#27【入試情報】東京農大第一、入試日程が減少
世田谷区の人気共学、東京農業大学第一中も、2027年入試での入試変更点が発表されています。
2月4日の日程がなくなってしまいました…。

昨年まであった第4回入試:2月4日の日程がなくなってしまいました。
後半の日程をなくす、という傾向は、実は大妻、城北、洗足学園など、枚挙にいとまがありません。まさに中学入試の短期決戦化が進んでいることの証左です。
東京農業大学第一とは
東京農業大学第一中学校・高等学校。中学受験をしているご家庭なら一度は名前を聞いたことがあるでしょう。
世田谷区桜にある共学校で、小田急線の経堂駅や東急世田谷線の上町駅から通学することができます。世田谷区内に位置し、23区内でありながら、そうとは思えないほど自然豊かでのどかなエリア。馬事公苑と隣接した大学キャンパスも同エリアにあり、のびのびと学生生活が送れる場所です。
東京農業大学は、戊辰戦争で五稜郭に立てこもり、最後まで新政府に対抗した榎本武揚がのちに作った大学。電車内で榎本さんの顔入りポスターなどの広告を見た方も多いかもしれません。
現在では首都圏中学受験の中堅上位から難関校群の一角として確固たる地位を築いていますが、実はこの学校、今のような立ち位置になったのはそれほど昔のことではありません。
私が受験業界に入った頃の東京農大一中は、良い学校ではあるものの、どちらかというと「第二志望」「併願校」という位置づけで語られることが多い学校でした。城北や本郷、世田谷学園といった学校を第一志望とする受験生が併願するケースが目立ち、「東京農大一中にぜひ行きたい」というよりは、「安全校として受ける学校」という印象を持つ家庭も少なくありませんでした。
ところが今は違います。
もちろん、従来通り2月1日午前に最難関~難関校を受験した生徒の、午後のおさえの安全校として機能している側面は残ります。
しかし、それだけでなく、最初から東京農大一中を第一志望に据える家庭が増えています。なぜこれほどまでに学校の評価が変わったのでしょうか。
まず大きいのは学校改革の積み重ねです。中学受験の世界では、突然人気校になる学校はほとんどありません。数年、場合によっては十年以上かけて少しずつ評価を積み上げていきます。東京農大一中もまさにそのタイプでした。進学実績を伸ばし、教育内容を見直し、生徒募集の戦略を変え、少しずつ受験生から支持を集めていったのです。
農大が難関校に育ったワケ
ではどのような工夫により、農大は偏差値を押し上げ、人気難関校に育ったのでしょうか。
①実は進学校である
実は、東京農業大学第一高等学校から併設の東京農業大学へ進学する割合は、卒業生全体のわずか 1〜3%程度(約10名前後)です。大半の生徒は東京農大には進学せず、一般受験で他大学を目指す「進学校」となっています。この進学先がまたすごい。国公立、早慶に十分合格しています。また、東京農大じたいもバイオ系などで就職がしやすい学校として注目を集めており、農大への進学も決して見劣りするものではありません。
昔の農大一高は、高校募集が中心の学校でした。
もちろん良い学校でしたが、現在のような難関進学校という立ち位置ではありませんでした。
ところが2005年に中等部を開設し、中高6年間で育てる体制を整えます。
さらに2025年度からは高校募集を停止し、完全中高一貫校になりました。
これは実は非常に大きい。中学受験で入ってきた生徒を6年間かけて育てることができるからです。さらに学校側も単に受験勉強だけではなく、探究活動、実験・実習、プレゼンテーション、課題研究などを積極的に導入しました。農大の理念である「知耕実学」を前面に出した教育ですね。
②派手さはないが堅実な共学
私はむしろ、
「農大一は、広尾学園や三田国際みたいな派手な改革校ではない」
ところが強みだったと思っています。
「国際系」を押し出した共学が、エリア的にも多いのが23区西部の特徴です。渋谷教育学園渋谷、三田国際の激変を見ると、そこまでの変化は求めていない保護者も多いのです。
