中で、主体的に興味を見つけていきたい人
・学校生活全体を楽しみながら成長したい人
もちろん、どちらも難関大学を目指せる学校です。
しかし、学校生活の雰囲気や教育の進め方には違いがあります。
だからこそ、偏差値表だけを見て学校を選ぶのではなく、説明会へ行き、自分の目で学校を見て、自分に合う学校を探してほしいと思います。
⑧ 今後の広尾学園グループはどうなるのか
私は、この2校は今後もしばらく人気が続くと考えています。
広尾小石川は、午後入試の多さと立地、また広尾学園よりも1学年の人数が少ないという点で、今後、偏差値はもう少し上昇して広尾学園と肩を並べるのは確実だと思います。
理由は明確です。
現在の中学受験で保護者が求めているものを、両校とも高いレベルで実現しているからです。
英語教育、探究学習、ICT教育、海外大学への進学。
これらは一時的な流行ではなく、今後も教育界の大きな流れであり続けるでしょう。両校ともに、渋谷教育学園に次ぐ、共学難関校としてブランド化していくことは間違いありません。
⑨ まとめ
広尾学園と広尾学園小石川。
名前はよく似ていますが、その歩んできた道は決して同じではありません。
両校に共通しているのは、「これからの時代に必要な教育」を真剣に考えていることです。
知識を覚えるだけではなく、自ら考え、発信し、世界へ羽ばたく力を育てる。その姿勢が、多くの受験生や保護者から支持を集める理由なのでしょう。
名前や偏差値だけで判断するのではなく、それぞれの学校が大切にしている教育理念や校風にも目を向けながら、志望校選びを進めていただければと思います。
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