完全な大学付属ではなく、国際系でもない、堅実で安定志向、伝統もちゃんとある共学校。
保護者から見ると、進学実績は欲しい。共学校がいい、あまり奇抜な学校は不安 という層が一定数います。
農大一はそこにうまくはまりました。
また理科教育との相性も大きいです。農大というバックボーンがあるので、生物や実験、バイオ分野に自然と触れられる。
「理系に強そう」というイメージを保護者が持ちやすいんです。実際に学校も実験設備や理科施設の整備を進めています。
③立地のよさ
経堂という場所は地味ですが強い。
世田谷区の住宅地。小田急線沿線。都心へのアクセスも悪くない。
少し駅から遠いきらいはありますが、緑豊かで落ち着いた地域です。これは、難関女子の中で鷗友学園が一定の立ち位置を占めてきてることに似ていますね。
農大一が進学校になった理由は「東大合格者が増えたから」ではなく、
中高一貫化によって教育の土台を作り、その上に進学実績が乗ってきたから
20年かけて、発展の土台を地道に作ってきた結果からだと思います。
農大の偏差値変化と日程
ここ5年ほどの偏差値推移を見ても、農大の難関化の流れは明らかです。
以前は城北や本郷より一段下と見られることもありましたが、現在では日程によっては同等か、それ以上の難易度になることもあります。
特に2月1日入試や特待を絡めた日程ではかなり高い学力層が集まるようになりました。偏差値というのは学校人気の結果です。学校側が偏差値を上げることはできません。受験生が集まり、その中から優秀な生徒を選抜することで結果として上がるものです。その意味では、この5年の偏差値上昇は学校が保護者から評価された証拠と言えるでしょう。
その背景には入試日程の工夫があります。
東京農大一中は近年、入試日程を非常に戦略的に設計しています。
2月1日午前だけではなく、午後入試や特待制度を組み合わせることで、多くの受験生が挑戦しやすい形を作っています。
2月1日午後・2日午後の「算数国語」「算数理科」選択入試は、国語は苦手だけど理系なら!という男子たちにとって大きなエールとして受け取られたことでしょう。
1日午後だけでなく、2日午後も同様の入試を用意したことで、「この学校は何度もチャンスを与えてくれる」という安心感を与えることができました。
このパターンはまわりの他校でも真似をしている学校が出始めているほどです。
さらに、ここにきて満を持して2月1日午前に進出。2月1日午前は御三家をはじめ、最難関の学校がひしめきます。この日程で受けに来てくれる生徒は、相当、農大への進学意志の強い生徒です。1日から、第一志望生をきっちり確保したいという気持ちの表れを感じます。
そのうえで4日から撤退。
2月4日で競合する学校は、実はさほど多くありません。ですからこの日程は用意していれば、受験生を集めることはできるはずです。
しかし、後ろの日程で集まる受験生は、1~3日で合格が取れていないか、満足な結果が出ていない生徒。つまり、農大への志望順位は本来高くない生徒です。
そういった生徒は、たとえレベルが高くても受け入れない。
農大に来たい生徒だけで十分。
学校側はそう割り切って入試日程を変えたのでしょう。
実際、4日は受験生ばかり多いのに合格者は少なく(1・2日の合格者数と調整した残席しか残っていないため)、採点の労力に比して合格者をあまり出せないという、学校側の事情・苦慮もあったと思います。また、4日で合格した生徒が、1~3日に受けた学校の補欠・繰り上げ合格になった場合、農大ではなく1~3日の学校を優先し、農大の合格枠を放棄する例があったであろうことも、容易に想像できます。
中学受験は学校単体で考えるものではありません。他校との組み合わせで受験します。学校側もそれを理解しています。例えば午前に難関校を受験した子が午後に受験できる日程を用意することで、より幅広い学力層を取り込むことができます。東京農大一中はこの戦略が非常に上手です。
農大の競合校と違い
近年の競合校としては広尾学園、三田国際、開智日本橋などが挙げられるでしょう。いずれも探究学習や国際教育を前面に打ち出して人気を集めている学校で、かつ共学校です。
特に三田国際や開智日本橋は教育改革の象徴のような存在で、保護者からの注目度も高い学校です。
ただ、東京農大一中はそれらの学校とは少し違う立ち位置にいます。広尾学園系の学校が先進的な「国際系」のイメージを前面に出すのに対し、東京農大一中は比較的堅実です。伝統校の安定感を持ちながら改革も進める。保護者からすると非常に安心しやすい学校なのです。極端な改革ではなく、着実な改革。そのバランス感覚が支持されているように感じます。
では城北や本郷、世田谷学園、芝、攻玉社、巣鴨などの男子難関進学校とは何が違うのでしょうか。
まず大きいのは共学校であることです。
男子校を希望する家庭にとっては城北や本郷が魅力的に映るでしょう。一方で共学校を希望する家庭にとっては東京農大一中が有力な選択肢になります。最近は共学校人気が高まっていますから、この点は大きなアドバンテージです。
また校風も少し異なります。城北や本郷は良い意味で伝統的な進学校です。学習面に対する期待値も高く、生徒たちも落ち着いています。
一方の東京農大一中はもう少し柔らかい印象があります。探究活動や行事にも力を入れながら、学習面もしっかり伸ばしていく。そうしたバランスを求める家庭には非常に魅力的に映るでしょう。
そして午後に参入した農大の最大のライバル。
それは、地域的には東京都市大付属だと私は思っています。
1日午後の東京都市大付属は大激戦です。御三家を受けた子たちの午後のおさえとして名高く、今や御三家合格者も都市大不合格がありえます。
その点、東京農大は変な問題を出さず、実力に応じてしっかり合格させてくれる印象が強いです。
算数・理科入試でも、理科の中に科目横断型の社会に近いような観点の問題もまじり、これまでの受験生の努力をしっかり拾ってくれるイメージが強いです。
実際、私も近年は、生徒保護者が強く希望しない限り、午後受験は都市大より農大へ誘導しています。
これはまさに、東京農大のイメージ戦略の勝利と言えるでしょう。
私は学校選びで大切なのは偏差値だけではないと思っています。文化祭や説明会に行き、実際に通っている生徒の様子を見る。先生の話を聞く。そうして初めて見えてくる学校の魅力があります。
東京農大一中は、この10年で確かに大きく変わりました。しかし本質的には、生徒を丁寧に育てる学校であることに変わりはありません。その上で時代の変化に対応し、教育内容を進化させてきた。その結果として今の人気があるのだと思います。
まとめ
中学受験の世界には流行があります。しかし流行だけで人気校にはなれません。東京農大一中がここまで評価を高めた背景には、地道な学校改革と着実な実績の積み重ねがあります。だからこそ今後も注目していきたい学校の一つです。
2月4日をなくしたことで、1・2日の受験生が急増するかというと、それはないと思います。先述の通り、4日の受験層の大半は前半日程でほかの難関校に敗れた生徒が多かったためです。
一方で、どうしても農大に受かりたい生徒にとって、チャンスが1つ減ってしまったことは事実です。農大第一志望の場合は、もっとも受かりやすい2月1日からしっかり受験して合格しましょう。
また、世田谷エリアなどにお住まいで、農大を「おさえ」として使いたい方は、これまでは4日で最後の砦!と戦うことができましたが、それはもうできません。1日午後に受けて確実に合格をとる必要があると思います。
この少子化の世の中、農大の午後入試は倍率が高止まりしているとはいえ、ここ数年がピークだと思います。
そして、倍率の高さに踊らされず、過去問をしっかり研究して、午前の受験とは切り替えて、午後であろうとも集中して実力を発揮すれば、合格することができるでしょう。
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